住宅ローンのボーナス払いによるデメリットは?後悔しないために知っておくべき知識を解説

本記事では、住宅ローンのボーナス払いの仕組みとデメリットを解説します。具体的には、ボーナスが減額された場合のリスクや、ボーナス払いが家計に与える影響など。本記事を読めば、ボーナス払いの落とし穴を事前に把握し、自分に合った住宅ローンの選択ができるでしょう。
記事の目次
住宅ローンのボーナス払いとは

住宅ローンの返済方法にはどのような種類があるのか、どのように違うのかを解説します。
住宅ローンの返済方法の種類
住宅ローンの返済方法には、毎月払いとボーナス払いがあります。
毎月払い
毎月一定額を返済する方式で、1年に12回の支払いが発生します。また、返済方式には2種類あり、それぞれ特徴が異なります。
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元利均等返済
毎月の返済額(元金+利息)が一定で、家計の管理をしやすい反面、返済開始当初は利息の割合が大きく、元金の減りが遅くなります。 -
元金均等返済
毎月の元金の返済額が一定で、利息は元金残高に応じて減少します。一方、返済開始時の負担は大きくなりますが、総返済額を抑えられます。
ボーナス払い
ボーナス払いとは毎月の返済に加えて、年2回のボーナス月に増額返済をおこなう方法です。ボーナス払いの割合は借入額の40~50%を目安に決められます。ボーナス払いを選択すると、毎月の返済額は減りますが、ボーナス月には通常より多く返済しなければなりません。
なお、金融機関によって6月と12月、5月と11月などボーナス月を設定できます。ただし、会社によりボーナスの支給月がきっちり半年ごとになっていないケースもあるでしょう。例えば、支給月が1月と6月とすると、ボーナス払いの月は2月と7月にするなど、支払い日の設定に注意しましょう。
毎月払いとボーナス払いの違い
毎月払いとボーナス払いでは、毎月の返済額や総返済額にどのような違いが出るのでしょうか。借入金額を3,000万円、金利を1.3%の固定金利、返済期間を35年と仮定して元利均等返済方式の住宅ローンを組んだケースをシミュレーションしてみます。
月々の 返済額 |
ボーナス時の 返済額 |
総返済額 | |
---|---|---|---|
毎月払いのみ の場合 |
約8万9,000円 | - | 約3,735万円 |
ボーナス払い (借入金額の10%) |
約8万円 | 約13万円 | 約3,736万円 |
ボーナス払い (借入金額の20%) |
約7万2,000円 | 約17万円 | 約3,737万円 |
ボーナス払い (借入金額の30%) |
約6万7,000円 | 約22万円 | 約3,738万円 |
シミュレーション結果からわかることは、ボーナス払いの割合を増やすと、毎月の返済額は減る一方で、ボーナス時の返済額と総返済額が増加する点です。毎月払いのみの場合は月々約8万9,000円、総返済額は約3,735万円です。
しかし、ボーナス払いを導入し、その割合を増やすと、毎月の返済額は減少します。ボーナス払いを30%にすると月々の返済額は約6万7,000円まで下がりますが、その分、ボーナス時の返済額は約22万円と大きくなり、総返済額も約3,738万円に増加することがわかるでしょう。
このようになるのは、ボーナス払いを増やすと元金の減少スピードが遅くなり、その分の利息が長期間発生するためです。ボーナス払いは月々の負担を軽減できる反面、総返済額が増えるため、利用は慎重に検討しなければなりません。
住宅ローンのボーナス払いによるデメリット

住宅ローンを組む際、毎月の返済負担が軽減できると期待して、ボーナス払いを選択する方もいるでしょう。毎月の返済金額が減る点はメリットといえますが、一方でデメリットとなる点も。本章では住宅ローンのボーナス払いのデメリットを解説します。
毎月払いに比べ総返済額が多くなる
住宅ローンをボーナス払いにすると、総返済額が増えるデメリットがあります。先述のように、ボーナス払いを利用すると元金の減り方が遅くなり、その結果、支払う利息が増えるためです。ボーナス払いは月々の負担を軽減できる点では有利ですが、最終的な返済額が増える点に注意しなければなりません。
ボーナスが少なくなっても返済金額は変わらない
ボーナス払いの大きなデメリットの一つは、ボーナスの支給額が変動する可能性があるにも関わらず、住宅ローンのボーナス返済額が固定されている点です。これは特に、ボーナスが減額された場合に大きな負担になるでしょう。
例えば、景気の変動や会社の業績悪化で、ボーナスが大幅に減額されたとします。ボーナスを充てにして返済計画を立てていた場合、本来の計画通りに返済するには不足した分を手元の資金で補わなければなりません。
住宅ローンのボーナス返済額はあらかじめ決められており、収入が減っても返済するべき金額は変わりません。そのため、ボーナスの減額を手元の資金で補う状態が続けば、より手元の資金が少なくなり、生活費や教育費などの支出が圧迫されるリスクが高まります。ボーナス返済分の支払いができなかった場合、一度滞納してしまうと、金融機関からの信用が低下し、延滞利息が発生します。最悪のケースとして、競売にかけられてしまうことも。
ボーナスの金額は変動するものであり、最悪支給されない可能性もあることを念頭に、無理のない返済計画を立てるようにしましょう。
住宅ローンのボーナス払いによるメリット

住宅ローンのボーナス払いを選択するメリットは、毎月の返済額を少なくできる点にあります。1章でシミュレーションしたとおり、3,000万円を35年ローンで借り入れた場合、毎月払いのみにすると月々約9万円の返済が必要です。しかし、ボーナス払いを併用し、借入額の20%をボーナス払いに割り当てると、毎月の返済額は約7万円です。
この2万円の差は、家計に対して大きな余裕を生み出すでしょう。例えば、浮いたお金を生活費に回せば、食費や光熱費などの支払いが楽になり、子どもの教育費や習い事の費用に充てられます。また、将来の急な出費に備えて貯蓄に回したり、資産運用に充てるなど、将来の備えにもなるでしょう。特に、共働き世帯で収入が一定している場合、ボーナスを利用した返済計画を立てると、毎月の固定支出を抑えつつ、長期的に安定した返済をしやすくなる点はメリットです。
住宅ローンのボーナス払いを選択する際の注意点

住宅ローンを組む際、毎月の返済額を抑えるために、ボーナス払いを選択しようとしている方も多いでしょう。しかし、ボーナス払いにはいくつかの注意点があり、慎重に検討しなければ、想定外の負担につながるかもしれません。本章では、ボーナス払いを選択する際に知っておくべき注意点を解説します。
ボーナスの金額が変動する可能性があることを考慮しておく
ボーナス払いで注意する点の一つは、ボーナスの金額は変動する可能性があることです。住宅ローンのボーナス払いは、契約時に決めた金額を一定期間返済し続ける仕組みですが、実際のボーナスは景気や会社の業績、個人の評価などにより増減するかもしれません。特に、不景気や企業の業績悪化でボーナスが減額されたり、最悪の場合は支給がない場合もあります。しかし、住宅ローンのボーナス払いの金額は変わりません。
ボーナスが減ってしまうと家計への負担が一気に増し、貯蓄を切り崩したり、生活費を削らざるをえなくなるリスクがあります。最悪の場合、返済ができずに延滞してしまう可能性も。ボーナス払いを選択する際は、万が一ボーナスが減額された場合でも対応できるように、貯蓄を確保しておきましょう。また、ボーナスに頼りすぎず、毎月の給与の範囲でやりくりできるかどうかも検討すべきです。
住宅ローン返済以外の使い道を十分検討してから選択する
住宅ローン返済以外の使い道を十分に検討してから、ボーナス払いを選択する点も欠かせません。ボーナスは、住宅ローンの返済だけでなく、教育費、車の購入、旅行、将来の貯蓄など、さまざまな用途に使われることが一般的でしょう。
特に、ボーナスの大半を住宅ローンの返済に充てていると、子どもの進学費用や急な出費が必要になった場合に、対応できなくなってしまいます。住宅ローンのボーナス払いを設定する前に、将来的な支出を考慮し、ボーナスをどのように配分することが最適かを慎重に判断しましょう。
ボーナス払いをしても貯蓄に余裕が持てるかを確認する
ボーナス払いをしても十分な貯蓄が確保できるかも、ボーナス払いを選択する際の注意点の一つです。急な病気やケガ、家族のライフイベント、住宅の修繕費など、生活でまとまった資金が必要になる場面は少なくありません。
そのような時に頼りになる貯蓄ですが、その貯蓄は現時点で十分かを考えてみましょう。なかには、普段の生活ではあまり余裕がなく、ボーナスを貯蓄に回しているご家庭もあるでしょう。
そのような場合、住宅ローンの返済をボーナスに頼りすぎると、貯蓄が思うように増えず、住宅ローンの返済にも支障が出るかもしれません。ボーナス払いを選択する前には、毎月の支出や将来の出費を考慮し、ボーナスを住宅ローンの返済に充てても十分な貯蓄が維持できるかを慎重に検討しましょう。貯蓄の余裕があれば、万が一の事態が発生しても慌てずに対応でき、家計の安定を保つことができます。
住宅ローンのボーナス払いで返済が厳しくなった時の対処法

住宅ローンをボーナス払いで組んだものの、予想外の状況にみまわれ、返済が厳しくなるかもしれません。もしそのような状況になった場合、どうすればよいのでしょうか。本章では、ボーナス払いの返済が厳しくなった時の具体的な対処法を解説し、家計を立て直すためのポイントをご紹介します。
ボーナス払いの割合を調整する
一つ目は、ボーナス払いの割合を調整する方法です。金融機関によって、ボーナス払いの割合を変更できる制度があり、条件を満たせば毎月の返済額とボーナス払いのバランスを見直せるでしょう。
例えば、ボーナス払いの比率を下げて毎月の返済額を増やせば、ボーナスの支給額が減っても負担を軽減できます。ただし、必ずしも変更できるとは限りません。また、ボーナス払いの割合を下げた分、毎月の返済額が多くなるため、慎重な検討が必要です。さらに手続きには、金融機関の審査や手数料が発生する場合があるため、事前に確認しましょう。
毎月払いのみに変更する
ボーナス払いをやめて毎月払いのみに変更する方法も、対処法の一つです。そもそもボーナス払いは、支給額が減少した際に返済の負担が一気に増すリスクがあります。そのため、ボーナス払いに依存せず、毎月の安定した収入の範囲内で返済できるように、返済計画を立て直してみましょう。 ボーナス月の大きな負担がなくなり支出を均等にできるため、家計が安定するかもしれません。
ただし、ボーナス払いをゼロにすると、毎月の返済額は増えます。ボーナス払いに依存した計画を立てていた場合は、変更したために返済が苦しく感じるかもしれません。また、金融機関によってはボーナス払いの廃止が認められない場合や、手数料が発生する可能性もあります。
まずは綿密に返済計画を立て、ボーナス払いが最適な方法なのかをよく検討しましょう。また、返済が厳しくなりそうな時点で早めに金融機関に相談し、変更を検討するようにしましょう。
繰り上げ返済をする
繰り上げ返済を活用する方法も、対処法の一つになります。繰り上げ返済とは、毎月の定期返済に加えて、余裕があるタイミングでまとまった金額を一括で返済し、元金を減らす返済方法です。
繰り上げ返済を活用すると、将来の利息負担が軽減され、総返済額が減少するでしょう。特にボーナス払いが負担になっている場合、繰り上げ返済をすると、ボーナスの使い道に左右されずに返済額を調整できます。
なお、繰り上げ返済は、期間短縮型と返済額軽減型の2種類です。期間短縮型では返済期間が短縮され利息を大幅に削減できます。一方、返済額軽減型では月々の返済額が減る点が利点となり、家計の負担軽減に役立つでしょう。
ただし、繰り上げ返済を実行するには、最低額が決まっていたり、手数料が発生したりする場合もあるため、金融機関への確認が欠かせません。また、手元の資金を繰り上げ返済に充てても、貯蓄に余裕を持てるかなどを熟考したうえで、無理なく返済できる金額を決めるように注意しましょう。
住宅ローンを借り換える
借り換えとは、現在の住宅ローンを別の金融機関のローンに変更し、より有利な条件で返済を続ける方法です。特に、金利の低いローンに借り換えると、総返済額や月々の返済額を抑えられるため、返済が厳しくなった時の対処法になります。
例えば、現在の金利が1.5%の固定金利だった場合。1.0%のローンに借り換えると、金利負担が軽減され、長期的に見ると数十万円から数百万円の支払い負担を減らせるかもしれません。また、ボーナス払いを含むローンから、毎月均等払いのローンに変更すると、ボーナスに依存しない安定した返済プランを立てられるでしょう。
ただし、借り換えの場合も、手数料や諸費用が発生するため、総合的に見て本当に得になるかは慎重にシミュレーションしなければなりません。また、返済が苦しい状態になっているなら、これまでよりも年収などが下がっていて、信用力も低下している可能性もあるでしょう。借り換えには審査があり、収入状況や信用情報が下がっている場合、希望通りの条件で借り換えができない場合もあるため、注意が必要です。
住宅ローンのボーナス払いのデメリットに関するよくある質問
住宅ローンのボーナス払いのデメリットに関するよくある質問をまとめました。
住宅ローンのボーナス払いとは?
住宅ローンのボーナス払いとは、毎月の返済額を抑えつつ、年2回のボーナス時に増額返済をおこなう方法です。なお、毎月払いのほうは一定額を支払う方式で、元利均等返済と元金均等返済の2種類があります。
住宅ローンのボーナス払いによるデメリットは?
ボーナス払いを選択すると、総返済額が増える点がデメリットです。ボーナス払いでは元金の減少が遅れ、結果として支払う利息が増加します。また、ボーナスの支給額は景気や企業の業績に左右されるものです。もし減額や支給がなくなった場合でも、ローンのボーナス払い額は固定されるため、大きな負担になるかもしれません。
住宅ローンのボーナス払いによるメリットは?
ボーナス払いのメリットは、毎月の返済額を軽減できる点です。例えば、3,000万円を35年ローンで借りた場合、ボーナス払いなしでは月9万円の返済が必要です。しかし、借入額の20%をボーナス払いにすると月7万円に抑えられます。この差額があると、生活費の負担を軽減し教育費に充てるなど、日々の生活に余裕が生まれるでしょう。特に共働き世帯では、収入の安定性を活かし、長期的な返済計画を立てやすい点もメリットです。
住宅ローンをボーナス払いする時の注意点は?
ボーナスが減っても住宅ローンのボーナス時の返済額は変わらないため、減額時でも対応できるように貯蓄を確保し、毎月の給与でやりくりできるかを検討しましょう。
また、ボーナスの全額をローン返済に充てると、急な出費に対応できなくなるため、慎重に配分を考えましょう。さらに、ボーナス払いを選択するなら、病気や住宅修繕などの出費に備えて、十分な貯蓄ができるかを確認する必要があります。ボーナス払いを優先すると貯蓄が減り、家計が不安定になる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
住宅ローンのボーナス払いが厳しくなった時の対処法は?
主な対処法は次の4つです。
- ボーナス払いの割合を調整する
- 毎月払いのみに変更する
- 繰り上げ返済をする
- 借り換えをする
なお、返済条件は、金融機関の規定により異なり、一部においては変更ができない場合もあります。変更できる場合は、どのような条件があるのか、手数料はかかるか、どのような審査があるかなどの確認が必要です。たとえ変更できる場合でも、ボーナス払いが厳しい状態なら、年収が下がるなどして審査に通りにくい状況になっている可能性があります。いずれの方法を選択する場合も、まずは金融機関に早めに相談しましょう。
まとめ
住宅ローンのボーナス払いでは、毎月の返済額を抑え、ボーナス時に増額返済をおこないます。毎月払いと比べると総返済額が増え、ボーナスの減額や未支給時に大きな負担になりかねません。そのため、ボーナス払いは安易に選択するのでなく、慎重に計画するようにしましょう。
また、ボーナス払いが厳しくなった場合には、金融機関と相談し、返済方法の変更や繰り上げ返済、借り換えなどの対応策が検討できます。ただし、契約内容によって変更が難しい場合もあるため、事前に条件を確認しておきましょう。住宅ローンは長期間にわたる大きな支出です。ボーナス払いを検討の際は、デメリットをよく理解し、無理のない返済計画を立てましょう。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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