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REITが「やめとけ」と言われる理由は?基礎知識から魅力、失敗しないためのポイントを解説

REITはやめとけと言われる理由や魅力などを解説します
「少額から始められる」「新NISAを活用できる」といったメリットから、REIT(リート)が注目を集めています。しかし、「やめとけ」という意見もあることから、「興味はあるけれど始められない」という方もいるでしょう。
本記事では、そもそもREITとは何なのかといった基礎知識から、「REITはやめとけ」と言われる理由、REITで失敗しないために押さえておきたいポイントを解説します。
REITは投資であるため、リスクがともないます。ご自身のリスク許容度を確認しながら、REITを検討してみましょう。

REITの基礎知識

REITとは不動産投資信託のことです
REITとは不動産投資信託のことです

本章では、REITを始める際に押さえておきたい基礎知識を解説します。他の不動産投資との違いをよく理解しておきましょう。

REIT(リート)とは

REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略語で、「不動産投資信託」のことを指します。投資家から集めた資金を不動産に投資し、その賃料収入や売買益が投資家に分配される商品です。現物不動産投資の場合、多額の初期費用が必要となりますが、REITであれば少額から不動産投資を始められます。

REITの種類

REITは、投資対象の不動産の種類によって、大きく2つに分けられます。

  • 単一用途特化型REIT
    特定の用途の不動産に投資する
  • 複合用途型REIT
    複数の用途の不動産に投資する

単一用途特化型REITでは、オフィスビルや商業施設、ホテルなど、特定の用途で使用される不動産に投資をおこないます。不動産の投資対象が限定されるため、市場の変動によって値動きも大きくなります。例えば、初めて緊急事態宣言が出された2020年4月には、ホテルやオフィスビルなどの需要が下がったため、それらを投資対象としていた単一用途特化型REITも大きく値下がりしました。

複合用途型REITは、さらに2種類に分けられます。「複合型REIT」は2種類の用途を組み合わせて投資をおこないます。「総合型REIT」は3種類以上の用途を組み合わせて投資をおこないます。単一用途特化型REITと違い、1つを購入するだけで、さまざまな不動産に分散投資できる点が魅力です。

REITが「やめとけ」と言われる理由

なぜREITはやめとけと言われるのでしょうか?理由を解説します
なぜREITはやめとけと言われるのでしょうか?理由を解説します

REITは少額から不動産投資ができる点が魅力です。しかし「やめとけ」という意見があるのも事実です。なぜ「やめとけ」と言われるのか、理由を見ていきましょう。

元本割れのリスクがある

「やめとけ」と言われる理由の一つとして、元本割れのリスクがあることが挙げられます。元本割れとは、投資した金額よりも低い価格でしか収益を上げられない、つまり損をするということ。例えば、空室が出て家賃収入が減少したり、資産価値が減少し、売却価格が低かったりすることで起こりえます。しかし、それはREITに限らず、投資全般に通じることです。元本割れを避けたいのであれば、元本が保証されている預金など、選択肢を変えたほうがいいでしょう。

金利変動リスクがある

金利変動リスクがあることも、REITは「やめとけ」と言われる理由の一つです。金利が上昇すると、REITの収益性が悪化し、価格が下落する可能性があります。投資法人は、投資家からの資金だけでなく、金融機関から借り入れをして、運用していることが一般的。そのため、金利が上昇すると借入金額に対する利息が増え、結果としてREITの収益性が悪化する可能性があります。

分配金が減額するリスクがある

分配金が減額するリスクがある点も、「やめとけ」と言われる理由の一つ。先述したように、空室で家賃収入が減ってしまったり、金利の上昇によって収益性が悪化すると、投資家に分配される利益も減少します。また、不動産市場の景気後退も分配金の減額に影響を及ぼします。

リーマンショック後の2008年には、J-REITのトータルリターンは-48.4%を記録しました。世界的な金融不安や経営破綻などにより、日本の不動産市場は悪化。同時に金融機関も不動産に対する融資を厳しくしたことから、時価総額は大幅に減少しました。このように、不動産市場の景気後退や空室率の上昇などにより、投資法人の収益が悪化すると、分配金が減額されます。

倒産や上場廃止のリスクがある

REITが「やめとけ」と言われる理由に、投資法人の倒産や上場廃止のリスクがある点が挙げられます。例えば、投資法人の資金繰りが悪化すると、倒産する可能性があります。また、証券取引所の基準に抵触すると、上場廃止となるおそれも。上場廃止や倒産となると、売買ができなくなるため、投資金額を回収できなくなります。先ほども取り上げたリーマンショックにより、2008年10月、アメリカの不動産大手が設立母体であるニューシティ・レジデンス投資法人が経営破綻。その後、ビ・ライフ投資法人(現・大和ハウスリート投資法人)と合併し、ニューシティ・レジデンス投資法人は解散しました。当時保有していた投資家には1口あたりビ・ライフ投資法人の投資口0.23口が交付されました。このケースでは合併し、新たな投資口が交付されましたが、確実におこなわれるわけではありません。投資法人の倒産や上場廃止リスクにより、投資金額を回収できなくなる可能性があることを理解しておきましょう。

自然災害や事故のリスクがある

自然災害や事故のリスクがあることも影響します。投資法人が運用している不動産が、自然災害や事故で被害を受けるかもしれません。例えば、地震や火事で不動産そのものが被害を受けた場合、得られる収益は少なくなるでしょう。保険で被害を補うことは可能ですが、減った収益までは補償されません。その結果、分配金が減額されたり、最悪の場合には倒産する可能性もあります。REITの投資対象が、実物資産の不動産であるがゆえのリスクといえるでしょう。

法制度の変更リスクがある

法制度が変更される可能性があることも、「やめとけ」と言われる理由です。例えば、REITに適用される税制度が変更されると、課税体系が変化し、投資するメリットが少なくなる可能性があります。また、不動産に関する法制度が変更され、規制が強化されることにより、REITの価値が影響を受けるかもしれません。常日頃から、税制度や法制度に関する情報に目を向けるようにしましょう。

レバレッジを効かせられない

「やめとけ」と言われる理由として、レバレッジを効かせられない点も挙げられます。レバレッジとは、少額の自己資金に加えて不動産投資ローンを借り入れることで、より高額な不動産を購入し、大きな投資効果を生み出すこと。レバレッジを効かせると、投資規模を大きくでき、より多くのリターンを見込めます。

しかし、REITでは全額自己負担となり、不動産投資ローンの借り入れはできません。多くのリターンを得たい場合、その分自己資金が必要となります。REITは現物不動産投資と違いレバレッジを効かせられず、自己資金が必要となることから、「やめとけ」と言われています。

複利効果を得られない

複利効果を得られないことも、REITは「やめとけ」と言われる理由の一つです。複利効果とは、運用で得た利益を再び投資に回すことで、資産が効率よく増えていく効果のこと。REITでは、基本的に分配金が投資家に還元されるため、複利効果を得られません。しかし、なかには「資産成長型」といって、分配金の分配を年1・2回に抑えることで、複利効果を狙った商品もあります。販売用の資料に記載されているため、よく確認しましょう。

REITのメリット

REITのメリットを6つ解説します
REITのメリットを6つ解説します

前章では「やめとけ」と言われる理由を見てきましたが、REITの魅力は何があるのでしょうか。ご自身に合った投資商品かを知るためにも、メリットを理解しておきましょう。

少額で投資を始められる

少額で不動産投資を始められる点が、REITのメリットです。REITの売買単位は一口であるため、最低投資金額がREITの売買価格となります。一口1万円から購入できる商品もあり、現物不動産投資と比較して、少額で投資を始められます。

分散投資ができる

分散投資ができる点も、REITのメリットです。先述したように、REITには大きく2種類ありますが、複合用途型REITに投資すれば、異なる用途の収益物件に投資ができます。また、なかには特定の地域に特化したREITもあるため、組み合わせて投資すると、さらにリスクが低減されるでしょう。

流動性が高い

REITのメリットとして、流動性が高い点も挙げられます。REITは証券取引所で売買できるため、資金が必要になった際にはすぐに売却が可能です。現物不動産投資では、売却価格を査定したり、買い手を探したりなど、さまざまな手順を踏まなければなりません。また、数カ月単位で時間もかかります。一方、REITであれば、証券取引所の取引時間であれば、いつでも売買ができます。

新NISAを活用できる

REITは、今年から始まった新NISAを活用できる点もメリットです。新NISAとは、政府が推し進めている資産形成制度の一つ。本来なら、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、新NISAであれば税金がかかりません。また、非課税で保有できる期間も無期限となっています。新NISAで取り扱われている商品のなかに、REITも含まれています。ただし、証券会社によって取り扱っている商品は違うため、事前によく調べておきましょう。

利回りが高い

REITは、高い利回りが期待できるというメリットがあります。日本取引所グループの「月間REIT(リート)レポート」(2024年6月版)によると、予想年間分配金利回りは、4.66%となっています。株式市場の平均利回りが2%前後であることを踏まえると、 REITのほうが高いことがわかるでしょう。

また、安定した利回りを期待できる点もメリット。REITの収益源である家賃収入は、株価のように大きく変動しません。そのため安定して高い利回りを期待できます。しかし、先述したように、REITにはさまざまなリスクがあるため、確実性はないことを理解しておきましょう。

現物不動産投資よりリスクが小さい

REITは、現物不動産投資に比べて、リスクが小さいというメリットがあります。REITでは、複数の不動産に投資することができるため、リスクの分散が可能です。また、取引時間内であればいつでも売買でき、現金化しやすいメリットもあります。さらに、運用はプロがおこなうため、自分でおこなうよりもリスクを軽減できるでしょう。

一方、現物不動産投資では、高額な投資金額が必要であることから、初めから複数の収益物件を所有することは難しいでしょう。特に収益物件選びは、不動産投資の成功を決めるといっても過言ではありません。適切に選ばなければ、大きな損失を被る可能性もあります。また、売却する際にも時間がかかり、不動産会社などの信頼できるパートナーが必要です。現物不動産投資で収益を上げるためには、さまざまな要素を考えなければなりません。しかし、REITの場合はリスクが小さいため、手軽に不動産投資を始められるでしょう。

REITが向いている人の特徴

REITが向いている人の特徴を解説します
REITが向いている人の特徴を解説します

これまでREITのリスクやメリットを見てきました。それでは、どういう方がREITに向いているのでしょうか。本章では、REITが向いている人の特徴を解説します。

分散投資をしたい人

分散投資をしたい人には、REITが合っているでしょう。繰り返しになりますが、REITでは複数の収益物件に投資しているため、分散投資ができます。分散投資をすると、特定の市場の影響を受けることがないため、安定した収益を期待できるでしょう。投資先の対象や地域などが異なる商品を購入すると、リスクを軽減できます。

手間をかけずに不動産投資をしたい人

手間をかけずに不動産投資をしたい人にも、REITが向いています。REITでは、収益物件の選定や運用、管理をプロがおこないます。そのため、投資家は手間をかけずに不動産投資が可能です。現物不動産投資の場合、収益物件の内覧や不動産会社の選定など、さまざまな手順を踏まなければなりません。また、書類の準備やお金のやり取りなど、時間もかかるでしょう。しかし、REITであればそういった手間や時間がかかりません。そのため、不動産投資には興味があるけど、仕事が忙しくて手間や時間をかけられない方におすすめです。

短期間で収益を上げたい人

REITは短期間で収益を上げたい方にも向いています。REITは証券取引所で売買されるため、流動性が高いことから、短期間での運用にも適しています。しかし、先述したように、REITは借り入れができないため、全額自己負担となります。短期間で大きな収益を上げるためには、多くの自己資金が必要となるでしょう。繰り返しになりますが、REITはリスクがあるため、リスクを許容できる範囲で、余裕資金でおこなうようにしましょう。

自己資金が少ない人

REITは「自己資金は少ないけど、不動産投資を始めてみたい」という方にもおすすめです。REITは1万円といった少額から投資できるため、自己資金が少ない方でも不動産投資が可能。現物不動産投資の場合、頭金や仲介手数料などの諸費用が必要となります。しかし、REITの場合はそれらの費用の負担がなく、資金を投資に回すことができます。余裕資金をすべて投資に回せるため、効率的に運用できるでしょう。

REITで失敗しないための4つのポイント

REITで失敗しないためのポイントを4つ解説します
REITで失敗しないためのポイントを4つ解説します

「やめとけ」と言われることもあるREITですが、ポイントを押さえておけば、安定した収益を得られる可能性が高まります。本章では、REITで失敗しないために押さえておきたいポイントを解説します。

投資する目的を明確にする

まず、投資する目的を明確にしましょう。REITに限った話ではありませんが、目的によって適切な商品は異なります。例えば、定期的に分配金を得たいのであれば、毎月安定して分配される商品を選ぶといいでしょう。一方、長期的な資産形成を目指すのであれば、分配回数が少ない商品を選んだほうがいいでしょう。このように、目的によって投資すべき商品は異なります。なぜREITに投資するのか、今一度考えてみましょう。

リスクを理解する

REITは他の投資商品と同様、リスクをともないます。投資を始める前に、REITのリスクをよく理解しておきましょう。あらかじめリスクを理解しておけば、価格が急激に下がった時でも、適切な対策が取れるでしょう。例えば、投資していた投資法人の上場廃止が決まった際には、すぐに売却するなどといった対処も。また、物件の種類や地域などを分散させて投資すると、リスクを軽減できます。REITを始める際には、リスクを理解し、適切な対策をとることが大切です。

長期的な視点で投資する

REITは短期間で収益を上げることもできますが、長期的な視点で投資すると、より資産を増やせるでしょう。ニッセイアセットマネジメント株式会社の「J-REITレポート J-REIT市場 現状と今後の見通し(2024年7月号)」を見ると、J-REITの時価総額はこの10年ほどで2倍以上になっています。経済危機などにより一時的に価格が落ち込むこともありますが、長期に運用することで、損失をカバーできる確率も高くなります。REITに投資する際には、長期的な視点でおこなうようにしましょう。

信頼できる情報源から情報収集する

REITに限らず、投資をおこなう際には、信頼できる情報源から情報収集しましょう。現在、SNSで誰でも情報を発信できるようになったことから、投資の経験談やおすすめの商品など、さまざまな情報が溢れています。しかし、「SNS型投資詐欺」という言葉もあるように、なかには悪徳業者や詐欺師もいます。投資法人や証券会社のホームページには、商品の詳細や市場の動向などが掲載されています。これらは正確な情報に基づいて分析や解説がおこなわれているため、より正しい投資判断をする際に役立つでしょう。

まとめ

本記事では、REITは「やめとけ」と言われる理由を解説しました。REITには、元本割れや分配金の減少など、さまざまなリスクがあります。しかし、少額から不動産投資ができ、高い利回りが期待できるといった魅力もあります。投資は不確実なものであるため、損をしてしまうかもしれませんが、分散投資や長期運用をおこなうことで、損失の軽減は可能です。ご自身の投資目的をよく確認し、信頼できる情報源から情報収集をおこなったうえで、検討しましょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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