テーマ:二次創作 / 人魚姫

3番目のマーメイド

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(みつけたいの)とわたし。(最初のマーメイドがみつけたものを。人間の魂だけが空にのぼって星になる理由は、きっとそこにあると思うから)
(それなら知ってる)と妹。
(うそばっかり)と次女。
(うそじゃないもん)と妹。
(じゃあ、いってみなさいよ)と次女。
(空にのぼった人間の魂にやどっている愛がもとになって、星が誕生するからよ)と妹。
(そのとおりよ)と長女。(星の大きさは、愛の大きさなのよ)
(じゃあ、太陽をつくった愛ってすごいんだね)とわたし。(だれだか、思い当たるけど)
(でも太陽は、はるかむかしからあるわ。人間の愛がもとになって星が誕生するのって、おかしくないかしら)と次女。
(愛がもとになって、星が誕生するのはほんとうよ。だから人間の愛も、それとおんなじものであるってことなのよ)と長女。
(なるほど。そうゆうことか)と次女。
(何も知らないのね)と妹。
(何ですって?)と次女。
(まあまあ)と長女。(せっかくの美しい夜なんだから)
(そうね)と次女
(ごめんなさい)と妹。
それからわたしたちは、しばらくあいだ夜空をみあげていた。
(人間が誕生してからは、地球は愛を競う場所にしたって話よ)と長女。
(星のかがやきが、その答えなのね)と次女。
(愛がいっぱい)とわたし。(まるで愛の展覧会ね。ますます人間の愛を知りたくなっちゃったわ)
わたしは彼方にひときわかがやいている星をずっとみつめていた。やがて夜が明ける。姉たちはまだ帰ろうとはしない。それでわたしは思い出した。わたしは勘違いしていたけれど、わたしが泡になってしまうかどうかは、最初の朝陽のひかりが射してからわかることだった。姉たちはそれまでいるつもりらしかった。それからもうひとつ、とても気がかりなことがあった。魔女は他の女と結婚したらといったのか、それともかれが結婚したらといったのか、わたしはどうしても思い出せないままでいる。てっきり他の女といったと思い込んでしまっていたのではないか。最初のマーメイドの話はそうだったから。気まぐれな魔女のことだし、最初のマーメイドのときは他の女との結婚で、わたしのときはかれが結婚したらってことに変更していたとしてもなんらおかしくはない。
空がだんだんと星たちを仕舞ってゆく。朝陽が、もうすぐ射してくる。

3番目のマーメイド

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