4月期
テーマ:一人暮らし
ひとつ星にてらされて
「ちょっと部屋が汚いから・・・」
ほっと安心したように小さな溜息をついたあさひの心を読み解くことができないまま、みきはうつむき加減に言葉を濁した。
ちょっとどころか、物に物が積み重なってできたゴミの山々を見たら、あさひは気絶してしまうかもしれない。
パソコンを大事に胸に抱えたまま扉を閉めたみきは、もう爽やかなおやすみの一言を口にするどころではなく、挨拶もそこそこにふらふらの足で二階の自分の部屋へと戻っていった。玄関で靴を脱ぎ捨てて、食卓兼ね勉強机になっている四角いテーブルの上に散らかった紙パックやお菓子の袋を肘で端によけて、白いノートパソコンをのせると、みきはベッドに深く沈み込んだ。
「ああ、今宵は神様がくれたプレゼントだったのかもしれないわね。ええ、きっとそうに違いないわ。今こそ理想の住まいをいちから築いて、無事に完成した暁にはあさひくんをご招待しようじゃないの」
男から譲り受けたパソコンをちらりと見やってから、そっとまぶたを閉じたみきは、真上にかがやく星にやさしく照らされながら、久しぶりに心地よいねむりの中へと落ちていった。
ひとつ星にてらされて