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離婚後に住宅ローン控除は受けられる?共有名義の場合や財産分与で取得した場合などケース別に解説

離婚後に住宅ローン控除が受けられるのかをケース別に解説します
厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」」によると、婚姻件数に対して、約3組に1組の割合で離婚しています。離婚する際には、婚姻生活で築いた財産を分けることになりますが、なかには住宅を購入した方もいるでしょう。それでは離婚した場合、住宅ローン控除はどうなるのでしょうか?
本記事では、離婚後の住宅ローン控除がどうなるのか、ケース別に解説します。あとでトラブルが起こらないようにするためにも、円満に解決することが大切です。ポイントを押さえ、少しでもスムーズに話し合いを進めましょう。

住宅ローン控除とは

まずは住宅ローン控除とは何かをおさらいしておきましょう
まずは住宅ローン控除とは何かをおさらいしておきましょう

住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残債に0.7%をかけた金額が、所得税から控除される制度です。住宅の購入は金額も大きく、経済的な負担も重いものです。住宅ローン控除を活用すると節税になり、経済的な負担が少しでも軽くなるでしょう。

住宅ローン控除を受けるための要件

住宅ローン控除を受けるためには、一定の要件を満たさなければなりません。満たす必要がある要件は下記のとおりです。

  • 住宅を新築した日から6カ月以内に居住していること
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  • 住宅ローン控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住していること
  • 住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつ床面積の2分の1以上を自己居住用に供していること※
  • 控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上残っていること
  • 取得前後で引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと
  • 贈与による取得でないこと

※特例居住用家屋または特例認定住宅の場合は次のとおりです

  • 住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、かつ床面積の2分の1以上を自己居住用に供していること
  • その場合、控除を受ける年分の合計所得金額が1,000万円以下となる

参考:国税庁No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除を受けるためには、上記すべてを満たす必要があります。離婚後の住宅ローン控除にあたっては「住宅を新築した日から6カ月以内に居住していること」「控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住していること」の2つがポイントとなるため、覚えておきましょう。

離婚後に住宅ローン控除は受けられる?

離婚後に住宅ローン控除を受けるためには要件を満たす必要があります
離婚後に住宅ローン控除を受けるためには要件を満たす必要があります

離婚後に住宅ローン控除は受けられるのでしょうか。先述した控除を受けるための要件を満たすかがポイントとなります。本章ではケース別に解説していきます。

離婚後に名義人が住む場合

離婚後に住宅ローンの名義人が住む場合、住宅ローン控除を受けることができます。なぜなら、要件である「控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住していること」を満たしているからです。

離婚で気になる点の一つに、財産をどう分けるかという問題があります。不動産の時価がローン残債を上回っている場合、上回っている金額を2人で分けることになります。反対に、住宅ローン残債が不動産の時価を上回っている場合、財産分与請求権はありません。残っている住宅ローンの返済については、不動産を取得する名義人が引き継ぎます。

離婚後に非名義人が住む場合

子どものことを考えて、住み慣れた家に非名義人と子どもが住み、名義人が家を出ていくケースもあるでしょう。そもそも非名義人が住む場合、名義人に住宅ローンを払ってもらう、非名義人が住宅ローンを引き受けるという2つのパターンがあります。

名義人に住宅ローンを払ってもらう

名義人に住宅ローンを払ってもらう場合、名義人は住宅ローン控除を受けられません。先述したように、住宅ローン控除を受けるためには、その住宅に住んでいなければならないからです。また、住まない名義人に住宅ローンを払ってもらう場合には、万が一名義人の支払いが滞った際、住宅が競売に出されてしまったり、連帯保証人になっていた時は返済義務を負ったりするリスクもあることを理解しておきましょう。

非名義人が住宅ローンを引き受ける

非名義人が住宅ローンを引き受けた場合、非名義人は住宅ローン控除を受けられます。住宅ローンを引き受ける方法としては、「住宅ローンの名義人を変更する」「住宅ローンを借り換える」の2つがあります。簡単に内容をみておきましょう。

住宅ローンの名義人を変更する

住宅ローンの名義人を変更すると、新しい名義人が住宅ローン控除を受けられます。しかし、名義変更する際には、金融機関の許可をもらわなければなりません。住宅ローンの融資を受ける際には、主に名義人の返済能力が判断材料となっています。新しい名義人の返済能力が、前の名義人と同等だった場合は問題ないでしょう。しかし、専業主婦(夫)だった場合など、返済能力がないと判断される場合は厳しい傾向があります。

住宅ローンを借り換える

新しい名義人が住宅ローンを借り換えても、新しい名義人は住宅ローン控除を受けられます。しかし、金融機関の審査を受けなければならないため、ある程度の返済能力が求められることを理解しておきましょう。また、借り換える際には、住宅ローンの返済期間が10年未満になってしまうと、控除を受けられる要件から外れてしまうため、返済期間は10年以上になるように組む必要がります。

共有名義の場合

今は共働きの夫婦も多く、ペアローンや収入合算で住宅ローンを組んだ方もいるでしょう。共有名義の場合、住宅ローン控除が受けられるのかを見ていきます。

離婚後も住宅に住む名義人は、住宅ローン控除を受けられます。繰り返しになりますが「控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住していること」という要件を満たすためです。一方、離婚後に家を出る名義人は、居住をしていないため、住宅ローン控除を受けられません。

離婚による財産分与で取得した場合はどうなる?

財産分与で住宅を取得した場合に住宅ローン控除は受けられるのかを解説します
財産分与で住宅を取得した場合に住宅ローン控除は受けられるのかを解説します

財産分与とは、結婚生活のなかで夫婦で築いた財産を離婚の際に分配することです。住宅や土地を財産分与で取得する際、住宅ローン控除は受けられるのでしょうか。

財産分与で取得した場合

財産分与で住宅を取得し、住宅ローンの返済義務を引き継いだ際には、住宅ローン控除を受けられます。例えば、Aが離婚をし、財産分与によってAの前夫であるBが所有していた住宅を取得した場合を見ていきましょう。

住宅にかかるBの住宅ローン残債 800万円
Aが住宅にかかる住宅ローン返済にあてるために金融機関から借り入れた借入金 800万円
Aが借り入れた住宅ローンの返済期間 13年

住宅ローンの名義変更ができなかった場合には、Aが新たに借り入れをして、Bの住宅ローン残債を完済しなければなりません。例の場合、Aが借り入れた住宅ローンの返済期間は13年となっており、住宅ローン控除の要件を満たしているため、控除を受けられます。

また、共有名義で住宅ローンを組んでいて、離婚後にもう一方の持分を追加した場合、その追加した分の住宅ローン控除も受けられます。

参考:国税庁「財産分与により住宅を取得した場合

負担付贈与の場合

負担付贈与で住宅を取得した場合は、住宅ローン控除は受けられません。負担付贈与とは、贈与を受ける人に対し、一定の義務を負わせる財産の贈与のことです。例えば、「住宅を贈与するので、住宅ローンの残債1,000万円を負担してほしい」といった贈与があたります。先述したように、住宅ローン控除を受けるための要件に「贈与による取得でないこと」があります。負担付贈与は贈与にあたるため、住宅ローン控除は受けられません。

離婚後の住宅ローン控除に関するよくある質問

離婚後の住宅ローン控除に関するよくある質問をまとめました。

住宅ローン控除は離婚して住んでいなくても受けられる?

住宅ローン控除は、住宅に住んでいる人の住宅ローンの返済負担を軽減するために設けられた制度です。そのため、住宅ローンの名義人が住んでいることが適用を受けるための要件となります。

住宅ローン控除は離婚しても確定申告で申請できる?

離婚後でも、住宅ローン控除は確定申告で申請できます。しかし、離婚後に共有持分を新たに取得した場合には、控除額が最初に申請したものと異なります。この時、追加で取得した分にも住宅ローン控除を受ける必要があるため、再度確定申告をおこなわなければなりません。ただし、取得した時もしくは、あとに生計を一つにしている親族などからの取得した場合は、控除を受けられないため注意しましょう。

離婚後に名義人が住んでいないことはバレる?

繰り返しになりますが、住宅ローン控除を受けるためには、その住宅に名義人が住んでいなければなりません。「離婚したことや住んでいないことを黙っていればバレないのでは?」と思う方もいるでしょう。しかし、郵便物が届かなかったり、住民票と違ったりすると、金融機関に名義人が住宅に住んでいないことがわかります。もし名義人が住んでいない状態で、住宅ローン控除を受けていた場合には脱税にあたります。
本来払わなければならない税金を、虚偽で払わなくていいようにしているためです。金融機関から住宅ローンの一括返済を求められたり、詐欺罪で告訴されたりする可能性もあるため、金融機関には正直に申告しましょう。

まとめ

離婚後に住宅ローン控除を受けるためには、控除を受けるための要件をすべて満たさなければなりません。要件はいくつかありますが、離婚後において特にポイントとなるのは「控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住していること」です。つまり、控除を受けるためには、住宅ローンの名義人が住んでいる必要があります。場合によっては、名義人が住宅を出て、非名義人が住み続けるケースもあるでしょう。名義人がローンを返済し続ければ問題ありませんが、万一滞ってしまった場合、住宅を手放さなければならないリスクもあります。
リスクを減らす方法として、名義人を変更する、新たに借り換えるという2つの方法があります。のちのちトラブルを起こさないようにするためにも、弁護士などの専門家と相談しながら、円満に進めましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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