地下室のある家の魅力は?建てる際の注意点や建築費用・事例を紹介

また地下室のデメリットや注意点、建築費用の相場まで解説します。地下室を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
記事の目次
地下室がある家の魅力

地下室には、どのような魅力があるのでしょうか。薄暗いイメージがあり、居住空間としては活用できないと思っている方が多いかもしれません。家に地下室を設けることで、床面積を物理的に増やせますが、メリットはそれだけではありません。この章では、地下室の魅力を解説します。
温度・湿度が安定する
地下室は外気温の影響を受けにくく、比較的夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。また建築基準法によって、地下室には換気や調湿のための設備を設置することが義務付けられているため、地上にある部屋に比べて温度や湿度を管理しやすい空間です。
居住空間を拡大できる
地下室を作ることで、居住空間を拡大できるのもメリットのひとつです。通常は定められた容積率を上限として間取りを設計しますが、一定の条件を満たすことで地階部分の容積率は緩和され、延べ床面積の1/3までは容積率に換算されません。つまり1階が30平方メートル、2階が300平方メートルの場合、地階は300平方メートルまで容積率に含めずに済むため、最大で1.5倍の延床面積を確保できます。
耐震性がある
地下室は鉄筋コンクリート(RC造)で作られるため、いわば地下室が大きな基礎のような役割をし、耐震性が向上します。また地下室があることで建物の重心が重くなり、地下室がない家と比べて、揺れが小さくなる傾向があります。
プライバシーを確保できる
地下室は地面より下にあるため、外部からの視線を気にする必要がなく、プライバシーを確保したい方に向いています。
防音性と遮音性に優れている
地下室は地盤に囲まれているため、地上の部屋に比べて防音性と遮音性に優れています。また地下室の構造として用いられる鉄筋コンクリートは、構造的にも防音性や遮音性を備えています。
シェルターとしても活用できる
地下室は、災害時にシェルターとしても活用できます。強風時に飛来物によってガラスが割れる心配がなく、地下室部分は地震によって倒壊するリスクがありません。また温度や湿度が安定しているため、空調設備が使えない停電時も、比較的快適に過ごせます。
地下室の活用事例

次に、地下室の代表的な活用方法として、7つの事例を紹介します。
シアタールーム
地下室は外部へ音漏れする心配が少ないため、シアタールームに適しています。プロジェクターと大きなスクリーンを設置し、臨場感あふれる映画鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。
カラオケルーム
地下室にカラオケ機材を導入すれば、カラオケルームとしても活用できます。ミラーボールや調光できる照明など、光の演出も取り入れることでより本格的なカラオケルームになるでしょう。
音楽スタジオ
楽器の演奏を楽しみたい方には、地下室を音楽スタジオとして活用するのもおすすめです。音楽に限らず、配信や実況、歌など、大きな声を出すような趣味にもぴったりです。
ワインセラー
地下室は湿度や温度を管理しやすいため、ワインセラーにも向いています。ワイン専用の冷蔵庫もありますが、地下に本格的なワインセラーを作ることでより愛着が湧くことでしょう。
書斎・趣味部屋
リビングや寝室と異なる階層にある地下室は、書斎や趣味の部屋など、集中して作業したい時に便利な空間です。工房にしてDIYを楽しんだり、ゲーム部屋にしたり、家族専用の図書館にしたり……。アイデア次第でさまざまな活用方法が生み出せます。
トレーニングルーム
自宅の地下室に専用のトレーニングルームを確保できれば、専用の器具を置いていても日常生活の邪魔にならず、思い付いた時にすぐに運動できるのがメリットです。トレーニングをする際は床を振動させてしまう可能性がありますが、地下室であれば気兼ねなく運動ができるでしょう。
シェルター
近年は異常気象が多く、災害対策として地下室をシェルターとして検討する方もいます。地下室は温度や湿度が安定しているため、食料など備蓄品の保管にも向いています。
地下室の種類

地下室とひとくちにいっても、さまざまな種類があります。用途や条件にあわせて、地下室のタイプを選択しましょう。ここでは、地下室の種類を紹介します。
全地下タイプ
地下室全体が、地面の下に埋まっているタイプです。断熱性や遮音性には優れているものの、光や風が取り入れにくいため、居室利用以外の用途に向いています。
半地下タイプ
地下室の一部が、地面に埋まっているタイプです。全地下タイプよりもコストを抑えられ、窓を設けることで自然光や風を取り込みやすくなります。高低差のある敷地に採用されることが多く見られます。
ドライエリアタイプ
採光や通風のために、建物に面する地盤を深く掘り下げた、ドライエリアを設けたタイプです。地下室を居室として利用する場合は、大きな窓を設置しなければならないため、ドライエリアが必要になります。
地下室がある家のデメリット

地下室にはメリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、代表的なデメリットを4つ紹介します。
建築費用が高い
地下室は地上に建てるのに比べて、建築費が高くなる傾向があります。地盤調査や掘削、残土の処分費のほか、防水工事をする必要があり、工程が増える分工事費が高くなります。建築費用の相場については、後半で解説するので参考にしてください。
湿気とカビの問題が発生しやすい
窓による換気が難しい空間は湿気を帯びやすく、適切な湿度管理ができないと、湿気や結露に悩む可能性があります。除湿器や換気扇を採用した湿気対策が必要になるでしょう。
浸水のリスクや被害の可能性がある
水は低い場所へ流れるため、地下室は浸水リスクの可能性を無視できません。排水ポンプや止水板の設置を検討し、避難経路の確保も大切です。
部屋が暗くなりやすい
地下室は地盤に囲まれた空間のため、部屋が暗くなりやすいのがデメリットです。居室として利用する場合は、ドライエリアに面する窓を大きくするなど工夫をしましょう。
地下室がある家を建築する際の注意点

地下室のある家を建築する際に、注意すべきポイントを4つ解説します。
湿気対策をする
地下室は、地上にある部屋と比べて通気性が悪く、湿気対策が欠かせません。カビの発生を防ぐためにも、除湿器や換気扇の設置、エアコンの除湿機能などを利用して湿度管理を徹底しましょう。
採光を確保する
地下室をリビングや寝室など居室として利用する場合は、一定以上の大きさの窓を設置し、採光や通風を確保する必要があります。ドライエリアを設けるか半地下にするなどして、自然光や風を取り入れる工夫をしましょう。
防水対策を講じる
地下室は地盤面よりも低い場所に位置するため、浸水や冠水を防ぐ対策が不可欠です。例えば排水ポンプや止水板などを設置し、防水対策をしてください。
避難経路を確保する
自然災害時を想定し、地下室から避難する経路を確保しておきましょう。浸水により廊下や階段に水が流れ込むと、地上へつながるドアが開けられなくなることがあります。例えばドライエリアから地上に出るための階段やはしごを設置して、避難経路を決めておくようにしてください。
地下室がある家の建築費用相場

地下室がある家の、建築にかかる費用相場の内訳と、費用を抑えるコツを解説します。
調査・施工費用の内訳
敷地の調査から施工費用の内訳は、それぞれ以下のとおりです。
地盤・地質調査費
建築する前にボーリング調査をするのが一般的で、10万~30万円が目安です。
構造計算費
一般的な2階建てを建てる場合は不要ですが、地下室を設ける場合は構造計算が必要になります。構造計算の費用は、25万~30万円が相場です。
設計費
地下部分は、鉄筋コンクリートで設計するため構造図が必要になり、その設計費として30万~80万円程度かかります。
山留工事費用
山留工事とは、地盤を掘削する際に周囲が崩れないように、作業するスペースを確保するための工事です。敷地の広さや状況によって異なりますが、150万~200万円程度かかることが多いでしょう。
残土処分費
掘り起こした土を、処分する費用が発生します。地下室の広さや土の量によって異なりますが、一般的なケースでは、200万円前後かかります。
配筋・RC打設工事費
地下室部分は鉄筋コンクリート造になるため、配筋・RC打設工事費がかかります。地下室の大きさによって異なりますが、200万~500万円が目安です。
その他工事費用
上記以外の工事費として、防水工事費(80万円前後)や、排水ポンプ設置費(100万円前後)、ドライエリア工事費(150万円前後)などがかかります。実際にかかる費用は、ハウスメーカーや工務店、建築会社に相談してみましょう。
費用を抑えるコツ
ここからは、地下室の工事費をなるべく安く抑えるコツを紹介します。
設計をシンプルにする
地下室にトイレや洗面所を設けると、給排水設備工事が必要になります。地下室はなるべくシンプルな設計にして、建築費用を抑えましょう。
適切な施工方法を選ぶ
ドライエリアタイプではなく傾斜を利用して半地下にするなど、敷地の条件に合わせて施工することで、建築にかかる費用を抑えられます。
地下室がある家の建築事例
地下室のある家の建築事例を、参考として2例紹介します。
半地下をインナーガレージに改装

築50年の一戸建てをリノベーションし、半地下部分をインナーガレージにした事例です。インナーガレージには自転車を修理するための道具や材料、パーツ類を置き、家族の創作の場として活用しています。
2階建+地下+ロフトを室内階段でつなげた4層のミルフィーユ住宅

2階建に地下室とロフトを設けることで、大きな空間を実現した事例です。当初地下室は収納スペースとして活用する予定でしたが、壁に囲まれた空間は居心地がよく、ついつい居座りたくなるスペースです。
地下室がある家のまとめ
最後に、地下室についてまとめます。
地下室の種類は?
地下室は主に3種類あります。地下室全体が地面の下に埋まっている「全地下タイプ」、地下室の一部が地面に埋まっている「半地下タイプ」、建物に面する地盤を深く掘り下げた空間を利用する「ドライエリアタイプ」です。
地下室がある家の魅力は?
一定の条件を満たすことで容積率を緩和できるため、地下室を設けることで最大で1.5倍の床面積の家が建てられます。温度や湿度が安定しやすく、プライバシーを確保しやすい特徴があります。また耐震性や防音性(遮音性)が高いため、シェルターにも活用できます。
地下室がある家を建築する際の注意点は?
地下室は光を取り入れる工夫や、湿気や防水対策が必要になります。基本的には地盤に囲まれた空間になるため、避難経路の確保も忘れないようにしましょう。
地下室は、限られた広さの土地に大きな家を建てたい方にとって、有効な手段です。地下室は耐震性や防音性に優れているというメリットもあります。一方で、湿気によりカビが発生する可能性や浸水リスクなどがあり、安心・安全に暮らすためには、一定の対策や工夫が必要です。地下室のある家を建ててから後悔しないためにも、実績が豊富なハウスメーカーや工務店に依頼することをおすすめします。
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