2024年の住宅ローン減税(控除)はどのように変わる?知識を得てうまく活用しよう!

そこで本記事では、住宅ローン減税の概要をわかりやすくお伝えします。そして、2024年の住宅ローン減税(控除)はこれまでとどのように変わったのかを解説します。住宅ローン減税の知識を得て、上手に活用しましょう。
記事の目次
住宅ローン減税の概要

住宅ローン減税(控除)とは、住宅ローンを組んだ個人に対して、一定額が減税される制度です。この制度は住宅を取得しやすくするための手助けとして、減税することで経済的な負担を減らすことが目的です。減税される金額は、年末の住宅ローンの残債から計算され、住宅ローン残高の0.7%が最長で13年間控除されます。1970年代から制度がある住宅ローン控除ですが、近年では2022年に改定がありました。以下、住宅ローン減税(控除)の概要や利用条件を解説します。
住宅ローン減税(控除)の適用条件(新築)
まず、住宅ローン減税を適用するには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 家を新築した日または新築を購入した日から6カ月以内に住んでいる
- 特別控除を受ける年の12月31日まで住んでいる
- 年間の合計所得が2,000万円以下である
- 住宅の床面積が50平方メートル以上かつ、床面積の2分の1以上が居住用住宅
(住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満、かつ床面積の2分の1以上が居住用住宅であれば、合計所得が1,000万円以下でも可) - 住宅ローン返済期間が10年以上ある
- 主として居住の目的で使用する住宅である
- 譲渡所得の課税の特例を受けていない
- 生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でない
- 贈与による住宅の取得でない
出典:国税庁公式ホームページ No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン減税(控除)の適用条件(買取再販)
買取再販の場合は、前述の適用条件に加えて、以下の条件を満たさなければなりません。特に買取再販では、リフォーム費用や工事の内容に対して細かい規定があります。
- 宅地建物取引業者から住宅を取得している
- リフォームしてから再販までの期間が2年以内である
- 新築された日から10年経過した住宅である
- 建物価格に対し、リフォームの工事費用が20%以上(金額が300万円を超える場合には300万円)である
- 大規模修繕や耐震基準に適合するための工事、バリアフリー改修や省エネ改修の工事がおこなわれている
出典:国税庁公式ホームページ No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン減税(控除)の適用条件(既存住宅)
既存住宅の場合は、前述の新築の適用条件に加えて、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 1982年1月1日以降に建築された
- 現行の耐震基準に適合している
もし、1981年以前の既存住宅に対して、住宅ローン減税を適用したい場合は耐震基準を示す耐震基準適合証明書などを準備する必要があります。
控除率
住宅ローン減税で税金がいくら減税されるかは、年末の住宅ローン残債によります。現在の控除率は、年末の住宅ローン残高の0.7%です。例えば、住宅ローン残債が3,000万円だとすると、年間で21万円の税金が軽減されます。ただし、借入限度額が決まっているため、年末の住宅ローン残債に対して際限なく控除ができるわけではありません。
借り入れ限度額と控除期間
前述で述べたように、住宅ローン減税では借入限度額が決まっています。また、控除の期間も最長では13年ですが、住宅の区分によっては、適用期間が10年になります。以下は、借入限度額と控除期間や住宅区分をまとめた表です。
居住年 | |||||
---|---|---|---|---|---|
2022 (令和4)年 ~2023 (令和5)年 |
2024 (令和6)年 ~2025 (令和7)年 |
||||
区分 | 借入限度額 | 控除期間 | 借入限度額 | 控除期間 | |
新 築 住 宅 ・ 買 取 再 販 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 13年 | 4,500万円 子育て・若者夫婦世帯5,000万円 (※1) |
13年 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 |
3,500万円 子育て・若者夫婦世帯4,500万円 (※1) |
|||
省エネ基準適合住宅 | 4,500万円 |
3,000万円 子育て・若者夫婦世帯4,000万円 (※1) |
|||
その他住宅 | 3,000万円 |
0万円 (※2) |
なし (※2) |
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既 存 住 宅 |
長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 10年 | 3,000万円 | 10年 |
その他住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 |
出典:国土交通省庁ホームページ 住宅ローン減税の借入限度額及び床面積要件の維持(所得税・個人住民税)別紙1より
(※1) 2024年入居の場合、子育て世帯(19歳未満の子どものいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満)は、以前の水準の借入限度額が認められています。そのため例えば、高校生までの子どもがいる家庭が、新築で長期優良住宅に入居した場合、住宅ローン減税(控除)の借入限度額は4,500万円ではなく、5,000万円までになります。この政策は若年と子育て世帯の支援強化のため施行されました。現状2024年入居とされていますが、今後2025年入居でも同様の取り扱いをするようすすめられています。
(※2) ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものは除きます。もし前述の期間に建築されている場合は、既存住宅のその他住宅と同じ取り扱い(借入限度額が2,000万円、控除期間10年)になります。
住宅の種類や性能、居住時期によって借入限度額が決められており、住宅ローン減税(控除)の金額は変わります。性能が高い住宅ほど、住宅ローン減税(控除)で受けられる税金の控除額が高くなるように設定されています。
住宅ローン減税(控除)は2024年前後でどのように変わる?

現行の住宅ローン減税(控除)は、2024年1月1日から2025年12月31日までに入居した住宅のローンが対象です。では、これからの住宅ローン減税(控除)はどのようになるのでしょうか。
新築住宅の借入限度額が引き下げられた
2024年以降に建てられた新築に居住すると、どのような住宅の種類であっても、住宅ローンの借入限度額が下がります。一方、既存住宅には変更がありません。
省エネ基準を満たさない新築は適用されない
特に、省エネ基準に適合していない新築住宅は、住宅ローン減税(控除)が適用されなくなります。ただし、2023年(令和5年)末までに建築確認を受けていた住宅には、2,000万円を借入の限度額として、10年間の住宅ローン控除が受けられます。
2023年に入居した場合と2024年に入居する場合の控除額の違い
新築の場合、住宅性能によって借入限度額や控除期間が変わりましたが、2023年に入居していた場合と2024年に入居する場合では、どのくらい控除額が変わるのでしょうか。
新築の長期優良住宅に居住している場合、2023年に入居していると借入限度額は5,000万円で、控除期間が13年になります。5,000万円の0.7%は35万円なので、13年控除を受けたとすると合計控除額は455万円になります。一方、住宅性能が同じでも入居が2024年になると、借入限度額は4,500万円になるので控除額は31.5万円、合計控除額は409.5万円です。
長期優良住宅も含め、住宅性能ごとの控除額の上限は以下のとおりです。
合計控除額 | |||||||
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2022 (令和4)年 ~2023 (令和5)年 |
2024 (令和6)年 ~2025 (令和7)年 |
||||||
区分 | 上限 | 控除期間 | 合計 | 上限 | 控除期間 | 合計 | |
新 築 住 宅 ・ 買 取 再 販 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 35万円 | 13年 | 455万円 | 31.5万円 | 13年 | 409.5万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 31.5万円 | 409.5万円 | 24.5万円 | 318.5万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 28万円 | 364万円 | 21万円 | 273万円 | |||
その他住宅 | 21万円 | 273万円 |
14万円 (※1) |
10年 | 140万円 | ||
既 存 住 宅 |
長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
21万円 | 10年 | 210万円 | 21万円 | 10年 | 210万円 |
その他住宅 | 14万円 | 140万円 | 14万円 | 140万円 |
(※1) 2023年12月31日までに建築確認を受けたものまたは2024年6月30日までに建築されたものに限る
新築のその他住宅に入居したのが2023年だと借入限度額は、3,000万円です。そうすると21万円の控除が13年続くので合計控除額は273万円になります。
しかし、入居が2024年の場合住宅ローン減税(控除)は適用外になります。もし、2023(令和5)年末までに建築確認を受けていた住宅なら、借入限度額は2,000万円です。2,000万円に対する0.7%は14万円なので、10年間控除を受けると合計控除額は140万円になります。
2024年以降も住宅ローン減税(控除)は継続される?

現行の住宅ローン減税(控除)は、2025年末まで続く予定です。では 2026年以降はどのようになるのでしょうか。結論からいうと、今後の動向はわかりません。これからも制度は継続し現行のままで延長されるのか、内容が変わるのかの公式発表はまだありません。住宅ローン減税(控除)は1972年に始まった住宅取得控除からスタートし、これまでに何回か制度が改正されてきました。これまで50年以上続いてきた制度なので、今後突然なくなるのは考えにくいですが、可能性はゼロではありません。
制度自体は無くならないとなっても、控除率が下がったり控除期間が短縮される可能性はあります。2022年の税制改正で、これまで年1%だった控除率が0.7%に引き下げられたり、2024年以降で省エネなどの機能性が低い住宅に対し、住宅ローン減税(控除)が適用されないなどの改正があったのをみると、これまで以上に内容がよくなる期待はできないでしょう。
もし、将来的に住宅を購入したいと思っている方は、早めに検討した方がよいでしょう。いつかもっと内容がよくなるのを期待して時期を後ろ倒しにするのではなく、現行の制度を上手に活用するほうが賢明です。
2024年の住宅ローン減税(控除)についてよくある質問
住宅ローン減税(控除)ってどのような制度?
住宅ローン減税(控除)とは、住宅ローン残高の0.7%が最長で13年間控除される制度です。住宅ローン減税(控除)を適用するには、新築などの日から6カ月住んでおり、住宅ローン返済期間が10年以上あるなどの条件を満たす必要があります。また、借入限度額が決まっており、控除の期間も最長では13年ですが、住宅の区分によっては、適用期間が10年になります。住宅の種類や性能、居住時期によっても金額が変わります。基本的には、性能が高い住宅ほど、住宅ローン減税(控除)で受けられる税金の控除額が高くなるように設定されています。詳細は、本文中の表をご参照ください。
2024年前後で住宅ローン減税(控除)はどのように変わる?
まず、2024年以降に建てられた新築に居住すると、どのような住宅の種類であっても、住宅ローン減税(控除)が適用される借入限度額が下がります。一方、既存住宅には変更がありません。次に、省エネ基準に適合していない新築住宅は、住宅ローン減税(控除)が適用されなくなります。ただし、2023年(令和5年)末までに建築確認を受けていた住宅には、借入限度額が2,000万円ですが、10年間の住宅ローン控除が受けられます。
例えば、新築の長期優良住宅を例にとると、以下のようになります。
- 2023年に入居した場合、年間35万円の控除が13年受けられ、合計控除額は455万円
- 2024年に入居した場合、年間31.5万円の控除が13年受けられ、合計控除額は409.5万円
もし、新築のその他住宅に入居した場合は、以下のようになります。
- 2023年に入居した場合、年間21万円の控除が13年受けられ、合計控除額は273万円
- 2024年に入居した場合は、控除対象外になる。
- 2024年に入居した場合で、2023(令和5)年末までに建築確認を受けていた住宅なら、年間14万円の控除が10年受けられ、合計控除額は140万円
2024年の住宅ローン減税(控除)は、住宅の機能性や、2023年末までに建築確認を受けているかで、大きく異なります。
2024年以降も住宅ローン減税は継続される?
結論からいうと、今後の動向はわかりませんが、これまで50年以上続いてきた制度なので、今後突然なくなるのは考えにくいです。制度自体はあっても、控除率が下がったり控除期間が短縮される可能性はあります。基本的には、これまで以上に内容がよくなる期待はできないでしょう。そのため、将来的に住宅を購入したい方は、現行の制度を上手に活用して早めに検討するのをおすすめします。
まとめ
本記事では、住宅ローン減税の概要を解説しました。住宅ローン減税の適用条件や、控除率、借入限度額と控除期間などをわかりやすくお伝えしました。そして、2024年の住宅ローン減税(控除)はこれまでとどのように変わったのかを計算した具体的な数字で紹介しています。この記事をご覧になっていらっしゃる方は、すでに住宅ローンを利用している方や、今後住宅の購入を検討していらっしゃる方までさまざまな方がいらっしゃるかもしれません。ぜひこの記事を参考に、概要や条件をよく理解して、住宅ローン減税(控除)の制度を上手に活用してみてください。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ