家を建て替える場合の費用相場はいくら?土地の広さごとの目安も紹介

本記事では、土地がある場合の建て替え費用を解説。支払いの内訳や坪数別の建て替え費用を確認し、現実的な資金計画を立てましょう。
記事の目次
土地ありで家を建て替える場合の費用相場

土地がすでにある状態で家を建て替える場合、土地の購入が不要なため、費用を抑えられるメリットがあります。住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査(PDF)」によると、注文住宅の平均費用は3,863万円でした。注文住宅の広さや地域によって異なりますが、予算を組む目安にしましょう。
さらに、地盤や法規制の確認、近隣との調整などが必要です。解体工事や地盤工事の費用も考慮し、予算を多めに見積もると安心です。
家の建て替え費用の内訳

建て替え費用の総額を正しく把握するためには、工事に関係するコストを分けて考えることが大切です。本体工事費だけではなく、解体工事や地盤調査などの費用や、住宅を完成させるための付帯工事なども忘れてはなりません。
予想以上に費用がかさむことがあるため、余裕を持った資金計画を立てましょう。では、家の建て替え費用の内訳を解説します。
解体工事費用
解体工事とは、新しく家を建てるために、既存の建物を取り壊す工事のことです。解体費用には建物本体の撤去に加え、基礎の掘り起こしや廃材の運搬・処分費、騒音や粉塵対策などの作業費が含まれます。以下で、住宅の構造別の具体的な費用を見てみましょう。
住宅の構造 | 1坪あたりの費用 |
---|---|
木造住宅 | 3万1,000円〜4万4,000円 |
鉄骨住宅 | 3万4,000円〜4万7,000円 |
鉄筋コンクリート住宅 | 3万5,000円〜8万円 |
ただし、アスベストが含まれる建材が使われている場合は特別な処理が必要となり、費用が高額になる可能性も。また、敷地への重機の搬入経路が狭い場合などは、手作業が増えるため人件費が高くなりやすくなります。見積もりをする際は現地調査を依頼しましょう。
地盤調査費用
地盤調査は、家を支える土台の状態を把握するために欠かせない工程です。一戸建ての地盤調査の方法は、大きく分けて3種類あります。
地盤調査の種類 | 調査の方法 | 費用 |
---|---|---|
SWS試験 | 試料を採取しない 簡易的な調査方法 |
10万〜10万円程度 |
ボーリング調査 | ボーリングをおこなう 高精度な調査方法 |
25万〜30万円程度 |
表面波探査法 | 地盤に振動を与えて 測定する調査方法 |
10万〜12万円程度 |
調査の結果、地盤改良が必要と診断された場合は、柱状改良や表層改良が必要です。30万〜150万円程度の追加費用が発生するため、資金計画を立てる際は注意しましょう。
本体価格
本体価格は、建物の建築費を指します。本体価格は、使用する建材や断熱性、設備のグレードによって価格差が大きく、家の建て替え費用のなかでもコストが変動しやすい部分です。ローコスト住宅の場合は、坪単価40万〜50万円程度、中〜高性能住宅の場合は、坪単価60万〜80万円以上が目安になります。
しかし、長期優良住宅の認定を受けると光熱費削減や補助金対象になるケースもあります。認定を受ける際に一定の追加費用が発生しますが、長期的な視点で判断して検討しましょう。
付帯工事費用
付帯工事は、駐車場やフェンス、庭など、建物の外側に関する工事全般を指します。本体価格の15〜25%程度が目安ですが、給排水設備や電気・ガス設備も含まれるため、内容によっては500万円以上かかることもめずらしくありません。
また、地域によっては浄化槽設置や排水経路の整備が必要です。浄化槽を設置する場合は、補助金制度を活用できるケースがあるため、お住まいの自治体に問い合わせましょう。
諸費用
諸費用には、建築確認や完了検査の申請、登記費用や各保険の加入費用などが含まれます。その他にも、印紙税や司法書士への報酬、地鎮祭・上棟式の費用、近隣住民への挨拶まわり用の粗品費用など、細かな出費が多く発生します。諸費用は、物件価格の3〜7%程度が目安です。忘れがちですが、諸費用を含めた資金計画を立てましょう。
仮住まい・引越し費用
家を建て替えている間、賃貸物件やマンスリーマンションなど、仮住まいをするための費用が発生します。賃貸契約の際の敷金や礼金、保証金をはじめとした初期費用の相場は家賃の約6カ月分。さらに仮住まい中の家賃も支払う必要があるでしょう。また、繁忙期は引越しの費用が高騰するため、コスト削減を狙う場合は、計画的なスケジューリングが大切です。
【坪数別】土地の広さごとの建て替え費用

建物にかかる費用は、延床面積によって大きく異なります。建物が大きくなるほど構造や基礎が複雑になり、資材や人件費が増えるため、単純な坪単価で計算するのではなく、トータルコストで考えることが大切です。家族構成やライフスタイルに合わせた最適な坪数を考えておきましょう。
以下からは、20坪・30坪・40坪のケースを比較して紹介します。
20坪の費用相場
20坪の家は、単身世帯や夫婦2人暮らしなどに適しています。都市部の狭小地に多く、階層をうまく活用した設計が求められるでしょう。
費用の内訳 | 予算の目安 |
---|---|
本体工事費 | 800万〜1,600万円程度 |
解体費用 | 60万〜160万円程度 |
地盤調査費用 | 10万〜30万円程度 |
付帯工事・諸費用 | 144万〜512万円程度 |
仮住まい・引越し費用 | 60万〜100万円程度 |
合計 | 1,080万〜2,410万円程度 |
延床面積が限られているため、空間を有効に活かす間取りや収納プランの工夫が費用対効果を高めるポイントです。構造をシンプルにしたり、必要な設備に優先順位をつけたりすることで、予算を抑えつつ満足度の高い住まいを実現できるでしょう。
30坪の費用相場
30坪の家は、4人家族の標準的な広さです。LDKや子ども部屋をしっかり確保できるため、人気があります。建物の形状を整えやすく、間取りの自由度も高いため、コストパフォーマンスに優れています。
費用の内訳 | 予算の目安 |
---|---|
本体工事費 | 1,200万〜2,400万円程度 |
解体費用 | 90万〜240万円程度 |
地盤調査費用 | 10万〜30万円程度 |
付帯工事・諸費用 | 216万〜768万円程度 |
仮住まい・引越し費用 | 60万〜100万円程度 |
合計 | 1,580万〜3,540万円程度 |
住宅性能や外構など、どこまでこだわるかによって費用は上下しますが、全体的にバランスがとれた家づくりをしたい方におすすめです。
40坪の費用相場
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査(PDF)」によると、一戸建ての平均坪数は約36坪のため、40坪の家は比較的広いといえるでしょう。子どもの多い家庭や大きな家を希望する世帯に適した広さです。ただし、建物が大きくなる分だけ工事費・材料費が増えるため、費用が高額になりやすい点には注意が必要です。
費用の内訳 | 予算の目安 |
---|---|
本体工事費 | 1,600万〜3,200万円程度 |
解体費用 | 120万〜320万円程度 |
地盤調査費用 | 10万〜30万円程度 |
付帯工事・諸費用 | 288万〜1,024万円程度 |
仮住まい・引越し費用 | 60万〜100万円程度 |
合計 | 2,080万〜4,680万円程度 |
高気密・高断熱などの仕様を採用するとランニングコストは抑えられますが、初期費用は増加するため、長期的な視点で計画を立てましょう。
家を建て替えるまでの流れと支払いのタイミング

家の建て替えは各工程を経て半年〜1年以上かかります。全体の流れと支払いのタイミングを事前に把握し、余裕を持った資金準備が欠かせません。家を建て替えるまでの流れと支払いのタイミングは、以下のとおりです。
項目 | 内容 | 支払いのタイミング・ 金額 |
|
---|---|---|---|
1 | 相談・プラン作成 | 間取りや予算の相談 | 無料または契約金を支払う |
2 | 解体工事 | 既存の建物の解体作業 | 着工時に全額または半額を支払う |
3 | 地盤調査・改良 | 地盤調査と補強工事 | 調査後または工事後に支払う |
4 | 工事請負契約 | 工務店との正式契約 | 契約時に建築工事費の10%程度を支払う |
5 | 着工 | 建物本体の工事開始 | 工程の中間で建築工事費の20〜40%支払う |
6 | 上棟〜完成 | 構造〜内装完了 | 建築工事費の残金を支払う |
7 | 引渡し・入居 | 検査・鍵の引渡し | 最終精算・諸費用を支払う |
支払いのタイミングによっては資金繰りに影響するため、住宅ローンの借入スケジュールを考えて進めることが大切です。
家を建て替えるお金がない場合の対処法

建て替えには多くの費用がかかるため、全額を自己資金で賄うことは難しいと感じる方も多いでしょう。
資金面で悩んでいる場合でも、金融機関の住宅ローンや自治体・国の補助金制度など、資金を確保する方法があります。では、家を建て替えるお金がない場合の対処法を解説します。
住宅ローンを利用する
住宅ローンは、建て替えでも利用可能です。金融機関によっては、建て替え専用ローンやリフォーム一体型住宅ローンもあるため、自分に合った住宅ローンを利用しましょう。
審査では年収や勤続年数、他の借入状況などが重視されるため、事前審査を通して早めに条件を把握しておきましょう。
補助金を利用する
ZEH住宅や長期優良住宅、耐震改修、省エネ設備の導入などをおこなうと、国や自治体から補助金を受けられる場合があります。費用負担を抑えながら、設備のグレードアップや住宅性能を向上させることができるため、積極的に活用するとよいでしょう。
ただし、申請には期限や要件があるため、着工前の早い段階から情報を集め、建築会社と相談しながら準備を進めましょう。
ローコスト住宅を検討する
ローコスト住宅とは、建材や設備をシンプルにし、工期を短縮することでコストを抑えた住宅のことです。間取りが規格化されており、設備や仕様を最低限にしたローコスト住宅なら、坪単価40万円前後で実現可能です。最低限の機能で十分だと感じる方や、予算を抑えて早く住み始めたい方に向いていますが、必要な性能までカットしすぎないようにバランスを見極めることが大切です。
リフォームを検討する
建物の構造がしっかりしている場合は、コストを抑えつつ希望の空間を作れるリフォームも検討しましょう。耐震補強や断熱改修、水回りの交換など部分的な工事で住環境を改善できるケースも多く、住み慣れた土地での暮らしを続けたい方に適しています。ただし、構造的な制約が多く、間取り変更が難しいこともあるため注意が必要です。
建て替えとリフォームで迷った場合に確認すること

住宅の状態や家にかけられる予算によっては、建て替えとリフォームのどちらが適しているか判断に迷う方もいるでしょう。どちらにするかを迷ったら、複数の視点から総合的に検討することが大切です。では、建て替えとリフォームで迷った場合の判断基準をチェックしましょう。
建物の劣化状態を確認する
まずは、現在の建物の状態を客観的に確認しましょう。外壁や屋根の傷みだけではなく、インスペクションを依頼して、基礎や柱の腐食、白アリ被害、傾きの有無なども調査することが大切です。修繕の可否や将来的なリスクを明確にして、致命的な劣化があれば建て替えを選択しましょう。
家にかける予算を確認する
理想の家を実現するためには、資金をいくら用意できるかを把握する必要があります。自己資金だけではなく、住宅ローンや補助金の利用可能額、長期的視点でのメンテナンス費を踏まえた総予算を設定しましょう。家にかけたい金額と、実際にかけられる金額に差がある場合は、優先順位を明確にして、妥協点を見つける工夫が必要です。
土地の法的制約を確認する
都市計画法や建築基準法などの法律によっては、建て替えできない可能性があります。土地の建ぺい率や容積率、斜線制限、接道義務などの法的制約を確認し、建て替えの可否を確認しましょう。厳しい制限があるエリアでは、想定していたプランが実現できないため、事前に法務局や市役所に確認しておくことが大切です。
今後どれくらい住むかを確認する
建て替えかリフォームかを選ぶ際は、家に何年住み続ける予定なのかを考えることも大切です。長く住み続けるつもりなら、新築のほうがメンテナンスや快適性の面で有利です。一方、近いうちに子どもが独立する、もしくは引越す予定がある場合は、コストの少ないリフォームが適しているケースもあります。将来の生活を見据え、10〜30年後の家族構成も視野に入れて判断しましょう。
まとめ
土地がある状態での建て替えは、住宅性能の向上や理想の間取りの実現がしやすくなります。一方、事前準備や資金計画の面で検討すべき項目が多くあります。費用の内訳や建て替えの流れを正確に把握し、現実的な資金計画を立てることで、納得のいく家づくりが叶えられるでしょう。リフォームとの比較検討も含め、家族構成やライフプランに合った最適な選択をしましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ