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【2022年最新】税制改正によって住宅ローン減税はどう変わった?補助金がもらえる「こどもみらい住宅支援事業」についても徹底解説!

報道やネットニュースなどでご存じの方も多いと思いますが、2022年3月に「2022年度税制改正大綱の関連法」が成立し同年4月1日から施行されました。税制改正は毎年実施されており、昨年2021年の税制改正では住宅ローン減税の対象となる条件の緩和などがおこなわれました。
2022年の税制改正では、「住宅ローン減税の税率変更」や「贈与税の控除期間の延長」などがあり、
また、新たな制度として、子育て世帯や若者夫婦世帯に補助金が給付される「こどもみらい住宅支援事業」もスタートしています。

インターネットなどで税制改正についていろいろと調べるなかで、専門的な言葉が多いことや初めての住まい探しでなかなか理解しにくい……と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回も、昨年に続き税金や住まいの制度に詳しいベストファーム税理士法人の税理士である比佐善宣(ひさよしのぶ)氏に、2022年の税制改正などについて詳しくお話を伺ってみました。

記事の目次

2022年度の税制改正のメリットは?家計への影響はある?

2022年度の税制改正がどのようなものだったのか、家計にどのように影響があるのかなどについてお聞きしました。

住宅ローン減税(控除)とは?

そもそも住宅ローン減税(控除)とは、どういった制度なのでしょうか?
比佐:住宅ローン減税とは、新しい住宅に入居してから一定期間、年末時点でのローン残高に控除率をかけた金額分のお金を、所得税などから控除(本来税金として払う金額分が安くなる)されるというものです。
この制度がなければ、今までお給料から天引きされていた所得税はそのまま引かれますが、住宅を購入した場合にはこの所得税の金額が安くなるというイメージです。
なお、控除される期間は購入する物件によって異なりますが、新築等であれば原則「13年」、既存・増改築等であれば「10年」となる制度です。

2022年の住まいに関する税制改正のポイント

今回の税制改正の中で、住まいに関する部分の概要をお聞かせください。
比佐:住宅ローン減税の控除率が昨年は1%でしたが、2022年の税制改正で0.7%へと引き下げられました。しかし、住宅ローン減税の期間が延長されていることや、「カーボンニュートラル」「カーボンオフセット」「温室効果ガス排出量実質ゼロ」といった言葉を最近耳にする機会が多いと思いますが、これらの取り組みにもつながる省エネ住宅等に対する優遇が、今回の税制改正では考慮されているのがポイントです。

そうなんですね。控除率が下がったことで、具体的にどのぐらい家計に影響があるのか気になります。2022年の税制改正で変更となった点について、詳しくお聞かせください。
比佐:はい。それでは1つずつご説明していきますね。

住宅ローン減税の控除率変更

住宅ローン減税の控除率が2022年は変更になったとのことですが、どのように変わったのでしょうか?
比佐:先ほど少しご紹介したように、 2021年までは住宅を購入した場合、住宅ローン減税としての控除率は1%でしたが、2022年は会計検査院(国や法律で定められた機関の会計経理が正しくおこなわれているか検査したり監督したりする機関)の指摘などがあり控除率が0.7%となりました。

会計検査院の指摘とはどのようなものだったのでしょうか?
比佐:住宅を購入する人の多くは住宅ローンを組むと思いますが、この住宅ローンの金利が1%を下回るケースが多く、金利の支払い金額よりも税金が控除される金額の方が大きいという、いわゆる「逆ザヤ」状態になっていました。会計検査院は、「住宅ローンを組まなくても住宅購入が可能な人が、ローンを組んだほうが得をする状態である」ことを指摘し、住宅ローン減税についての改善を求めていました。

控除率が1%から0.7%になりましたが、住宅ローン減税の恩恵を受けられなくなったわけではないのですね。
比佐:制度自体がなくなったわけではありませんので、住宅を購入しようとしている方にとってはメリットのある制度が今年も継続されているということになります。

控除対象者の所得条件の変更

住宅ローン減税を受けられる人の所得の条件が変わったとのことですが、具体的に教えてください。
比佐:住宅ローン減税の恩恵を受けられる人の年間の所得が今までは3,000万円以下だったのですが、2022年の税制改正で年間所得が2,000万円以下という条件に変更されました。

年間所得はほぼ年収と同じと考えてよいのでしょうか?
比佐:会社員の方の場合、給与と賞与(ボーナス)の合計額が「年収」で、この年収から給与所得控除額(必要経費にあたる金額で、収入が180万円超360万円以下の場合は「収入の30%+8万円」が経費と認められています)が引かれた金額が「年間所得」となります。
厳密には同じではありませんが、金額感としては同じと考えてもよいと思います。

国税庁が発表している2020年の「民間給与実態統計調査結果」によると、給与所得者の多くが400万円~700万円でしたので、今回2,000万円以下に変更となってもあまり影響はなさそうですね。
比佐:そうですね。逆に高所得の人は恩恵を受けにくくなった2022年の税制改正といえそうです。

住宅ローン減税を受けられる控除期間の変更

住宅ローン減税が受けられる期間はどのように変更となったのでしょうか?
比佐:今回の制度改正により、住宅ローン減税が受けられる期間は今まで「原則10年(2019年の消費税引き上げの緩和措置として、特例的に13年)」となっていましたが、新築の認定住宅等や新築の一般住宅で2022年~2023年に入居を開始する場合は、控除期間が13年となります。

「認定住宅等」というのはあまり聞き慣れませんが、どのような家のことなのでしょうか?
比佐:認定住宅等というのは、「認定住宅」、「ZEH水準省エネ住宅」及び「省エネ基準適合住宅」のことで「認定住宅」は更に細分化され、「認定長期優良住宅」及び「認定低炭素住宅」のことです。言葉だけではわかりにくいと思いますので、この後に詳しくご紹介しますね。

住宅ローン減税(控除)の対象が4分類に変更

住宅ローン減税を受けられる対象の区分が4つに分かれたとのことですが、どのように分かれたのでしょうか?
比佐:税制改正前は「長期優良住宅」と「その他(一般)」という2つの分類でしたが、改正後は、「認定住宅」「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」「省エネ基準適合住宅」「一般住宅」と新築は4段階に分類され、省エネ住宅等には優遇するという分類がされています。

「認定住宅」「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」「省エネ基準適合住宅」とはそれぞれどのような住宅のことなのでしょうか?
比佐:確かにあまり聞き慣れない言葉ですよね。それぞれ簡単にご説明しますと、

認定住宅

認定住宅には「長期優良住宅」と「低炭素住宅」の2つがあり、

長期優良住宅

長期優良住宅とは長期にわたり良好な状態で住宅を使用するために、

  1. 長期に使用するための構造及び設備を有していること
  2. 居住環境等への配慮を行っていること
  3. 一定面積以上の住戸面積を有していること
  4. 維持保全の期間、方法を定めていること
  5. 自然災害への配慮を行っていること

の5つに対して対策がされ、都道府県、市または区に申請をして認められた住宅のことです。

低炭素住宅

低炭素住宅は、二酸化炭素の排出を抑えるための対策が取られた環境にやさしい住宅のことで、都道府県、市又は区が認定をします。認定をされるには市街化区域等内であることと、以下であることが必要です。

  1. 住宅の低炭素化に資する建築物の新築
  2. 低炭素化のための住宅の増築、改築、修繕若しくは模様替え
  3. 低炭素化のための住宅への空気調和設備、その他の政令で定める建築設備の設置
  4. 住宅に設けた空気調和設備等の改修
ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)

ゼロ・エネルギー・ハウスは、住宅の外壁や窓枠の断熱性能が優れていたり、省エネ機器等の導入で住宅に必要なエネルギーを最小限にしたりする「省エネ」と太陽光発電などで住宅に必要なエネルギーを創る「創エネ」によって、住宅で使用するエネルギーの年間消費量がおおむねゼロとなる住宅のことです。ZEH(ゼッチ)とも言われています。

省エネ基準適合住宅

省エネ基準適合住宅は、現行の省エネ性能を満たす基準(日本住宅性能表示基準)における、断熱等性能等級(断熱等級)4以上かつ一次エネルギー消費量等級(一次エネ等級)4以上の性能を有する住宅のことです。言葉としては聞きなれず難しく感じてしまうかもしれませんが、住宅の屋根や床、壁などを断熱材などで包むことで断熱性のある住宅を想像してもらえればわかりやすいと思います。

それぞれの住宅には、基準があったり申請が必要だったりしますので、詳しくは住宅の購入を検討している不動産会社や建築会社に聞いてみることをお勧めします。

住宅ローン減税(控除)の対象となる借入限度額が変更

住宅ローン減税の借入金額が変更になったとのことですが、そもそも借入限度額とは何でしょうか?
比佐:銀行などで住宅ローンを組める上限金額と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
冒頭で少しお話しましたが、年末時点でのローン残高に控除率の0.7%をかけた金額が減税となり所得税などが安くなりますが、この年末時点でのローン残高の上限金額と考えていただければわかりやすいと思います。
例えば新築の一般住宅を購入した場合、今回の税制改正で借入限度額は3,000万円までとなりますので、年末時点でのローン残高が4,000万円(3,000万円を超えている)だった場合は、4,000万円×0.7%=28万円の減税ではなく3,000万円×0.7%=21万円が年間で減税となるということです。

省エネ住宅などの場合も借入限度額の上限は3,000万円までとなるのでしょうか?
比佐:省エネ住宅の場合などは今回の税制改正で優遇されており、入居する年が2022年~2023年の場合の上限としては「認定住宅」が5,000万円、「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」は4,500万円、「省エネ基準適合住宅」は4,000万円が上限となります。

入居する年が2022年~2023年の場合とのことでしたが、2024年の場合など入居日が変わると上限も変わるのでしょうか?
比佐:はい、変わってきます。ここまでご説明した内容を表にまとめると、下記のようになります。

    入居する年 借入限度額 控除期間 控除率 最大控除額
(控除期間累計)
新築 認定住宅 2022年~2023年 5,000万円 13年 0.7% 455万円
2024年~2025年 4,500万円 410万円
ZEH水準
省エネ住宅
2022年~2023年 4,500万円 410万円
2024年~2025年 3,500万円 319万円
省エネ基準
適合住宅
2022年~2023年 4,000万円 364万円
2024年~2025年 3,000万円 273万円
一般住宅 2022年~2023年 3,000万円 13年 273万円
2024年~2025年 2,000万円 10年 140万円
中古 認定住宅等 2022年~2025年 3,000万円 10年 210万円
一般住宅 2022年~2025年 2,000万円 10年 140万円

 

ご覧いただくとお分かりになると思いますが、省エネに関する住宅だった場合は、控除される期間が長く借入限度額の上限も一般住宅より多くなっています。とはいえ、一般の新築でも中古住宅でも諸条件はありますが住宅ローン減税の恩恵は受けられますので、住宅購入を検討する際に疑問点や不明点などがあれば不動産会社などに確認してみるとよいでしょう。

床面積が狭くても住宅ローン減税の対象

都心などは床面積が郊外に比べて狭く住宅ローン減税の対象になりにくいと聞いたのですが、2021年にあった床面積が狭い住宅に対する住宅ローン減税は今年もありますか?
比佐:床面積が40平米~50平米未満の場合も、所得が1,000万円以下であれば、2022年も同様に住宅ローン減税の対象となります。
都心の住宅は40~50平米の物件は結構あるので、減税の恩恵が受けられると思います。

住宅ローン減税となる中古住宅の築年数の範囲が拡大

住宅ローン減税の対象となる築年数が緩和されたとのことですか、どう緩和されたのでしょうか?
比佐:これまで中古住宅では、木造は築20年以内、鉄骨・鉄筋などは築25年以内という制限がありましたが、今回の改正で「登記簿上の建築日付が1982年以降(昭和57年以降)の住宅」と対象となる住宅の築年数の幅が広がりましたので、中古住宅でも住宅ローン減税を受けられる人も増えると思います。

築年数が経過している物件でも住宅ローン減税の対象となるので、中古住宅の購入を検討している人にとってもメリットになりそうですね。

住宅ローン減税(控除)による減税Q&A

ここまで2022年税制改正の主な変更点についてお聞きしました。住宅ローン減税を受けようと考えている方は初めて住宅購入する方も多く、さまざまな疑問点や不安点があると思います。引き続き比佐氏に伺いました。

新築の一般住宅を購入して今年2022年か来年2023年に入居した場合、年末時点での住宅ローン残高がそれぞれ2,000万円、3,000万円、4,000万円だった場合、年間いくらくらい減税(控除)されるのでしょうか?

比佐:住宅ローン残高により控除される割合は変わらず一律0.7%となりますので、

  • 2,000万円の場合、2,000万円×0.7%=14万円の控除
  • 3,000万円の場合、3,000万円×0.7%=21万円の控除
  • 4,000万円の場合、4,000万円×0.7%=28万円の控除とはならず、先ほどご説明した通り「借入限度額」が3,000万円までとなりますので21万円の控除となります。

計算の仕方は、新築でも中古でもその年のローン残高に0.7%をかけた金額となりますが、住宅のタイプや入居する年により借入限度額の上限がありますので、上限を超えてしまう場合は、その上限金額に0.7%を掛ければ算出することができます。

控除されたお金はどのような形で戻ってくるのでしょうか?

比佐:住宅ローン減税(控除)を受けるためには、入居した翌年の3月15日までに確定申告をしなければなりません。 仮に2022年12月に入居した場合は、2023年の3月15日までに確定申告をする必要があります。
住宅ローン減税は所得税から税金が控除される制度ですので、会社員の場合は毎月のお給料から所得税が天引きされていますが、確定申告をおこなうことで住宅ローン減税の対象となった金額が確定申告書に記載した銀行口座に戻ってきます。

なお、年末時点のローン残高の0.7%が控除額になりますが、最大控除額の上限があります。また、税額控除ですので、お給料から天引きされていた所得税以上の税金は戻ってきません(所得税だけでは控除額を使いきれない場合には個人住民税から控除されますが、それでも控除額を使いきれない場合に現金が給付されるわけではありません)。
1年目に確定申告をすると、秋頃に年末調整のための書類が税務署から送られてくるので、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローンの控除を受けることができます。

住宅ローン控除はいつまでに申請が必要なのでしょうか?

比佐:先ほどご説明した通り、入居した翌年の3月15日までに確定申告をすれば住宅ローン減税の恩恵を受けられます。確定申告書の提出期間は、毎年2月16日~3月15日までの1カ月間が原則となっており、全国の税務署や市町村の税務課などに出向いての申告や郵送でも申告することができます。また、国税庁が運営している【e-Tax(イータックス)】という「国税電子申告・納税システム」があり、オンラインで申請することもできます。初心者の方でもパソコンやスマートフォンの操作に慣れている人であればさほど悩まず申告することができると思いますので、試してみてもよいと思います。

もし申請期限を過ぎてしまった場合の対処法はありますか?

比佐:住宅ローン減税とは関係なく、一般的に個人事業主やフリーランスの方が売上金などの確定申告をしないと無申告加算税や延滞税など別途税金を納めなければならない可能性はありますが、住宅購入をした場合に確定申告をしなかったとしても別途、何か税金を納める必要があるということではありません。住宅ローン減税の恩恵が受けられないということです。
もし3月15日を過ぎてしまい確定申告ができなかったとしても、5年以内に還付の申告をすれば住宅ローン減税が受けられます。 ただ、5年以上経過した場合は対象外となるため、確定申告をし忘れてしまったことに気づいたらすぐに手続きをしたほうが良いと思います。
なお、初年度に確定申告をしておけば翌年から確定申告をする必要はありませんが、忘れた場合、後で確定申告をする場合は借入れをした年からの全ての確定申告の書類を作成する必要があり手間がかかります。住宅を購入したら確定申告をすることを忘れないように、カレンダーなどに記載しておくと良いでしょう。

今回の改正前に住宅ローン減税(控除)を受けている場合はどうなるのでしょうか?

比佐:現在既に住宅ローン減税の控除を受けている人はその時の条件が継続されますので、今回の2022年税制改正の内容に変更されてしまうということではありません。つまり、昨年2021年の住宅ローン減税の対象だった方は控除率が1%のままで、0.7%に下がってしまうといったことではありません。

住宅ローン減税(控除)を利用する際に気を付けるポイントはありますか?

比佐:今までご説明した通り、住宅ローン減税を受けるためには、所得や住宅の広さなどの条件を満たす必要があるので、気になった住宅がある際には不動産会社などに住宅ローン減税の対象か否かを確認してみると良いと思います。購入した後に実は対象外だった……と後悔しないためにも、まずは確認です。
また、先ほどもお伝えしましたが、確定申告をしないと控除が受けられませんので、確定申告を忘れないようにしてください。

夫婦で住宅ローン減税を受けることはできますか?

比佐:夫婦それぞれで住宅ローンを組む「ペアローン」と夫婦二人で1つの住宅ローンを組む「連帯債務」の場合は、負担する借入金残高に応じて住宅ローン減税の恩恵を夫婦それぞれで受けることができます。ただ、ペアローンの場合はローンが2つとなりますので、印紙税や保証料、融資の手数料などの諸費用も2倍となります。
単に減税分を得したいという考えではなく、それぞれにどのようなメリットやデメリットがあるか、銀行などで住宅ローンの相談をする際に確認してみると良いでしょう。

住宅取得資金の贈与税非課税措置の延長

続いて、2021年にあった贈与税の非課税措置は2022年もあるのでしょうか?

比佐:はい。両親やおじいちゃん、おばあちゃんなど(直系尊属)から住宅(新築でも中古でも)を購入するためにお金をもらった際に、通常は贈与税がかかります。昨年2021年の税制改正では、この贈与税が非課税となる期限が2021年の12月31日まででしたが、2022年の税制改正では2年延長され2023年12月31日までとなりました。
ただ、今回の2022年税制改正で贈与税が非課税となる金額の上限が500万円減り、省エネ等住宅の場合は、最大1,000万円まで、その他の住宅は最大500万円までと金額の上限が変更となっています。
また、成年年齢の引き下げ(20歳から18歳)に伴い、贈与税の非課税措置を受けられる対象年齢(お金をもらう人の年齢)も今までは20歳以上という条件がありましたが、18歳以上と変更になりました。

仮に、親から新築の住宅購入のために1,000万円を支援してもらった場合、この制度がなければどのぐらい贈与税がかかるのでしょうか?

比佐:贈与税の暦年課税で計算すると、1,000万円から贈与税の基礎控除額110万円を引いた890万円に贈与税が課税され、贈与税額は177万円になります。

結構、制度がなければ贈与税を払う金額は大きいのですね。上限金額については2021年より下がりましたが、親などに住宅購入を支援してもらえる人にとってはありがたい制度ですね。

2022年新設の「こどもみらい住宅支援事業」

今年新設された「こどもみらい住宅支援事業」とはどのような制度なのでしょうか?

比佐:昨年2021年にありました、住宅を建てたり、購入したり、リフォーム工事をおこなった場合にポイントが付与され、そのポイントを商品や追加工事などに交換して使用できた「グリーン住宅ポイント」が終了しました。今回の制度は、子育て支援や2050年カーボンニュートラルの実現の観点から新たに始まったもので、高い省エネ性能の新築住宅の購入や住宅の省エネリフォームなどに対して補助金が出る制度のことです。

具体的にはどのような制度なのでしょうか?

比佐:新築の注文住宅と新築住宅の購入をされる方で、子育て世帯(申請時点において、2003年4月2日以降に生まれた子どもがいる世帯)または若者夫婦世帯(申請時点において夫婦であり、いずれかが1981年4月2日以降に生まれた世帯)であることが前提で、自分が住む住宅であり床面積が50平米以上の住宅であること、土砂災害特別警戒区域外であることなどの条件にあえば補助金が出るという制度です。
新築ではなくリフォームをした場合にも条件はありますが、こちらは子育て世帯や若者夫婦世帯の場合は、補助金の上限にプラスされた補助金が出る制度となっています。

補助金はいくら位もらえるのでしょうか?

比佐:税制改正の項目でご説明しました省エネ住宅のタイプにより補助金の額が変わります。下記にまとめてみましたがZEH水準省エネ住宅で100万円が最大となっています。


住宅のタイプ 補助金
ZEH水準省エネ住宅 100万円
長期優良住宅 80万円
低炭素住宅
性能向上計画認定住宅
省エネ住宅 60万円

 

リフォームの場合、補助金の上限は原則30万円となりますが、子育て世帯や若者夫婦世帯などの場合は更に金額の上乗せがあります。まとめると下記のようになります。


  既存住宅の購入有無 上限補助金
子育て世帯や若者夫婦世帯 既存住宅を購入してリフォームをする 60万円
既存住宅の購入はしないがリフォームをする 45万円
上記以外の一般世帯 安心R住宅(※)を購入してリフォームをする 45万円
住宅の購入はしないがリフォームをする 30万円

(※)安心R住宅とは耐震性やインスペクション(建物状況調査等)がおこなわれた住宅で国土交通省が定めた要件に適合した中古住宅のことです。

住宅の購入は売買契約額が100万円(税込)以上など条件はありますので、詳しくはこどもみらい住宅支援事業のホームページをご確認ください。

リフォームの場合、子育て世帯や若者夫婦世帯でなくても補助金が受けられるのですか?

比佐:新築の注文住宅と新築住宅の購入の場合は子育て世帯や若者夫婦世帯だけという制限があるのですが、リフォームの場合であれば、子育て世帯や若者夫婦世帯という制限はありません。ですので、リフォームなどを考えている方は補助金をもらえる可能性があります。ただ、補助金をもらうためには補助金の合計が5万円以上となる必要がありますので、例えば、節水トイレ1台をリフォームで変えるだけの場合、補助金額は19,000円となり5万円に達しないため補助金をもらうことはできません。

補助金はどのようにしてもらうのでしょうか?

比佐: 補助金は国から直接自分の銀行口座などに振り込まれるわけではなく、事前に「こどもみらい住宅支援事業の事務局」に登録をしている工務店やハウスメーカー、不動産会社、リフォーム会社などの企業が国へ補助金の申請をして、その申請が通った後、国から申請をした住宅メーカーや建築会社、リフォーム会社などに対して補助金が出る流れとなります。
その後に、国から補助金を受け取った工務店やハウスメーカー、不動産会社、リフォーム会社などから住宅の購入者やリフォームをした人に対して振込などその会社による還元方法で補助金が出る流れとなります。

国の予算枠や期限があるので、新築住宅の購入や注文住宅、リフォームを検討している方は、一度不動産会社や工務店、ハウスメーカーなどに「こどもみらい住宅支援事業」の補助金が使えるか確認してみると良さそうですね。なお、この制度が利用できる会社は、国土交通省が運営するサイトで検索できますので調べてみてはいかがでしょうか。

国土交通省「こどもみらい住宅支援事業」公式サイト

まとめ

税理士の比佐善宣先生に、2022年度の税制改正について分かりやすく教えていただきました。住まい購入は高価なものですので、「制度が終了してしまう!」「2021年の税制改正より控除率が下がっている!」と住宅の購入を焦ることはありませんが、住まいの購入を検討されている方は是非、色々な制度を活用できるこのタイミングに住まい探しをしてみてはいかがでしょうか?

比佐 善宣(ベストファーム税理士法人)

取材協力

比佐 善宣(ベストファーム税理士法人)

ベストファーム税理士法人社員税理士、公認会計士。横浜国立大学経営学部卒業。有限責任監査法人トーマツに勤務したのち、2011年、ベストファームグループへ参画。2013年ベストファーム税理士法人を設立。贈与、譲渡、生前対策など、資産税関連の各種サービスを提供。
ベストファームグループ
ベストファーム税理士法人

一般社団法人全国シルバーライフ保証協会
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