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住宅ローンが免除される団体信用生命保険とは?対象の病気について徹底解説!

団体信用生命保険で住宅ローンが免除されるケースを解説します
団体信用生命保険に加入すると、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害になった際に残債が免除されます。
どのような病気になると住宅ローンが免除されるのか気になる人もいるでしょう。
本記事では団体信用生命保険で住宅ローンが免除されるケースや、加入時の注意点などを解説します。

住宅ローンが免除される団体信用生命保険とは

団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害になると残債が完済される保険制度

団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった際に、残債が完済される保険制度のことです。
民間の金融機関では、基本的に住宅ローンを組む際に団体信用生命保険の加入が義務付けられています。

一般的な団体信用生命保険では、死亡と高度障害のみが保障の対象となっていますが、特約を付帯することで補償範囲を拡大できるのが特徴です。
通常は住宅ローンの残債を残された家族が支払う必要がありますが、団体信用生命保険に加入すると、残された家族が債務を負わずに自宅に住み続けられます。

具体的には、団体信用生命保険に加入すれば、以下のケースで住宅ローンが免除されることになります。

・住宅ローンの契約者が死亡する
・住宅ローンの契約者が高度障害になる
・住宅ローンの契約者が3大疾病などの病気にかかる
・夫婦のどちらかが死亡または高度障害になる

順番に解説します。

住宅ローンの契約者が死亡する

住宅ローンの契約者が死亡すると、残債が完済されます。
しかし、契約者が死亡したらすべてのケースで完済されるわけではなく、以下のようなケースでは死亡、高度障害の場合でも保障の対象外となります。

  1. 保障の開始日から1年以内に自殺されたとき
  2. 「申込書兼告知書」に記入日(告知日)現在および過去の健康状態などについて事実を告げなかったか、または事実と異なることを告げその団信加入者に係る団信契約(住宅金融支援機構と生命保険会社との保険契約をいいます。以下6から8までにおいて同じ。)が解除されたとき
  3. 故意により所定の高度障害状態になられたとき
  4. 保障の開始日前の傷害または疾病が原因で所定の高度障害状態になられたとき
    (その傷害や疾病をご加入時に告知いただいた場合でも、債務弁済の対象とはなりません。)
  5. 戦争・その他の変乱により死亡または所定の高度障害状態になられたとき
  6. 詐欺・不法取得目的により団信加入者となったことにより、その団信加入者に係る団信契約が取消しまたは無効とされたとき
  7. 団信加入者について、保険金を詐取する目的で事故を招致した場合、暴力団関係者その他の反社会的勢力に該当すると認められた場合など、重大な事由があり、その団信加入者に係る団信契約が解除されたとき
  8. 団信加入者について、団信契約の存続を困難とする2、6又は7と同等の重大な事由があり、その団信加入者に係る団信契約が解除されたとき
  9. 団信加入者が、住宅ローンの金銭消費貸借契約に定める反社会的勢力の排除に関する条項に抵触し、債務の全部につき期限の利益を失ったとき

保障の対象外となる条件については金融機関ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。

住宅ローンの契約者が高度障害になる

住宅ローンの契約者が高度障害になると、残債が完済されます。
高度障害とは、病気やケガなどが原因で身体機能が大きく低下した状態のことを指します。

具体例として、住宅金融支援機構が定めている「所定の高度障害」とは、以下のとおりです。

  1. 両眼の視力を全く永久に失ったもの
  2. 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの(注1)
  3. 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)
  4. 胸腹部臓器に著しい傷害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)
  5. 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  6. 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  7. 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  8. 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
    (注1)「そしゃくの機能を全く永久に失ったもの」とは、流動食以外のものは摂取できない状態で、その回復の見込みのない場合をいいます。
    (注2)「常に介護を要するもの」とは、食物の摂取、排便・排尿・その後始末、及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態をいいます。

住宅ローンの契約者が3大疾病などの病気にかかる

団体信用生命保険の種類によっては、3大疾病などの病気にかかった際にも保障の対象になることがあります。
多くの金融機関で、金利を上乗せしないと3疾病は保障されません。

住宅金融支援機構の場合は一般の住宅ローンの金利に0.24%上乗せすることで、3大疾病まで保障されます。
3大疾病とは、がんや急性心筋梗塞、脳卒中が保障の対象となっていますが、死亡や高度障害と同様に対象外となるケースがあります。

  1. 上皮内がん・所定の皮膚がん(上皮内がんや皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんは債務弁済の対象とはなりません。)
  2. 保障開始日前に所定の悪性新生物(がん)と診断確定されていた場合
  3. 保障開始日からその日を含めて90日以内に所定の悪性新生物(がん)と診断確定された場合
  4. 保障開始日からその日を含めて90日以内に診断確定された所定の悪性新生物(がん)の再発・転移等と認められる場合
  5. 保障開始日前の疾病を原因とした場合
  6. 保障開始日前の疾病を原因とした場合

上記に該当すると、事前に告知をしていても保障の対象外となるため、注意しましょう。

夫婦のどちらかが死亡または高度障害になる

ペアローン向けの団体信用生命保険(夫婦連生団信)に加入すると、夫婦のどちらかが死亡または高度障害になった際に保障の対象となります。
ペアローンとは、夫婦や親子関係にある二人がひとつの物件に対してそれぞれで住宅ローンを契約することで、共同で借入ができるローンのことです。

ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となるため、一般的な団体信用生命保険では契約者の残債のみが完済されます。
しかし、夫婦連生団信では夫婦のどちらかが死亡または高度障害になった際に、配偶者の残債も完済されることになります。

住宅ローンが免除されない時の3つの対処法

住宅ローンが免除されない時の対処法が3つあります

一般的な団体信用生命保険に加入しても、保障の対象外となり、住宅ローンが免除されないケースもあります。
しかし、対処をせずに住宅ローンの滞納を続ければ住宅が競売にかけられてしまうため、3つの対処法を理解しておきましょう。

金融機関に相談をする

住宅ローンの返済を続けることが困難になったら、まずは金融機関に相談しましょう。
詳細は後述しますが、金融機関に相談すると、一定期間月々の返済の負担を軽減するためのアドバイスをもらえることがあります。

病気やケガが今後治る見込みであれば、一定期間返済の負担を軽減できるのは有効的な手段です。
金融機関によって対応方法が異なるため、住宅ローンの支払いが困難になった時は早めに相談しましょう。

住宅の売却を検討する

一定期間返済の負担を軽減しても、返済を続けるのが困難な場合は、住宅の売却を検討しましょう。
住宅ローンの残高よりも高い金額で売却ができれば、残債を完済できます。

住宅を高く売るためには、複数の不動産会社に売却査定を依頼し、担当者の対応や知識を考慮して売却の依頼先を決定するのがおすすめです。
また、地域密着型の不動産会社であれば、地域特有の情報や購入希望者がいる可能性もあるため、視野に入れておきましょう。

任意売却も視野に入れる

住宅ローンの残債額よりも住宅の売却額が下回りそうな時は、通常の方法では住宅を売却できません。
一般的には、住宅を売却して得られた資金で住宅ローンを完済する必要があります。

住宅ローンの残債額が住宅の売却額を上回っている状態のことを「オーバーローン」と呼び、オーバーローンの際は金融機関と所有者が同意することで任意売却を選択することができます。
住宅ローンの返済を滞納し続けると、金融機関が不動産を差し押さえ、競売の手続きを進められるのが一般的です。

しかし、競売だと通常の売却方法よりも売却価格が低くなり、住宅ローンの完済ができず、最悪の場合自己破産をする可能性もあります。
任意売却を選択すると、通常の売却価格に近い金額で売却ができる可能性があります。

ただし、任意売却は通常の売却に加え、金融機関との交渉などの業務が発生するため、専門的な知識が必要です。
不動産会社の選定は慎重におこないましょう。

病気で住宅ローンの返済が困難な時に相談すべきこととは

住宅ローンが困難な時は金融機関に相談する

病気で住宅ローンの返済が困難な時に相談すべきことは、以下の2つです。

  • 返済額の負担軽減
  • 返済期間の延長

順番に解説します。

返済額の負担軽減

金融機関に相談して一定期間月々の返済額を減らしてもらい、返済ができるようになったタイミングで減らした分を上乗せして返済する方法です。

例えば、月々10万円の返済をしていたところ、返済が困難な期間中に8万円にすると、8万円にしていた期間分、月々12万円の支払いとなります。
後述する返済期間を延長する方法よりも利息が少なく済みますが、月々の負担が増える点には注意が必要です。

返済期間の延長

多くの金融機関で返済期間の延長は対応してもらえます。

例えば、返済期間を35年間にしていた場合に、返済期間を40年間にすることで月々の返済額を軽減できます。
ただし、下記のように総返済額が増えるため、注意が必要です。

返済期間35年 返済期間40年
月々の返済額 8万4,685円 7万5,856円
総返済額 3,556万7,804円 3,641万1,076円

※借入額3,000万円、金利1.0%想定

住宅ローンが免除される団体信用生命保険加入時の3つの注意点

団体信用生命保険に加入する時の注意点が3つあります

住宅ローンが免除される団体信用生命保険に加入する際の注意点は、以下の3つです。

  • 健康状態が悪いと審査に通過しない可能性がある
  • 一般的な団体信用生命保険では死亡と高度障害しか保障されない
  • 特約を付帯する場合は追加の保険料がかかる

順番に解説します。

健康状態が悪いと審査に通過しない可能性がある

団体信用生命保険は、あくまで生命保険の一種であるため、住宅ローンの契約者の健康状態が悪いと加入できない可能性があります。
民間の金融機関では、基本的に団体信用生命保険の加入が義務付けられているため、団体信用生命保険に加入できないと住宅ローンを組めなくなります。

団体信用生命保険に加入できずに民間の金融機関で住宅ローンが組めない時は、住宅金融支援機構「フラット35」などの加入が義務付けられていないローンを検討しましょう。
他にも、健康状態が良くなってから住宅ローンを組むことも効果的です。

一般的な団体信用生命保険では死亡と高度障害状態しか保障されない

先述したとおり、一般的な団体信用生命保険では死亡と高度障害しか保障されません。
他の病気やケガによって働けなくなっても、住宅ローンの返済を続ける必要があります。

会社員やその家族が加入する健康保険では、病気やケガで働けなくなったら会社から傷病手当金を受け取ることができますが、支給額はおよそ給料の3分の2程度です。
通常よりも収入が減ってしまうため、住宅ローンの返済が困難になる可能性があります。

一般的な団体信用生命保険では、通常の病気やケガに備えることができないため、別途就業不能保険に加入するか、団体信用生命保険に特約を付帯するのがおすすめです。

特約を付帯する場合は追加の保険料が必要になる

一般的な団体信用生命保険だけでは保障される範囲が限られますが、特約を付帯することができます。
しかし、特約を付帯すると追加の保険料が必要となります。

金融機関によって異なりますが、通常の住宅ローンの金利に0.1〜0.3%程度上乗せされるケースが主流です。
0.3%程度では返済額に大きな影響がないように思うかもしれませんが、金利1%と1.3%で比較した表が以下のとおりです。

金利1.0% 金利1.3%
月々の返済額 8万4,685円 8万8,944円
総返済額 3,556万7,804円 3,735万6,564円

※借入額3,000万円、返済期間35年想定

つまり、金利が0.3%上がることで、総返済額が約180万円増えます。
保障を充実させることで、月々の返済額や総返済額の負担が増えるため、保障内容は慎重に検討しましょう。

まとめ

住宅ローンを組む際に、団体信用生命保険に加入し、所定の要件を満たすことで住宅ローンの返済が免除されます。
一般的な団体信用生命保険では死亡と高度障害しか保障されないため、特約の付帯や別途生命保険に加入するのがおすすめです。
ご自身にとって必要な保障内容がわからない人は、金融機関に相談することをおすすめします。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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