家賃収入に対する手取りはいくら?目安と手取りを多くする方法を解説!

本記事では、家賃収入の手取り額の目安や、算出するための計算方法を解説します。そして、手取り額を算出する際に関わる、家賃収入以外の収入や不動産経営でかかる支出、税金も解説。最後に、手取り額を増やすポイントも紹介するので、ぜひご参考にしてください。
記事の目次
家賃収入の手取り額の目安は?

家賃収入の手取り額がいくらになるかは、正確な数値が示されていません。なぜなら、手取り額は投資家一人ひとりの経営状態によるため、一律にはならないからです。手取り額の算出には、家賃収入を含めたすべての収入と、かかった経費の把握が必要になります。
しかし、収入の目安は国勢調査で示されています。国税庁がおこなった2022(令和4)年分「申告所得税標本調査」によると、不動産投資をして得られる家賃収入の手取り額の平均は約542万円でした。
続いて、同年の所得階級別での所得金額の構成割合は、一番多いのが500万円超1,000万円以下で29.7%、次いで1,000万円超2,000万円以下が21.6%、300万円超500万円以下が17.3%となっています。結果、家賃収入が500万円以上の人は不動産所得を得ている方のなかで、50%以上いるようです。
家賃収入の手取りを計算するには?

家賃収入の手取り額を計算するためには、毎月の収入と支出(経費)の把握に加え、借り入れした金額や不動産投資ローンの返済額の把握も必要です。本章では、いくつかの条件でシミュレーションをおこない、家賃収入の手取り額を計算してみます。
不動産投資ローンの返済があるケース
以下は、新築物件と中古物件を例に、不動産投資ローンの返済があるケースで家賃収入の手取り額を計算した事例。頭金を入れる場合と入れない場合を想定しました。
新築物件 | 中古物件 | |||
---|---|---|---|---|
頭金を いれる パターン |
頭金を 入れない パターン |
頭金を いれる パターン |
頭金を 入れない パターン |
|
物件価格 | 4,000万円 | 4,000万円 | 2,500万円 | 2,500万円 |
頭金 | 500万円 | 0万円 | 500万円 | 0万円 |
借入金額 | 3,500万円 | 4,000万円 | 2,000万円 | 2,500万円 |
借入金利 | 1.6% | 1.6% | 1.6% | 1.6% |
借入年数 | 35年 | 35年 | 35年 | 35年 |
不動産投資ローン 返済額/月 |
10万8,887円 | 12万4,443円 | 6万2,221円 | 7万7,777円 |
管理費など | 8,500円 | 8,500円 | 7,500円 | 7,500円 |
修繕積立金 | 2,500円 | 2,500円 | 2,000円 | 2,000円 |
家賃収入 | 10万5,000円 | 10万5,000円 | 8万9,000円 | 8万9,000円 |
手取り額 | -1万 4,887円 |
-3万 443円 |
+1万 7,279円 |
+1,723円 |
購入金額や家賃設定は、平均的な収益物件を想定しています。シミュレーションの結果を見ると、収益物件の状態によって金額は前後しますが、結果的に手取り額となる分を計算するまでに、さまざまな経費が差し引かれ、さらに不動産投資ローンの返済額も考慮すべきことがわかるでしょう。
今回のシミュレーションでは、新築物件の手取り額がマイナスになりました。新築物件は物件価格が高いため、不動産投資ローンの返済額が多い点が要因。また、頭金を入れるほうが入れない場合に比べ、手取り額が増えています。不動産投資ローンの返済額が少なく済むため、手取り額が多くなることが明確です。
不動産投資ローンの返済が終了しているケース
続いて、前述のケースで不動産投資ローンの返済が完了した場合を考えてみましょう。
収益物件A | 収益物件B | |
---|---|---|
不動産投資ローンの返済額/月 | 0円 | 0円 |
管理費など | 8,500円 | 7,500円 |
修繕積立金 | 2,500円 | 2,000円 |
家賃収入 | 10万5,000円 | 8万9,000円 |
手取り額 | 9万4,000円 | 7万9,500円 |
不動産投資ローンの返済が終わると、支出が減り、手取り額が増えたことがわかります。
実際の家賃収入の手取り額を計算するには、上記の各項目にご自身の支出・収入を当てはめれば計算ができますので、活用してみてください。
家賃収入以外の収入は?

不動産投資の主要な収益源は、家賃収入ですが、それ以外にも多様な収入源があります。ここでは家賃収入以外に得られる、主な収入を個別に紹介します。
礼金
礼金は、入居者が賃貸契約時にオーナーに支払う一時金です。この制度は日本特有のもので、入居者に返還義務はない費用。礼金は通常、賃貸契約が締結された際に一度だけ支払われ、オーナーにとって重要な収益源です。
一般的には、家賃の1~2カ月分が礼金の相場とされ、地域や収益物件の条件によって異なります。礼金は、収益物件の立地や設備の充実度、賃貸需要と供給のバランスなどに影響され、賃貸市場の動向を反映した金額設定が肝心です。
しかし、近年では礼金の負担を抑えたいと考える入居者が増加しており、これに応じて礼金を0円にする収益物件も。礼金を設定しない場合には、オーナーは他の形で収益を確保する必要があり、他の追加料金でバランスを取る点が一般的です。
更新料
更新料は、賃貸借契約の期間が終了した際に、契約を延長するために支払われる費用です。一般的に、家賃の1~2カ月分が設定されます。賃借人からの更新料の支払いが定期的に発生するため、オーナーにとっては安定した収入源になるでしょう。通常、賃貸借契約は2年ごとに更新されることが多く、この際に更新料が発生します。
しかし、更新料の負担などを加味すると引越しを選択する入居者が出てしまうケースも。次の入居者がすぐに見つかるとは限らないため、オーナーは空室率を考慮して更新料を徴収するかを判断する点が重要です。更新料の設定や免除は、入居者のニーズや市場動向を見ながら、柔軟に対応する必要があります。
駐車場代
駐車場代は、収益物件敷地内の駐車場を、入居者に貸し出して得られる収入です。この収入は収益物件が所在するエリアにより異なり、特に地価の高い東京都内では、月々の駐車場代も高くなる傾向があります。
駐車場代は、都市部や駅の近くなどで需要が高く、家賃収入に次ぐ重要な収益源になるでしょう。複数の駐車場スペースを所有している場合、その分収入も増加するため重宝します。
自動販売機設置
自動販売機を収益物件の共有部分に設置すると、その売り上げの一部を収入として受け取ることができます。自動販売機の設置は初期費用がかからない場合も多く、手軽に始められる収入源です。
ただし、設置による電気代がかかる点を忘れてはなりません。また、売り上げの取り分は自動販売機設置の会社によって異なるため、契約内容を確認することが重要です。自動販売機で飲み物や軽食を販売すると、入居者の利便性も向上し、収益物件の魅力を高める効果も期待できます。
太陽光パネル設置
収益物件の屋根や空きスペースに太陽光パネルを設置し、発電した電力を売電し、収益を得る方法も収入源の一つ。太陽光発電は初期投資が必要ですが、環境にも優しいエコな選択となり、長期的には安定した収入が期待できるでしょう。
特に固定価格買取制度(FIT)を利用すると、一定期間、固定価格で電力を売れるため、収益の予測がしやすくなります。また、太陽光発電は光熱費の削減にも有効です。ただし、設備の設置には初期費用がかかり、物件価格にも影響を及ぼすため、投資規模に応じた費用を考慮しなければなりません。
家賃収入から差し引かれる支出は?

前章では収入に関係する費用を紹介しました。本章では反対に、不動産投資に関する支出や税金の種類に焦点を当てていきます。
不動産投資ローンの返済費
主な支出は、収益物件購入時に金融機関から借り入れた不動産投資ローンの返済費です。元金と利息を毎月返済する必要があります。不動産投資ローンの返済費は不動産経営において大きなウエイトを占めるでしょう。
建物の修繕費用・設備交換費用
収益物件の維持管理のために必要な、修繕費用や設備交換費用も支出です。長期的に収益物件の価値を維持するためには、定期的な修繕や設備の更新が欠かせません。主に外壁の塗装、屋根の補修、エアコンや給湯器の交換などが含まれます。
管理費用
収益物件の管理を委託する際にも支出が発生します。管理会社に所有物件の管理を委託すると、入居者の募集やクレーム対応、共用部分の清掃や保守管理などを任せられます。管理費用は収益物件の規模や管理内容によって異なります。
保険料
収益物件を所有する際には、火災保険や地震保険などの保険に加入する必要があります。これらの保険料も家賃収入から差し引かれる支出です。保険に加入すると、火災や地震などの自然災害によるリスクを軽減できます。
家賃収入に課される税金
家賃収入にはさまざまな税金が課されます。主な税金は以下のとおりです。
- 所得税
- 住民税
- 固定資産税・都市計画税
- 消費税
家賃収入に課される税金は主に、所得税、住民税、固定資産税、都市計画税で、所得税は、得た家賃収入から経費などを差し引いて計算されます。住民税は、都道府県と市町村に支払うもので、例えば東京都の場合、都民税が4%、区市町村民税が6%で、合計10%です。
収益物件の保有にともなう税金には、固定資産税と都市計画税があります。固定資産税は、1月1日現在の土地や家屋の所有者に対して課税され、固定資産評価基準に基づき算定される金額と把握しておきましょう。税率は市町村によって異なるため、収益物件の所在する市町村で確認が必要です。都市計画税は、都市計画法による市街化区域内の土地や家屋に対して課税されます。
なお消費税は、家賃収入のうち、事業用物件の賃貸料に対して課される税金で、居住用物件の賃貸には課されません。
不動産経営では、これらの支出を正確に把握し、計画的な管理が重要です。
家賃収入の手取りを増やすには?

不動産経営に関する家賃収入の手取り額を増やすためには、さまざまなコツがあります。不動産投資ローンの返済などの支出を最小限に抑え、収益物件の価値を維持し、空室リスクを低くする点が重要です。以下に、家賃収入の手取り額を増やすためのポイントを詳しく説明します。
頭金を多めに準備する
不動産投資を始める際、頭金を多めに用意することが重要です。少額の頭金で購入すると、不動産投資ローンの返済額が大きくなり、毎月の手取り額が減少します。場合によっては、月々の収支が赤字になるかもしれません。頭金をできる限り多く用意し、借入金額を抑えると、不動産投資ローンの返済負担を軽減し、手取り額を増やせる可能性があります。
繰り上げ返済を活用する
自己資金に余裕ができた場合、繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。期間短縮型は、返済期間を短縮するもので、返済を早く終わらせたい場合に適しています。一方、返済額軽減型は月々の返済額を減らし、手取り額を増やしたい場合に有効です。状況に応じてどちらかを選択し、不動産投資ローンの返済負担を軽減しましょう。
空室リスクが低い収益物件を選ぶ
家賃収入の手取りを増やすためには、空室リスクを低く保つことが重要です。一般的に、都市部の収益物件を選ぶと、安定した家賃収入を期待できます。立地条件が良く、利便性の高い収益物件は入居希望者が多いため、空室リスクを低く保てるでしょう。
安定した家賃収入を得るために、収益物件選びは慎重におこないましょう。
定期的なリフォームやリノベーションをおこなう
収益物件の価値を維持するためには、定期的なリフォームやリノベーションをおこないましょう。築年数が経過すると、収益物件の価値が下がり、入居希望者も新築物件と比べ減少します。定期的にリフォームをおこなうことで、収益物件の魅力を保ち、家賃を維持または上げることが可能です。リフォームやリノベーションの具体例として、内装の一新や設備の交換などが挙げられます。
流動性の高いワンルームマンションを購入する
単身者が住むワンルームマンションは、就職や転職、進学などで引越しが頻繁におこなわれるため、新しい入居者が決まりやすいです。そのため、空室リスクを低く保てます。また、都心部のワンルームマンションは、地方の一棟アパートに比べて、流動性が高く、安定した収入が期待できます。
需要の高い中古物件を購入する
新築物件よりも、価格が低い中古物件を選んだほうが、初期投資を抑えられます。ただし、利便性が低い場所にある収益物件は空室リスクが高くなるため、注意が必要です。需要が見込める好立地の中古物件を選ぶようにしましょう。目先の利回りや価格だけで判断せず、将来的な需要も考慮する点が大切です。
適切な不動産投資ローンの返済計画を立てる
自分の年収に見合わない金額の不動産投資ローンを借りると、収益物件購入後の返済が困難になる可能性があります。不動産投資ローンの返済が滞ると、適切な修繕ができず、収益物件の品質が低下し、家賃収入にも悪影響が及ぶかもしれません。収支計画をしっかりと立て、自分の収入や貯蓄額に応じた借り入れをおこないましょう。
これらのポイントを押さえると、不動産投資の家賃収入に対する手取り額を増やせるでしょう。不動産投資ローンの返済や空室リスクを低く保ち、収益物件の価値を維持すると、安定した収益を確保できます。
家賃収入の手取りに関する質問
家賃収入の手取り額に関するよくある質問をまとめました。
家賃収入の手取り額はどれくらい?
家賃収入の手取り額は、個々の投資家の経営状態によって異なるため、具体的な数値は一律ではありません。しかし、家賃収入の一般的な目安として、国税庁の2022年分「申告所得税標本調査」によると、不動産投資から得られる家賃収入の平均手取り額は約542万円でした。
この調査では、所得階級別の割合も示されており、多いのは500万円超1,000万円以下の層で29.7%、次に1,000万円超2,000万円以下が21.6%、300万円超500万円以下が17.3%となっています。これにより、不動産収入が500万円以上の人は全体の50%以上を占めているとわかります。
家賃収入の手取り額を計算するには?
家賃収入の手取り額を計算するためには、収入から各種支出を引き算し、さらに不動産投資ローンの返済額も考慮しなければなりません。計算方法は複雑なものではなく、頭金や不動産投資ローンの借入金額から算出される月々のローン返済額、管理費や修繕積立金などの支出を把握し、家賃収入から差し引くと手取り額が計算できます。
シミュレーションでは、新築物件は高額な返済額と経費の影響で手取りがマイナスになりやすいですが、頭金を多く入れると手取り額が増えることがわかりました。
また、不動産投資ローンの返済が終了すると、支出が減少し、手取り額が増加するのがわかります。実際の不動産投資に関する収入・支出が把握できれば、計算可能なので試してみてください。
家賃収入以外の収入は?
まず、礼金は賃貸契約時に一度だけ支払われる費用で、家賃の1~2カ月分です。次に、契約更新時に支払われる更新料。家賃の1~2カ月分が目安になります。駐車場代は、物件敷地内の駐車場を貸し出して得られる収入で、特に都市部では高額になる可能性があるので効果的に活用しましょう。
また、自動販売機を共有部分に設置すると、売上の一部を収益として得られます。さらに、太陽光パネルを設置し、発電した電力を売電すると長期的な収入になります。これらの収入源は、家賃収入に次ぐ重要な収益手段となるでしょう。
家賃収入から差し引かれる支出は?
不動産投資ローン返済費があり、元金と利息の支払いが必要です。次に、建物の修繕費用や設備交換費用があり、収益物件の価値を維持するために重要です。
また、管理会社に委託する場合は、管理費用も必要です。支出に含まれる保険料には火災保険や地震保険などがあり、リスク軽減のために欠かせません。
所得税、住民税、固定資産税、都市計画税などの税金も考慮すべき項目です。所得税は家賃収入から経費を引いて計算、住民税は都道府県と市町村に支払います。固定資産税と都市計画税は土地や建物に対する課税で、消費税は事業用物件の賃貸にのみ適用されます。これらの支出は正確に把握し、計画的に管理するようにしましょう。
家賃収入の手取りを増やすには?
頭金を多めに準備し、借入金額を減らすことで不動産投資ローン返済の負担を軽減でき、家賃収入の手取りを増やすことにつながるでしょう。また、繰り上げ返済も活用し、早期に不動産投資ローンを完済するのも一つの方法です。
家賃収入を安定して得るためには、空室リスクを低く保ちましょう。そのためには立地のよい物件や流動性の高いワンルームマンションを選ぶ点も重要です。
まとめ
本記事では、家賃収入の手取り額の目安や、算出するための計算方法を紹介しました。不動産経営でかかる支出を正しく理解し、家賃収入の手取り額を把握することで、収益性や持続性を評価できるため、将来の収益の予測を立てることもできます。
また、手取り額を増やすポイントもお伝えしましたので、不動産経営の参考にしてください。

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ