子どもの頃に隣に引っ越してきた家族とはずっと仲がいいものだと思っていた。いまは、仲が悪いわけではないけれど、どこかよそよそしい。私の弟が不良をしているからだ。隣の家のユウキくんは不良ではない。ふたつの家族のことを気にしながらも、私はもうすぐ家を出ていかないといけない。
一人暮らしをする私は家の中では自堕落な女性。ある日、窓を半開きのまま大声で愚痴を言うと、その声は隣に住む青年に聞こえており、私は咄嗟に居もしない姉の存在をでっちあげてしまう。どうにか嘘を通そうと芝居を続けるが、ある日青年にばれてしまう。しかしそれをきっかけに二人はより親しくなる。
愛猫ナイトとの別れ間もない南千鶴。もういないはずのナイトがいるような錯覚をおこしてはそのたびに涙に暮れていた。そんなとき、千鶴のアパートの大家さんの家に一人の青年が引っ越してきた。
大学入学と同時に一人暮らしをはじめたわたし。あるとき、隣に住むおばあさんが帰り道の交差点で、一人で泣いているのに出会う。気になって声を掛けたわたしがおばあさんから聞いたのは、かつては海のなかに住んでいたことがあるというおばあさんの不思議な話だった。
時々、桜よりも先に春の訪れがある。故郷を離れ都会に出てくる若者はみんな、春の使者。都会で生きる人は多かれ少なかれ同じように甘酸っぱくてほろ苦い経験をして今がある。今春巣立ったばかりだろう大学一年生のお隣さんにこっそりとエールを送る。そんなにここも悪くないよ。