左官工事とは?主な種類や流れ、費用、建築実例、塗装工事との違いを解説
今回は、左官工事の特徴や塗装工事との違い、主な種類を詳しく解説します。費用相場や建築実例も紹介するので、ぜひ参考にして理想の家づくりにお役立てください。
記事の目次
左官工事とは?

左官工事とは、コテなどの専用道具を駆使して、壁土やモルタル、漆喰(しっくい)などの自然素材を塗り上げる専門工事です。建物の壁や床、天井の最終的な仕上げとしておこなわれるもので、古くから日本建築を支えてきました。仕上げの美しさだけでなく、コンクリートの表面を平滑にする下地づくりでも重要な役割を担っています。
かつては和風建築が主流でしたが、近年ではモダンな洋風住宅やリノベーション物件でも広く採用されるようになりました。水を使わないクロス張りなどの「乾式工法」が増えるなかで、職人の手仕事による「湿式工法」ならではの味わいが見直されています。
左官の目的

左官工事をおこなう最大の目的は、壁を塗り固めて建物の耐久性を高め、構造体を保護することです。厚みのある仕上げ材が雨風や紫外線を防ぐことで、住宅の寿命を延ばす役割を果たしています。
また、調湿性や耐火性に優れた素材を使用し、快適で安全な住環境を整えることも大きな目的のひとつです。職人の手仕事による独特のデザインは、既製品にはない唯一無二の美しさと質感を表現してくれます。
左官工事と塗装工事の違い

左官工事と塗装工事の大きな違いは、使用する道具と仕上がりの質感です。
塗装工事は刷毛やローラー、スプレーなどの道具を使い、液体の塗料で薄く色を付けて表面を保護することを主な目的としています。一方で、左官工事はコテを使って材料を塗り重ねていくため、壁に厚みと重厚感が生まれるのが特徴です。
デザインの自由度でも、塗装工事と比較して明確な差があります。塗装は均一でフラットな仕上がりが基本ですが、左官はコテの動きによって独創的な模様や造形を表現できます。着色だけでなく、凹凸による陰影や素材感で空間に豊かな表情をもたらす点が、左官工事ならではの魅力です。
左官工事の主な種類

左官工事にはさまざまな種類があり、使用する素材やコテによる仕上げ方によって分類されます。それぞれの特徴を知ることで、機能性やデザインの好みに合わせた最適な選択が可能になるでしょう。ここからは、代表的な左官仕上げの工法を解説します。
漆喰仕上げ
漆喰仕上げは、消石灰を主成分とした自然素材を使う工法で、白くなめらかで美しいデザインが特徴です。調湿性や抗菌作用に優れており、古くから城郭や寺社仏閣、蔵などの壁に用いられてきました。近年では、その機能性と清潔感から現代住宅の内装材でも人気を集めています。
珪藻土仕上げ
珪藻土仕上げは、植物性プランクトンの化石を原料とした素材を塗って仕上げる工法です。目に見えない、無数の穴があいた多孔質の構造が特徴です。高い吸放湿性と脱臭効果を発揮するため、湿気や生活臭が気になるリビングや寝室の壁に適しています。自然素材ならではの優しい質感があり、アレルギー対策を考える方にも選ばれています。
土壁仕上げ
土壁仕上げは粘土質の土を主原料とし、藁(わら)や土、砂を混ぜて塗り上げる日本古来の伝統的な工法です。土そのものが持つ温かみのある風合いと、優れた調湿・断熱・蓄熱性能が大きな魅力です。和風建築や茶室だけでなく、モダンな空間のアクセントとして取り入れられることもあります。
押さえ仕上げ
押さえ仕上げは、コテを使って壁や床の表面を強く押さえ込み、緻密で平滑にする技法です。表面に光沢が出るまで磨き上げるため、見た目が美しく掃除がしやすいメリットがあります。コンクリート土間やモルタルの床など、耐久性や耐摩耗性が求められる場所でよく採用されます。
パターン仕上げ
パターン仕上げは、コテや刷毛(はけ)、ローラーなどの道具を使い、壁の表面に意匠的な模様をつける工法です。コテの動かし方ひとつで「扇仕上げ」や「スパニッシュ仕上げ」など、さまざまな表情を演出できます。職人の個性が光るデザイン性の高さが特徴で、空間に独自のアクセントを加えたい場合におすすめです。
掻き落とし仕上げ
掻き落とし仕上げは、壁材を塗り付けたあと、半乾きの状態で表面をブラシや剣山のような道具で削り落とす工法です。あえて表面を粗く仕上げることで、混ぜ込んだ石や砂の質感が現れ、重厚で深みのある風合いが生まれます。落ち着いた雰囲気を演出できるため、和風住宅の外壁や門柱などによく用いられます。
研ぎ出し仕上げ
研ぎ出し仕上げは、セメントに種石(大理石などの砕石)を混ぜて塗りつけ、硬化したあとに表面を砥石で研磨する工法です。磨き上げることで石の断面が現れ、まるで天然石のような高級感のあるつるつるとした手触りになります。人造石研ぎ出し(ジントギ)とも呼ばれ、水回りのカウンターや学校の手洗い場などで見かけることがあります。
左官工事の費用相場

左官工事にかかる費用は、使用する材料の種類や施工面積、現在の壁の状態によって大きく変動します。代表的な壁材ごとの特徴と1平方メートルあたりの単価を表にまとめたので、予算を立てる際の目安として参考にしてください。
| 種類 | 費用相場 (1平方メートルあたり) |
特徴 |
|---|---|---|
| 漆喰壁 | 4,000~ 8,000円 |
・消石灰を主成分とする自然素材
・優れた抗菌作用
・防火性と高い耐久性
|
| 珪藻土壁 | 3,000~ 7,000円 |
・植物性プランクトンの化石が原料
・高い調湿性と脱臭効果
|
| 土壁 | 5,000~ 8,000円 |
・土や藁を混ぜた伝統的な素材
・優れた調湿・断熱・蓄熱効果
|
| モルタル壁 | 1,000~ 5,000円 |
・セメントと砂と水を混ぜた素材
・高い強度と優れた耐水性
|
| ジョリパット壁 | 4,000~ 8,500円 |
・アクリル樹脂と砂などを混ぜた素材
・豊富な色・デザイン
・ひび割れにくい
|
| プラスター壁 | 7,000~ 10,000円 |
・鉱物質の粉末(石膏など)が主成分
・純白で美しい仕上がりと輝き
|
施工のしやすさや素材の機能性によって、価格帯には幅があります。調湿機能を持つ漆喰や珪藻土の自然素材は、モルタルに比べて費用がやや高くなるでしょう。正確な金額を把握して失敗のない工事にするためにも、左官工事を専門とする、複数の会社に見積もりを依頼して比較検討するのがおすすめです。
左官工事の流れ

左官工事は、壁材を一度塗って終わりではありません。下地づくりから仕上げまで、何度も塗り重ねる工程を経て完成します。ここでは、一般的な左官工事の流れを解説します。
下地準備
下地準備は、左官工事のクオリティを左右する重要な最初の工程です。施工箇所の汚れやほこりをていねいに取り除き、材料がしっかりと付着するように状態を整えます。窓サッシや床などが汚れないように、養生テープやシートでの保護も欠かせません。
下塗り
下塗りは、壁の強度を高めるとともに、上塗り材との密着性を高めるためにおこないます。下地の大きな凹凸をならし、必要に応じてひび割れ防止のネットを埋め込む処理を施します。この工程を疎かにすると、仕上がりの美しさや耐久性が損なわれます。
中塗り
中塗りは、下塗りの上にさらに層を重ね、壁の表面をより平滑にする作業です。仕上げ塗り(上塗り)を美しく見せるための土台づくりであり、壁全体の厚みを均一に整える役割を担っています。中塗りの段階で十分に乾燥させることで、ひび割れや剥がれを防ぎやすくなります。
仕上げ塗り(上塗り)
仕上げ塗り(上塗り)は、いよいよ目に見える表面部分を塗り上げる最終工程です。漆喰や珪藻土などの仕上げ材を使用し、コテを使って模様やテクスチャーを表現していきます。職人の技術とセンスがもっとも発揮される瞬間であり、空間の印象を決定づける作業です。
乾燥・養生
乾燥・養生は、施工した壁をしっかりと乾かし、完全に硬化させるための期間です。季節や天候、使用した材料によって必要な時間は異なりますが、数日から一週間程度かかることもあります。急激な乾燥はひび割れの原因になるため、風通しや温度管理に細心の注意を払わなければなりません。
左官仕上げの建築実例
左官工事を取り入れた建築実例を知ることで、空間づくりのヒントが見えてきます。ここでは、素材の組み合わせやライフスタイルに寄り添ったデザインなど、左官仕上げの魅力が詰まった2つの事例を紹介します。
左官の壁と木材を織り交ぜた空間

神奈川県茅ヶ崎市のマンションリノベーション実例では、古材の木材と左官仕上げをミックスし、テクスチャーを楽しむ住まいを実現しました。壁の一部や洗面スペースには、アメリカやハワイの建物に見られる珪砂(けいしゃ)入りの左官仕上げを採用しています。
イエローパインやチークの古材が持つ味わい深い表情と、左官ならではのラフな質感が調和し、湘南エリアらしい開放的でリラックスした雰囲気を生み出しました。窓際の床には、水に強く耐久性の高い左官材「モールテックス」を使用しており、インドアグリーンへの水やりも気兼ねなくおこなえるなど、デザインだけでなく実用性も兼ね備えた空間となっています。
猫も人もくつろげる住まい

東京都目黒区の一戸建てリノベーション実例では、「黒」と「木」をテーマに、猫も人も心地よく過ごせる空間を実現しました。ダイニングやリビングの床に施された黒いモールテックス仕上げが特徴的です。平らに塗るのではなく、あえて段差や窪み曲面を造形することで、猫にとってはアスレチックのような遊び場に、人にとってはベンチのように腰がかけられる憩いの場になっています。
一見クールで無機質な黒い床ですが、左官仕上げによる継ぎ目のないなめらかな質感は肌触りもよく、まるで岩風呂のようなくつろぎ感を提供してくれます。メンテナンス性と意匠性を両立させた、左官工事ならではのユニークな実例です。
まとめ
それでは、左官工事で押さえておきたいポイントをまとめていきます。
左官工事とは?
左官工事とは、コテと自然素材を使って壁や床を仕上げる職人による専門的な工事のこと。建物の耐久性を高める機能性はもちろん、手仕事ならではの温かみある空間を演出できる点が大きな魅力です。
左官工事と塗装工事の違いは?
塗装工事が色をのせて壁を保護する一方で、左官工事は材料を塗り重ねて厚みや立体感をつくるのが特徴です。シンプルさを求めるなら塗装、重厚感や素材感を重視するなら左官工事というように、目的に合わせて選びましょう。
左官工事の種類は?
左官工事には、漆喰や珪藻土、土壁などの素材や、押さえ仕上げやパターン仕上げの技法があります。それぞれの機能性や見た目の好みを踏まえて、最適な素材や仕上げを選んでください。
今回は、左官工事の解説をしました。左官工事は、素材や仕上げ方ひとつで住まいの表情を大きく変えられます。ぜひこの記事を参考にして、理想の空間づくりを実現させてください。
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