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不動産投資のポートフォリオとは?効果や組み合わせ方を徹底解説

不動産投資に興味を持つ方は、リスクを抑えつつ、資産を効率的に増やしたいと考えるでしょう。不動産投資をする場合、どのようにして投資先を分散し、安定した収益を確保するか、具体的な方法や戦略を知りたい方は多いはずです。

そこで本記事では、不動産投資のポートフォリオとは何か、どのように効果的に組み合わせるか、またそれを作成する際の重要なポイントを詳しく解説します。これらの情報を知れば、より賢明な判断ができ、長期的な資産形成に向けた戦略を立てる際に役立つでしょう。

不動産投資のポートフォリオとは

不動産投資におけるポートフォリオとはどのようなものでしょうか
不動産投資におけるポートフォリオとはどのようなものでしょうか

「ポートフォリオ」は、複数の資産に分散して投資をおこない、損失リスクを抑える分散投資における重要な考え方です。ポートフォリオは、どの投資商品にどれくらいの資産を分配するかを決めることを指します。この考えは「同じカゴに卵を入れるな」との格言に由来しています。もし、すべての卵を1つのカゴに入れてしまうと、そのカゴが落ちた際にすべての卵が割れてしまうかもしれません。一度にすべてを失うリスクを避けるため、複数のカゴに分けましょうという教えです。
投資でも同じ考えが役立ちます。1つの資産だけに集中するのではなく、異なる種類の資産に分散して投資すると、特定の投資対象が値下がりしても、他の投資対象がその損失をカバーできるかもしれません。これがポートフォリオの考え方です。

不動産投資における理想のポートフォリオ

理想的なポートフォリオは、投資目的やリスク許容度によって異なり、個々に作成する必要があります。資産を大きく増やそうとする投資家もいれば、元本を減らさず堅実に資産を守ろうとする投資家もいるでしょう。このため、ポートフォリオは個々の目標や状況に応じて組み立てる意識が重要です。

一般に、不動産投資のリスクは他の資産と性質が異なるため、資産のなかに適度に取り入れるように組みます。しかし、不動産は資産価値が安定しやすい反面、流動性は高くありません。そのため、資産全体の50〜80%を上限に、残りは株式や債券、現金などの流動性の高い資産でバランスを取る考え方が一般的です。もし、不動産のみを資産として持っていると、評価額が全体の80〜90%にのぼる場合もあります。このような構成は、将来的に不動産市場が低迷した場合、資産全体の価値が急落してしまうため、おすすめできません。

不動産投資でポートフォリオを活用する効果

不動産投資でポートフォリオを活用するとどのような効果があるのでしょうか
不動産投資でポートフォリオを活用するとどのような効果があるのでしょうか

不動産投資のポートフォリオとは何かを解説しましたが、なぜ必要なのでしょうか。そこで本章では、不動産投資でポートフォリオを活用する効果を見ていきましょう。

分散投資によりリスクを軽減できる

不動産投資において分散投資をすることは、特定のリスクを軽減するための効果的な手法です。分散の方法には地域、時間、物件種別があり、それぞれ異なるリスクに対応しています。例えば、地域を分散させた場合。地域を分けると、特定のエリアの景気悪化や人口減少の影響を受けにくくなります。また、都市部のマンションと地方の一戸建てを組み合わせることで、片方が不況に陥っても他方の安定収益が期待でき、収入源を確保できます。

時間の分散は、物件購入のタイミングをずらし、価格変動リスクを分散する効果が期待できるでしょう。全資金を一度に投入せず、複数のタイミングで投資すると、購入時の価格が高騰したり、予期しない経済変動による価格下落が発生しても損失を抑えられます。

また、物件種別での分散は、住宅用と商業用不動産を組み合わせると、需要の変動による影響を緩和できるでしょう。景気の低迷時には商業用物件の需要が低下する可能性があります。一方、住宅用物件の安定収益が維持されるため、収益のバランスが保たれやすくなります。このように、分散投資は多角的なリスク回避ができ、不動産投資におけるポートフォリオ全体の安定性が向上するでしょう。

融資金額と所有物件を戦略的に拡大できる

ポートフォリオを戦略的に構築すると、融資金額と所有物件を拡大しやすくなる効果が期待できます。それは、主に金融機関からの評価が向上し、段階的な資産形成が可能になるからです。不動産投資では、収益物件を運用しながら信頼できる実績を積み重ねると、金融機関からの信頼を獲得しやすくなります。特に、運用実績がある投資家は、返済能力の証明となるため、金融機関は追加融資に前向きになりやすいでしょう。

また、ポートフォリオを段階的に拡大する際に時間分散を意識すると、経済環境や不動産市場の変動に応じて柔軟に調整ができ、長期的な成長が見込めます。例えば、小規模な収益物件での運用実績を積み、その後に規模を拡大した収益物件へと移行すると、融資枠が広がり、所有物件の追加購入が可能になるでしょう。このように、ポートフォリオを意図的に組むと、物件購入時の融資条件を徐々に引き上げ、投資機会を増やす戦略が取れるため、結果として所有物件の数や融資金額の増加を実現できます。

一方、ポートフォリオを組まずに不動産投資をおこなってしまい、融資条件の満額で1棟マンションを購入した場合にはどうなるのでしょうか。実績を作るまでは長く困難な道のりになる可能性が高く、投資用ローンの返済実績を作ったり、所有物件を増やしたりするのは難しいかもしれません。よほどの好条件の物件が偶然見つかるようなケースを除けば、融資金額と所有物件は段階的に拡大する戦略を取るべきです。

不動産投資で効果的なポートフォリオの組み合わせ

不動産投資で効果的なポートフォリオの組み合わせを解説します
不動産投資で効果的なポートフォリオの組み合わせを解説します

前述では、ポートフォリオを組むことでリスクの分散に効果的である点を紹介しました。それでは、どのように組み合わせるとよいのでしょうか。そこで地域分散、物件タイプの分散、時間分散の3つに分けて、効果的なポートフォリオの組み合わせを詳しく見ていきましょう。

地域分散

不動産投資で地域分散をおこなうと、特定地域の経済状況や人口動向の悪化によるリスクを軽減できるだけでなく、空室リスクや自然災害リスクも抑えやすくなります。都市部と地方、住宅地と商業エリアなど異なる特性を持つ地域で収益物件を所有すると、賃料収入や物件の売却益の安定化が図れるでしょう。

例えば、東京都内のマンションと地方のアパートを組み合わせると、都市部の高い賃料収入と地方の比較的低い維持費の双方を活かせます。ただし、複数のエリアでの所有は物件管理が複雑になりやすく、移動や管理コストの増加も考慮が必要です。そこで、複数の地域に収益物件を分散させる場合には、物件の管理負担を軽減するため、アクセスのいいエリアやリスクの異なるエリアを組み合わせるようにしましょう。

地域分散を計画的に進めるには、まず1件目の物件が所在する地域の空室リスクや震災リスクを把握したうえで、そのリスクをカバーできるエリアを次の投資先として検討する方法が効果的です。

例えば、東京都千代田区の物件は家賃が高く、住民層の安定も見込まれるため魅力的ですが、一部地域は神田川の氾濫リスクがあることがわかっています。このようなエリアでの投資をおこなう場合は、水害のリスクが比較的低い中野区や北区などの物件と組み合わせると、災害リスクを分散できるポートフォリオになるでしょう。このように地域分散を考慮すると、空室や災害などの局所的なリスクを分散し、安定した賃料収入の維持を目指せます。

物件タイプの分散

不動産投資で物件タイプを分散させることは、リスク管理を強化し、市場の変動に対する耐性を高めるための重要な方法です。物件タイプとしては、住宅用、商業用、オフィス、物流施設などが挙げられます。これらを組み合わせると、景気や需要の変動によるリスクを分散し、安定した収益の確保を目指せるでしょう。

例えば、住宅用の物件は経済状況の変動に影響されにくく、景気が悪化しても安定した需要が見込めます。そのため、長期的に安定した収益を生み出しやすい傾向があります。これに対して、オフィスや商業用物件は、景気の影響を受けやすい一方で、景気がよい時には高い収益を上げられるかもしれません。これらの特性を組み合わせると、収益の波を平準化し、ポートフォリオ全体の安定性を高められます。

リスク特性が異なる複数の種類に資産を分けることは、分散投資の基本ですが、不動産投資でも例外ではありません。住宅用の収益物件にはさらに、一戸建て、アパート、マンションなどがあり、マンションに関しては一棟所有と区分所有に分かれます。また、近年では太陽光発電施設やコインランドリー施設も投資対象になる場合があり、さまざまな収益モデルの活用が欠かせません。

特に商業用物件は、近年の社会変化でリスク要因が増しています。例えば、新型コロナウイルスの影響でオフィスの移転や縮小が相次いでいる点から、安定収益を見込むためには慎重な検討が必要です。そのため、分散を目的とする場合でも、無作為に収益物件を選ぶのはやめましょう。居住用の区分マンションと一棟マンションのように、リスクが低めで管理のしやすい物件を中心に分散させるようにすると効果的です。

時間の分散

不動産投資における時間の分散は、市場リスクを低減し、柔軟な資産拡大を可能にする有効な戦略です。すべての投資を一度におこなわず、段階的に収益物件を取得すると、経済環境の変動に対応しやすくなるでしょう。例えば、最初は小規模でリスクが低い収益物件から始め、徐々に運用実績を積み重ねてから追加融資を検討するなどの方法が考えられます。この追加融資で新たな収益物件を購入すると、ポートフォリオを拡充させられるでしょう。

また、時間分散の観点からは、物件を取得するタイミングだけでなく、物件の築年数にも着目すると有効です。築年数が異なる物件を保有すると、修繕費や減価償却にかかるタイミングを分散でき、資金管理がしやすくなります。もし築年数が近い物件を複数持つ場合、修繕時期が重なると高額な費用が一度にかかり、資金繰りが厳しくなるかもしれません。例えば、築浅の物件と築20年程度の物件を組み合わせて保有すると、修繕コストを段階的に分散しながら、資産の安定運用が可能になります。

さらに、築年数が異なる収益物件を保有すると、減価償却の効果を活用した節税も可能です。減価償却期間をずらして毎年の税金負担を均等化すれば、資産管理がしやすくなるでしょう。また、築年数の異なる物件を持つと、売却時期の分散も図れ、景気が好転しているタイミングに高値で売却する機会を増やせます。このように、時間分散はリスクを抑えながら資産運用を安定させるための重要な戦略です。

不動産投資のポートフォリオを作るポイント

不動産投資におけるポートフォリオ作成のポイントは何でしょうか
不動産投資におけるポートフォリオ作成のポイントは何でしょうか

不動産投資のポートフォリオを作成する際には、事前に目標とリスク許容度を明確にし、慎重に準備を進めなければなりません。本章では、不動産投資のポートフォリオを作るポイントとして、ポートフォリオの構築に必要な下準備や確認項目を解説します。

初期の投資金額を設定する

ポートフォリオを構築する前段階では、まず投資金額の設定から始めます。手元資金がどれだけあるかを確認し、自己資金に加え、投資用ローンの利用も視野に入れた投資金額の上限を定めましょう。自己資金のみでリスクを抑えたい場合と、融資を活用して資産規模を広げたい場合とで戦略が変わるため、どちらが適しているかを検討します。

目標利回りを設定する

次に、不動産投資で得たい目標利回り(期待リターン)を設定します。目標利回りはリスク許容度に応じて設定しましょう。例えば、リスクを抑えて安定収益を目指す場合は低い利回りでも問題ありませんが、積極的に収益を狙いたい場合は高い利回りを目指すほうが適しています。ただし、利回りが高い収益物件はリスクもともなうため、慎重な判断が必要です。

例えば、リスクを抑えつつ安定した収益を目指したい場合、年間3〜5%程度の利回りを目標にするとよいでしょう。この場合、収益物件は好立地で需要が安定しているエリアや、空室リスクが少ない収益物件を選ぶのが適しています。こうした物件は利回りこそ低めですが、長期的に安定した収益を得やすいです。

一方で、利回り8%以上の収益物件は、短期間で資産を増やしたい場合に魅力的です。しかし、このような物件は郊外や築年数が古い場合が多く、空室リスクや修繕コストが増えるかもしれません。例えば、築30年以上のアパートは利回りが高く設定される場合がありますが、その分、老朽化による修繕や空室のリスクが懸念されます。このため、利回りが高い投資先を選ぶ際は、収益が予想どおり得られない可能性も考慮し、リスクとリターンのバランスを見極めなければなりません。利回りが高いほどリスクも大きくなるため、目標利回りを設定する際は投資目的とリスク耐性に合った基準を持つ意識が大切です。

目的とリスク管理を明確化する

不動産投資のポートフォリオ構築では、投資目的を明確にし、それに応じたリスク管理が重要です。例えば、「長期的な安定収入」を目指す場合は、不動産からの賃料収入を重視し、景気の変動に強い安定した収益物件を選ぶようにしましょう。これは特に、老後の生活資金を確保したい場合に有効な戦略です。このような目的を持つ場合、賃貸需要の高いエリアに位置し、メンテナンスコストが比較的低く抑えられるような物件を選ぶようにしましょう。

一方、「短期間での資産拡大」を目指す場合、物件価格の変動を利用した売却益を狙うアプローチが適しています。こうした投資目的では、地域の再開発計画や周辺環境の変化による価格上昇が見込める収益物件に投資する方法が有効です。特に、物件価格の上昇余地があるエリアの不動産に資金を投入し、価格が上がったタイミングで売却すれば、短期間でリターンを得られるでしょう。

リスク管理には、不動産特有の突発的なリスクに備える準備が欠かせません。例えば、空室や修繕費は突然発生するため、十分な流動資金を確保しておくようにしましょう。賃料収入が減少した際や大規模な修繕が必要になった場合に備え、物件購入後も常に一定の資金を確保し、リスクに柔軟に対応できる体制を整えるべきです。収益が見込めない期間や経済の低迷期を乗り越えるためには、現金やその他の流動性の高い資産を組み込むようにしましょう。

継続的にポートフォリオを見直す

不動産市場や経済状況は変動するため、ポートフォリオも時折見直しする意識が欠かせません。ライフステージや投資環境が変わった場合、再評価して資産配分を調整し、目的と状況に適した構成を保つようにします。

以上のように、不動産ポートフォリオの作成には、計画的な下準備と慎重なリスク管理が必要です。目的に応じた分散と資産管理を適切におこなう点が、不動産投資のポートフォリオを作るポイントになります。

不動産投資のポートフォリオに関するよくある質問

不動産投資のポートフォリオに関するよくある質問をまとめました。

不動産投資のポートフォリオとは?

不動産投資のポートフォリオとは、どの投資商品に、どれくらいの資産を分配するかを決めることです。理想的なポートフォリオは、投資目的やリスク許容度に応じて構成します。一般的には不動産の比率を50〜80%に抑え、残りを流動性の高い株式や債券、現金でバランスを取る対策が推奨されます。そうすれば、不動産市場が低迷した際の資産価値の急落を避けられるでしょう。

不動産投資におけるポートフォリオを活用する効果とは?

不動産投資におけるポートフォリオは、リスクを軽減し、資産形成を促進する重要な要素です。地域、時間、物件種別を分散すると、特定の経済悪化や価格変動の影響を抑えられます。地域を分散すると、一方の収入源が不安定でも、他方が安定した収益を生むかもしれません。また、ポートフォリオを戦略的に組むと、金融機関からの信頼を得やすく、融資額や物件数を段階的に増やせるようになります。結果、安定した収益と長期的な成長が見込めるようになるでしょう。

不動産投資で効果的なポートフォリオの組み合わせとは?

不動産投資で効果的なポートフォリオを作成する際には、地域分散、物件タイプの分散、時間分散を組み合わせる点が重要です。地域分散により経済や自然災害リスクを軽減し、物件タイプの分散で市場変動に対する耐性を高めます。また、時間分散は投資タイミングや築年数をずらすと資金管理を容易にし、修繕コストや減価償却の負担を分散できるでしょう。これらの戦略を通じて、安定した収益とリスク管理を実現します。

不動産投資のポートフォリオを作るポイントとは?

不動産投資のポートフォリオ作成時には、初期投資金額や目標利回りの設定、目的とリスク管理の明確化、継続的な見直しが欠かせません。自己資金や融資を考慮し、安定した収益を目指すか資産拡大を狙うかで戦略を変えます。また、市場や経済状況の変化に応じてポートフォリオを見直し、リスクに備えるための流動資金を確保する点も欠かせません。個々の目標やリスク許容度に応じたポートフォリオを作成するためには、計画的な準備が肝心です。

まとめ

本記事では、不動産投資のポートフォリオの概要や投資リスクを軽減し、安定した収益を目指すための具体的な戦略を立てるポイントを解説しました。地域、物件タイプ、投資タイミングの分散を通じて、経済変動に強い資産構成を実現しましょう。また、初期投資や目標利回りの設定、計画の見直しは定期的におこないましょう。本記事で紹介した知識を活用すれば、市場の変動に柔軟に対応でき、資産の長期的な成長を見込めるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士 大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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