このページの一番上へ

不動産投資で宅建はいらない?宅建業法違反になるケースや取得するメリット・デメリットを解説

不動産投資で宅地建物取引士の資格を取得するメリットやデメリットを解説します
何も知識がない状態で不動産投資を始めることに不安を抱く方もいるでしょう。知識を身に付ける手段として、宅建(以降、宅地建物取引士)の取得を考える方もいるのではないでしょうか。本記事では、宅地建物取引士の概要や取得するメリット・デメリットを解説します。

また、不動産投資で宅建業務法違反になるケースや不動産投資で成功するためのポイントも解説。宅地建物取引士の取得は、あくまで知識を身に付けるため一つの手段であることを理解し、不動産投資で収益を上げるという本来の目的を忘れないようにしましょう。

宅建(宅地建物取引士)の概要

宅建とは何なのかを解説します
宅建とは何なのかを解説します

まずは、宅建(宅地建物取引士)とはどういう資格なのか、基本的な知識を理解しておきましょう。

宅建(宅地建物取引士)とは

宅建とは「宅地建物取引士」の略称で、土地や建物の売買、賃貸物件の契約など、不動産取引の専門家であることを示す国家資格です。不動産取引では、専門知識を持っていない人がおこなう場合が多いため、法律に基づいて公正に取引ができるようサポートをします。

宅建(宅地建物取引士)の役割

宅地建物取引士になると、次の3つの独占業務が可能となります。

  • 重要事項の説明
  • 重要事項説明書への記名
  • 契約書への記名

重要事項の説明とは、土地や建物の契約をする前に、不動産の内容について説明することです。例えば、所有者や不動産の広さなど物件や取引条件に関するさまざま情報を説明することで、取引後のトラブルを防ぎます。

重要事項説明書への記名とは、重要事項をまとめたものを作成・交付する際に、宅地建物取引士が記名をすること。宅建士が記名をすることで、「説明したことの責任を持つ」という証明になります。

契約書への記名とは、不動産の取引をした証明となる契約書に宅地建物取引士が記名することです。契約書には、購入代金や家賃の金額、支払い方法、引き渡しの時期などが記載されています。この3つの業務は宅地建物取引士にしか認められていない業務となります。

不動産投資で宅建業法違反になるケース

不動産投資において宅建業法違反となるケースを解説します
不動産投資において宅建業法違反となるケースを解説します

不動産の取引は宅地建物取引業法、いわゆる宅建業法に基づいておこなわれます。本人はそのつもりがないにも関わらず、不動産投資をおこなっていて宅建業法に違反するケースがあります。どのようなケースが違反となるのか、詳しく見ていきましょう。

反復継続性がある取引行為

反復継続性がある取引行為は、宅建業法違反となる可能性があります。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によると、次のように記載されています。

“反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。”

つまり、不動産投資で売買を繰り返していると、事業性が高いことから宅地建物取引業に該当し、違反となる可能性があるということです。また、現在の状況だけではなく、過去や将来的な予定も含めて判断するとされています。しかし、具体的な数値が示されているわけではないため、継続的に売買を繰り返すことは避けたほうがいいでしょう。

利益を目的とする取引行為

利益を目的とする取引は、事業性が高いと考えられ宅建業法違反となる可能性があります。しかし不動産投資は、利益を得るためにおこなわれることが大半でしょう。先ほども取り上げた国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には次のように記載されています。

“利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。”

なお、特定の資金需要の例としては、相続税の納税や住み替えにともなう既存住宅の処分が挙げられています。つまり、何かしらの資金が必要であるために不動産の取引をする場合は、事業性が低いとみなされるということ。しかし、こちらもどういう場合に事業性が高いのか、具体的な基準が示されているわけではありません。

複数回の売買を予定している、大きな利益を得たいと考えている場合は、宅地建物取引士の資格を取得しておくと安心でしょう。

不動産投資で宅建(宅地建物取引士)を取得するメリット

不動産投資で宅地建物取引士の資格を取得するメリットを解説します
不動産投資で宅地建物取引士の資格を取得するメリットを解説します

宅地建物取引士の資格を取得すると、宅建業法に違反することなく、事業性の高い取引ができるようになります。しかし、事業性の高い取引をする予定がなくても、資格を取得するとさまざまなメリットが得られます。本章では、宅地建物取引士を取得すると不動産投資でどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

物件選びの判断力が付く

宅地建物取引士の資格を取得すると、物件選びの判断力が付くでしょう。建築基準法や都市計画法など、不動産に関する多様な法律を学べるため、物件の法的リスクを事前に把握できます。また、所有権や賃借権など、不動産の権利関係を理解することで、取引時のトラブルを防げます。

資格を取得すると、物件に問題がないか、どれくらいの価値があるのかを正しく判断できるようになり、収益性の高い物件を選ぶ際に役立つでしょう。

重要事項説明の内容をより理解できる

宅地建物取引士の資格を取得することで、不動産取引における重要事項説明の内容を深く理解し、より的確な判断が可能となります。先述したように、重要事項説明は、契約前に宅建士から受けなければならない説明のこと。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方別添2」では、取引の内容ごとに、あらかじめ知っておくべき事項がまとめられています。具体的な事項としては、次のようなものがあります。

  • 登記記録に記録された事項
  • 飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況
  • 耐震診断の内容
  • 契約の解除に関する事項

ここで取り上げたものは一部であり、知っておく事項は多岐にわたります。これらは専門用語が多く、理解が難しいため、宅地建物取引士の資格を取得するとより深く理解でき、的確な判断ができるでしょう。

取引先との交渉が有利になる

宅地建物取引士の資格を取得すると、不動産会社や金融機関など、取引先との交渉が有利になります。宅地建物取引士は国家資格であるため、資格を取得すると、取引先からの信頼を得やすくなります。例えば、不動産の取引において不利な条件を提示されても、法律を熟知しているため適切な判断が可能です。

また、資格を取得すると、専門知識があることの証明になるため、金融機関からの信用度も高くなります。金融機関からの信用度が高まれば、不動産投資ローンを組みやすくなるでしょう。

不動産投資で宅建(宅地建物取引士)を取得するデメリット

不動産投資で宅建(宅地建物取引士)を取得するデメリット
不動産投資で宅建(宅地建物取引士)を取得するデメリット

次に、宅地建物取引士の資格を取得するデメリットを見ていきましょう。大きく2つのデメリットがあります。

資格を取得するまでに時間がかかる

資格を取得するデメリットとして、時間がかかることが挙げられます。まったく知識がない状態で勉強を始める場合、必要な勉強時間は300〜600時間とされています。例えば、1日2時間の勉強時間を確保したとしても、約5〜10カ月かかることに。また、合格率も約15~18%と低く、勉強したからといって必ず合格できるとは限りません。知識を身に付けるために勉強することも大切ですが、不動産投資の経験を積んだほうが実績にもなり、生きた知識が得られるでしょう。

お金がかかる

資格を取得する際に、お金がかかることもデメリットの一つです。問題集を購入し、独学で宅地建物取引士の勉強はできるでしょう。しかし、通信講座や予備校のほうが知識が体系的にまとめられており、効率よく学ぶことができます。ただし、お金がかかるため、見合った効果を得られるのかを検討する必要があります。

また、合格したとしても実務経験が2年未満の場合、宅建士登録実務講習を受講しなければなりません。受講費は約2万円で、講習を受けたあとに登録手数料として3万7,000円を支払います。

不動産投資で成功するために大切なこと

不動産投資で成功するために大切なことを3つ解説します
不動産投資で成功するために大切なことを3つ解説します

不動産投資で成功するために、資格を取得することも大切ですが、知識を身に付けるための手段の一つでしかありません。本章では、資格を取得することよりも大切なことをお伝えします。

信頼できるパートナーを見つける

不動産投資は幅広い知識が必要となるため、一人でおこなうにはハードルが高い投資です。信頼できるパートナーを見つけることで、成功する可能性を高められます。

不動産投資で成功するためには、物件選びが鍵となります。しかし、法律的に問題がない物件か、立地や周辺環境はよいか、周辺の家賃相場はいくらくらいかなど、さまざまな視点から総合的に判断しなければなりません。すでに経験のあるオーナーであれば問題ないかもしれませんが、不動産投資が初めての方の場合、何から手を付けていいのかわからないでしょう。

そこで、信頼できるパートナーがいれば、これまでの実績や経験、専門知識をもとに、適切なアドバイスをしてくれます。複数の不動産会社と比較検討し、自分に合ったパートナーを見つけましょう。

自分の目で物件を確認する

購入したい投資物件があったら、現地に足を運び、自分の目で確認しましょう。写真や図面ではわからない、周辺環境や建物の状態を確かめられます。例えば、外壁のひび割れや内装の痛みなど、自分の目で確認することで、劣化具合を正確に把握できるでしょう。また、日中だけでなく時間帯を変えて足を運ぶことで、騒音や治安などが確認でき、入居者の満足度を予測できます。投資物件は高額な取引であるため、失敗を避けるためにも必ず自分の目で直接確認しましょう。

詳細な収支シミュレーションをおこなう

投資物件を購入する前には、必ず詳細な収支シミュレーションをおこないましょう。不動産投資では、長期的に安定した家賃収入が見込める一方、さまざまなリスクもともないます。
例えば、空室が出ると家賃収入が減ってしまいます。また、予期せぬ修繕対応で、出費が増えるかもしれません。すべてを予測することは不可能ですが、収支が増減しても問題なく経営ができるよう、リスクを見越した計画を立てましょう。

まとめ

本記事では、不動産投資で宅地建物取引士の資格を取得する必要性やメリット・デメリットを解説しました。繰り返して売買をおこなう場合、宅建業法違反となる可能性があります。将来的に継続して売買をする予定があるのであれば、資格を取得したほうが安心でしょう。しかし、まったく知識のない状態で勉強を始めるとなると、相当な勉強時間を確保しなければなりません。

また、合格率も低く、必ずしも合格できるわけではありません。資格を取得するために勉強に時間をかけ、不動産投資を始める機会を逃してしまうのは本末転倒です。信頼できるパートナーを見つけ、知識や経験などを補ってもらいながら、安定した賃貸経営をおこないましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る