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家のシックハウス対策とは?害となる建材や新築入居後にやるべきことについて解説

家のシックハウス対策!害となる建材や新築住宅で気を付けるポイントを解説
シックハウスとは、室内空気が汚染された住宅のことを指し、住宅の新築時に起こり得る、シックハウス症候群の要因とされています。
シックハウス症候群の症状は人それぞれ異なり、くしゃみ・倦怠感・頭痛・湿疹などが挙げられ個人差も大きい傾向にあります。
シックハウスについて理解し、事前に対策を施すことで、不安を感じることなく健康で過ごせる家を建てることができます。

本記事では、シックハウスに関する基礎知識や有効な対策について解説します。新築住宅の購入にあたって不安のある方、シックハウスを未然に防ぐための対策について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもシックハウス症候群とは?

シックハウス症候群とは?
シックハウス症候群とは?

シックハウス症候群とは、家の建材や家具等に使用されている化学物質などの燃焼ガスが家中の空気を汚染し、室内の汚染された空気を吸うことで居住者の健康にさまざまな悪影響を及ぼす症状のこと。

家の外に出ることで、症状がなくなったり症状が軽くなったりする特徴があります。シックハウス症候群の症状については後述しますが、生物学的要因や物理学的要因など、さまざまな要因が複雑に関係していると考えられています。

シックハウス症候群の症状は?

シックハウス症候群の主な症状は、以下のとおりです。

  • 鼻水や涙、咳が出る
  • 頭痛やめまい、吐き気がする
  • 目に刺激を感じ、目がチカチカする
  • 鼻・喉の乾燥や刺激、痛みを感じる
  • 倦怠感や脱力感、集中力が低下する
  • 呼吸困難になる
  • 皮膚が乾燥したり赤み・痒みが出たりする

シックハウス症候群による上記のような健康被害は、主に建材等に含まれる化学物質に晒されることで引き起こされます。これらの症状が出ると、日常生活に大きな影響を及ぼします。家で過ごすなかで上記の症状が複数出てくる場合は、シックハウス症候群の可能性が高いでしょう。

ただし、症状には個人差があり、同じ環境にいた場合でもまったく症状が出ない方と、強い症状が出る方がいます。現段階で、体質による症状の出やすさはわかっていません。

新築やリフォームした家でしか起きない?

シックハウス症候群は、新築住宅やリフォーム直後の住宅で起こりやすい症状と言われています。しかし、必ずしも新築・リフォーム後の住宅だけで発生するわけではありません。シックハウスの主な原因となっている「ホルムアルデヒド」という化学物質は、建材だけでなく家具にも含まれています。ホルムアルデヒドは刺激臭のある気体で、合成樹脂の原料や塗料、接着剤、界面活性剤などとして使われています。衣類や食べ物などにも含まれているホルムアルデヒドは微量なため、基本的に日常生活で人体に影響を及ぼすことはありません。
しかし、建材や家具から放散されて室内濃度100㎍/立方メートル(0.08ppm)を超えた場合に、シックハウスを引き起こす可能性があります。そのため、家具を新調した際にも症状が出る可能性がある点に注意しましょう。

シックハウスになる原因となるもの

シックハウスの要因となるものは?
シックハウスの要因となるものは?

シックハウスが発生するのは、建材等に化学物質が多用されていることや高気密な設計になっていること、自然換気が不足した状態になっていることなどが大きな要因として挙げられます。室内空気質に影響する因子を3つご紹介します。

化学的因子

化学的因子は以下のように分類されます。

  • 無機物:気体、液体、粒子(鉱物)など
  • 有機物:揮発性(ホルムアルデヒド、殺虫剤、プロパン)、粒子状物質(煤煙、たばこ煙)など

無機物は炭素を含まない化合物の総称であり、有機物は建材や日用品、工業製品、医薬製品などに広く用いられています。

建材や家具に含まれる化学物質

化合物名 室内濃度指針値 ※1
ホルムアルデヒド 100 μg/立方メートル 0.08 ppm
アセトアルデヒド 48 μg/立方メートル 0.03 ppm
トルエン 260 μg/立方メートル 0.07 ppm
キシレン 200 μg/立方メートル 0.05 ppm
エチルベンゼン 370 μg/立方メートル 0.085 ppm
スチレン 220 μg/立方メートル 0.05 ppm
パラジクロロベンゼン 240 μg/立方メートル 0.04 ppm
テトラデカン 330 μg/立方メートル 0.04 ppm
クロルピリホス 1 μg/立方メートル
(但し、小児の場合
0.1 μg/立方メートル)
0.07 ppb
(但し、小児の場合
0.007 ppb)
フェノブカルブ 33 μg/立方メートル 3.8 ppb
ダイアジノン 0.29 μg/立方メートル 0.02 ppb
フタル酸ジ-n-ブチル 17 μg/立方メートル 1.5 ppb
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 100 μg/立方メートル 6.3 ppb

※1:両単位の換算は25度の場合による

上表の室内濃度指針値は、化学物質による有害な健康影響を生じさせないために望ましいと判断される値です。シックハウスを発生させない絶対的な値ではない点に注意しましょう。

生物学的因子

生物学的因子には、以下のようなものが挙げられます。

  • 細菌:ウイルス、バクテリア、菌類、カビ、原生動物など
  • 植物:種子植物(花粉)など
  • その他:ペット(皮膚片、毛)、ダニ(ハウスダスト)、蚊など

上記のような生物は、高湿度の環境によって繁殖しやすく、アレルゲンとなってアレルギー症状や不快感を引き起こします。

物理学的因子

シックハウス症候群の物理学的因子に含まれるものは、主に以下のとおりです。

  • 変性:温度、湿度、光、音など
  • 不変性:電離放射線、電磁波など

温度・湿度や騒音、照明などが先述の化学的因子や生物学的因子と相互に影響し、室内の空気環境を悪化させて症状を引き起こす可能性があります。

建築基準法によるシックハウス対策

シックハウス対策のための規制とは
シックハウス対策のための規制とは

2003年7月1日に一部改正した建築基準法が施行され、シックハウス対策のためにいくつかの規制が導入されました。これは、シックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるために、建築物に使用される建材や換気設備などを規制する法律です。規制の対象となるのは、住宅や学校、オフィス、病院などのすべての建築物の居室となります。ホルムアルデヒドに関する規制の内容は、以下のとおりです。

内装仕上げの面積を制限

居室の種類や換気回数に応じて、内装仕上げのホルムアルデヒド発散建築材料は面積制限を受けることとなっています。内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材は、ホルムアルデヒドの発散が少ないか多いかで等級が付けられています。規制対象となる建材は木質建材、壁紙、ホルムアルデヒドを含む断熱材、接着剤、塗料、仕上塗材などです。これらの建材は、原則JIS・JASまたは国土交通大臣認定による等級付けが必要となります。建築材料の区分は以下のとおりです。

ホルムアルデヒドの
発散速度
告示で定められている建築材料 JIS・JASのホルムアルデヒド放散量
名称 対応する規格・認定 (水中濃度)
  旧JIS・JAS 平均値 最大値
0.005mg/m2h 以下 (規制対象外建材) JIS・JASの
F☆☆☆☆
および
大臣認定品
0.3mg/L 以下 0.4mg/L 以下
0.005mg/m2h 超
~0.02mg/m2h 以下
第三種ホルムアルデヒド
発散建築材料
JIS・JASの
F☆☆☆
および
大臣認定品
E0、FC0 0.5mg/L 以下 0.7mg/L 以下
0.02mg/m2h 超
~0.12mg/m2h 以下
第二種ホルムアルデヒド
発散建築材料
JIS・JASの
F☆☆
および
大臣認定品
E1、FC1 1.5mg/L 以下 2.1mg/L 以下
0.12mg/m2h 超 第一種ホルムアルデヒド
発散建築材料
無等級 E2、FC2 5.0mg/L 以下 7.0mg/L 以下

上表のとおり、第二種・第三種ホルムアルデヒド発散建築材料については使用面積が制限されます。第三種の場合は居室の床面積の2倍まで、規制対象外の場合は制限なく使用可能です。居室の種類が住宅か、住宅以外かによっても異なる点に注意しましょう。

常時換気できる設備の義務付け

ホルムアルデヒドは内装材だけでなく家具等にも使用されており、居室があるすべての建築物に、機械換気設備の設置が原則義務付けられています。住宅の場合は、換気回数0.5回/h(1時間当たりに部屋の空気の半分が入れ替わること)以上の24時間換気システムを設置しなければなりません。住宅等以外の場合、0.3回/h以上の機械換気設備の設置が必要です。

天井裏や床下内部の制限

天井裏や床下、壁内、収納スペースなどは、下地材をホルムアルデヒドの発散が少ない建材にする、または機械換気設備で換気できる構造とする必要があります。以下のいずれかの措置が必要です。

① 建材による措置:天井裏などに第一種・第二種ホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない
② 気密層、通気止めによる措置:気密層または通気止めを設けて天井裏などと居室を区画する
③ 換気設備による措置:換気設備を居室に加えて天井裏なども換気できるものとする

ただし、収納スペースなどの場合でも、居室とみなされれば内装仕上げの面積を制限される可能性があります。

入居後にやるべきシックハウス対策

入居後にできるシックハウス対策は?
入居後にできるシックハウス対策は?

シックハウスに有効な対策は、建築時におこなうのが一般的です。ただし、新築住宅が完成し、入居した後でも対策することが可能です。具体的には以下のような対策が、効果が高いとされています。

窓を開けてこまめに換気する

近年では、室内の快適性を高めるために高気密な住宅を建築されることが多いです。しかし、気密性の高い住宅は化学物質が溜まりやすい傾向にあるため、こまめな換気が欠かせません。十分に換気をおこなうことで、シックハウスの原因となる化学物質を家の外に排出し、室内の空気を正常に保てるようになります。窓を開けて換気する際は、風が通りやすいように複数箇所開けるとよいでしょう。

空気清浄機を活用する

換気を十分におこなうことも重要ですが、空気清浄機も併用することで効果が高まります。特に、HEPAフィルター(高効率粒子捕集フィルター)や活性炭フィルターなど、化学物質を除去するフィルターを搭載した空気清浄機が効果的です。フィルターを定期的に清掃したり交換したりすることで、空気清浄機の性能を最大限受けられるでしょう。

きちんと掃除をする

家の中を清潔に保つよう、掃除を定期的におこなうことも重要です。行き届いた清掃は、ハウスダストやカビ・ダニの発生を抑えられます。カビやダニは高温多湿の場所を好み、カビが発生しやすい浴室・洗面所では、石鹸カスや皮脂残りをシャワーで除去したり、水滴を拭き取ったりするのが効果的です。ダニ対策としては、布団やクッション類の天日干しによる湿気取りや掃除機がけがよいでしょう。

湿度や温度を管理する

湿度や温度管理を適切におこなうことも、シックハウス対策の一つです。例えば、ベイクアウト法が有効な手段とされています。ベイクアウト法とは、人工的に室内温度を30~35度まで上げ、化学物質の放出を加速させてから換気をおこなう方法です。
建物が完成してから3カ月前後でベイクアウト法をおこなうと、ホルムアルデヒドが23~52%減衰したとされています。また、回数を重ねることで短期間での効果を見込めますが、ベイクアウト法をおこなうには時間がかかるほか、高温多湿の空間となるため家具や建材が傷む可能性がある点に注意しましょう。

消臭剤や芳香剤は天然素材のものを使う

香りにこだわりを持つ方は、室内のあらゆる場所で消臭剤や芳香剤を使用するケースがあります。消臭剤や芳香剤を使用する際は、シックハウス症候群の原因となるキシレン、パラジクロロベンゼンが含まれていないものを選んだり、化学物質の放散量が少ない天然素材のものを使用したりすることで、安心して使用できるでしょう。

まとめ

最後に、シックハウスに関してよくある質問について回答していきます。

シックハウス症候群の主な症状は?

シックハウス症候群の症状は、鼻水や涙、咳、喉の乾燥、頭痛、めまい、吐き気、目のチカチカ、倦怠感、集中力の低下、皮膚の乾燥・湿疹、呼吸困難などさまざまです。これらの症状を引き起こすと、日常生活に大きな影響を及ぼします。症状には個人差があり、同じ室内にいても症状が強く出る方とまったく出ない方もいますが、現時点では体質による症状への影響は解明されていません。

シックハウスの原因となるものは?

シックハウスの主な原因は、建材や家具等に含まれる化学物質です。塗料や防腐剤、構造用合板の接着剤に含まれる、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが人体に悪影響を及ぼすとされています。化学物質は建材が新しいほど多く放出されるため、新築住宅で引き起こしやすくなっています。時間の経過とともに放出量は減少するものの、完全になくなるわけではありません。化学物質を含む「化学的因子」「生物学的因子」「物理学的因子」が、室内空気質に影響します。

新築住宅に引越した後でもできる対策とは?

シックハウスの対策は建築時におこなうのが有効ですが、新築住宅に引越した後でもできる対策があります。窓を開けてこまめに換気することや、空気清浄機を活用すること、掃除や湿度・温度管理の徹底などが効果的です。また、消臭剤や芳香剤を使用する際は、化学物質の放散量が少ない天然素材のものを選ぶとよいでしょう。

新築住宅やリフォーム直後の住宅に住むと、シックハウス症候群を引き起こす可能性があります。しかし、建材の種類や日常生活でのメンテナンス状況によって、シックハウスの影響が出にくくなることもあるため、必要に応じて有効な対策を施しましょう。シックハウス症候群の症状が出た際は、できるだけ早めに専門の医療機関等に相談して対処することが大切です。

阿孫 沙綾

執筆者

阿孫 沙綾

不動産エージェントおよびWebディレクター兼ライターのフリーランス。8年間で不動産売買・賃貸の仲介業、実需や収益不動産の仕入れ・販売業務を経験し、現在は個人エージェントとして活動中。また、幅広いジャンルの不動産業務に携わった経験を活かし、不動産・宅建ジャンルを中心に執筆や編集もおこなう。

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