収益物件とは?メリット・デメリットや購入する際のポイントを解説

記事の目次
収益物件とは

収益物件とは、所有する不動産を賃貸することで毎月安定した賃料収入を得られる物件のことです。「投資物件」とも呼ばれ、住居用だけでなく、オフィスビルや駐車場なども含まれます。
自分が住むための居住用とは異なり、収益を目的とした不動産であるため、住宅ローンとは異なる不動産投資ローンを借り入れて購入することが一般的。不動産投資ローンは住宅ローンと比べて金利が高めである場合が多く、目的に応じて使い分けが必要です。
収益物件の3種類の特徴

収益物件には主に3種類があります。それぞれ特徴が異なるため、以下で詳しく見ていきましょう。
住居系物件(マンション・アパートなど)
住居系物件は、借り手が住居として利用する物件で、マンションやアパート、一戸建て貸家が挙げられます。収益物件としては一般的で、初心者でも比較的判断しやすいジャンルとされています。
住居系は、景気に左右されにくい居住ニーズが強く、需要が安定している点が特徴。ただし、オフィスや店舗よりも利回りは低い傾向にあります。初めて不動産投資をする場合には、リスクを抑えやすい住居系物件が向いているでしょう。
オフィス系物件(事務所や事業用)
オフィス系物件は、企業や団体が事務所として利用する物件で、広さやアクセスのよさが重要です。そのため、購入価格は住居系よりも高めの傾向になります。
入居する企業が長期間入れ替わらないことが多く、安定した収入を期待でき、利回りも大きくなる可能性があります。しかし、空室が出た際には、長期間埋まらないリスクもあるため、募集条件を慎重に検討することが重要です。
テナント系物件(店舗や倉庫など)
テナント系物件は、飲食店や小売店などが商業利用する物件で、業種や立地条件の影響を受けやすくなります。高い集客が見込める立地であれば賃料も上がりやすく、利回りも高めです。
しかし、業態によっては長期間の契約を結びやすいものの、業績不振による退去や滞納リスクも考慮しなければなりません。また、必要設備や法規制を満たす必要があるため、管理会社の適切なサポートが重要です。
収益物件を所有するデメリット

収益物件を所有する際には、デメリットがあります。デメリットを理解しておかなければ、のちのちトラブルに発展する可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
簡単に売却できない
収益物件の保有に関して、流動性の低さは大きなデメリットです。不動産は資産価値が高く、購入時に大きな資金を必要としますが、売却時に必ずしも短期間で現金化できるわけではありません。
例えば、急な資金が必要になった場合や不動産市場の変動によって売却したい場合でも、買い手が見つからなければ、現金化に長期間を要する可能性があります。特に、築年数が経過した物件や、立地条件が好ましくない物件では、購入を検討する人が限られるため、売却までの期間が長期化しやすい傾向にあります。
さらに、不動産取引の際には仲介手数料や税金、諸経費などもかかり、売却することでコストがかさむ点も覚えておきたいポイント。加えて、早期に売却を進めるためには、相場よりも安い価格で売り出さなければならないケースもあります。物件本来の価値を下回る価格での売却を強いられるリスクも潜んでいるため、注意が必要です。
手間がかかる
収益物件の管理業務は、多岐に渡ります。具体的には、ソフト管理(入退去手続きや賃料管理、環境の維持、滞納督促)とハード管理(建物や設備の修繕や清掃、改修工事)に分けられます。
ソフト管理の部分では、入居率を高く保つための入居者募集や契約更新手続き、退去手続きなどがあります。さらに滞納が発生した際には督促業務をおこなわなければなりません。滞納者への対処が遅れると、収益の減少だけでなく、物件全体の収益性が悪化する原因にもなります。
一方、ハード管理では建物自体の維持や修繕が必要です。適切におこなわなければ物件の資産価値が下がるリスクも。建物や設備の劣化を防ぐためには、定期的な点検や補修が欠かせません。
特に、建物の大規模修繕が必要となる場合には、事前に見積もりや施工会社との交渉も必要です。こうした多岐にわたる管理業務をおこなうには、管理会社に委託する方法もありますが、委託費用が発生します。収益と支出のバランスを考えて、委託するかを決めましょう。
維持管理コストがかかる
収益物件を所有する以上、毎年一定の維持管理費用が発生します。例えば、建物や設備の老朽化による修繕費や清掃費、さらには水道光熱費、消耗品の購入費用など、さまざまな管理コストが毎月の賃料収入から差し引かれることになります。
さらに、建物に関する固定資産税などの税金や火災保険、地震保険などの保険料も、オーナーにとっては大きな負担となるでしょう。
また、予期せぬ設備故障や災害による破損が発生した場合には、突発的に大きな出費が発生することもあります。特に、大規模な修繕が必要になった場合には、数百万円以上の費用がかかることもあり、事前に資金を確保しておくことが大切です。
日常の清掃や簡易修繕を自分でおこなうことも可能ですが、手間と時間が大きくかかるもの。どうすれば収益を圧迫させることなく、効率的な運用ができるのかを検討したほうがよいでしょう。
融資を受けるには保証人や保証会社がいる
不動産投資ローンを利用する際には、保証人を立てたり、保証会社を付けることが求められます。従来は、連帯保証人を立てることが一般的でしたが、民法改正により、手続きが煩雑化している現状です。そのため、保証人を立てる代わりに、団体信用生命保険への加入や保証会社を付けるケースが増えています。
しかし、保証料や保険料の負担が増えることで、収益性が下がる可能性も。特に、個人名義ではなく法人名義での不動産取得をおこなう場合、法人の代表者が個人保証をおこなう必要があり、実質的な負担が大きくなることもあります。
また、保証会社を利用する場合には、保証料の支払いが続く限り利回りに影響するため、これらの費用を事前にシミュレーションしておくことが大切です。
収益物件の運用にともなうリスク

収益物件を運用する際は、事前に頭に入れておくべきリスクもあります。それぞれを以下で詳しく見ていきましょう。
収益が不安定になる時がある
不動産投資では、空室や賃料の下落などの収益の変動があります。特に住居系物件は移動シーズンに入退去が多く、空室期間が発生しやすい点に注意が必要です。
また、築年数が経つと、賃料の下落や物件価値の低下が避けられないため、中長期的なシミュレーションをおこなうことが大切です。
景気変動による影響を受ける
景気の変動により、金利や賃料、管理費が変動します。特に変動金利の不動産投資ローンを利用している場合、景気が悪化すると返済額の増加につながる可能性があります。固定金利を選ぶ、繰り上げ返済をおこなうなど、リスクの軽減策も検討しましょう。
建物や設備が劣化する
収益物件は入居者が利用するため、定期的なリフォームや修繕が必要です。老朽化した建物や設備の更新には高額な費用がかかるため、事前に計画し、資金を準備しておきましょう。
収益物件を所有するメリット

ここまで収益物件を運用するデメリットやリスクを解説しましたが、もちろんメリットもあります。以下で詳しく見ていきましょう。
安定した収入を長期的に得られる
収益物件は、毎月の賃料が決まった日に振り込まれるため、他の投資よりも収入が安定しやすいです。長期的な安定収入を求める方でも、不動産投資ローンの返済後には老後の資産としても役立つでしょう。
節税効果が期待できる
不動産投資には、管理費や修繕費など多くの費用が発生しますが、不動産事業の経費として計上できます。また、損益通算により給与所得との相殺も可能です。相殺することで課税所得を圧縮し、納めるべき税金の金額を抑えられます。さらに、相続税の課税評価額も抑えられるため、相続対策としての効果も期待できるでしょう。
レバレッジ効果を活用できる
収益物件の投資には、少額の自己資金をもとに、多額の融資を受けて高額な不動産を購入できる「レバレッジ効果」があります。全額自己資金で投資をおこなうよりも、融資を受けることで、他の投資では難しい高額投資が可能です。
収益物件を担保に新たな物件購入が可能になる
収益物件の収益性が良好であれば、金融機関から担保価値を認められ、追加融資を受けやすくなります。新たな融資を受ける際、有利な条件で受けられる可能性もあります。複数の収益物件を所有すると、利益を増やしながら不動産投資を拡大させることも可能。また同時に、複数の収益物件を所有することで、リスクを分散させることもできるでしょう。
生命保険の代わりになる
収益物件を購入する時に組む不動産投資ローンを契約する際には、団体信用生命保険への加入を求められることが一般的です。団体信用生命保険に加入すると、契約者に万が一のことがあった場合、ローンの残債が保障されます。万一の際には、家族がローンの返済負担を負うことなく、収益物件を所有できるため、生命保険のような役割も。収益物件を持つことで、資産を次世代に引き継ぐことが可能です。
収益物件の購入時に押さえるべきポイント

収益物件の購入を考える際に、以下の点に注意すればリスクを低減し、良質な物件を選べる可能性が高まります。最後に、それぞれのポイントを詳しく解説します。
運営経費と実質利回りを確認する
利回りとは、物件価格に対する年間賃料収入の割合を示す指標であり、以下の計算式で求められます。しかし、表面利回りを参考にするのではなく、実質利回りを重視すべきです。
表面利回り(%)=(年間賃料収入÷物件価格)×100
実質利回り(%)={(年間賃料収入-年間経費)÷物件価格}×100
実質利回りを調べることで、購入後の実際の運用実績に近い収益が把握できます。表面利回りは経費を考慮していないため、誤った物件評価を避けるためにも、実質利回りをチェックしましょう。
需要が高く借り手が付きやすい物件を選ぶ
収益物件選びでは、需要が高い条件や設備を備えた物件を選ぶことが重要です。例えば、住居系物件の場合、以下のポイントをクリアしている物件は、借り手からの評価も高いため、チェックしておきましょう。
- 立地条件:著名で人気のあるエリアにある、駅に近い、生活利便性が高い
- 居住環境:治安がいい、夜道が明るい、美しい街並みや眺望を望める
- 建築年数:外観や水回りが清潔で、間取りが便利である
- 災害対策:耐震構造や地盤が強い、道路が広い
- 防犯性能:オートロック、防犯カメラが付いている
- 便利な設備:高速インターネット、宅配ボックス、24時間ごみステーションが用意されている
検討中の物件を比較して、できるだけ多くの条件が揃っている物件を選ぶと、借り手から選ばれやすくなるでしょう。
物件を現地で確認する
収益物件を購入する際には、現地での確認が必要です。資料だけではわからない周辺の景観や騒音、治安のよしあし、交通アクセスなどを確かめることで、収益物件の価値をより深く理解できます。現地確認を怠ると、のちのちトラブルに発展したり、運用に支障が出たりする可能性があるため、購入前の内見はとても重要です。
十分な自己資金を用意する
収益物件の購入には、不動産投資ローンを利用するケースが多いです。しかし、自己資金が不足していると融資条件が厳しくなるだけでなく、金利も高くなる傾向にあります。
さらに、突発的な出費や運営資金が必要になる場合に備えて、余裕をもって資金を確保しておくことで、収益物件の安定した運営につながるでしょう。
耐用年数が長い建物構造を選ぶ
収益物件では、建物の耐用年数も大事なポイントです。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの構造であれば、法定耐用年数が47年と長く、減価償却による節税効果が得られます。
例えば、築15年のSRC造マンションなら、購入金額を35年間にわたり経費として分割計上することが可能です。毎年一定額を経費に計上できるため、節税効果を高められるでしょう。
全室の入れ替わりを想定した利回りを計算する
実質利回りをより正確に見積もるためには、仮に全室が現在の市場相場で入れ替わる場合を想定しておくとよいでしょう。特に、賃料相場が下がった際の利回り低下リスクも計算に入れておくことで、投資計画が現実的なものになります。
また、過去のオーナーが賃貸仲介会社に高額な手数料を払って高い賃料で入居者を確保した可能性があるため、相場と大きく異なる賃料契約でないか確認しましょう。高い利回りをアピールしてくる物件には、何らかのリスクが潜んでいる可能性があるため、慎重に調査することが重要です。
信頼できる不動産会社を見極める
不動産投資が成功するかで重要な鍵を握っているのが、不動産会社選びです。投資用不動産に特化し豊富な知識と取引実績を持つ会社であれば、収益物件の購入・運営に必要なサポートをおこなってくれます。
特に賃貸ニーズや市場動向に詳しい担当者によるサポートは、満室稼働を目指すために欠かせません。友人や知人の紹介で安易に不動産会社を選ぶのではなく、実績と信頼性を重視して選びましょう。
まとめ
収益物件にはメリットだけではなく、デメリットやリスクもあります。そのため、収益物件を運用する際には、慎重に物件選びをしなければなりません。
実質利回りの確認や立地・需要の調査、資金計画など、それぞれのポイントに注意を払うことで、安定した収益が期待できる物件を選べるでしょう。信頼できる不動産会社のサポートも活用し、リスクを最小限に抑えた投資を目指しましょう。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ