住宅ローンをうっかり数日延滞するとどうなる?滞納前後でやるべきことを解説

今回は、住宅ローンの支払いをうっかり数日延滞してしまった時に起こること、延滞してしまった時にやるべき行動を解説します。延滞しないためにできることを学んでいきましょう。
記事の目次
住宅ローンをうっかり数日延滞するとどうなる?
住宅ローンを数日延滞するだけでも、ペナルティとして遅延損害金が発生します。
また金利が優遇されている場合、解除される可能性もあります。住宅ローンは毎月安定して返済されることを前提に契約を結んでいるため、数日遅れただけでも借入金融機関の信用を失うことになるからです。
本章では、遅延損害金と金利優遇の解除について詳しく解説していきます。もし住宅ローンの返済が遅れたらどうなるかを理解しておきましょう。
1日遅れるだけでも遅延損害金が発生する
住宅ローンを1日でも延滞すると、遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、住宅ローンの返済が遅れたこと(損害)を賠償するためのお金です。元金に対して、年率14%〜14.6%の遅延損害金を払います。
計算式は次のとおりです。
遅延損害金=元金返済分×遅延損害金の利率×滞納日数÷365日
例を挙げて計算してみます。
元金返済分:8万円
遅延損害金の利率:14.6%
滞納日数:5日
8万円×14.6%×5日÷365日=160円
※元金の100円未満、計算して出た金額の円未満は切捨てとなります。
住宅ローンの返済額が多く、延滞日数が長いほど、遅延損害金は増えていきます。遅延損害金を含めた金額を入金する必要があるため、延滞に気付いたらすぐに金融機関に連絡しましょう。
優遇金利が解除される可能性がある
住宅ローンを延滞すると、優遇金利が解除される可能性があります。住宅ローンは、毎月安定して返済することを前提として契約するため、延滞すると信用が下がってしまうからです。たとえば、イオン銀行住宅ローン規定には「借主が返済を遅延した場合には、銀行からの通知により、返済の遅延した日の翌日から借入要項に定めた借入利率引下幅の適用を解除し、基準金利を適用するものとします」と記載されています。
一度の延滞で優遇金利が解除される可能性は低いですが、金融機関ごとに判断するタイミングは異なります。優遇金利の適用は一度解除されてしまうと、再度適用されることはありません。店頭表示金利での返済となるため、住宅ローンの総返済額は増えることになります。
優遇金利の解除を防ぐためにも、延滞した時にはすぐに金融機関に連絡しましょう。支払う意思があることをきちんと伝えれば、信用を失わずに済む可能性があります。
住宅ローンを長期滞納するとどうなる?

住宅ローンの延滞を続けると競売にかけられ、家が強制的に売られることになります。本章では、長期に渡って滞納した時の流れを解説していきます。流れを把握し、対処法を知っておけば、夢のマイホームを手放さずに済みます。
具体的には、次の流れで競売の手続きが進んでいきます。
- STEP 1支払い請求が届く
- STEP 2催告書が届く
- STEP 3期限の利益喪失通知が届く
- STEP 4競売開始決定通知が届く
- STEP 5期間入札の通知が届く
ここからは一つずつ詳しくみていきます。
金融機関から支払いの請求がある
住宅ローンを長期滞納すると、金融機関から支払いの請求があります。最初は通知書だけですが、対応せずそのままにしていると電話でも連絡が来るようになります。住宅ローンを延滞してしまった場合には、すぐに金融機関に連絡するようにしましょう。金融機関には相談窓口があり、返済の猶予などの提案をしてくれます。
催告書が届く
住宅ローン返済の請求があっても、支払わなかった場合には、金融機関から催告書が届きます。催告書とは、法的手続きへ移るための前提となる書類です。つまり、「払わなければ強制的に家を売りますよ」という金融機関からの最後の通告となります。期日までに滞納した分の住宅ローンや金利、遅延損害金を一括で返済しなければ、分割で返済する権利を失い、住宅ローンの残高を一括で支払わなければなくなります。
催告書が届いたら、すぐに滞納金を支払うようにしましょう。そのまま放置すると、金融機関は家を売るための法的な手続きに入ることになります。
もし支払いが難しい場合には、金融機関に相談しましょう。一定期間、返済額を減らしたり、返済期間を延長したりと、返済負担の軽減を提案してくれます。
期限の利益喪失通知が届く
住宅ローンの返済を61日以上延滞すると、金融機関から「期限の利益喪失通知」が届きます。
期限の利益喪失とは、金融機関が住宅ローンの契約者に対し、分割払いではなく、一括返済を求めることができるということを意味します。ここから金融機関は、本格的に家を売る手続きに入ることになります。
ただでさえ分割での支払いが滞っているのにも関わらず、住宅ローンを一括で返済するのは困難でしょう。金融機関に許可を得て自宅を売却する任意売却をおこなうことで、返済できる可能性があります。競売は自身(債務者)の意思に関わらず強制的に売却が進められますが、任意売却は自身の意思に沿って売却を進めることができます。
期限の利益喪失前に手を打たなければ、家を手放すことになります。延滞が続く時は、早めに金融機関に連絡するようにしましょう。
競売開始決定通知書が届く
住宅ローンの滞納から6〜8カ月経つと、裁判所から「競売開始決定通知書」が届きます。競売開始決定通知書とは、裁判所が競売にかける手続きに入ったこと、家を差し押さえたことを知らせるものです。家が競売に至った理由や債権の額などが記載されています。
「もうどうすることもできないのでは?」と思われるかも知れませんが、任意売却なら競売を取り下げることができます。しかし、時間に余裕はないため、早めに金融機関に連絡し、任意売却することを伝えましょう。
期間入札通知書が届く
住宅ローンを滞納して12〜16カ月経つと、「期間入札通知書」が届きます。期間入札の通知とは、家の入札が始まったことを知らせるもので、入札期間や開札日などが記載されています。入札期間とは、家を購入したい人が、希望する金額を提示して申し込みができる期間のことです。通常、入札期間は1〜2週間に設定されています。
開札日とは、入札の結果が発表される日のことです。一番高い金額で購入する人に家が売られることになります。この時点で競売を取り下げることはできません。
期間入札通知書が届いた段階で任意売却ができなくはないですが、非常に厳しいでしょう。金融機関への連絡が遅くなればなるほど、取れる対策は少なくなります。1日でも早く連絡するようにしましょう。
住宅ローンを延滞するとブラックリストに載る?
住宅ローンをうっかり延滞するとブラックリストに載るのでは?と考える方も多いのではないでしょうか。そもそも、金融機関にブラックリストと呼ばれるリストがあるわけではありません。各金融機関は個人信用情報機関に加盟しており、個人信用情報を共有しています。個人信用情報には、住宅ローンをはじめとしたローンやクレジットカードなどの契約について、契約内容、支払い状況などが登録されています。
住宅ローンを延滞した場合、この個人信用情報に「事故」として記録されることになり、金融機関全体で共有されます。延滞だけでなく、債務整理や自己破産なども事故として記録されます。
この章では、ブラックリストに関する下記の疑問に答えていきます。
- 住宅ローンを延滞するといつブラックリストに載るのか
- ブラックリストに載ってしまうとどうなるのか
- いつブラックリストから削除されるのか
ここからそれぞれ詳しく説明していきます。
住宅ローンを延滞するといつブラックリストに載るのか
先述したように、ブラックリストというリストが存在するわけではありません。住宅ローンを延滞すると、個人信用情報に事故として記録されることになります。住宅ローンの場合、61日以上の延滞、もしくは3回目の支払日を超える延滞をすると、事故情報が記録される、一般的にいうブラックリストに載ってしまいます。
実は、各個人信用情報サイトで自分の信用情報を照会することができます。主な個人信用情報機関は以下のとおりです。
「もしかして載っているかも」と心配な方は、一度各個人信用情報サイトを確認してみましょう。
ブラックリストに載ってしまうとどうなるのか
個人信用情報に事故情報が登録されると、次に挙げる3つのデメリットがあります。
- クレジットカードを作れなくなる
- ローンが組めなくなる
- 分割払いができなくなる
事故情報が登録されると返済能力がないと判断されるため、このような事態となります。現在使っているクレジットカードは、更新のタイミングで利用できなくなります。どうしてもカードで支払いたい場合は、本人の信用力が問題にならず、利用時に口座から引き落とされるデビットカードを使うことになるでしょう。
また、分割払いができなくなります。スマートフォンや家電は高額なため、分割払いを選択している方もいるのではないでしょうか。分割払いでの購入はできませんが、一括払いなら可能となります。家計に負担のない範囲での購入となるでしょう。
このように、事故情報が登録されると、日常生活で制限されることが多くなります。事故情報が登録されることのないよう、住宅ローンを延滞しないようにしましょう。
いつブラックリストから削除されるのか
事故情報が削除されるまでの期間は、事故情報の内容によって異なります。一般的に、長期滞納の場合は完済してから5年、債務整理や自己破産の場合は5〜10年とされています。
気をつけたい点が「完済してから」という点です。完済していない場合には、事故が発生してから10年経っても、事故情報は消えません。なるべく早く完済し、事故情報の登録が削除されるようにしましょう。
住宅ローンを延滞してしまった時にやるべきこと

住宅ローンを延滞すると、遅延損害金が発生したり、優遇金利が解除されたり、デメリットしかありません。また、長期間滞納を続けると家が競売にかけられる可能性があります。住宅ローンは「あなたなら返済してくれる」と信用を前提とした契約です。信用を失えば、契約者にとって都合の悪いことしか起きないのは当然でしょう。
本章では、住宅ローンを延滞した時の対処法をご紹介します。延滞した時には、金融機関に連絡することが大切です。信用を失わないために、誠実な行動をとりましょう。
金融機関に連絡する
まずは、金融機関にすぐに連絡しましょう。支払う意思があることをしっかり伝えます。住宅ローンの返済が1日遅れただけでも遅延損害金が発生します。気付いたらすぐに金融機関に連絡しましょう。
返済用の口座に入金する
次に、返済用の口座に入金しましょう。毎月返済している住宅ローンだけではなく、遅延損害金を上乗せして入金する必要があります。金融機関に問い合わせ、必要な金額を確認しましょう。
「うっかり引き落とし日を忘れていた……」といったことがないよう、入金忘れを防ぎましょう。具体的には次の方法で、住宅ローンの延滞を予防できます。
- 定額自動入金サービスを利用する
- 給与口座と住宅ローンの引き落とし口座を一緒にする
利用している金融機関に定額自動入金サービスがあれば利用しましょう。一度設定するだけで、毎月決めた金額を自動で入金してくれます。また、給与口座と住宅ローンの引き落とし口座を同じにすれば、使い過ぎない限り残高不足になることはないでしょう。
収入が減ったり、働けなくなったりして、住宅ローンの返済自体が苦しい場合の対処法は次の章でご紹介します。
住宅ローンを延滞しそうになる前にやるべきこと
住宅ローンを延滞すると、遅延損害金の発生や優遇金利の解除など、契約者にとってマイナス面しかありません。延滞しそうになる前に、早めに行動することが大切です。延滞しそうになる前にやるべきことは、3つあります。
- 金融機関に相談する
- 家計を見直す
- 住宅ローンの借り換えを検討する
それぞれ詳しく解説していきます。
金融機関に相談する
住宅ローンの返済が難しくなったら、まず金融機関に相談しましょう。各金融機関には、住宅ローン契約者専用の相談窓口が設けられています。返済期間の延長や一定期間の支払い猶予、ボーナス払いの見直しなど、救済措置を提案してくれます。相談する際には、収入や支出がわかるものを持参すると、より具体的に返済計画の見直しができます。
延滞が長期になると、家を競売にかける手続きが始まります。延滞してからではなく、延滞する前に相談することが大切です。住宅ローンの返済が厳しくなってきたら、なるべく早く金融機関に相談しましょう。
家計を見直す
住宅ローンを滞納しそうになる前に、家計を見直すことも一つの方法です。家計を見直すことで、無駄を減らし、余裕が出るようになります。特に、保険料や通信料など毎月一定額を払う固定費を見直すと、節約効果があります。子どもが習い事をしている場合、「子どものためだから」といくつもかけ持ち、なかなか教育費が下げられない方もいるようです。家計に見合ったものになっているか、今一度確認しましょう。
住宅ローンの借り換えを検討する
住宅ローンの返済が苦しければ、住宅ローンを借り換える方法もあります。現在契約しているローンを別の金融機関に借り換えることで、毎月の返済額を減らすことができます。借り換えを検討する際には、次の3つのポイントがうまくいく目安となります。
- 住宅ローンの残債が1,000万円以上ある
- 住宅ローンの返済期間が10年以上残っている
- 今より1%以上金利が低くなる
ただし、住宅ローンの借り換えを検討する際には、以下の点に注意が必要です。
- 手数料がかかる
- 住宅ローンの審査を受ける必要がある
手数料は30〜100万円程度かかります。なぜ金額に幅があるのかというと、住宅ローンの残高によって、融資事務手数料や保証料の金額が変わるためです。
とはいえ、住宅ローンを契約した時より金利が下がっていれば、返済額の負担は減らせる可能性があります。シミュレーションサイトを活用しながら、検討してみましょう。”
まとめ
今回の記事では、住宅ローンを数日延滞した時に起こることや対処法をご紹介しました。返済が1日遅れるだけでも遅延損害金が発生します。なるべく早く返済することが大切です。また、長期滞納をすると、家を手放さなければならない可能性が高くなります。さらに、個人信用情報にも傷が付き、クレジットカードが作れなくなったり、他のローンが組めなくなったりと制限されます。延滞しそうになる前に、対処することが重要です。この記事を参考に、今できる行動をしていきましょう。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ