新築で平屋を建てる時の費用相場は?建築費用に影響を与える要素や抑えるポイントを解説

注文住宅で新築の平屋を建てるには、費用がどれくらいかかるのか、予算内で収まるのか不安になりますよね。本記事では、平屋の建築費用の相場や費用が変動する要素、コストを抑えるポイントを解説します。夢のマイホームで後悔しないために、ポイントをよく押さえておきましょう。
記事の目次
新築で平屋を建てる費用の相場

新築で平屋を建てる場合の費用は、どれくらいかかるのでしょうか。平屋の建築費用は、間取りや設備によっても変動しますが、1坪あたりの建築費用は約50万円~70万円とされています。坪単価から算出した25坪〜50坪までの建築費用を、下表にまとめました。
坪数 | 平屋の建築費用 |
---|---|
25坪 | 1,250万円〜1,750万円 |
30坪 | 1,500万円〜2,100万円 |
35坪 | 1,750万円〜2,450万円 |
40坪 | 2,000万円〜2,800万円 |
45坪 | 2,250万円〜3,150万円 |
50坪 | 2,500万円〜3,500万円 |
平屋に限ったデータはありませんが、住宅金融支援機構の「2024年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅の平均所要資金は3,936万円です。床面積の平均が111.2平方メートルであるため、坪単価は約117万円となります。注文住宅は2階建てで建てられることも多く、その分建材や工期、人件費などがかかることから、建築費用が高くなると考えられます。
新築平屋の建築費用に影響を与える要素

平屋の建築費用は、さまざまな要素によって変動します。本章では、具体的にどのような要素が影響を与えるのかを解説します。
土地の広さ
新築で平屋を建てる際の費用は、土地の広さに大きく左右されます。平屋では、すべての生活空間をワンフロアに配置するため、ある程度の土地の広さが必要です。例えば、2階建ての40坪の家を建てる場合、1階と2階にそれぞれ20坪ずつ配置すれば建てられます。しかし、平屋の場合は40坪なければ建てられません。
また、用途地域ごとに設定されている「建ぺい率」を守る必要もあります。建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のこと。例えば、建ぺい率60%で40坪の平屋を建てたい場合、土地は約66坪なければなりません。平屋を建てる際には、ある程度広い土地が必要になるため、費用は高くなります。
建物の形状
建物の形状によっても、平屋の建築費用は変動します。シンプルな四角い形状であるほど、外壁の面積が少なくなるため、建築費用を抑えやすくなります。
反対に、L字型やコの字型などの角が多い形状は外壁の面積が広くなり、それにともない建材の量や施工の手間が増えるため、建築費用も高くなります。また、建物の形状が複雑な場合、設計料が高くなる可能性も。建物の形がシンプルなほうが、建築費用を抑えられることを理解しておきましょう。
屋根の形状
平屋の建築費用は、屋根の形状によっても左右されます。平屋でよく使われる屋根の形状は、次の4種類です。それぞれの特徴と費用感をまとめました。
屋根の形状 | 特徴 | 費用 |
---|---|---|
片流れ屋根 | 1枚の大きな屋根が片側に傾いている 雨漏りがしにくい |
安い |
切妻屋根 | 2方向に勾配が付いている ロフトや小屋裏を設計しやすい |
比較的安い |
寄棟屋根 | 4方向に勾配が付いている 雨や風、日差しなどから外壁を守りやすい |
高い |
陸屋根 | フラットで勾配がない ルーフバルコニーとして活用できる |
比較的高い |
平屋は屋根の面積が大きいため、形状によって建築費用が変動します。先述のように、同じ坪数の2階建てと比較した場合、床面積が広くなるため、屋根の面積も大きくなります。さらに、形状が複雑になり、勾配が付くほど屋根の面積も大きくなるため、建築費用も高額になります。
建物の広さ
建物が広いほど、平屋の建築費用は高くなります。建物が大きいほど、地盤改良や基礎工事などの範囲が広がるため、建築費用も高くなります。なかには、どれくらいの広さが必要なのかわからない方もいるでしょう。ここでは、国が定めている誘導居住面積水準をご紹介します。これは、豊かな生活を送るために必要と考えられる住宅の面積を求めるものです。
一般型誘導居住面積水準
単身者:55平方メートル
2人以上の世帯:25平方メートル×世帯人数+25平方メートル
例えば、3人家族の場合は、次の計算式で住宅面積を求められます。
25平方メートル×3+25平方メートル=100平方メートル
坪数にすると約30坪は必要になる計算です。しかし、ライフスタイルや価値観によって必要な面積は異なるため、あくまで参考に留めましょう。
部屋数
部屋数が増えるほど、平屋の建築費用も高くなります。部屋が増えれば、その分壁が必要になり、ドアや窓、収納スペースなども増えるため、その分の建具もなければなりません。他にも、部屋が多いほど、電気工事や内装工事などの施工の手間がかかるため、全体として建築費用が高くなるでしょう。
外構費用
外構費用も、建築費用に大きな影響を与える要素の一つです。外構費用とは、門扉やフェンス、駐車場など建物の外に関する工事費用のこと。工事の内容やデザイン、敷地の広さによって工事費用は異なります。「家の顔」とも呼ばれる部分であり、防犯性やプライバシーの保護にも関係するため、よく検討することが大切です。
平屋のメリット

現在、平屋が人気を集めています。平屋にはどのようなメリットがあるのでしょうか。本章では5つのメリットを解説します。
メンテナンス費用を抑えやすい
平屋のメリットとして、メンテナンス費用を抑えやすいことが挙げられます。例えば、2階建ての建物では、外壁や屋根の修繕をする際、足場を組む必要があります。しかし、平屋の場合、足場を組む必要がなかったり、組む場合でも最小限で済みます。そのため、メンテナンスにかかる費用を抑えやすいでしょう。
使いやすい動線配置にできる
使いやすい動線配置にできる点も、平屋のメリットです。フロア間の移動がないため、無駄な動きが減り、日々の生活がよりスムーズで快適になります。例えば、2階建ての場合、リビングから2階に移動するなど、階段の上り下りが発生します。もし、高齢者や小さな子どもがいる場合は、転倒のリスクもあるでしょう。しかし、平屋には階段がないため、水平移動のみで完結します。使いやすい動線配置にすれば、家事の効率もよくなり、負担も軽減されるでしょう。
バリアフリーに対応しやすい
バリアフリーに対応しやすい点も、平屋のメリットです。平屋はワンフロア構造のため、段差をなくしやすく、安心して過ごせるでしょう。例えば、高齢になると足腰も弱くなり、関節を痛めたり、少しの段差でつまずいてしまうことも。
しかし、平屋であればフラットな床を実現しやすいため、そのような心配がありません。また、将来的に車椅子が必要になったとしても、事前に廊下やドアの幅を広げたり、引き戸を採用しておくことで安全に移動できるでしょう。
家族間でコミュニケーションをとりやすい
平屋を建てるメリットは、家族間でコミュニケーションをとりやすいことです。すべての生活空間がワンフロアに集約されているため、自然と顔を合わせる機会が増え、家族のつながりを深められます。
例えば、子ども部屋が2階にある場合、家族の声や気配を感じにくくなることも。しかし、平屋であればワンフロアに部屋が配置されているため、家族の声や気配を常に感じることができます。
地震や台風に強い
地震や台風に強いことも、平屋のメリットです。平屋は建物の高さが低く、重心が安定しているため、地震の揺れや風の影響を受けにくくなっています。例えば、2階建てで耐震性を高めたい場合、2階部分を支えるために、強固な壁や柱が必要です。
しかし、平屋はワンフロアのため、支えなければならないものが少なく、構造的な負荷も減らせるでしょう。特に地震の多い日本では、地震や台風に強い平屋は、安心して暮らせる家といえます。
平屋のデメリット

平屋には動線配置を組みやすかったり、地震や台風に強いといったメリットがあります。しかし、ワンフロアであるがゆえに、デメリットもあります。後悔のない選択をするためにも、デメリットも把握しておきましょう。
広い土地が必要になる
平屋のデメリットは、広い土地が必要になることです。生活空間をワンフロアに収めるため、同じ床面積の2階建てよりも建物の面積が大きくなります。先述のように、建ぺい率を守らなければならないため、2階建てよりも広い土地が必要になるでしょう。また、駐車場や庭を確保しようとすると、ますます土地が広くなければなりません。そのため、立地によっては平屋の建築が難しいケースもあるでしょう。
日当たりや風通しが悪くなりやすい
平屋のデメリットとして、日当たりや風通しが悪くなりやすい点が挙げられます。平屋は高さが低いため、周囲に高い建物が建っている場合、その影響を受けやすくなります。例えば、周りを2階建ての住宅で囲まれている場合、日差しや風が遮られてしまうでしょう。日差しや風が通りづらくなると、部屋が暗く空気の通りも悪いため、カビの発生につながることもあります。
プライバシーの確保が難しい
平屋を建てるデメリットとして、プライバシーの確保が難しくなることがあります。平屋は1階しかないため、通行人や隣家からの視線が室内に入り込みやすくなります。例えば、日当たりや風通しをよくするために、窓を大きくしたり、多くすると外部からの視線が気になることも。
また、外部からだけでなく、家族間のプライバシーも確保しにくくなります。これは、ワンフロアで部屋同士が近いためです。平屋を建てる際には、プライバシーの確保にも配慮する必要があるでしょう。
防犯対策が必要になる
2階建て住宅と比較して、防犯対策が必要になる点も平屋のデメリットです。平屋の場合、玄関や窓、勝手口など、すべてが1階にあるため、外部から侵入しやすくなっています。
プライバシーの確保と同様、日当たりや風通しをよくするために、窓を増やすほど、その分対策をしなければなりません。暮らしの快適性と安全性をどう両立させるか、よく考えて設計する必要があるでしょう。
建築費用が高くなる傾向にある
建築費用が高くなる傾向にあることも、平屋のデメリットです。繰り返しになりますが、生活空間をワンフロアに配置するため、同じ床面積の2階建て住宅と比較した場合、建物の建築面積が大きくなります。
建物の建築面積が大きくなれば、基礎工事が必要な部分も広くなります。また、屋根の面積も大きくなるため、建材の量が増え、建築費用も高額になるでしょう。
水害時の浸水リスクが高い
平屋はワンフロアであるがゆえに、水害が発生した時の浸水リスクが高くなります。生活空間が1階にあるため、浸水被害を直接受けることに。最悪の場合にはすべて浸水し、生活できなくなるでしょう。また、逃げ場所がないため、命が危ぶまれる可能性もゼロではありません。もし2階建て住宅であれば、万が一、1階部分が浸水しても2階に避難が可能です。平屋は地震や台風には強いですが、水害には弱いことを理解しておきましょう。
新築平屋の建築費用を抑えるポイント

同じ床面積である時、2階建て住宅と比較して、建築面積が広い平屋は建築費用が高くなる傾向にあります。少しでも費用を抑えるために、ここからは建築費用を抑えるためのポイントを見てみましょう。
デザインや間取りをシンプルにする
平屋のデザインや間取りをシンプルにすると、建築費用を抑えられます。複雑なデザインや間取りは建材の量が増え、工事の手間もかかるため、建築費用がかかる要因となります。
例えば、壁やドアを減らせば、建材や建具の量が減るため、建築費用を抑えられるでしょう。デザインや間取りをシンプルにすることで、建材の量が減り、工事期間の短縮もでき、建築費用を抑えられます。
設備のグレードを抑える
設備のグレードを抑えることも、平屋の建築費用を抑えるためのポイントです。最新のモデルや高級なものを選ぶのではなく、必要十分な機能のグレードを選ぶことで、費用を抑えられます。
例えば、キッチンや浴室などの設備は、同じメーカーでも低価格からハイグレードまで用意されており、価格帯が大きく異なります。本当に必要な機能を見極め、適切な設備を選ぶことで、建築費用を抑えられるでしょう。
補助金や減税制度を活用する
補助金や減税制度を活用すると、平屋の建築費用を抑えられます。一定の要件を満たすことで、補助金を受け取れます。例えば、「子育てグリーン住宅支援事業」では、GX志向型住宅を建てれば、160万円の補助金を受け取れます。
なお、GX志向型住宅とは、優れた断熱性能と高効率の設備を導入し、高い省エネ性能を持つ住宅のこと。ただし、申請には上限がありますので、ホームページで確認してください。
平屋の建築実績が豊富な会社に依頼する
平屋の建築費用を抑えるために、平屋の建築実績が豊富な会社に依頼することも一つの方法です。実績が豊富な会社は、効率的な設計や施工ノウハウを確立していることから、さまざまな無駄を省き、建築費用を抑えられるでしょう。また、日当たりや風通し、防犯といった平屋特有の問題に対する解決策も持っており、質の高い住宅の建築を期待できます。
新築で平屋を建てる際の注意点

プライバシーの確保や防犯対策の必要性など、平屋には注意しなければならない点があります。後悔のない家づくりのためにも、平屋を建てる際の注意点を押さえておきましょう。
ハザードマップで水害・津波リスクを確認する
平屋を建てる際には、ハザードマップで水害や津波のリスクを確認しておきましょう。デメリットで取り上げたように、平屋はワンフロアのため、水害時のリスクが高くなっています。被害に遭う可能性の高い地域は、避けたほうが無難でしょう。もしそのような地域に建てたい場合は、家の地盤を高くするか、高台の土地を選ぶなどの対策が必要です。
建ぺい率を調べておく
建ぺい率を調べておくことも、平屋を建てる際の注意点です。建ぺい率によって建てられる建物の面積が決まるため、事前に調べておかなければ、想定していたよりも家が狭くなってしまう可能性があります。
例えば、60坪の土地で建ぺい率が60%の場合、建てられる建物の最大坪数は36坪となります。土地が狭かったり、建ぺい率が低い場合、理想とする間取りを実現できないかもしれません。
また、庭や駐車場のスペースを確保できないといった問題が生じることも。購入したい土地の目星がついている場合は、建ぺい率を調べておきましょう。まだ土地が見つかっていない場合は、さまざまな施工実績を見ながら、理想とする平屋の広さはどれくらいなのかを決めておくと、土地が見つかった場合、実現可能かどうか判断しやすくなるでしょう。
日当たりや風通しを考慮する
新築で平屋を建てる際には、日当たりや風通しを考慮しましょう。周囲に高い建物がある場合、冬場に光が届かず、家全体が暗くなる恐れがあります。また、風の通り道が遮られることで、新鮮な空気が入りにくくなることも。中庭をつくったり、吹き抜けを採用すると、日当たりや風通しがよくなるでしょう。他にも、高窓の設置やL字型やコの字型の間取りにすることも効果的です。
防犯対策をしっかりおこなう
平屋はすべての開口部が1階にあり、外部から侵入しやすいため、防犯対策をしっかりおこないましょう。窓やドアには、防犯ガラスやフィルム、センサーライトなどを付けると安心です。また、窓を高い位置に配置することで、外部からの視線を遮りつつ、防犯対策にもなります。安心して過ごせる家にするためにも、設計段階から防犯を意識しましょう。
新築で平屋を建てる際のよくある質問
新築で平屋を建てる際によくある質問をまとめました。
平屋を建てる時の平均費用はいくら?
平屋に特化した公的なデータはありません。しかし、1坪あたりの建築費用は約50万円~70万円とされています。例えば30坪なら、1,500万円〜2,100万円が目安となるでしょう。ただし、これは建物の本体の金額であり、土地の有無や外構工事などによって、総額は大きく変動します。
平屋を800万円で建てる場合の間取りは?
800万円で平屋を建てる場合、1LDKや2DKなどのコンパクトな間取りとなるでしょう。水回りを1カ所に集約したり、無駄なスペースを省くことで、限られた予算内でも快適な住まいを実現できます。ただし、将来のライフスタイルや家族構成なども踏まえて、慎重に計画を立てましょう。
予算1,000万円で平屋を建てられる?
予算1,000万円で平屋を建てることは可能です。しかし、間取りは1LDKや2DKなどコンパクトなものになるでしょう。また、設備や内装の選択肢が限られるため、家に対する理想が高い場合は不満が残る可能性があります。優先したい項目や不要な項目を明確にし、メリハリをつけることが大切です。
まとめ
本記事では、新築で平屋を建てる際の費用を解説しました。1坪あたり約50万円〜70万円が相場ですが、屋根の形状や間取りなどによっても変動します。また、同じ床面積で2階建て住宅を建てる場合と比較して、広い土地が必要になり、基礎工事の範囲も広がるため、建築費用は高くなる傾向にあります。
補助金を活用したり、平屋の施工実績が豊富な会社に依頼することで、建築費用を抑えられるでしょう。後悔のない家づくりのためにも、譲れない部分と妥協できる部分を明確にし、メリハリをつけることが大切です。
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ