なぜマンション経営は節税になる?節税効果が生まれる理由と注意点を解説

節税対策を検討するにあたって注意すべき点は、マンション経営は不動産投資であるため、リスクがともなうということです。節税効果を打ち消すほどにマンション経営の収益状況が悪ければ、不動産投資で節税するメリットは薄いでしょう。
本記事では、マンション経営で節税効果が生まれる理由と、具体的に節税に適した人の特徴を紹介します。マンション経営のリスクと注意点も解説するため、記事を読むことでマンション経営を始めるべきかわかるようになるでしょう。
記事の目次
マンション経営で節税効果が生まれる理由

マンション経営で節税効果が生まれる理由は以下のとおりです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
減価償却により不動産所得を圧縮できる
マンション経営において、建物部分を取得する際にかかった費用は、減価償却費として毎年一定額を経費計上できます。減価償却は、時間とともに建物の価値が減少することを会計上で反映する仕組みです。
建物を取得した翌年以降は、実際の現金支出をともなわないため、帳簿上の利益を減少させることが可能。不動産所得は実際の利益ではなく、帳簿上の利益をもとに課税するため、課税対象となる所得が減少します。
減価償却によって課税対象の所得を会計上で減らすことは、不動産所得の圧縮と呼ばれます。不動産所得が圧縮されれば、税金の負担を軽減できるでしょう。減価償却による不動産所得の圧縮は、不動産投資をおこなう方であれば活用しやすい節税効果です。
損益通算で所得税・住民税が軽減されるから
マンション経営で発生した赤字は、給与所得などほかの所得と相殺する損益通算が可能です。例えば、減価償却によって、帳簿上の利益が赤字となった場合は、給与所得と損益通算すると、本業で得た利益にかかる所得税・住民税を軽減する効果を期待できます。
不動産投資以外の所得が大きいほど、税金の節税効果が生まれやすくなります。帳簿上の赤字を損益通算できるだけでなく、万が一、実際の不動産所得が赤字となった場合でも、本業の所得の節税に役立つでしょう。
相続税の評価額を引き下げられるから
不動産は、現金や株、債券などの有価証券と比較して、相続税評価額が低く設定されることが多いです。具体的には、現金評価の7割ほどが目安であり、1億円の価値があるマンションの相続税評価額は7,000万円まで下がる場合もあります。
上記の現金と不動産をそれぞれ相続した場合を比較してみましょう。現金で相続する場合は1億円に対して相続税が課されます。一方、マンションで相続すれば7,000万円に対して相続税がかかるため、最終的に納めるべき税金が安くなります。
マンションの評価方法は、路線価方式や倍率方式などの種類があります。マンションの相続税評価額を知るには、税理士などの専門家に相談すると正確な評価額がわかるでしょう。
マンション経営で節税が期待できる人

マンション経営で節税効果が生まれる理由を踏まえたうえで、節税を期待できる人を以下にまとめました。それぞれ詳しく解説します。
年収の高い給与所得者
年収が高い給与所得者は、所得税や住民税の税率が高くなるため、マンション経営による節税効果が大きくなります。例えば、課税される所得金額が1,000万円の場合は、所得税の税率は33%です。住民税とあわせると大きな税負担になるでしょう。
そこで、高所得者がマンション経営をおこない、帳簿上の赤字を生み出し、給与所得と損益通算すれば、課税所得を圧縮できます。場合によっては税率も下がるため、所得税と住民税の負担を軽減できるでしょう。年収が高いほど、マンション経営における節税効果を期待できます。
不動産以外の所得がある事業主
給与所得者だけでなく、不動産以外の事業所得がある事業主もマンション経営の損益通算を活用して、課税所得を圧縮できます。大きな収益を得ている事業主の方は、所得税の税率は最大45%になるため、マンション経営の節税効果を含めて、さまざまな税金対策を活用しているでしょう。給与所得者と共通して、所得のある人ほどマンション経営の節税効果は高まります。ただし、税負担を軽減するために、税法上において適切でない過度な経費計上をおこなうと、税務署から否認されるリスクがあるため、適切に申告するようにしましょう。
高額な資産を相続する予定がある人
高額な資産を相続する予定がある人は、現金や有価証券をマンションに換えて相続することで、相続税評価額の引き下げを期待できます。不動産は評価額が実際の価値よりも低くなりやすいことを利用して、相続税を節税できれば、家族に自身の財産を少しでも残しやすくなるでしょう。
マンション経営は、資産を多く保有しており子どもや孫など、相続を検討している相手がいる場合にも節税効果を生みやすいです。
節税を目的にマンション経営を始めるリスク

マンション経営は節税メリットがある一方で、節税を目的にするとさまざまなリスクもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
キャッシュフローが悪化する可能性がある
節税を目的としてマンション経営を始めた場合、帳簿上では減価償却費などの経費計上により赤字となり、所得税や住民税の負担を軽減できます。しかし、マンション経営がうまくいかない場合は、実際の現金収支であるキャッシュフローが悪化する可能性があります。
例えば、家賃収入がローン返済額、管理費や修繕費などの支出を下回ると、帳簿上だけでなく、キャッシュフロー上でも赤字となります。赤字が続けば、手元の資金も減少するため、節税効果以上の損失が発生するリスクがあるといえるでしょう。
マンションの資産価値が下落する
マンションの資産価値は、築年数の経過や周辺環境の変化、経済情勢などにより下落する可能性があります。周辺地域の人口減少などマンションの需要が低下すると、家賃相場が下落して、物件の資産価値が下がることも。
資産価値が下落しやすい物件を選んでしまった場合は、1億円のマンションを購入したとしても、相続の時点で中古マンションの取引相場において5,000万円ほどの価値になってしまうかもしれません。資産価値が下落しやすいマンションを選んでしまうと、相続税を抑えてできる限り多くの財産を家族に残すという目的において本末転倒になってしまうかもしれない点に注意しましょう。
収益性と両立が難しい
マンション経営は節税と収益性を両立した運用が理想です。そのため、節税効果を期待できるだけでなく、長期的に安定した収益を得られる物件を選ぶ必要があるでしょう。
しかし、マンション経営の節税は、赤字との損益通算が前提となるため、収益が高まるほど赤字が縮小して、節税効果は低くなります。また、節税は基本的に減価償却の利用が前提であるため、建物が減価償却期間を終えると節税効果が大きく減少します。
給与所得と損益通算するマンション経営の節税は、帳簿上の収益が黒字化すれば、節税効果がなくなり、不動産所得に対しても税金がかかる仕組みです。そのため、マンション経営が長期化するほど、収益性との両立が難しいといえるでしょう。
任意のタイミングで売却できない
マンションは、株などの有価証券とは異なり、任意のタイミングで売却することが難しい場合があります。市場環境や物件の状態などにより、希望する価格での売却が困難になるからです。特に需要がない物件は、買い手が見つかりにくいため、売却までに時間がかかるかもしれません。
また、マンションに入居者が1人でも住んでいる状態では、入居者をそのままにオーナーを変更するオーナーチェンジ物件など特殊な方法を除いて売却できません。ほかにもローンの残債が物件の売却価格を上回るオーバーローンの状態にある場合、自己資金を追加してローンを完済しなければ売れないケースもあります。
マンション経営で将来的に物件を売却する予定がある場合は、購入する前に出口戦略を含めて計画する必要があるでしょう。
マンション経営で節税する場合の注意点

マンション経営で節税する場合の注意点を5つ紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
人によっては節税効果が低い場合がある
マンション経営による節税効果は、主に高所得者にとって有効です。所得税や住民税の税率が高い場合、減価償却や損益通算を活用して税負担を軽減できるからです。しかし、給与所得が少なく、ほかに目立った所得がない方にとって節税効果は限定的なものになるでしょう。
マンション経営で節税するなら、節税効果をシミュレーションしてから検討することをおすすめします。正確な効果が気になる場合は、専門家に相談しましょう。
節税のみを目的に物件を購入することを避ける
マンション経営の主たる目的は、物件を運用して収益を高めることです。節税効果のみを目的にマンションを購入して、物件の資産価値と収益性を十分に検討しない場合は、思わぬ損失を被る危険性があります。
節税効果はあくまで副次的なものです。マンション経営の主な目的は、物件を運用してより多くの収益を得ることにあるため、節税のみを目的にしている場合はほかの節税方法のほうが効果を実感できるかもしれません。
節税効果は一時的にしか発生しない可能性がある
マンション経営による節税効果は、主に減価償却を活用したものですが、この効果は永続的ではありません。建物の減価償却期間が終了すると、経費として計上できる金額が減少し、帳簿上の利益が増加します。
帳簿上の損益が黒字になれば、不動産所得に対して所得税や住民税がかかるようになり、節税効果がなくなります。また、赤字を損益通算できなくなったことを理由に、翌年以降の本業に対する税負担が増加するかもしれません。減価償却による節税効果は一時的であることを理解したうえで、マンション経営を検討するようにしましょう。
悪質な場合は税務署から否認される場合がある
節税目的でおこなったマンション経営が、税務署から否認されるリスクもあります。例えば、相続直前に高額なマンションを購入し、相続後すぐに売却した場合など、明らかに節税を目的とした取引と判断されると、相続税評価が否認される場合があります。
悪質と判断された場合は、追徴課税などのペナルティを科される可能性があるため、節税対策は適法かつ適切な範囲でおこなうようにしてください。適切な節税対策を詳しく知りたい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
税制改正により現在の節税ができなくなる可能性がある
税制は定期的に見直されるため、現在有効な節税手法が将来的に使えなくなる可能性があります。過去にも一部の税金対策が問題視されて、法律が見直されたことがありました。
税制改正により、マンション経営で想定していた節税効果を得られなくなる可能性もあります。以上のことから節税のみにこだわったマンション経営は、失敗する可能性が高いです。よって、節税だけではない総合的なメリットを考えたうえで、柔軟に対応することが重要になるでしょう。
まとめ
マンション経営は、減価償却や損益通算、相続税評価の引き下げによって節税効果を期待できます。ただし、誰にでも効果があるわけではなく、リスクを理解したうえでおこなう必要があります。
また、マンション経営において、減価償却による節税効果は永続的ではないため、長期的に安定した収益を得られる物件を選ぶほうが重要です。節税のみを目的としない、総合的にメリットが大きいマンションを探してみましょう。
マンション経営でわからないことがある場合は、必要に応じて税理士や不動産の専門家に相談するようにしてください。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ