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【2021年最新!税制改正】住宅ローン減税の特例延長、贈与税の非課税限度額の据え置き、すまい給付金やグリーン住宅ポイント制度について税理士に聞いてみた!

報道やネットニュースなどでご存じの方も多いと思いますが、2021年3月に「2021年度税制改正大綱の関連法」が成立し4月1日から施行されました。今回の税制改正で住まいに関することは「住宅ローン減税」「贈与税」でしたが、すまい給付金制度の改正やグリーン住宅ポイント制度の創設などもあり、皆さんいろいろとインターネットなどでお調べのことかと思いますが、専門的な言葉や制度であるため少し分かりにくい…と感じているのではないでしょうか?そこで今回は税金や住まいの制度に詳しいベストファーム税理士法人の税理士である比佐善宣(ひさよしのぶ)氏に詳しくお話を伺いました。

2021年度の税制改正はメリットだらけ?

1.1 2021年の税制改正について

2021年4月に施行された税制改正の中で住まいに関する部分の概要をお聞かせください。
比佐氏(以下、比佐):はい。そもそも税制改正は毎年行われており、今年も税制改正が行われました。税制改正というと消費税の増税などが頭に思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の改正では住宅ローン減税(控除)の特例延長や一定額までは贈与税がかからない特例の非課税限度額が据え置きされることになりました。家を買う人にとってはメリットのある改正だったのです。

今回の改正はメリットしかなかったのですか?
比佐:はい。この後詳しくご説明しますが、今回の改正では「税率が上がる」、「メリットのある制度が終了する」といったことはありませんでしたので、デメリットはない改正だったと言ってもよいと思います。

そうなんですね。税金というと上がるだけのものと思っていたので意外でした。その他にどのような改正があったのでしょうか?
比佐:今回は、先ほど少しお話した

①住宅ローン減税(控除)の特例延長
②贈与税の非課税限度額の据え置き

といった税制改正がありました。また、それ以外にも、

③すまい給付金の対象期間の延長等
④グリーン住宅ポイント制度の創設

 と大きく4つの改正がありました。減税(控除)の対象となるための条件が緩和されたりもしたんです。

1.2 住宅ローン減税で所得税などが控除される?

まず、住宅ローン減税で所得税などが控除されるということですが、どのような制度なのかお聞かせください。
比佐:住宅ローン減税とは、住宅ローンで家を買った際に入居してから一定期間、年末時点でのローン残高の1%分が所得税などから控除(本来税金として払う金額から差し引かれる)されるというもので、当初はその控除される期間が10年間だけでしたが、消費税が8%から10%に増税されたことから特例としてさらに3年が追加され13年間に延長されていました。この住宅ローン減税を受けるためには購入した家に2021年の12月31日までに入居するという条件があったのですが、今回の税制改正でこの期限が2021年1月1日~2022年の12月31日までの入居と期限が延長されましたので、まだ入居していない方やこれから住宅ローンを組んで家を買う方も減税の対象となる可能性があります。また、今までは家の床面積が50平米以上であることという条件もありましたが、この条件が緩和され40平米以上であれば控除の対象になりました。

都内だと一戸建てでも50平米に満たない家もありますし、単身者向けのマンションの場合、50平米に満たないコンパクトな物件も多いので、そのような家でも対象になるということですね。
比佐:そうですね。減税を受けるための条件が緩和された(減税を受けやすくなった)と考えてよいと思います。

先ほど可能性があるとのことでしたが、入居時期や床面積以外にも何か条件があるのでしょうか?
比佐:はい。新築住宅や中古住宅の取得又は増改築等の場合は「2020年12月1日~2021年11月30日」という期間で契約、注文住宅の場合は「2020年10月1日~2021年9月30日」という期間で契約していることや、所得が1,000万円以下(40平米~50平米未満の場合。50平米以上は3,000万円以下)の人であることなどが条件としてあります。家を購入したいと考えている人はどのような大きさの家をどの時期に買って、いつ頃引越しをして住みたいと考えているか一度整理してみると減税対象となるのか分かりやすいと思います。

住宅ローン減税の改正点(概略図)


なるほど。根本的な話となり少々お恥ずかしいのですが、所得税などから年末時点のローン残高の1%が控除されるということは、仮に年末に3,500万円のローン残高があった場合は、1%の35万円がどのような形で戻ってくるのでしょうか?
比佐:住宅ローン控除を受けるためには、入居した翌年の3月15日までに確定申告をしなければなりません。住宅ローン控除は所得税から税額控除される制度ですので、会社員の場合は毎月のお給料から所得税が天引きされていますが、確定申告をすることで住宅ローン減税の対象となった金額が確定申告書に記載した銀行口座に戻ってきます。なお、年末時点のローン残高の1%が控除額になりますが、通常は最大控除額40万円という上限があるため、仮に4,000万円以上のローン残高があっても40万円しか税金が戻ってきません。また、税額控除ですので、お給料から天引きされていた所得税以上の税金は戻ってきません(所得税だけでは控除額を使いきれない場合には個人住民税から控除されますが、それでも控除額を使いきれない場合に現金が給付されるわけではありません)。
1年目に確定申告をすると、秋頃に年末調整のための書類が税務署から送られてくるので、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローン控除を受けることができます。

どのタイミングでどのようにお金が戻ってくるのか気になっていたので、スッキリしました。ありがとうございます。

※3年間延長された11年目以降は控除額が異なります。また、認定長期優良住宅と認定低炭素住宅はローン残高が4,000万円までではなく5,000万円まで(最大控除額50万円)となります。

1.3 贈与税がかからない?

続いて、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税限度額の据え置きについて具体的に教えてもらえますか?
比佐:お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんなど(直系尊属)から「家を買うのに足しにしなさい」などお金をもらった場合、今まで新築住宅などは1,000万円まで(省エネ等住宅の場合は更に+500万円の1,500万円まで)は非課税でそれ以上お金をもらうとお金をもらった人が贈与税を払う必要がありました。この措置は、住宅購入の契約期間が2021年4月1日以降は新築住宅などで700万円まで(省エネ等住宅の場合は更に+500万円の1,200万円まで)縮小される予定でしたが、今回の税制改正では非課税限度額が据え置きされ、今までと同じ1,000万円まで非課税ということになりました。

仮に、親から新築の住宅購入のために800万円を支援してもらった場合、この制度がなければどのぐらい贈与税がかかったものなのでしょうか?
比佐:贈与税の暦年課税で計算すると、800万円から贈与税の基礎控除額110万円を引いた690万円に贈与税が課税され、贈与税額は117万円になります。

 結構かかるものなんですね。親などに住宅購入を支援してもらえる人にとってはありがたいと思える制度ですね。

※消費税が非課税となる個人が売主の中古住宅は500万円まで(消費税が課税となる不動産会社が売主の中古住宅は,1,000万円まで)となります。

1.4 すまい給付金がもらえる場合も?

その他に家を購入する人にとってメリットのある改正はあったのでしょうか?
比佐:家を購入した際に年収に応じて最大で50万円がもらえる「すまい給付金」の期限も本来2021年12月31日までに入居をすることが条件でしたが延長され、2022年12月31日までとなりました。また、床面積も50平米から40平米(注文住宅の新築の場合は2020年10月1日から2021年9月30日までに契約、分譲住宅や中古住宅の取得の場合は2020年12月1日から2021年11月30日までに契約した場合は40平米以上)と緩和されています。先ほどご紹介した住宅ローン減税は支払っている所得税などから控除する仕組みであり収入が少ないと控除される額も少なかったのですが、すまい給付金は基本的には収入が少ない方が給付額が増えるといった制度なんです。

正直、いくら位、給付金がもらえるものなのでしょうか?
比佐:家族構成や年収などにより一概に言えませんが、消費税率が8%から10%に上がったことによる住宅取得者の負担を緩和するために創設された制度ですので、年収が低い人ほど給付額は多くなります。金額については、国土交通省のすまい給付金サイトに「すまい給付金シミュレーション」がありますので試してみるのも良いかもしれません。

他にも何かメリットのある改正はありましたか?
比佐:家を買った際に不動産取得税という税金がかかるのですが、家を購入した際の土地にも不動産取得税がかかります。この土地の評価額が2分の1となり、本来4%かかる税率が3%になるという特例措置が3年間延長され2024年3月31日までになったことや、土地を購入した際に所有権の移転登記をする際に登録免許税を納めますが、この税率が2%から1.5%に軽減される措置も期間が2年間延長され2023年3月31日まで伸びたことはメリットであると思います。

土地だけのお話でしたが、住宅に対してのメリットはないのでしょうか?
比佐:いえいえ。昨年(2020年度)の税制改正で、新築住宅を購入した場合、建物の固定資産税を3年間(マンションは5年間)2分の1に減額する措置を2022年3月31日まで延長していますし、土地や建物を登記する際にかかる登録免許税の税率を軽減するマイホームの軽減特例も同じく2022年3月31日まで延長されていますので、住宅を購入する際にはメリットがあると思います。

※住まい給付金は住宅ローンを組んでいることや現金で購入した場合でも50歳以上の人は対象、一定以上の年収の人は対象外など諸条件あります。

1.5 グリーン住宅ポイントをもらい商品をゲット?

グリーン住宅ポイントというのはどのような制度なのでしょうか?
比佐:条件を満たす住宅を建てたり、購入したり、リフォーム工事を行った場合にポイントが加算され、そのポイントを商品や追加工事などに交換して使用できる制度です。新築住宅の建築・購入の場合は、一定の省エネ性能を満たす住宅が対象で、売買契約締結が2021年10月31日までなどの条件はあります。

素朴な質問ですがそのポイントで何がもらえたりするんですか?
比佐:パソコン、電動アシスト付き自転車や防災グッズなど様々な商品があります。国土交通省が管理しているグリーン住宅ポイントのサイトで見ることができますよ。また、商品だけではなく、家の追加工事の費用に充てることもできるんです。

中古住宅を購入してもポイントがもらえるんですか?
比佐:条件はありますが、空き家バンクに登録されている住宅だったり東京圏の対象地域からの移住のための住宅を購入した場合にポイントがもらえる制度になっています。

仮にですが、すまい給付金を受け取ったり住宅ローン減税の優遇を受けたらグリーン住宅ポイントがもらえないといったこともあるのでしょうか?
比佐:いいえ。そのようなことはありません。併用することは可能です。ただ、税制優遇の中には、対象工事から補助額を除いた額をベースに控除額を計算するものもありますので、注意が必要です。また、既存住宅の購入と併せて本制度の対象となるリフォームを行う場合は、既存住宅の購入またはリフォームのいずれかのみ申請が可能となっており両方を申請することはできませんので、こちらも注意が必要です。

ポイントが付与される期限はあるのでしょうか?
比佐:遅くとも2021年10月31日まで(郵送の場合は必着)に申し込みをする必要があり、予算の消化状況によっては早まる可能性もあるため申請をすれば必ずもらえるものとも限りません。

そうなんですね。住宅を購入したりリフォームを考えている方は、もらえるかもしれないというスタンスでいたほうがよさそうですね。

まとめ

今回、税理士の先生に難しい2021年度の税制改正の内容を分かりやすく教えていただきました。住まい探しは高価なものですので、制度が終了してしまう!といって購入を焦ることはありませんが、具体的に住まいの購入を検討されている方は是非、色々な制度を活用できるこのタイミングに住まい探しをされてみてはいかがでしょうか?

比佐 善宣(ベストファーム税理士法人)

取材協力

比佐 善宣(ベストファーム税理士法人)

ベストファーム税理士法人社員税理士、公認会計士。横浜国立大学経営学部卒業。有限責任監査法人トーマツに勤務したのち、2011年、ベストファームグループへ参画。2013年ベストファーム税理士法人を設立。贈与、譲渡、生前対策など、資産税関連の各種サービスを提供。
ベストファームグループ
ベストファーム税理士法人

一般社団法人全国シルバーライフ保証協会
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