テーマ:ご当地物語 / 神奈川県:茅ヶ崎市、藤沢市、鎌倉市

自分探し

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読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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僕がサッカー部に所属していた中学時代、毎年夏になると倒れていた。僕は暑さに弱かったのだ。練習試合や本番の試合で倒れるたびに母は心配しながらも僕に気を付けなさいと説教していた。中学生の僕は母が怒っているのだとおもい、それが嫌で、いつの間にか夏が嫌いになってしまったのかもしれない。そうして、いつしか夏の象徴ともいえる海にも来なくなってしまったのかもしれない。結局、三年の最後の大会前に受験を理由に部活をやめてしまったし、そのまま高校でサッカーを続けなかったのもそのせいだったような気がする。高校生になって運動らしい運動をしていないからどれだけ暑さが苦手だったかを体が忘れてしまっていたのだ。しかし分かったところで、もうどうしようもなかった。僕は力なくその場で崩れ落ちるように倒れてしまった・・・。

目を覚ますと、真っ白な天井が目に入った。ぼんやりした頭で何とか状況をつかもうと、上体を起こした。すると、母の顔が視界に飛び込んできた。不安そうな表情をしていた。しかし、僕が意識を取り戻したのを見ると、一変して、安心したような表情になった。と思った矢先に、今度は怒ったような、あきれたような表情になった。あまりにコロコロ表情を変えるので、僕はつい笑ってしまった。それが逆鱗に触れたのか、突然ものすごい勢いで説教が始まった。どうやらここは病院らしい。腕には点滴の針が刺さっている。どうにか生きているようだ。なんとか母の怒りを鎮め、事の経緯を聞いてみたところ、どうやら、あの公園にいた僕と同じロードバイク乗りのおじさんが、倒れた僕をみて、救急車を呼んでくれたらしい。幸いなことに僕のロードバイクも無事らしい。なんとも有難いことだ。そして、これで分かったことがあった。一つは、高校生になっても、やはり長時間の激しい運動は苦手なようだ。だからと言ってロードバイクを無駄にするわけではない。乗ること自体は楽しいから、ちょっとしたサイクリングや通学にはもってこいだろう。そしてもう一つ。僕は海が好きだ。あんなに綺麗な景色が僕の住んでいる近くにあったとは。今度行くときは写真に挑戦してみようかな。それとも絵でも書いてみようかな。僕の趣味探し、もとい自分探しはまだまだ続きそうだ。

自分探し

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