住宅ローンは変動金利から固定金利に変えられる?注意点やメリットを解説

記事の目次
住宅ローンの金利とは

住宅ローンを組む際の金利タイプは「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。ここからは、この2つの金利タイプの違いやそれぞれのメリット・デメリットを解説します。どのような場合に金利タイプを変更すべきかを考えてみましょう。
変動金利とは
変動金利は、住宅ローンの返済期間中に金利が変わる可能性があるタイプです。一般的に金利は年に2回見直されるため、市場の金利動向によっては上がることも下がることもあります。現在の変動金利の相場は、0.4%程度(※2024年10月現在)。変動金利は固定金利に比べて低く設定されていることが多いです。
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年4月調査)」によると、住宅ローンを借りる人の約75%が変動金利を選んでいます。これは、変動金利は金利が比較的低いため、月々の返済額を抑えたいと考える借り手にとって魅力的に映るからです。しかし、金利が上昇すれば、返済額が増えるリスクを抱えることになります。
変動金利のリスクを抑えるルール
変動金利には、リスクを軽減するための「5年ルール」と「125%ルール」があります。まず、変動金利の返済額は5年ごとにしか見直されません。金利自体は半年に一度調整されますが、返済額が実際に変わるのは5年に一度です。そのため、急な返済額の変動を防げるのが特徴です。
次に、125%ルールは、返済額の急激な増加を抑える仕組みのこと。金利が上昇しても、返済額が125%以上増えることはありません。しかし、金利が上がると、返済額の内訳が変わります。利息の割合が増えることで元本の減少が遅くなり、結果として総返済額が増えるリスクがあります。
金融機関によっては、このルールが適用されない場合もあるため、事前に確認することが重要です。また、元金均等返済方式を選んだ場合も、このルールが適用されません。
固定金利とは
固定金利は、住宅ローンの返済期間中、金利が一定で変わらないタイプです。固定金利には、「全期間固定型」と「期間選択型固定型」があります。
全期間固定型と期間選択型固定型
全期間固定型は、返済当初から完済まで金利が固定されるものです。有名な例として「フラット35」が挙げられます。これは、住宅金融支援機構が提供するローンで、35年間の固定金利が適用されるため、長期的な返済計画を立てやすい点が特徴。
一方、期間選択型固定型は、例えば3年、5年、10年など一定の期間だけ金利を固定するタイプです。固定期間が終了すると、変動金利に切り替えるか、再度固定金利を選択するかを決められます。期間選択型固定型は、将来の金利上昇リスクを軽減しながら、当初の返済額を抑えられる点がメリット。
現在の固定金利の相場は以下のとおりです。
金利タイプ | 金利の相場 |
---|---|
固定金利・期間選択型(10年) | 0.90~1.585% |
固定金利・全期間固定型(35年) | 1.060~2.479% |
当初期間引き下げ・全期間引き下げ幅一定とは
住宅ローンのなかには、最初の固定期間だけ大幅な金利引き下げが適用され、その後は引き下げ幅が小さくなる商品があります。これは「当初期間引き下げプラン」と呼ばれるものです。引き下げ幅は住宅ローンの基準金利からの割引率を指します。
例えば、基準金利が3%であれば、当初引き下げプランで2.5%の引き下げが適用されると、実際の適用金利は0.5%になります。しかし、固定期間が終了すると引き下げ幅が1.5%に減るため、結果として適用金利は1.5%に。
一方、全期間引き下げ幅が一定の商品もあります。これは、返済当初から完済まで一定の引き下げ幅が適用されるため、当初期間引き下げプランのように期間終了後に金利が急に上がる心配がありません。
金利タイプの変更は可能か

住宅ローンの返済中に、金利タイプを変更できるかは、選んでいる金利タイプによります。
変動金利型の場合
変動金利型を選んでいる場合、いつでも固定金利に変更できます。多くの金融機関では、約定返済日であれば、変更の申し込みが可能です。しかし、返済が遅れている場合は、変更できないことがあるため注意が必要です。
全期間固定型の場合
全期間固定金利型を選んだ場合、途中で金利タイプを変更することはできません。
金利タイプを変更したい場合には、他の金融機関への借り換えが必要です。
期間選択型固定型の場合
期間選択型固定金利型は、固定期間が終了したタイミングで金利タイプを変更できます。もし特に申し出がなければ、自動的に変動金利型に切り替わる金融機関もあります。例えば、auじぶん銀行の場合、固定金利期間終了後は変動金利に自動的に変更されます。
変動金利から固定金利に変更するタイミング

それでは、変動金利から固定金利に変更するタイミングはいつがよいのでしょうか。見ていきましょう。
金利上昇が見込まれる時
変動金利が上昇すると予想される場合は、固定金利への変更を検討すべきです。特に日本銀行の金融政策が影響するため、政策金利が上がると、数カ月後には変動金利も上昇する傾向があります。2024年7月末に日本銀行が追加の政策金利引き上げを決定したため、変動金利は上昇する可能性も。
この場合、金利が大きく上昇する前に固定金利に切り替えることで、将来の返済額を安定させられるでしょう。
固定金利が低金利の時
固定金利が比較的低い時に変更するのもよいタイミングです。特に、変動金利との差があまりない時期に変更すると、返済額の負担が少なくて済みます。
固定金利は、変動金利に比べて金利の変動が激しいため、経済状況をよく確認し、最適なタイミングで変更をおこなうことが重要です。
住宅ローン金利の変動で把握しておきたいこと

住宅ローンの金利変動は、予測がつかないものです。本章では、金利変動に関して押さえておきたいことを解説します。
金利が上がってからの変更では遅い
住宅の購入時に、「変動金利が上昇すれば固定金利に切り替えればいい」とアドバイスを受けることがあるでしょう。しかし、必ずしもこのとおりとはいえません。なぜなら、変動金利が上がる頃には、固定金利もすでに上昇していることが一般的だからです。
結果的に、変動金利の上昇を確認してから固定金利に変更しても、切り替えのタイミングとしては遅いといえます。
固定金利が先に上昇する理由
固定金利は国債の利回りに連動しており、国債利回りが上昇すると固定金利も上がる仕組み。なお、国債利回りは、投資家が将来の市場を予測して行動することで変動します。
そのため、変動金利よりも早い段階で固定金利が上がることが多くなります。国債市場では、債券の価格が下落すると利回りが上がり、その影響が固定金利にも反映されます。
将来の金利予測は不可能
今後の住宅ローン金利がどう動くかを正確に予測することは不可能です。金利は、世界の経済情勢や市場の動きに左右され、短期的な金利予測ですら難しいもの。
したがって、金利が変動することを前提に、自分の家計状況に合った対応をあらかじめ考えておくことが大切です。金利がどうなるかを考えるのではなく、金利が変わった時にも対応できるよう、戦略を立てておくことが、賢明なローン計画の基本です。
変動金利から固定金利に変更する際の注意点

変動金利から固定金利に変更する際には、いくつかの注意点があります。
返済額が増えるリスクがある
変動金利から固定金利に変更すると、一般的に適用される金利は変動金利より高くなります。そのため、月々の返済額が大幅に増えることがあります。例えば、返済期間35年で5,000万円を借りている場合、変動金利0.4%から固定金利2.2%に変更すると、月々の返済額が約4万3,000円増えることも。変動金利から固定金利に変更する際は、返済額が増える可能性が高いため、事前にシミュレーションしておきましょう。
手数料がかかる場合がある
金利タイプを変更する際には、金融機関によって手数料が発生することがあります。特に、メガバンクでは有料となるケースが多く、1万円前後の手数料を設定している場合が一般的。
地方銀行でも同様に手数料がかかることが多いです。一方でネット銀行は無料のことが多く、利用者にとってはコストを抑えやすいメリットがあります。
例えば、三井住友銀行では、手続き方法によって手数料が異なるので注意してください。インターネットバンキングの「SMBCダイレクト」を利用した場合は無料ですが、支店窓口での手続きには1万6,500円の手数料がかかります。上記のように、同じ金融機関でも手続き方法によって大きく費用が変わることがあるので、手続きの際は事前に確認しておくことが重要です。
また、固定金利への変更にともなう金利や条件は、その時の金融情勢や各金融機関の方針によって異なります。最適なタイミングで手続きできるよう、最新の情報を入手するようにしましょう。
変更よりも借り換えのほうが有利な場合もある
金利タイプを変更する際、現在借りている金融機関で金利の変更を依頼することが可能ですが、その際に提示される金利が思っているより高いケースがあります。それは、金融機関が宣伝している「最優遇金利」は、主に新規の借り入れや借り換えに対して適用されるものであり、既存の住宅ローン契約者に対しては、優遇金利が適用されない場合が多いからです。
そのため、金利タイプの変更を検討する際には、他の金融機関への借り換えも選択肢に入れて比較検討するのがポイント。借り換えには手数料が発生しますが、トータルで見た場合、より低金利で借り換えることができれば、その後の返済負担が軽減され、総返済額も大幅に減る可能性があります。
借り換えに関しては、専門の金融アドバイザーやファイナンシャルプランナーに相談することも効果的です。自分にとって有利な選択肢を見つけるために、複数の金融機関から提示される金利や条件を比較し、事前にしっかりとしたシミュレーションをおこないましょう。
返済期間の延長はできない
金利タイプを変更する際、返済期間の延長ができない点にも注意が必要です。例えば、返済期間を35年として借り入れた場合、7年目に金利タイプを変更したとしても、残りの返済期間は28年のままです。
仮に20年固定金利を選んだ場合、20年後に再度金利タイプを選択する必要があるため、30年固定金利など長期間の固定金利を選択することはできません。
そのため、残りの返済期間が短くなればなるほど、選択できる固定金利の期間も限られてくることを理解しておきましょう。
変更にともなう条件を確認する
金利タイプを変更する際には、手数料だけでなく、その変更にともなう条件や適用金利なども詳しく確認する必要があります。先述したように、変更後の金利が予想以上に高くなるケースがあり、その場合、長期的に返済負担が大きくなるリスクもあるでしょう。
また、固定金利への変更後は、再度変動金利に戻せないため、一度選択した金利タイプがその後の返済にどのような影響を与えるかを十分にシミュレーションすることが重要です。金利タイプを変更する前には、現在の住宅ローンの条件をしっかりと理解し、自分にとって適したタイミングで変更するようにしましょう。
住宅ローンの金利タイプを変更する方法

変動金利から固定金利へ切り替える方法としては、主に2つあります。
同じ金融機関で金利タイプを変更する
一部の金融機関では、現在契約している住宅ローンの金利タイプを変更できるようになっています。この場合、手数料が無料のケースも多くみられます。例えばソニー銀行やauじぶん銀行、イオン銀行などでは金利タイプ変更にともなう手数料が発生しません。
一方で、メガバンクでも三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行などではインターネット経由での申し込みに限り、手数料が無料になることがあります。
しかし、利用している金融機関の金利水準が高い場合、借り換えを検討するほうが総コストを抑えられるケースも。金利タイプ変更と借り換えのシミュレーションをおこない、どちらが自身の返済プランに有利かを見極めましょう。
住宅ローンの借り換えをおこなう
もう一つの方法は、別の金融機関でより低金利の住宅ローンに借り換えることです。この方法では、より多くの選択肢があり、複数の金融機関から最も低金利なローンを選ぶことが可能です。
しかし、借り換えには通常、数十万円規模の手数料がかかるため、金利低下によるメリットと手数料の負担を考慮して検討する必要があります。
まとめ
住宅ローンの金利タイプ変更は、返済計画に大きな影響を与える重要な決断です。金利が上がったからといって、必ずしも固定金利に変更することが得策だとは限りません。まずは自分の金利タイプをよく理解しましょう。金融機関ごとの手数料や金利条件、また経済動向をしっかりと把握し、自分にとって有利な選択肢を見極めることが大切です。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ