盛土規制法とは?改正内容や対象になる工事、罰則をわかりやすく解説
盛土規制法は、2021年の熱海市の土石流災害をきっかけに整備された比較的新しい法律です。土地の用途を問わず全国一律で盛土や切土を規制しており、違反すると重い罰則が科される恐れがあります(ただし、どの土地が規制区域に入るかは自治体ごとに異なります)。
本記事では、盛土規制法の概要や旧法との違い、許可が必要な工事の基準などを解説します。これから土地の購入や家の建築を検討している方は、参考にしてください。
記事の目次
盛土規制法とは?

盛土規制法とは、危険な宅地造成・盛土等・土石堆積による災害から、国民の命や財産を守るために定められた法律です。
全国一律の基準で規制しており、土地の用途に関わらず適用されます。ここでは、法律の正式名称や施行日、制定の目的を詳しく解説します。
正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」
盛土規制法の正式名称は、「宅地造成及び特定盛土等規制法」です。通称「盛土規制法」と呼ばれ、国土交通省や各自治体の公式資料でもこの略称が使われています。
国土交通省のWebサイトでは、制度の詳細をまとめたガイドラインが公開されており、技術的な基準や運用ルールを確認できます。さらに、一般の方向けにわかりやすく制度を説明したパンフレットも配布されているので、以下よりご確認ください。
国土交通省「盛土等の安全対策推進ガイドライン 及び同解説」
国土交通省「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の概要について」
土地の所有者や購入を検討している方は、これらの資料を活用して、制度の全体像をつかんでおきましょう。
施行日は2023年5月26日
盛土規制法が施行されたのは、2023年5月26日です。盛土規制法は、既存の「宅地造成等規制法」を改正する形で成立しました。
施行日以降に着手される盛土や切土などの工事は、新しい基準の規制対象です。なお、施行日より前におこなわれていた工事は、経過措置が設けられているケースもあるため、不安な方は自治体の窓口で確認してみましょう。
法律の目的
盛土規制法の目的は、危険な盛土などから人々の命や財産を守ることです。土地の用途を問わず、盛土・切土・土石の堆積などに統一の基準を設け、工事前の許可取得や施工中の検査を義務づけています。
このような仕組みによって、災害につながる恐れのある造成を未然に防ぎ、地域の安全を保つことを狙いとしています。
参考:国土交通省「盛土等の安全対策推進ガイドライン 及び同解説」
盛土規制法が制定された背景

盛土規制法が生まれたきっかけは、2021年7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害です。山の斜面に不適切に積まれていた盛土が崩れ落ちて被害が広がり、多くの命が失われました。
それまでの宅地造成等規制法では宅地の造成しか対象にしておらず、森林や農地に積まれた盛土は規制の対象外でした。この抜け穴を埋めるため、土地の種類を問わず盛土を取り締まる盛土規制法が整備された経緯があります。
盛土規制法改正の内容

盛土規制法では、従来の宅地造成等規制法を見直し、4つの柱で制度を強化しました。ここからは、改正により新しくなったポイントを見ていきましょう。
スキマのない規制
改正のポイントは、宅地だけでなく、盛土などによって人や建物に被害を及ぼす恐れのあるエリアが規制の対象になったことです。旧法では住宅を建てるための造成工事しか規制できず、山間部に積まれた盛土は見過ごされていました。
盛土規制法では都道府県知事、指定都市の長、・中核市の長が「宅地造成等工事規制区域」や「特定盛土等規制区域」を指定し、そのエリア内でおこなわれる盛土や切土を一律にチェックします。これにより、土地の用途による法の抜け穴がなくなり、どの場所でも同じ基準で安全性が確保される仕組みが整いました。
盛土の安全性の確保
盛土の安全性を担保するため、工事の許可基準や検査の仕組みが明確に定められました。具体的に、盛土の高さや面積が一定規模を超える工事には、都道府県知事、指定都市の長、中核市の長の許可が必要となり、地盤の安定性や排水設備などの基準を満たさなければなりません。
さらに、施工中には中間検査、完了後には完了検査が実施され、基準どおりに工事が進んでいるかを行政がチェックする仕組みが整えられました。
責任の所在の明確化
盛土規制法では、盛土の管理責任が土地所有者にあることが、法律上はっきりと位置づけられました。過去の災害では、盛土を積んだ事業者と土地の所有者が異なる際に責任の所在があいまいになり、対応が遅れる問題が起きていました。
しかし、盛土規制法ではたとえ自ら工事をしなくても、土地の所有者や管理者に安全な状態を保つ義務が課されます。行政は危険な盛土を見つけた場合、所有者に対して改善命令を出し、責任逃れを防ぎながら迅速に安全を確保できるようになりました。
実効性のある罰則の措置
盛土規制法では、違反行為に対する罰則が引き上げられました。無許可で盛土工事をおこなった場合、個人には3年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科されます。法人に対しては最大3億円の罰金が設定されており、旧法と比べて大幅に厳しくなりました。
また、行政から改善命令を受けたにも関わらず従わなかった場合にも罰則が適用されます。このような厳しい罰則を設けることにより、悪質な会社による違法な盛土を防ぎ、法律の実効性を高める狙いがあります。
盛土規制法と旧宅造法との違い

盛土規制法と旧宅造法の大きな違いは、規制の対象となる土地の範囲です。旧宅地造成等規制法では住宅地の造成工事だけが対象で、森林や農地に積まれた盛土は規制対象ではありませんでした。一方で、盛土規制法では土地の用途を問わず、災害の恐れがある全国のエリアが対象となります。
また、土地所有者の管理責任が明確化され、違反した場合の罰則も個人で最大1,000万円、法人で最大3億円の罰金へと大幅に引き上げられています。
詳しい違いは、以下の表をご覧ください。
| 項目 | 旧宅造法 (~2023年) |
盛土規制法 (2023年~) |
|---|---|---|
| 規制の対象 となる土地 |
宅地に限定 | 宅地・農地・森林など、用途を問わずすべての土地 |
| 規制区域の 範囲 |
市街地などの 限られたエリアのみ |
崩落によって人や建物に被害が及ぶ恐れのある幅広いエリア |
| 規制の対象 となる行為 |
宅地造成のための 盛土・切土 |
盛土・切土に加え、一時的な土石の堆積も対象 |
| 主な目的 | 宅地の崖崩れ等の防止 | 盛土などの崩落から住民の命と暮らしを守る |
| 許可の基準 | 限定的な基準 | 全国共通の技術基準を適用 |
| 土地所有者の 責任 |
明確な規定なし | 所有者・管理者に安全な状態を維持する義務を明記 |
| 罰則 | 懲役1年以下または 50万円以下の罰金 (都道府県知事の命令に違反した場合) |
最大で懲役3年・罰金1,000万円(個人)、罰金3億円(法人) |
(執筆者にて作成)
【出典】
e-Gov「宅地造成等規制法第26条」
公益社団法人全日本不動産協会「盛土規制法(宅地造成および特定盛土等規制法)施行で何がどう変わった?」」
国土交通省「宅地造成及び特定盛土等規制法について」
盛土規制法の2つの規制区域

盛土規制法では、災害のリスクに応じて「宅地造成等工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」の2種類の区域に指定されます。それぞれの区域の特徴を見ていきましょう。
宅地造成等工事規制区域
宅地造成等工事規制区域は、市街地や集落など、人が多く住むエリアで盛土や切土による被害が想定される土地に指定されます。住宅や学校、商店街が近くにあり、万が一盛土が崩れた場合に人命や建物への影響が大きい場所が該当します。
宅地造成等工事規制区域では、一定規模を超える盛土や切土、土石の堆積をおこなう際に都道府県知事、各市長(指定都市・中核市・特例市)の許可が必要です。日常生活に近いエリアだからこそ、工事の計画段階から施工、完成後の管理まで行政が厳しくチェックすることになっています。
特定盛土等規制区域
特定盛土等規制区域は、市街地から離れた山間部など、盛土が崩れた際に下流の人や施設へ被害が及ぶ恐れがある土地に指定されます。普段は人の出入りが少ない場所でも、地形的に土砂が流れ込む危険性がある場合に対象となります。
この区域でも一定規模を超える盛土や切土には都道府県知事、各市長(指定都市・中核市・特例市)の許可が必要です。特定盛土等規制区域を指定することにより、人里離れた場所でも災害につながる盛土を取り締まれるようにしています。
盛土規制法で許可が必要な工事の規模・基準

盛土規制法では、工事の種類や規模によって許可が必要か決まります。ここでは、盛土や切土の工事と、土石の堆積の2つに分けて、具体的な基準を見ていきましょう。
盛土・切土工事の基準
盛土や切土の工事で許可が必要になるのは、高さや面積が一定の基準を超える場合です。例えば、盛土の高さが1mを超える崖を生じさせる工事や、切土で2mを超える崖ができる工事は許可対象となります。
さらに、盛土と切土を合わせた高さが2mを超えるものや、造成面積が500平方メートルを超えるものにも許可が必要です。この基準は、工事後に地盤が崩れるリスクが高まる規模を想定して定められています。
土石の堆積に関する基準
土石の堆積とは、工事で出た土や石を一時的に積んでおく行為のことです。許可の対象となるのは、堆積の高さが2mを超える、または面積が500平方メートルを超える場合です。
一時的な仮置きでも、大量の土石が積まれた状態では崩れる危険があるため、規制の対象に含まれています。また、土石の堆積は一定期間を経過した後に搬出することを前提としており、工事終了後に速やかに撤去しなければなりません。
盛土規制法の許可申請の流れ

ここでは、盛土規制法の許可を得るためのステップを順に解説します。
事前相談・周辺住民への説明
工事を計画する段階で、自治体の担当窓口に事前相談をおこないます。あわせて、周辺住民への説明会も開催します。
工事内容や安全対策を周辺住民へ伝えることで、地域の理解を得ながら工事を進めることが可能です。
許可申請書の提出
事前相談と周辺住民への説明が済めば、許可申請書を都道府県知事、各市長(指定都市・中核市・特例市)に提出します。申請書に記載する内容は主に以下のとおりです。
- 工事主の氏名・住所
- 工事施行者の氏名・住所
- 設計者の氏名・資格
- 工事を行う土地の所在地、面積など
- 工事の種別・規模・着手予定日・完了予定日
- 盛土や切土の高さ・面積などの工事内容
申請書には、設計図書や資金計画書などの資料も添付します。提出された内容を行政が審査し、基準を満たしていれば許可が下りる流れです。
施工状況の定期報告
工事が始まったあとも、施工状況を定期的に行政へ報告する義務があります。報告の頻度は数カ月ごとが基本で、計画どおりに安全対策が取られているかを確認する目的があります。
中間検査
工事の途中に、行政による中間検査がおこなわれます。検査の対象となるのは、盛土の締め固めや排水施設の設置など、完成後に確認できない工程です。中間検査によって基準を満たしていないと判断された場合、工事の是正を求められる恐れがあります。
完了検査・検査済証の交付
工事がすべて終われば、行政による完了検査を受けます。設計どおりに施工されているか、技術基準に沿った安全性が確保されているかを最終チェックする段階です。問題がなければ検査済証が交付され、盛土は盛土規制法に沿って完成したものとして扱われます。
土地の売買で注意したいポイント

盛土規制法の施行により、土地の売買時に確認するべきポイントが増えました。ここでは、土地売買の際に気をつけたいポイントを3つ紹介します。
不動産会社から必ず説明を受ける
土地の売買契約を結ぶ前に、不動産会社から盛土規制法に関する説明を必ず受けてください。宅地建物取引業法では、重要事項説明のなかで盛土規制法に基づく制限を買主に伝えることが義務づけられています。
具体的には、購入予定の土地が規制区域に含まれているか、工事に許可が必要かなどの説明です。制限内容をしっかり把握して、契約後の工事トラブルを防ぎましょう。
規制区域内の土地かを確認する
購入を検討している土地が規制区域に入っているかを、自分でも調べておくと安心です。各都道府県や市区町村のWebサイトでは、規制区域を示した地図が公開されています。
東京都では「都市計画情報等インターネット提供サービス」で、盛土規制法関連の規制区域マップが確認できます。Webサイトで確認できない場合は、自治体の窓口に電話や訪問をして確認しましょう。
過去に盛土がされていた土地を確認する
土地を購入する際は、その土地が過去に盛土で造成されたかもチェックしましょう。過去の盛土は現在の技術基準を満たしていない場合があり、地盤が弱かったり、土砂崩れのリスクを抱えていたりする恐れがあります。
確認の方法としては、国土交通省が公開している「大規模盛土造成地マップ」の活用がおすすめです。ハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」にアクセスし、画面左側の「すべての情報から選択」→「土地の特徴・成り立ち」→「大規模盛土造成地」を選択すれば確認できます。
また、過去に地盤調査をおこなった盛土の場合は、事前に調査結果を取り寄せて確認しておくと安心です。
まとめ
最後に、この記事の要点を3つのポイントにまとめて振り返ります。
盛土規制法とは?
盛土規制法は、危険な盛土などから人々の命や財産を守るために定められた法律です。正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」で、2023年5月26日に施行されました。土地の用途を問わず、全国一律の基準で盛土や切土を規制しています。
盛土規制法が制定された背景は?
盛土規制法が生まれた直接のきっかけは、2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害です。不適切に積まれた盛土が崩落して被害が拡大したことから、従来の法律では対象外だった森林や農地も含めて規制する法律が整えられました。
盛土規制法の申請の流れは?
盛土規制法の許可申請は、事前相談と周辺住民への説明をおこなったあと、許可申請書を提出して、工事に着手します。工事中は施工状況の定期報告や中間検査を受け、工事が完了すれば完了検査を受けます。完了検査に合格すれば検査済証が交付され、工事の完了です。
盛土による災害から暮らしを守るために整備されたのが盛土規制法です。自分の土地や購入予定の土地が盛土規制法の対象になるかを確認し、不安があれば自治体や不動産会社へ早めに相談して、安心できる家づくりに役立てましょう。
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