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離婚後の住宅ローンの支払い義務は誰にある?売却の場合も含めケース別に徹底解説!

離婚した際には住宅ローンの支払い義務はどうなるのかを解説します
離婚は夫婦関係の解消だけでなく、金銭面でも複雑な問題を引き起こす要因になります。特に、夫婦で協力して取得した財産をどのように分けるのかは大きな問題です。例えば住宅ローンが残っている場合は、今後一人で支払っていくには金額が大きいので、離婚後の生活が不安になる方もいらっしゃると思います。

そこで本記事では、離婚後の住宅ローンの支払い義務は、誰にあるのかを解説します。そして、住宅ロ―ンの名義人が住宅に継続して住む場合、名義人ではない人が住む場合、住宅ローンが共同名義だった場合に、住宅ローン支払い義務はどのようになるのかも説明します。住宅を売却する場合の実用的な方法もお伝えするので、ぜひご参考ください。

離婚する時に確認しておくべきこと

離婚する時に確認しておくべきなのはどのような事項でしょうか
離婚する時に確認しておくべきなのはどのような事項でしょうか

離婚すると、場合によっては慰謝料や養育費を一定期支払うことになったり、さらに住宅ローンが残っていると、支払い義務が誰にあるのかが大きな問題になります。本章では、最初に確認しておくべき事項をあげます。

住宅ローンの残額

最初に、住宅ローンの残債を確認しましょう。借り入れている金融機関がネットバンキングの場合は、使用しているネットバンキングのWebサイトにログインすれば残債を確認できます。
大手の金融機関などでローンを組んでいる場合は、残高証明書やローンの返済予定表を確認しましょう。手続きを希望する場合は、窓口に行くか電話、あるいは金融機関のWebサイトで確認する方法があります。まずは、金融機関に確認してみましょう。

住宅の名義人

続いて、住宅の名義人について確認しましょう。住宅の名義人は、住宅ローンの名義人とは異なる場合があるので注意が必要です。名義変更が必要な場合は、適宜手続きをとりましょう。

住宅価格

住宅価格の査定をする時は、不動産鑑定士や不動産会社に依頼して確認しましょう。査定は一社だけでなく、複数の会社に依頼したほうが、価格の比較ができ、より正確な金額を把握できるのでおすすめです。もし、住宅価格が住宅ローン残債よりも高ければ、売却することでローンを完済できます。

離婚後の住宅ローンの支払い義務は誰にある?

離婚後の住宅ローンの支払い義務があるのは誰でしょうか
離婚後の住宅ローンの支払い義務があるのは誰でしょうか

まず離婚が決まったら、先述した事項を確認しましょう。本章では、住宅ローンの支払いが残っている住宅に対し、今後支払いの義務があるのは誰かと、その際に対処すべき内容を説明します。

結論からいうと、支払い義務は住宅ローンの名義人に帰属します。仮に、その家に住んでいなくても、不動産の名義が別の方でも、住宅ローンの名義人が住宅ローンを支払い続けることになります。
ただし、家が財産分与の対象になっていたり、妻が連帯保証人になっていると、それぞれ適切な対処をしなければなりません。

住宅ローンの名義人がそのまま住む際にも、場合によっては手続きが必要になる場合があります。ここでは2つのケースを見ていきましょう。

家が財産分与の対象になった時の対処法

家が財産分与の対象になるのは、住宅ローンの残債よりも売却後の住宅価格が高い場合です。例えば、住宅ローン残債が1,000万円で、家の売却価格が3,000万円だったとすると、2,000万円が財産分与の対象になります。そうなると、夫と妻でそれぞれ1,000万円を分け合うことになります。もし、夫が家に住み続けたい場合は、夫が家という資産を引き継ぐことになるため、妻に1,000万円を渡して精算します。そして、家を取得した夫が住宅ローンの支払いを続けます。なお、住宅ローンの残債が家の売却価値より多かった場合は、財産分与の対象外となるので、金銭の支払いはなくなります。

妻が連帯保証人になっている時の対処法

妻が連帯保証人になっている場合は、元夫の住宅ローン支払いが滞ってしまった場合に、支払い義務が生じるので、住宅ローンの保証人を変更しておく必要があります。元妻から別の人に連帯保証人を変更する、もしくは夫が住宅ローンの借り換えをしましょう。

連帯保証人を変更する際は、借入当初に設定した人と同じくらいの収入のある人にすると、承認されやすくなります。また、連帯保証人の代わりとして、土地や建物などの物的担保を設定できる場合もあります。ただし、金融機関の承認が必要なので、連帯保証人を変更できるか、どのような条件があるかは事前によく確認しておきましょう。

住宅ローンの借り換えをする場合は、別の金融機関で、夫だけの収入で住宅ローンの審査に通過しなければなりません。当初のローンが、夫婦合算の収入で考慮されていた場合は、夫だけの収入で住宅ローンの借り入れができない可能性もあるので、注意が必要です。

住宅ローンの名義人ではない人が住宅に住む場合は?

離婚後に家に住むのが住宅ローンの名義人でない場合はどうなるのでしょうか
離婚後に家に住むのが住宅ローンの名義人でない場合はどうなるのでしょうか

住宅ローンの名義人になっている人が、離婚後の住宅ローンの支払い義務があることはわかりました。しかし、住宅ローンの名義人ではない人が、離婚後も家に住み続けるとなると、住宅ローンの支払い義務はどのようになるのでしょうか。

例えば、夫が住宅ローンの名義人で住宅ローンの支払いを続けているが、家には元妻が住み、夫は家を出たケースを想定します。離婚後でも、住宅ローンの支払い義務は住宅ローンの名義人になるので、夫は住んでいなくても住宅ローンを支払う義務があります。夫が住宅ローンを滞りなく支払っている間は、妻はこれまでと変わりなく住み続けることができます。

しかし、離婚した妻が住む住宅のローンを、住まない夫が律儀に払い続けていくとは考えにくいでしょう。夫が住宅ローンの支払いをしなくなってしまったり、夫の判断で家が売却される可能性もあります。また、妻が連帯保証人になっている場合には、夫の支払いが滞ると、妻に住宅ローンの一括返済を求められるケースもあります。一括返済ができなくて家を手放すことになれば、妻は家から出て行かなければなりません。妻に収入があり、家に住み続けたいなら、住宅ローンの名義を妻に変更して住宅ローンを支払っていくほうがリスクを減らせるでしょう。

住宅ローンが共同名義だった場合は?

夫か妻のどちらかが住む住宅が共同名義だった場合はどのようになるのでしょうか
夫か妻のどちらかが住む住宅が共同名義だった場合はどのようになるのでしょうか

住宅ローンが夫婦の共同名義だった場合は、支払い義務はどちらに生じるでしょうか。住宅ローンが共同名義になるパターンは、連帯債務型にしている場合と、ペアローンにしている場合です。住宅ローンの連帯債務型とペアローンの概要は以下のとおりです。

ローン
契約数
返済
義務
役割 概要
連帯債務 1つ 夫婦
どちらも
主債務者
もう一人は連帯債務者
夫婦の収入を合算して、住宅ローンを借り入れている
ペア
ローン
2つ 夫婦
どちらも
お互いが連帯保証人 夫婦それぞれが住宅ローンを借入れ、自分の分を返済する

夫婦どちらかが自宅に住み続ける場合で、住宅ローンが夫婦の共同名義になっている場合はまず、共同名義を解消してどちらかの名義にする手続きをとらなければなりません。共同名義を解消するには、住宅ローンを借り換えるか、一括で繰り上げ返済をして住宅ローンを完済する方法があります。

住宅ローンを借り換える

住宅ローンを借り換える場合は、新たな金融機関で審査を受けます。審査では主に、残債務額や担保価格、現在の収入などを審査されます。また、当然ながら、自身が居住するための住宅に限られます。借り換えが承認されると、いくつかの費用が発生します。例えば、印紙代や事務手数料、連帯保証人が不要な場合は団体信用保険の保証料などです。ただし、これらの費用は金融機関や保険会社によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

繰り上げ返済をする

共同名義を解消するには、必要な資金を一括して繰り上げ返済をする方法もあります。この手続きは比較的簡単ですが、留意すべきポイントもあります。まず、一括返済をするには十分な資金が必要なので、事前に資金計画を立てておきましょう。一括返済には手数料がかかる場合があうので、あらかじめ確認する必要があります。手数料の額は金融機関やローン契約の内容によって異なるので、明確な情報を取得するのが肝要です。

離婚後に住宅ローンが残る家を売却した時はどうなる?

離婚後に住宅ローンが残る家を売却するとどのようになるのでしょうか
離婚後に住宅ローンが残る家を売却するとどのようになるのでしょうか

結婚して二人で協力して手に入れたマイホームでも、離婚すると売却するケースが多いようです。では、住宅ローンが残る家を売却すると、その後はどのようになるのでしょうか。本章では、住宅ローンの残債が売却価格よりも少ない場合住宅ローン残債<売却価格)と高い場合(住宅ローン残債>売却価格)に分けて解説します。

住宅ローン残債が売却価格よりも少ない場合

住宅ローンの残債が売却価格よりも少ない場合は、売却によって住宅ローンが完済できるため、そのまま手続きを進めれば問題ありません。住宅ローンを完済して残った金額は、夫婦で分けることになります。共同して作った財産を公平に分ける意味合いの財産分与では、割合が基本的に2分の1になります。財産の分配方法は夫婦間で協議しますが、今後の生活の保障をふまえ、公平性を保つ努力が重要です。なお、両者の合意が得られれば、どちらかが多い割合で財産分与されるケースもあります。

住宅ローン残債が売却価格よりも多い場合

住宅ローンの残債が売却価格よりも多い場合は、売却しても住宅ローンが完済できず、抵当権も抹消できないので、そのままでは売却ができなくなります。その際は、住宅ローンの名義人が自己資金で、住宅ローンの残債の差額をカバーできれば売却が可能です。

ただし、当事者の合意があれば、慰謝料や養育費などと相殺するケースや、住宅ローンを支払う代わりに預貯金を多めに分与するケースもあります。

あくまでも双方の話し合いによるので、揉めごとにならないよう時間をかけて話し合いを進めていくようにしましょう。

離婚後の住宅ローンの支払い義務に関するよくある質問

ここからは、離婚後の住宅ローンの支払い義務に関してよくある質問をまとめてみました。

離婚後の住宅ローンの支払い義務は誰にある?

住宅ローンの支払い義務があるのは、住宅ローンの名義人です。例えば、夫が住宅ローンの名義人で、夫が家に住む場合は、離婚しても状況は変わりません。ただし、家が財産分与の対象になっていたり、妻が連帯保証人になっていると、それぞれ適切な対処をしなければなりません。

住宅ローンの残債が家の売却価値より多い場合は、財産分与の対象外なので、金銭の支払いはありません。しかし、住宅ローンの残債よりも売却後の住宅価格が高い場合には、売却価格との差額を分与しなければなりません。例えば、住宅ローン残債が1,000万円で、家の売却価格が3,000万円だったとすると、2,000万円が財産分与の対象になります。そうなると、夫と妻でそれぞれ1,000万円を分け合うことになります。もし、夫が家に住み続けたい場合は、妻に1,000万円を渡して精算します。そして、家を取得した夫が住宅ローンの支払いを続けます。

妻が家を出る場合に連帯保証人になっている場合は、連帯保証人を変更しなければなりません。もしくは夫が住宅ローンの借り換えをしましょう。連帯保証人を変更する際は、借入当初に設定した人と同じくらいの収入のある人にするのが承認されやすくなります。詳細や条件は金融機関に確認してください。

住宅ローンの名義人ではない人が住宅に住む場合は?

住宅ローンの名義人ではない人が、離婚後も家に住み続ける場合でも、住宅ローンの支払い義務は住宅ローンの名義人です。ただし、離婚した配偶者が住む住宅のローンを律儀に払い続けていくとは考えにくいです。支払いが滞ると支障をきたすので、住宅ローンの名義は実際に住んでる人に変えたほうがリスクを減らせます。

住宅ローンが共同名義だった場合は?

住宅ローンが夫婦の共同名義になるパターンは、連帯債務型とペアローンの場合です。夫婦どちらかが自宅に住み続けるなら、共同名義を解消してどちらかの名義にする手続きをとらなければなりません。共同名義を解消するには、住宅ローンを借り換えるか一括で繰り上げ返済する方法があります。借り換えは、現在使用しているのとは別の金融機関で再度住宅ローンの審査を通過しなければなりません。借り換えには諸費用がかかります。繰り上げ返済すれば、住宅ローンがなくなるので、支払いを気にする必要はありません。ただし実行にはまとまった資金と手数料がかかるので、慎重におこなう必要があります。

離婚後に住宅ローンが残る家を売却する場合は?

離婚後は、自宅を売却するケースが多いようです。離婚後、住宅ローンが残る家を売却した時の手続きは、住宅ローン残債が売却価格より少ない場合と高い場合で異なります。

住宅ローンの残債が売却価格よりも少ない場合は、売却によって住宅ローンが完済できるため手続きは完結です。そして、住宅ローンを完済して残った金額は、夫婦で分けることになります。割合は、基本的に2分の1になるので、住宅ローンが1,000万円残っていて家の査定額が3,000万円だった場合の財産分与は1,000万円ずつです。

住宅ローンの残債が売却価格よりも多い場合は、売却しても住宅ローンは完済できません。売却しただけでは住宅ローンの完済ができない場合は、住宅ローンの名義人が自己資金で住宅ローンとの差額をカバーして売却するケースもあります。

まとめ

本記事では、離婚後の住宅ローンの支払い義務は、誰にあるのか、住宅ロ―ンの名義人が住宅に継続して住む場合、名義人ではない人が住む場合、住宅ローンが共同名義だった場合に、住宅ローン支払い義務はどのようになるのかを説明しました。また、住宅を売却する場合の実用的な方法もお伝えしました。

離婚後の住宅ローン支払い義務は、生活の大きな変化にともなうストレスや不安を増大させる要因となります。しかし、正確な情報と適切な計画を持てば、負担も軽減させられるでしょう。この記事が、離婚後の住宅ローン支払いに関する知識を深め、ストレスや不安の解消の一助になると幸いです。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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