通し柱とは?役割や耐震性、管柱との違いや適切な本数を解説
この記事では、通し柱の役割や必要性、管柱との違いや近年使用が減っている理由を解説します。
記事の目次
通し柱とは?

前途のとおり、通し柱とは、木造住宅で1階から2階まで継ぎ目なく1本で通した柱のことを言います。柱と梁を組み上げる木造軸組工法(在来工法)で使われ、建物の四隅など構造上重要な位置に配置されるのが一般的です。
各階を1本の柱でつなぐため、地震や台風による力に抵抗し、建物の構造耐力を高める効果が期待できます。一方、階ごとに桁や梁で分かれた柱は「管柱(くだばしら)」と呼ばれ、通し柱と区別されています。

通し柱の主な役割

通し柱は、建物の構造上重要な役割を担っています。ここでは、代表的な3つの役割を見てみましょう。
耐震性を向上させる
通し柱の役割の一つが、建物の耐震性を高めることです。接合部の性能が十分でない場合は、大きな地震時に接合部へ負荷が集中する可能性があります。
一方、通し柱を採用すると1階から2階までを継ぎ目のない1本の柱でつながるため、上下階が構造的に一体化します。それにより建物全体へ力を伝えやすくなり、変形やゆがみを抑えることが可能です。ただし、通し柱だけで耐震性が決まるわけではありません。
荷重を分散させる
通し柱には、建物にかかる荷重をバランスよく支える役割もあります。
屋根や2階部分の重さは、柱を伝って下へ移り、最終的に基礎や地面が受け止めます。継ぎ目のない通し柱であれば、この重さを途中で分断せず下の階へスムーズに伝えられるでしょう。複数の通し柱で荷重を1カ所に集中させずに分散すれば、建物のゆがみやたわみも防げます。
建築基準法による規定を満たす
通し柱は、建築基準法施行令(第43条第5項)で定められたルールを満たす役割も担っています。建築基準法施行令では、2階建て以上の建物の隅にある柱は、地震や強風に耐えられる構造にするため、原則として通し柱にするよう定められています。
ただし、接合部を通し柱と同等以上の強度に補強した場合は、この限りではありません。近年は、この補強金物を使った家づくりも増えてきました。
出典:e-Gov 法令検索「建築基準法施行令」
通し柱の大きさと材質

ここからは、通し柱の大きさと材質の目安を解説します。
大きさ(太さ)
通し柱の太さは4寸角(12cm角)以上が一般的です。管柱の標準サイズは3寸5分角(10.5cm角)以上であるため、通し柱には管柱よりもひと回り太い柱を使用します。
通し柱が他の柱より太いのは、梁や胴差し(1階と2階の境目に横向きに渡す木材)を差し込む際に柱の側面を削るため、あらかじめ余裕をもたせておくためです。ただし、大きな力がかからない位置では、管柱と同じ太さの柱を使うケースもあります。
材質(木の種類)
通し柱には、ヒノキやスギなど国産の木材がよく使われます。ヒノキは曲げや圧縮に強くシロアリの被害も受けにくい木材で、スギは全国で植林されているため手に入れやすく粘り強さもあるのが特徴です。
一方、輸入材のホワイトウッドは適切な防腐・防蟻処理や施工がおこなわれることを前提に使用されますが、木材の特性を踏まえて採用を判断することが重要です。
また、板を貼り合わせて強さを安定させた集成材を通し柱に採用する建築会社もあります。
ただし、材質の違いだけで地震への強さが決まるわけではありません。耐震性が気になる方は、どの木材を使用しているかとあわせて、構造計算をきちんとおこなっているかも確認しておきましょう。
通し柱と管柱の違い

通し柱と管柱の大きな違いは、上下階を1本の柱で貫いているかどうかです。管柱は梁や胴差しで分断され、各階に1本ずつ立てられる柱を指します。
主な違いは次のとおりです。
| 通し柱 | 管柱 | |
|---|---|---|
| 長さ | 1階から2階の 軒まで1本 |
各階ごとに1本 |
| 配置 | 建物の隅や構造上 重要な位置 |
建物全体 |
| 太さの目安 | 4寸角(12cm角) 以上 |
3寸5分角(10.5cm) 以上 |
ただし、管柱が通し柱より劣っているわけではありません。上からの荷重を支え、地震や風の力に抵抗する役割はどちらも共通しており、管柱も上下の柱を金物で補強すれば隅柱(建物の角に立てられる柱)として使えます。
「通し柱がないと弱い」と決めつけず、接合部をどう補強しているかまで確認してみましょう。
通し柱の適切な本数

通し柱は建物の隅にあたる位置へ配置する必要がありますが、「何本が正解」と決まった数はなく、建物の形が複雑になるほど本数は増えていきます。
例えば、1階と2階が同じ大きさの四角い家であれば4本が目安です。L字型のように出っ張りやへこみのある家では、出隅(外側へ出っ張った角)と入隅(内側へ引っ込んだ角)の数だけ柱が必要になり、形が入り組んだ家では8本前後になるケースも考えられます。
ただし、通し柱には梁や胴差しを差し込むための穴を開けるため、差し込み口が増えるほど耐久性が弱まる恐れがあるでしょう。
かつては「通し柱は多いほどよい」とも言われましたが、現在は、接合部の補強次第と考えられています。本数の多さだけで安心せず、隅の柱をどう支えているのかを図面で確かめてみましょう。
通し柱は不要?使用が減っている理由

近年は、通し柱を使わない家も増えてきました。ここでは、通し柱の使用が減っている理由を紹介します。
コストが高くなる
通し柱が減っている理由として、費用負担が大きい点が挙げられます。1階から2階の軒まで届く通し柱は4mを超えるため、他の柱に比べて割高です。長い木材は運ぶのにも手間がかかり、運搬費用もかさむ傾向にあります。
さらに、現場に長い木材を置いておくスペースも必要です。土地が広く予算に余裕があれば、質のよい通し柱を選べますが、限られた費用と敷地のなかでは、無理に採用する家は少なくなってきました。
間取りの自由度が制限される
通し柱を入れると、間取りの自由度が下がってしまいます。通し柱は、建物の隅など決まった位置に立てる柱のため、その部分は間取りに制約が出ます。
なかには、通し柱の位置に合わせて壁や間仕切りを配置するため、部屋の広さや窓の位置が決まってしまうケースも少なくありません。さらに、2階だけが張り出たオーバーハングや、1階を駐車場にするビルトインガレージも計画しづらくなることも。
さらに、通し柱は他の柱に比べて太いため、周りの柱と太さが揃わず、壁の納まりや断熱材の入れ方にも影響を及ぼすことも考えられます。
断面欠損による柱の強度低下
通し柱は、梁や胴差しを差し込むために側面を彫って受け口をつくります。
この彫り込みで柱の断面が小さくなる状態を「断面欠損」と呼びます。加工方法によっては断面欠損が生じることから、適切な設計や補強が重要です。
一方、隅を管柱にすれば、梁を柱の上に載せる形になるため、柱を彫る必要がありません。断面欠損のない状態で各階の柱を立てられ、木材の強さをそのまま活かせます。
上下の柱は金物でつなぐことで、1本の通し柱と同じように力を伝えられるでしょう。「継ぎ目がない=強い」とは限らない点を覚えておいてください。
金物工法が進化している
金物の技術が進化している点も、通し柱が減っている理由です。金物の進化によって、通し柱を使わずに隅の柱を強くできるようになりました。建築基準法でも、接合部を通し柱と同等以上の強さに補強すれば、隅柱を管柱にしてよいと認められています。
具体的には、梁を柱のうえに載せる「梁勝ち工法」で各階に管柱を立て、上下の柱をホールダウン金物(柱が抜けるのを防ぐ金物)で連結します。このような選択肢が広がった結果、通し柱にこだわらない家づくりが増えました。
ただし、金物を使う分だけ材料費や施工費が上がるおそれがあるため、費用と耐久性のバランスを考えながら家づくりを進めましょう。
通し柱の必要性

通し柱は、一概に必要だとは言い切れません。接合部を補強すれば、隅を管柱にしても高い耐久性を保ったまま建築できます。ただし、条件によっては通し柱があったほうがよいケースもあります。
例えば、上下階で壁の位置が大きくずれている家です。壁が上下でつながっていないと、1階と2階の境目で建物が腰砕けのように変形するおそれがありますが、通し柱があれば、上から下へ適切に力を伝えられます。凹凸の多い複雑な形の建物も同じで、隅を1本の柱で通せば力の流れ、いわゆる荷重伝達が安定するでしょう。
ただし、細い通し柱を昔ながらの彫り込みで加工すると、断面が減って折れる可能性も。家づくりで通し柱を使用するのであれば、太い柱を選ぶか、彫り込みの少ない金物で接合しましょう。
通し柱に関するまとめ
今回は、通し柱の役割や管柱との違い、必要性などを解説しました。最後に、通し柱でよくある質問を見てみましょう。
通し柱とは?
通し柱とは、1階から2階の軒まで継ぎ目なく1本で通した柱です。木造軸組工法の家で、建物の隅など構造上重要な位置に配置されます。太さは4寸角(12cm角)以上が一般的で、ヒノキやスギなどの材質が使われます。
通し柱の主な役割は?
通し柱のおもな役割は、上下階を一体にして地震や風の揺れを受け止めることです。また、屋根や2階の荷重を途中で分断せず、下へ流す役割もあります。さらに、2階建て以上の隅柱は原則通し柱にするよう建築基準法で定められているため、法律上のルールを満たす柱でもあります。
通し柱の適切な本数は?
通し柱の本数に正解はなく、建物の形次第で変わります。1階と2階が同じ大きさの四角い家なら4本が一般的で、L字型など凹凸のある家では出隅と入隅の数だけ増えていきます。ただし、梁や胴差しの差し込み口が増えれば断面欠損で耐久性が下がるおそれがあるため、接合部の補強までセットで確認しておきましょう。
大切なのは通し柱の有無ではなく、家全体でどのように力を受け止める設計になっているかです。
具体的には、耐力壁の配置や接合金物、構造計算などを含めた建物全体の設計によって決まります。住宅会社を比較する際は、許容応力度計算の実施有無や耐震等級もあわせて確認することをおすすめします。
「通し柱がないと弱い」と決めつけず、上下階の力をどう伝える計画なのか、構造計算をしているのかなどを担当者に尋ねてみてください。納得できるまで説明してくれる建築会社を選び、後悔のない家づくりを目指しましょう。
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