住宅ローンの金利は人によって違う?金利ごとのメリット・デメリットを解説

しかし、実際のところ、住宅ローン金利は人によって異なる場合があることをご存知でしょうか。この記事では、なぜ人によって金利が異なるのか理由を解説。住宅ローン金利の種類や、返済額に与える影響、対策なども詳しく説明していきますのでこれから住宅を購入される方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
住宅ローン金利が人によって異なる理由

住宅ローンの金利がなぜ人によって異なるのか、その理由を探っていきましょう。金利には基準金利と適用金利があり、この2つの違いが大きく関係しています。
基準金利と適用金利の違い
まず、住宅ローンの金利は、基準金利(店頭金利)と適用金利に分けられます。基準金利とは、市場金利に基づいて金融機関が設定する金利のことです。
いわば「定価」にあたるもので、すべての顧客に対して同じ条件で提示されます。しかし、実際に適用される金利は、そこからさらに個々の状況に応じて設定される「適用金利」。
適用金利は、基準金利から金融機関の審査に基づいて割引が適用されるため、人によって異なります。この割引率を「金利優遇」といい、借り手の返済能力や信用力、自己資金の割合、借入額、年収などによって決まることが多いです。金融機関は、返済能力が高いと判断した人に対して、より低い金利を提供する傾向があります。
信用力による金利差
住宅ローンの審査では、借り手の信用力はとても重要です。具体的には、年収や勤続年数、クレジットカードの利用履歴、過去のローン返済履歴などが考慮されます。
また、自己資金が多いほど、金融機関はリスクを低く見積もるため、金利の優遇幅が大きくなることも。
例えば、安定した収入がある会社員や公務員は、個人事業主やフリーランスと比べて低い金利が適用されやすくなります。一方で、自己資金が少なかったり、過去に延滞や滞納があった場合、金利優遇が少なくなる可能性が高いです。以下で詳しい要点を見ていきましょう。
収入とクレジットヒストリー
まずは、安定した収入があることが大前提です。安定した収入を証明するために、住宅ローンの審査時には給与明細や確定申告書の提出を求められることが一般的です。
また、過去のクレジットカードやローンの利用履歴、支払い遅延の有無なども重要な評価ポイント。クレジットヒストリーが良好であれば、金融機関は「この人ならきちんと返済できる」と判断し、低金利での借り入れを許可する可能性が高まります。
所有資産
個人の所有する資産も信用力の一部として考慮されます。例えば、貯蓄額が多い、価値のある不動産を所有しているなど。所有資産があれば、住宅ローンの返済が困難になったとしても、資産を売却してローンを返済できる可能性があると判断され、金利が低く設定されます。
なぜなら、これらは金融機関にとってリスクを軽減する材料となるからです。
住宅ローン金利の種類

次に、住宅ローン金利には大きく3つのタイプがあり、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。以下で、それぞれの金利タイプを詳しく見ていきます。
変動金利
変動金利とは、一定の期間ごとに金利が見直されるタイプです。見直しの基準となるのは「短期プライムレート」で、日本銀行の政策金利の影響を受けて変動します。
変動金利は、現在のような低金利時代では比較的有利に働くことが多く、最初の金利が低く設定される点が特徴です。
ただし、金利が上昇すると返済額も増えるため、将来の金利上昇リスクを考慮しなければなりません。また、半年に一度の見直しがおこなわれるため、計画的に返済を進めたい方には不安定な面もあります。
固定期間選択
固定期間選択は、あらかじめ決められた一定の期間中、金利が固定されるタイプの住宅ローンです。固定期間は2年や3年、5年、10年などさまざまで、固定期間終了後は再度、固定金利か変動金利かを選択できます。
固定期間選択は、固定期間中は金利が変わらないため、将来の金利変動を心配せずに済むメリットがあります。しかし、固定期間が終了した時点で金利が上昇している場合、その後の返済が負担になる可能性もあるため、注意してください。
全期間固定金利
全期間固定金利は、住宅ローンの返済開始時から完済まで、金利が変わらないタイプです。将来の金利上昇リスクを完全に回避できるため、安心して返済を続けられる点が大きなメリット。
ただし、変動金利や固定期間選択に比べて金利水準が高く設定されていることが多いため、最初の返済額が大きくなる可能性があります。そのため、ライフプランや長期的な経済状況を踏まえたうえで、慎重に選択する必要があります。
金利の違いが住宅ローンの返済額に与える影響

住宅ローン金利の違いが、返済額にどのような影響を与えるのか、実際にシミュレーションしてみましょう。例えば、2,000万円を35年間で返済するケース(元利均等方式)を想定します。
金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
1% | 5万6,457円 | 2,371万1,999円 |
2% | 6万6,253円 | 2,782万6,073円 |
上記のように、金利が1%上昇するだけで、総返済額は400万円以上も増加します。したがって、わずかな金利差でも住宅ローンの返済に大きな影響を与えることがわかります。
特に変動金利を選択する場合、金利が将来上昇するリスクを見越して、返済シミュレーションをおこない、無理のない返済計画を立てることが重要です。
住宅ローンの金利を抑えるための方法

ここからは、住宅ローン金利が上昇した場合の対策や、金利を少しでも抑えるための方法を解説します。
住宅ローンを借り換える
金利が上昇した場合、借り換えの検討が一つの方法です。借り換えとは、現在の住宅ローンを別の金融機関の住宅ローンに切り替え、より低金利で借り入れることを指します。借り換えにより、毎月の返済額や総返済額を削減できる可能性があります。
ただし、借り換えには新たな審査や諸費用が必要となるため、慎重に検討することが重要。特に、年齢や勤続年数、過去の住宅ローン返済履歴などが審査に影響するため、自分の条件に合ったタイミングでおこなうことがポイントです。
繰り上げ返済をする
繰り上げ返済とは、月々の返済額に加えて、まとまった金額を返済する方法です。繰り上げ返済によって、元金が減少し、将来支払う利息を抑えられます。
また、返済期間を短縮することで、総返済額を減らせるため、金利が上昇する前におこなうと効果的。
ただし、繰り上げ返済にも手数料がかかる場合があるため、全体的な資金計画を見直しながら進めていく必要があります。
住宅ローンを賢く組むためのポイント

住宅の購入で多くの方が利用するのが住宅ローンです。しかし、住宅ローンを組む際には「金利」が大きなポイントとなります。
先ほどシミュレーションしたように、金利がわずかに変動するだけで、最終的な総返済額や月々の返済額が大きく変わるため、慎重に選ぶことが重要。
特に、低金利で住宅ローンを組むことができれば、返済負担を軽減でき、家計に余裕を持たせることが可能です。住宅ローンは長期にわたって返済が続くため、どのような金利条件を選ぶかが、経済的な安定に大きく関わってくるのです。本章では、住宅ローンを賢く組むためのポイントを解説します。
住宅ローンの金利タイプを理解する
住宅ローンの金利を比較する際、考慮すべきは金利タイプです。先述したように、「変動金利」「全期間固定金利」「固定期間選択」の3つがあり、それぞれのメリット・デメリットを理解して選ぶ必要があります。
変動金利を選択する際には、金利上昇に対するリスク管理を徹底し、最悪のシナリオでも返済可能な計画を立てることが大切です。
一方で、全期間固定金利の住宅ローンは、契約時の金利が完済まで変わらないため、安定した返済が期待できるでしょう。特に、将来的な金利上昇を予測している場合や、返済額を一定に保ちたい方にとっては、全期間固定金利が有利です。
ただし、全期間固定金利は一般的に変動金利よりも高めに設定されているため、長期的に金利が下がる局面では不利になる可能性もあります。この点を十分に理解したうえで、変動金利と固定金利のどちらが自分に適しているかを慎重に判断することが重要です。
また、単に金利だけを見るのではなく、総返済額や手数料など、実質的な費用を含めて比較することが大切。各金融機関が提供する特典やサービス、キャンペーンも考慮するとよいでしょう。
さらに、住宅ローンを組む期間や返済計画に応じて、最適な住宅ローンを選択することが大切です。金利の低さにとらわれず、長期的な視点で総合的に判断しましょう。
金利の予測をおこない綿密な返済計画を立てる
住宅ローンを選ぶ際、将来の金利動向を予測し、適切な返済計画を立てることが大切です。もし金利が上昇するリスクが高いと予測される場合は、変動金利ではなく固定金利の住宅ローンを選ぶことがリスク回避の一つの方法に。
反対に、金利が下がると予想される場合には、変動金利を選ぶことで将来的な返済負担を減らせる可能性があります。ただし、どちらの予測にもリスクがともなうため、余裕のある返済計画を立てることが大切です。
また、予期せぬ金利変動にも対応できるよう、柔軟な返済計画を立てましょう。
金利変動リスクに備える
住宅ローンを契約する際には、将来的な金利変動リスクに備えておくことが大切です。固定金利と変動金利のメリット・デメリットを理解し、状況に応じた戦略を立てることが求められます。
また、金利上昇に備えて貯蓄を確保する、返済計画を定期的に見直すなど、事前に対策を考えておきましょう。予期せぬ事態にも柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。経済状況の変化に対応するためには、常に情報を収集し、適切な判断をおこなうことも必要です。
理解し納得できる金融機関を選ぶ
住宅ローンに関する知識があまりない方や、複雑な金融商品に不慣れな方が多いことが一般的です。そのため、金融機関の担当者が話す内容をそのまま鵜呑みにしてしまいがち。
しかし、住宅ローンは長期間にわたって返済を続けるものです。不明点は必ず質問し、納得できる説明を受けることが大切です。
専門的な用語が多くてわかりにくい場合は、担当者に具体的な例やわかりやすい言葉での説明を求めるとよいでしょう。
提携先の金融機関を利用する
不動産会社や工務店、ハウスメーカーが特定の金融機関と提携している場合、その金融機関を利用することでスムーズに手続きを進められる場合があります。
提携している金融機関であれば、金利や審査条件が有利になることもあるため、不動産会社や、工務店、ハウスメーカーに相談するのも一つの手でしょう。
まとめ
住宅ローンの金利は、金利の種類や個人の信用力によって異なることを解説しました。どの金利タイプが適しているかは、個々の生活設計や将来の見通しによって異なります。
また、個人の収入やクレジットヒストリー、所有資産も信用力に影響するため、人によって適用される金利が変わることも理解しておく必要があります。
住宅ローンは人生のなかで大きな借り入れの一つ。金融機関の選び方や自分に合った商品を見つけることが、長期的な返済計画を立てるうえで重要です。不明点があれば、積極的に質問し、納得のいくまで調べ、後悔しない住宅ローン選びをおこないましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ