住宅ローンの連帯債務の持分割合の決め方は? シミュレーション付き解説

本記事では、住宅ローンの連帯債務の持分割合の決め方を具体的なシミュレーションで解説します。
記事の目次
住宅ローンの連帯債務と持分割合とは?

住宅ローンの連帯債務における持分割合について解説する前に、それぞれの用語を簡単に説明します。
連帯債務
住宅ローンの連帯債務とは、収入合算の方法のひとつです。収入合算とは、夫婦や親子の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。単独で組むよりも借入金額が増えやすく、希望する融資を受けられる可能性が高くなります。収入合算には主に2つの方法があります。
- 連帯債務型
- 連帯保証型
連帯債務型は、共同名義人が連帯債務者となり、主債務者と同様に住宅ローンの返済の義務が課されます。一方で、連帯保証型は共同名義人が連帯保証人となり、主債務者が返済できない場合を除いて返済の義務は課されません。
持分割合
持分割合は、住宅の所有権の割合を表します。連帯債務のように共同名義人が存在する場合は、主債務者と連帯債務者で3:1といったように持分割合を決める必要があります。持分割合は、住宅に関するさまざまな手続きにおいて重要になる割合です。根拠なく決めてしまうと、損をしてしまう可能性もあるため、正しく決める必要があります。
住宅ローンの連帯債務の持分割合の決め方

住宅ローンの連帯債務では、主債務者と連帯債務者がそれぞれ借入金額を設定して返済します。返済する金額と持分割合は、共通して収入割合から決めることが正しい決め方です。例えば、夫の年収が700万円、妻の年収が300万円である時、夫70%、妻30%の割合で返済額と持分割合を決めます。
収入合算では、夫の返済能力と妻の返済能力を合算して借り入れをおこないます。3,000万円の住宅を2人で購入する場合は、夫7:妻3の持分割合で、夫は70%にあたる2,100万円分、妻は30%にあたる900万円分を所有し、同額を住宅ローンで返済していくことになります。
住宅ローンの連帯債務の持分割合に関する注意点

連帯債務で持分割合を決める際の注意点を3つ紹介します。
- 持分割合は登記が必要になる
- 実際の債務と異なる持分割合を設定すると贈与税が発生する
- 離婚などで共同名義人が出ていく場合は賃料を支払う必要がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
持分割合は登記が必要になる
住宅を共有名義で購入した場合は、持分割合を登記する必要があります。登記とは権利関係を公的に明らかにする手続きであり、持分割合を登記することで法的な効力を発揮します。住宅の権利を登記によって明確にし、主債務者と連帯債務者の持分割合を示すことで、共同名義における住宅の所有権などの権利関係を明らかにする仕組みです。返済額の実態に関わらず、登記した持分割合が住宅の権利関係の基準になります。
実際の債務と異なる持分割合を設定すると贈与税が発生する
登記した持分割合と実際の債務が異なると、「贈与税」が発生することがあります。例えば、6,000万円の住宅を夫が4,500万円、妻が1,500万円の借入金額で返済をおこなう場合、夫が75%、妻が25%の3:1の持分割合となることがわかります。しかし、登記上では2:1の持分割合に設定してしまったと仮定します。
この時の権利関係は6,000万円の住宅において夫が4,000万円分、妻が2,000万円分の権利を持っていることになりますが、実際には夫が500万円多く支払っており、反対に妻は500万円を支払っていない状態です。夫が多く支払った500万円は妻への贈与と解釈され、贈与税が発生する可能性があります。このような不利益を発生させないためにも、持分割合を正しく決めることが重要です。
離婚などで共同名義人が出ていく場合は賃料を支払う必要がある
住宅ローンを連帯債務で支払うリスクには、夫婦であれば離婚による離別があります。共同名義人が住宅を出ていく場合は、独占的に使用する名義人に対して持分割合に相当する賃料の請求が可能です。収入割合と借入金額に応じた持分割合を正しく設定しなかった場合は、実際の負担割合に基づいた請求ができないことから、法的なトラブルの原因につながるため、無用なリスクを避けるためにも正しく設定しましょう。
住宅ローンの連帯債務の持分割合のシミュレーション

持分割合のシミュレーションをおこなうにあたって重要になるのが、頭金の支払いです。頭金も収入割合に応じて2人で支払う場合や、頭金を支払わず住宅ローンを組む場合は持分割合の計算も複雑にはなりません。しかし、頭金の支払いを夫のみが負担するケースでは、借入金額だけでなく頭金の支払いを含めて持分割合を決定する必要があります。頭金の支払いに関して2つのケースを用意して連帯債務における持分割合をシミュレーションしていきます。
頭金を2人で支払う場合
住宅ローンの頭金を収入割合に応じて、2人で支払う場合の持分割合をシミュレーションしていきます。
- 住宅の価格:5,000万円
- 頭金:2,000万円
- 夫の年収:700万円
- 妻の年収:300万円
上記の条件をもとに収入割合に応じて持分割合を決定すると、夫婦の頭金、借入金額、持分割合は以下のとおりになります。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
収入割合 | 70%(700万円) | 30%(300万円) |
頭金 | 1,400万円 | 600万円 |
借入金額 | 2,100万円 | 900万円 |
合計負担額 | 3,500万円 | 1,500万円 |
持分割合 | 70% | 30% |
夫婦の収入割合が7:3であることから、頭金も借入金額も7:3の負担になるように計算し、最終的な持分割合も収入割合と同様になります。頭金も含めて収入割合で負担を分けるほうが、持分割合もわかりやすく設定できます。
頭金を1人で支払う場合
住宅ローンを夫婦で組む時、借入金額は収入割合に応じた負担にする場合でも、頭金は片方が全額支払うケースもあるでしょう。頭金を1人で支払う場合のシミュレーションは以下のとおりです。
- 住宅の価格:4,000万円
- 頭金:1,000万円
- 夫の年収:800万円
- 妻の年収:200万円
上記の条件をもとに収入割合に応じて持分割合を決定する場合、夫が頭金をすべて支払った時の夫婦の頭金、借入金額、持分割合は以下のとおりになります。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
収入割合 | 80%(800万円) | 20%(200万円) |
頭金 | 1,000万円 | 0円 |
借入金額 | 2,400万円 | 600万円 |
合計負担額 | 3,400万円 | 600万円 |
持分割合 | 85% | 15% |
収入割合から決定される持分割合は8:2になります。しかし、夫が頭金の1,000万円をすべて支払うことから、実際に夫が負担した3,400万円は全体の負担の85%にあたるため、収入割合とは異なる夫85%、妻15%の持分割合で登記する必要があります。
頭金は一定の貯金がなければ支払えないため、片方が全額を支払う必要がある場合は頭金の負担を含めて持分割合を決定するようにしましょう。
住宅ローン控除を連帯債務で受ける場合の持分割合

住宅ローン控除とは、住宅の購入で一定に要件を満たす場合、年度末の住宅ローンの残高を基準に一定の控除率で税金の控除が受けられる節税制度です。
連帯債務の住宅ローンの場合、住宅ローン控除を受ける場合も登記した持分割合が重要になります。収入割合に応じて持分割合を決定した時、6,000万円の住宅を3:1で購入した時の住宅ローン控除の対象となる残高は夫が4,500万円、妻が1,500万円です。
また、上記の条件で登記上2:1の持分割合に設定してしまうと、夫の負担が4,000万円、妻の負担が2,000万円であるにも関わらず、実際には夫が500万円多く支払っている状況になります。この金額は贈与になるだけでなく、住宅ローン控除の対象にもなりません。
住宅ローン控除の対象は、控除を受ける人の持分に基づくため、住宅ローン控除を最大限に受けるためにも持分割合を正しく決定することが必要です。
連帯債務の住宅ローン控除のシミュレーション
夫婦の連帯債務における住宅ローン控除の控除額を以下の条件で求めていきます。
住宅の種別:長期優良住宅
住宅ローンの年度末残高:4,000万円
控除率:0.7%
持分割合:60%:40%
- 夫の控除額:(4,000万円×60%)×0.7%=16万8,000円
- 妻の控除額:(4,000万円×40%)×0.7%=11万2,000円
所得税・住民税の納税状況によって、実際に控除される金額は変化しますが、連帯債務の住宅ローン控除における控除額は上記の計算式で計算可能です。
この記事のまとめ
最後に、住宅ローンの連帯債務における持分割合に関する質問をまとめました。
持分割合を決める方法は?
主債務者と連帯債務者の収入割合から決定します。例えば、夫が年収600万円、妻が年収400万円の場合は、60%:40%(3:2)の持分割合です。
持分割合に関する注意点は?
持分割合は登記する必要がありますが、登記した持分割合と実際の債務が異なる場合は、贈与税の対象になります。離婚した場合は、実際の負担割合に基づいた請求ができないことから、正しく持分割合を登記しない場合、さまざまなリスクをともないます。
連帯債務で住宅ローン控除は受けられる?
連帯債務の持分割合に基づいて住宅ローン控除が受けられます。住宅ローン控除の適用要件に加えて、実際の負担額と持分割合が異なる場合は、住宅ローン控除の控除額が減少する場合もあるため、住宅ローン控除を適切に受けるためにも正しく持分割合を設定する必要があります。
住宅ローンの連帯債務における持分割合の設定方法を紹介しました。頭金の負担を含めて、正しい持分割合を登記することが重要です。配偶者に少しでも財産を残したい考えで、実際よりも大きく持分割合を設定すると、さまざまなリスクをともないます。贈与の発生や、住宅ローン控除の対象などの基準は、登記した持分割合に基づいて判断されるからです。連帯債務で住宅ローンを検討している方は、持分割合に関して正しい認識を持って適切に登記するようにしましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ