テーマ:二次創作 / 萩原朔太郎『月に吠える』

月に吠えるよ、シャララララ 

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なにかを見つけたとかそんなこと誰かに言うの、どうしてか、すごくさびしいなにかだナ。

いまはうれしい。ユーチューブで、ライブ映像たくさん出てくる。一九七七年の十二月三十一日、ロンドン、レインボー・テアトルでやったやついうんを適当に選んで再生してみる。

きた。
歌い方もしゃべり方も妙にモソモソしているジョーイ、「イギリス戻ってきたでみんな、よっしゃディーディー、カウントや」みたいなことたぶん言うて、ディーディー、テンポをとるというカウントの意味、きっぱり無視したよなお決まりの早口、「ワントゥスリフォ」言うて、そいで、はじまった。イントロのリフ、ハイネケンの炭酸のシュワシュワみたいに、欠けているものが満たされるよな感じで、なにを思うより早く、染みてくる。
お、イントロひきながらジョニーが唾吐きよった。いい感じだナ、すごくうれしい。
ヘイ、ホー、レッツゴー、ってとこ、ジョーイの歌い方だと、あい、おっ、れつごっ、に聞こえることもあり、なんだか俺のえいえいおー感を高める。客はすごい人数、みんなワーワー喜んどる。初期ラモーンズは本国アメリカよりイギリスでめちゃ人気あったと、誰かに聞いたことある。七七年なので当然ドラムはトミー、余計なことせんところが、とても深い味わいがある。「電撃バップ」のイントロのリフ、いまのそこらのドラマーが叩いたら、ギターとベースのシンコペーションにいちいち反応し、クラッシュシンバルとバスドラ、媚びるように、そこは合せるのが当たり前だと言わんばかりに、鳴らしてしまうだろう。でもトミーはそういうことはしなくて普通に一拍めにドシャンと鳴らすだけ、本当にシンプルなエイトビートなんだナ。トミーに限らず、ラモーンズの歴代ドラマーは、マーキーも、リッチーもそうやった。
このドラムの感じはとても大事なこと、俺が思うにラモーンズというバンドの本質で、だからラモーンズはいい。かといって、初期パンクのドラマーんなかで、シンコペーションに反応するタイプのドラマーがだめかというとそんなこともなく、ピストルズのポール・クックとかはピストルズという派手なバンドに合っているのでそれはそれですごくいいし、俺がパンクのドラムでいちばん天才を感じるダムドのラット・スキャビーズ、とにかくドコドコ叩きまくりで、それも素晴らしい。とか思うけど、ラモーンズの映像はそんな風に俺がこねる理屈より圧倒的に楽しくて、俺もただワーワー言いたくなる。ラモーンズ聞くの少しだけの久しぶり、はじけるように新鮮だ。というかいつ聞いても新鮮だ。終りの、あい、おー、れつごっ、叫ぶジョーイとディーディーの二人に、聞いとる俺も加わって都合三声、合唱した。あい、おっ、れつごっ、あい、おっ、れつごっ。血が熱くなる。「ラモーンズ、突如として電流体の感情が頭から足の爪先まで震わす時、君らと俺、ぴょんぴょん跳ねるのだ」。

月に吠えるよ、シャララララ 

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