家を買うのに必要な年収は?年収別の住宅ローンと購入価格をシミュレーション

記事の目次
マイホームの購入、平均年齢と年収は?
一般的には何歳ぐらいでマイホームを購入する人が多いのでしょうか。また平均的な年収はどのくらいでしょうか。公的な調査データをもとに確認してみましょう。
マイホームを購入した人の年齢
国土交通省の「令和3年度 住宅市場動向調査」によると、初めて住宅を取得した世帯(一次取得者)の世帯主の平均年齢は30代後半~40代前半で、分譲マンション、分譲一戸建て、注文住宅では30代がもっとも多く、中古マンション、中古一戸建てでは40代が多くなっています。
30代は結婚や出産など生活スタイルの変化につながるライフイベントがたくさんあり、また20代に比べると年収も増えて生活が安定します。一方で定年までは30年前後の期間があり、比較的長期の住宅ローンを組みやすいことなどから、住宅購入の適齢期といわれています。
図表1:一次取得者の世帯主の平均年齢と最も多い年代区分
物件種別 | 世帯主の平均年齢 | 最も多い年代 |
---|---|---|
分譲マンション | 39.5歳 | 30代(50.5%) |
中古マンション | 43.6歳 | 40代(38.8%) |
分譲一戸建て | 37.2歳 | 30代(50.0%) |
中古一戸建て | 43.2歳 | 40代(31.7%) |
注文住宅※ | 40.0歳 | 30代(46.5%) |
※注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査
※参照:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」PDF
マイホームを購入した人の年収と購入資金
一次取得者の購入資金と平均世帯年収は図表2のとおりです。年収が高めに感じられるかもしれませんが、あくまで世帯年収です。最近は共働きの家庭も増えていることから、夫婦の収入を合算したり、ペアローンを利用したりして住宅ローンを組むケースも増えています。
図表2:一次取得者の購入資金と平均世帯年収
物件種別 | 購入資金 | 平均世帯年収 |
---|---|---|
分譲マンション | 4,674万円 | 852万円 |
中古マンション | 3,118万円 | 710万円 |
分譲一戸建て | 4,205万円 | 703万円 |
中古一戸建て | 2,721万円 | 652万円 |
注文住宅※ | 4,879万円 | 733万円 |
※注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査
※参照:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」PDF
住宅ローンはいくらまで利用できる?無理のない借入金額は?
住宅ローンは「借りられる額」ではなく、「無理なく返していける額」で借りることが大切です。マイホームを購入した人の平均的な返済額も参考にしながら、無理のない借入金額の目安を確認してみましょう。
マイホームを購入した人の住宅ローン返済額
住宅購入資金のうち借入金の平均額と住宅ローンの平均返済額(年額)は図表3のとおりです。ただし借入額や返済額は年齢、収入、家族構成など、個々の世帯の事情によって適した金額が異なります。あくまで平均のデータですので、参考程度に見てください。
図表3:平均借入金額と年間返済額
物件種別 | 平均借入金額 | 平均返済額(年) |
---|---|---|
分譲マンション | 3,001万円 | 150.4万円 |
中古マンション | 1,756万円 | 101.3万円 |
分譲一戸建て | 3,364万円 | 126.0万円 |
中古一戸建て | 1,658万円 | 99.7万円 |
注文住宅※ | 3,909万円 | 139.4万円 |
※注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査
※参照:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」PDF
住宅ローンは年収の何倍まで?
住宅金融支援機構の「2021年度フラット35利用者調査」によると、融資区分別の年収倍率(所要資金を世帯年収で除した数値)は、分譲マンション7.2倍、分譲一戸建て7.0倍、注文住宅6.8倍と、新築物件では7倍前後、中古マンション5.8倍、中古一戸建て5.7倍と中古物件では6倍弱となっています。
かつては「住宅ローンは年収の5倍までが目安」などといわれたりもしましたが、年収倍率は10年前から緩やかに上昇傾向にあり、この背景には過去20年間賃金が上がっていないことや、金利が下降し、債務者にとっては利息負担が小さくお金を借りやすい環境が続いていることが影響しているのかもしれません。ただし平均と同程度(みんなと同じ)であれば、安心できるわけではないので、参考程度に見ておくのがよいでしょう。
(参照:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」 )
住宅ローンの返済負担率の目安
住宅ローン審査の返済負担率の基準は金融機関によって異なりますが、フラット35の場合、年収400万円未満の返済負担率基準は30%以下、年収400万円以上の場合は35%以下とされています。
ただし、これはあくまで「借りられる額」の基準であって、「安心して返していける額」ではありません。税込年収の35%まで借りると、手取り収入の半分近くが住宅ローン返済に消えてしまう場合もあります。安心して返していくためには返済負担率はできれば25%以下、理想的には20%以下に抑えたいところです。
実際に国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」によると、住宅ローンがある世帯の世帯年収に占める返済負担率はいずれの物件種別でも20%以下となっています。
図表4:物件種別ごとの世帯年収に占める返済負担率
物件種別 | 返済負担率 |
---|---|
分譲マンション | 18.1% |
中古マンション | 14.2% |
分譲一戸建て | 19.8% |
中古一戸建て | 16.8% |
注文住宅※ | 18.1% |
※注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査
※参照:国土交通省「令和3年度 住宅市場動向調査」PDF
なお、住宅ローン審査の返済負担率は債務者の年収で判定されます。したがって共働きであっても、(収入合算せず)夫が単独で住宅ローンを組む場合は夫一人の年収が基準となります。しかし、実際の生活は夫婦双方の収入が基盤となるため、審査の基準の(夫一人の年収に対する)返済負担率が30%を超えていても、世帯年収では20%以下に抑えられていれば、それほど心配する必要はないかもしれません。
ただし返済負担率もあくまで目安の一つにすぎません。同じ20%であっても、年収800万円の20%と年収400万円の20%では家計への影響度は違います。さらに、年収が同じであっても家族構成や生活スタイルなどによって家計の状況は異なるでしょう。返済負担率の数字を鵜呑みにするのではなく、実際の返済額を家計のキャッシュフローに当てはめて、長期的な試算をしてみることをおすすめします。
【年収別】どのくらいの物件が買えるかをシミュレーション

住宅ローンの借入可能額は年収や返済負担率、返済期間によって違ってきます。具体的なシミュレーションを示しながら、注意すべきポイントを解説します。
年収がいくらあれば家を購入できる?
以下の条件で年収ごとにシミュレーションし、借入可能額や月々の返済額をみていきましょう。
債務者:会社員、男性、既婚
借入金利:1.5%(固定)、元利均等返済
返済期間:35年と20年の2パターン
年収200万円の場合
返済負担率 | 返済期間 | 借入可能額 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
---|---|---|---|---|
25% | 35年 | 1,360万円 | 41,641円 | 499,692円 |
20年 | 863万円 | 41,643円 | 499,716円 | |
30% | 35年 | 1,633万円 | 49,999円 | 599,988円 |
20年 | 1,036万円 | 49,991円 | 599,892円 |
年収が低いと、どうしても借入可能額は少なくなりますが、共働きであればペアローンや収入合算によって借入可能額を増やす方法もあります。また貯蓄や贈与によって頭金を増やすことができれば、借入可能額は少なくても住宅取得は可能です。
年収300万円の場合
返済負担率 | 返済期間 | 借入可能額 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
---|---|---|---|---|
25% | 35年 | 2,041万円 | 62,492円 | 749,904円 |
20年 | 1,295万円 | 62,489円 | 749,868円 | |
30% | 35年 | 2,449万円 | 74,984円 | 899,808円 |
20年 | 1,554万円 | 74,987円 | 899,844円 |
返済負担率が同じでも返済期間が35年か20年かによって借入可能額が大きく変わります。年齢が若いほど長期の住宅ローンが組みやすくなるため、その分、借入可能額も増えます。とはいえ、希望物件の予算に借入可能額が足りない場合は、ペアローンや収入合算を検討するか、頭金を増やす必要があるでしょう。
年収400万円の場合
返済負担率 | 返済期間 | 借入可能額 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
---|---|---|---|---|
25% | 35年 | 2,721万円 | 83,312円 | 749,904円 |
20年 | 1,726万円 | 83,287円 | 999,444円 | |
30% | 35年 | 3,265万円 | 99,969円 | 1,199,628円 |
20年 | 2,072万円 | 99,983円 | 1,199,796円 |
返済負担率25%だと35年返済でも借入可能額は3,000万円以下なので、物件の選択肢はある程度限られるかもしれません。ただし頭金で2割程度を準備できれば3,000万円超の物件にも手が届きます。
年収500万円の場合
返済負担率 | 返済期間 | 借入可能額 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
---|---|---|---|---|
25% | 35年 | 3,402万円 | 104,163円 | 1,249,956円 |
20年 | 2,158万円 | 104,133円 | 1,249,596円 | |
30% | 35年 | 4,082万円 | 124,984円 | 1,499,808円 |
20年 | 2,590万円 | 124,979円 | 1,499,748円 |
35年ローンが組めれば返済負担率が25%でも3,000万円超の借入が可能になるので、選択肢は広がります。ただし完済時の年齢が定年を過ぎるようであれば、繰り上げ返済なども想定しておいたほうがよいかもしれません。
年収800万円の場合
返済負担率 | 返済期間 | 借入可能額 | 月々の返済額 | 年間返済額 |
---|---|---|---|---|
25% | 35年 | 5,443万円 | 166,656円 | 1,000,872円 |
20年 | 3,453万円 | 166,622円 | 1,999,464円 | |
30% | 35年 | 6,530万円 | 199,938円 | 2,399,256円 |
20年 | 4,144万円 | 199,966円 | 2,399,592円 |
年収が高くなるほど借入可能額も大きくなりますが、一方で年収が高い人ほど税金や社会保険料の負担も大きくなりますし、一般的に生活スタイルが贅沢になりがちです。したがって返済負担率だけで借入額を考えるのではなく、手取り収入に対する負担率やその他の生活コストも考慮して安心して返していける額を考える必要があります。
無理なく家を購入するためのポイント
住宅購入後も安心して住宅ローンを返済していくために、押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。
頭金(自己資金)を用意する
頭金を用意すればその分、借入額が少なくてすみます。また新築住宅は買った途端に価値が2割程度下がるともいわれますが、頭金を用意することでオーバーローン(住宅ローンの債務残高が物件価値を上回る状態)になることを避けられます。
住宅ローン控除(減税)制度を利用する
住宅ローン控除とは、年末ローン残高の0.7%について税額控除が最大13年間受けられる減税制度です。新築・一般住宅の場合、控除対象借入限度額は3,000万円ですので、最大年間21万円の控除が受けられます。ペアローンの場合は夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられます。
将来の支出も含めて資金計画を立てる
住宅購入時と将来では生活スタイルや家計の状況も変わっていくため、将来的なライフプランも考えて資金計画を立てることが大切です。なぜなら、結婚や子どもの誕生をきっかけに住宅購入をする場合、一般的に子どもの成長にともなって生活費や教育費は上がる傾向にあるからです。子どもの数が増えれば、さらに将来的な支出も多くなるでしょう。
ペアローンや親子リレーローンを利用する
ペアローンとは、1つの住宅を購入する際に夫婦がそれぞれ自らの持分について別々に住宅ローンを組む方法のことです。そうすることでトータルの借入可能額を増やせます。ペアローンとは違う方法として、1本の住宅ローンを組む際に夫婦の収入を合算することで借入可能額を引き上げる「収入合算」があります。また夫婦ではなく親子で1つの住宅ローンを契約し、親が主債務者、子が連帯債務者となって、二世代にわたってリレー形式で返済する親子リレーローンもあります。
年収が変化することも考える
終身雇用、年功序列が当たり前の時代は、就職すれば安定的に年収が増えていくことが期待できましたが、最近では雇用環境も変わってきています。また共働きの収入を前提に住宅ローンを組んだ場合、出産・育児、介護などでパートナーが離職したり、勤務形態が変わって年収が下がったりした時に住宅ローンの返済が苦しくなることもあります。住宅ローンを組む時点での収入だけを基準にするのではなく、将来的に収入が変化する可能性も考慮しておいたほうがよいかもしれません。
まとめ
マイホームを購入したあとも住宅ローンの返済は長く続きます。大切なのはそのあいだも安心して住宅ローンを返済しながら、家族の幸せな暮らしを実現することです。そのためにも無理のない住宅ローン計画は欠かせません。自分はいくらぐらい借りられて、どのような物件が購入できるのか、事前にシミュレーションもできるので、ぜひ利用してみてください。
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