5月期
テーマ:お隣さん
隣の巣穴の豆柴くんへ。
初めて自分の庇護下から巣立つ子の為にどんな思いでこの品を用意するのだろうか。
これはお母さんが巣立つ子につけた目印のようなものだ。
「まだ巣立ったばかりの子犬です。何かあったら手を貸してやってください」
というメッセージみたいなものだろう。
ちゃんと受け取りました。
私はそっと包み紙を撫でた。
隣の巣穴の豆柴くんへ。
これから君はこの東京で喜びも悲しみも味わうだろう。もしかしたら誰も信じられない、田舎に帰りたいと思うこともあるかもしれない。
そんな時は深呼吸して周りを見回してごらん。周りは決して敵ばかりではない。きっと手を差し伸べようとしてくれる人がいるから。
東京で生き残っている多くの大人だって、最初から上手く生きて来れたわけじゃない。君と同じ子犬だった時期がある。みんな泣いたり転んだりして、いろんな人に助けられて一丁前になったんだ。
次は君の番だ。
そして、いつか。
次の子犬を見かけたら、君がこれから誰かに助けてもらうように、その子犬を助けてあげておくれ。
ま、でも。その前に。
隣の濡れそぼったオールドイングリッシュシープドッグは敵じゃない、とどうにかして理解してもらわないとな・・・。
隣の巣穴の豆柴くんへ。
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