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不動産投資でFIREを実現させるためのポイント|注意点やリスクも解説

不動産投資でFIREを実現させるためのポイントを解説します
不動産投資を始める方のなかには、「FIRE」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。近年注目が集まっているFIREですが、正しく理解していなければメリットは得られません。そこで今回は、不動産投資でFIREを実現させるためのポイントや、FIREの基礎知識などを詳しく解説します。

FIREとは

FIREについて解説します
FIREについて解説します

近年、日本では働き方や生き方の多様化が進んでおり、「FIRE」というライフスタイルが注目を集めています。FIREとは、経済的に自立し、早期退職を実現すること。この概念はアメリカ発祥ですが、アメリカと日本では、FIREに対する考え方に違いが見られます。ここでは、FIREの基本的な意味とそのルールを詳しく解説します。

アメリカでのFIREの意味

FIREは「Financial Independence, Retire Early」の略で、資産形成を通じて経済的自立を果たし、早期に退職することを意味します。アメリカではかつて、日本のように終身雇用制度が一般的でした。しかし、その制度が崩壊し、年金などの社会保障が手薄になったことで、自ら資産を運用して、老後の生活を確保する必要が生じました。これにともない、投資に興味を持つ人々が増えたとされています。

アメリカでのFIREの主流な考え方は、十分な資産を蓄えたあと、40代で退職し、その後は投資による不労所得のみで生活するもの。退職後も、投資元本を維持しながら、その運用益で生活費を賄うことを目指しています。

日本でのFIREの意味

日本では、1981年から1996年の間に生まれたミレニアル世代を中心にFIREの考え方が広まり、メディアやSNSで注目を浴びるようになりました。ただし、日本でのFIREは、アメリカほど厳格ではありません。なぜなら、アメリカと日本の公的年金制度や終身雇用制度、インフレの状況が異なるためです。

日本では、50代前後でのやや早めの退職と、退職前に資産運用や投資を通じて安定的な収入を得られる状況の構築をFIREと表現することが多いです。このため、日本のFIREはアメリカと比べると、より現実的で柔軟な目標とされていることが特徴です。

FIREに必要な資金目安「4%ルール」

FIREの基本的な考え方の一つに「4%ルール」があります。このルールは、年間支出の25倍の資産を作れば、資産を4%毎年ずつ切り崩しても、少なくとも30年間は資産を維持しながら生活できるというものです。

4%ルールは1998年、アメリカにあるトリニティ大学の研究に基づいています。アメリカの経済成長率(約7%)からインフレ率(約3%)を差し引き、資産から実質的に4%の引き出しが可能だとされました。

ただし、日本ではアメリカほどの経済成長やインフレ率がないため、必ずしもこの4%ルールが適用できるわけではありません。
また、日本の市場ワーキング・グループが発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」では、老後に必要とされる資産は約2,000万円とされています。アメリカに比べて巨額の資産が必要とされないため、日本でFIREを目指す場合、20代や30代から計画的に資産形成をおこなえば、達成が可能な目標といえるでしょう。

不動産投資を利用したFIREのメリット

不動産投資を利用したFIREのメリットを解説します
不動産投資を利用したFIREのメリットを解説します

不動産投資はFIREに適した投資手法です。具体的にどのようなメリットがあるのか、以下で見ていきましょう。

レバレッジ効果を利用できる

レバレッジとは、少額の自己資金で大きな投資をおこなうことで、利益を増やす効果です。例えば、1,000万円の自己資金と不動産投資ローンを利用して、5,000万円の物件を購入すれば、自己資金に比べて大きな収益を得ることが可能です。

節税効果を期待できる

不動産投資では、減価償却や損益通算といった税制上のメリットを得られます。減価償却とは、高額な資産の購入費用を、耐用年数に応じて経費として計上する会計処理のこと。経費として計上することで、課税所得を減らせ、所得税や住民税の節税が可能です。また、不動産は現金と比較して、相続税評価額が低くなることから、相続税の軽減も期待できるでしょう。

管理会社に委託すれば手間がかからない

不動産投資では、物件の管理や入居者の対応を管理会社に委託できるため、運用の手間を軽減できます。例えば、家賃の滞納があっても管理会社が対応し、トラブル対応などの負担を軽減してくれる点がメリットです。ただし、委託する際には、管理会社へ手数料を支払わなければなりません。

金融市場の影響が少ない

不動産は実物資産であるため、株式市場などの金融市場の変動にも左右されにくいです。このため、長期的に安定した収益を見込むことができ、FIREを目指す資産運用には適しています。

不動産投資のリスクと注意点

不動産投資のリスクと注意点を解説します
不動産投資のリスクと注意点を解説します

不動産投資はメリットの多い投資手法ですが、いくつかのリスクもあります。具体的にどのようなデメリットがあるのか、以下で見ていきましょう。

空室・滞納リスクがある

賃貸物件に入居者が決まらない場合、家賃収入を得られなくなります。また、家賃が滞納された場合、実際には収入が得られていないにも関わらず、固定資産税や所得税などの税金が発生することも。不動産投資では空室や滞納リスクが原因で、物件を売却するケースも多く見られます。どのように空室や滞納リスクを減らすのかも常に考えておかなければなりません。

不動産価格下落リスクがある

不動産の価格は景気や地域の需要に左右されます。人口減少や周辺環境の変化によって、不動産の価値が下がる可能性があるため、物件選びは慎重におこなう必要があるでしょう。

修繕・維持コストが発生する

不動産は時間の経過とともに老朽化し、修繕やメンテナンスが必要になります。特に、建物の経年劣化による修繕は、まとまった費用が必要になることが多く、家賃収入を圧迫する可能性があります。

将来の修繕やメンテナンスを見越して、事前に修繕積立金を設定しておくことが大切です。

借入リスクがある

レバレッジを活用するために金融機関から融資を受ける場合、金利上昇や収入減少にともない、返済が困難になるリスクがあります。また、投資用ローンの返済計画が適切でないと、家賃収入よりも返済額が上回ってしまう「逆ザヤ」状態に陥ることも。適切な返済計画を考えることが重要です。

不動産投資の種類

不動産投資における投資対象の種類を解説します
不動産投資における投資対象の種類を解説します

不動産投資には、投資対象にいくつかの種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。自分に合った投資方法を選ぶためには、各投資方法の特徴を理解することが重要です。

投資対象の
種類
メリット デメリット
一棟投資 リターンが期待できる 初期費用が高い
区分投資 少額から始められる 空室リスクが高い
一戸建て投資 高い利回りが
期待できる
空室や修繕リスクが
高い

特に収益性を重視する場合は、一棟アパートやマンションの投資が適しており、空室リスクを軽減しながら、安定的なキャッシュフローが期待できるでしょう。

一棟アパートやマンションの収益性が高くなる理由は、主に3つ挙げられます。1つ目は効率よく事業規模を拡大しやすいこと。一度物件を購入するだけで、複数戸の所有ができるため、事業規模を拡大しやすく、収益性が高まります。

2つ目は、売却時も一定の収入が得られる可能性があることです。一棟アパートやマンションを購入する際には、同時に土地の所有者にもなります。建物が老朽化して売却したくなった際は、更地にして売却が可能。解体費用はかかりますが、老朽化で建物の資産価値が低くなったとしても、土地としての価値が高ければ、高い価格で売却できるでしょう。

3つ目は柔軟な賃貸経営ができることです。例えば、入居率を上げるために新しい設備を導入する、空いているスペースに自動販売機を設置して収入を増やすなど。その時の状況に合わせて、柔軟な賃貸経営ができるため、賃貸物件の魅力をしっかり活かしながら収益を得られるでしょう。

不動産投資でFIREを目指すステップ

不動産投資でFIREを目指すためのステップを解説します
不動産投資でFIREを目指すためのステップを解説します

不動産投資でFIREを実現させるためには、計画が必要です。以下では、不動産投資でFIREを目指すための具体的な手順を解説します。手順は以下のとおりです。

  • STEP 1目標を明確化する
  • STEP 2不動産投資に関する知識を習得する
  • STEP 3投資戦略を策定する
  • STEP 4物件を選定し購入する
  • STEP 5リスク管理をおこなう

それぞれ詳しく解説します。

ステップ1.目標を明確化する

不動産投資でFIREを達成するための第一歩は、具体的な目標を設定することです。まず、自分の生活費が1年間でどれくらいかかっているのか、計算してみましょう。具体的には家賃、食費、交通費、娯楽費、医療費などが挙げられます。例えば、年間360万円かかっているのであれば、月々30万円の安定した収入が必要となります。

次に、この収入を不動産投資でどのように得るのかを考えましょう。必要な家賃収入を得るために、いくつ賃貸物件を所有する必要があるのか、それにはどれくらいの投資が必要なのか、数字を用いて具体的な計画を立てます。同時に、いつまでに目標を達成するのかも設定しましょう。不動産投資は長期的な視点が欠かせません。5年、10年といった中長期的な視点で計画を立てることが重要です。明確な目標があれば、投資判断も的確にできるでしょう。

ステップ2.不動産投資に関する知識を習得する

不動産投資は、投資金額が高額になるため、リスクも大きくなります。そのため、市場動向や物件選びのポイント、法令や税務に関する知識をしっかりと身につけることが不可欠です。書籍や専門誌で基礎知識を学び、セミナーやオンライン講座で最新情報や実践的なノウハウを得ましょう。

また、コミュニティに参加して、成功事例や失敗談から学ぶことも有効です。知識は投資判断の質を高めるだけでなく、リスクを最小限に抑えるための武器となります。継続的な学習を心がけ、市場の変化や新しい投資手法にも柔軟に対応できるように準備しましょう。

ステップ3. 投資戦略を策定する

次に、自分の目標やリスク許容度に合わせた投資戦略を立てましょう。例えば、安定した家賃収入を得たい場合は、賃貸需要の高いエリアで一棟投資や区分投資をおこなうのが適しています。その際、単身向けに人気なのかファミリーに人気のエリアなのかを見極め、投資する物件の間取りや設備を検討するのもポイント。また、ご自身の資金力や時間的な制約に応じて、区分マンションから始めるか、一棟アパートやマンションか、投資対象を決めましょう。投資戦略を明確にすることで、物件選びや資金計画が具体化し、効率的な投資活動が可能になります。戦略は固定せず、市場の状況や自身のライフステージの変化に応じて柔軟に見直すことも大切です。

ステップ4.物件を選定し購入する

投資戦略を策定したら、目標を達成できる賃貸物件を選定し、購入しましょう。収益性と将来性のある物件を選ぶことは、投資の成否を左右します。まず、投資先の地域を選定し、そのエリアの人口動態、経済状況、賃貸需要を詳細に調査しましょう。次に、具体的な物件の利回りやキャッシュフローを計算し、投資効率を評価します。

賃貸物件の状態や築年数、周辺環境、交通アクセスも、入居率に関わる重要な要素です。また、法的な問題や大規模修繕の必要性など、潜在的なリスクを見極めるために、専門家による物件調査やアドバイスを活用しましょう。購入時には価格交渉や契約内容の確認を慎重におこない、不利な条件を避けるよう努めましょう。よい賃貸物件を適正な価格で購入することが、安定した収益を生む基盤となります。

ステップ5.リスク管理をおこなう

不動産投資には、さまざまなリスクがともないます。空室リスクを軽減するためには、需要の高いエリアや賃貸物件を選び、物件の魅力を高める工夫が必要です。また、自然災害や火災などのリスクに備えて、適切な保険に加入することも重要となります。

また、金利上昇や経済変動によるキャッシュフローの悪化を防ぐために、余裕を持った資金計画を立てましょう。ポートフォリオの多様化もリスク分散に有効であるため、異なる地域や物件タイプへの投資を検討しましょう。定期的な市場分析と戦略の見直しをおこない、環境の変化に柔軟に対応できる体制を整えることが、不動産投資でFIREを実現させるための土台となります。

不動産投資でFIREできない人の特徴

不動産投資でFIREを達成できない人の特徴を解説します
不動産投資でFIREを達成できない人の特徴を解説します

不動産投資はFIREを実現するための手段として注目されていますが、必ずしも全員が成功するわけではありません。特に、次のような特徴を持つ人は、投資に失敗する傾向があるため、注意が必要です。

投資の目的が途中でブレる

最初はFIREをする目的で投資を始めたのに、途中で目的がぶれてしまう方がいます。目的がブレると、投資判断もブレやすく、成功までの道のりが遠くなります。

最初に設定した目的を達成するまでは、ぶれることなくその道を突き進むようにしましょう。途中で目的がブレていると感じたら、軌道修正するための計画を立てることも大切です。

賃貸需要を軽視している

物件選びで重要なポイントは、その地域の賃貸需要を正確に把握することです。需要のないエリアに投資してしまうと、入居者が見つからず、空室リスクが高まります。賃貸需要の高いエリアは、交通アクセスがいい、商業施設が充実しているエリアなど。

投資を成功させるためには、地域の需要や市場動向をしっかりと調査する必要があります。

リスク対策が不十分である

先述したように、不動産投資にはさまざまなリスクがともないます。例えば、空室や家賃の下落、物件の老朽化など。これらに対する対策を取らずに投資を進めると、予想外のトラブルが発生した際に適切な対応ができず、大きな損失を被ることがあります。

利回りだけを重視している

利回りの高さにばかり目を向けて賃貸物件を選ぶと、他の重要な要素を見落とすことがあります。利回りが高くても、空室リスクや維持費が高い物件では、実際の収益が期待よりも低くなることも。想定利回りだけを見て判断するのではなく、現行利回りやその物件のあるエリアの特徴をよく確認し、バランスの取れた視点で賃貸物件を選ぶことが重要です。

焦って投資を始める

周囲の成功談に焦り、準備不足で不動産投資を始めてしまうと、思ったような収益を上げられません。適切な計画を立てずに急いで行動すると、期待外れの結果に終わることが多くなります。不動産投資は、長期的な視野でじっくり取り組むことが大切です。

不動産投資でFIREを成功させるためのポイント

不動産投資でFIREを成功させるためのポイントを解説します
不動産投資でFIREを成功させるためのポイントを解説します

不動産投資でFIREを達成するには、覚えておくべきポイントがあります。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

一棟アパートやマンションへの投資を検討する

不動産投資にはさまざまな方法がありますが、収益性を重視する場合は一棟投資が有力な選択肢です。複数の部屋を一度に所有することで、空室リスクを分散させながら、安定した収益を得ることが可能に。初期費用は高くなりますが、長期的な視点で見ると、リターンの期待値が高まるでしょう。

リスクの低い物件を選ぶ

物件選びでは、リスクを最小限に抑えることが大切です。入居者が集まりやすい賃貸物件の特徴には、交通アクセスがよい場所や、生活に便利な施設が近くにあることが挙げられます。

さらに、物件選びの際には実際に現地を確認し、周辺環境や治安のよし悪しをチェックすることも重要です。実際に現場に行き、自分の目で見てみなければわからないこともあります。現地に足を運び、どのような点が魅力的なのか、逆にデメリットがある場合はどのようにカバーするのかを考えてみましょう。

専門知識をしっかり身に付ける

不動産投資で安定的な収入を得るには、常に市場の動向を把握し、適切な投資判断ができる知識を持つことが大切です。特に、物件の選び方や管理方法、税金に関する知識は重要です。自分だけで判断が難しい場合は、不動産会社や税理士などの専門家に相談してみるといいでしょう。

早めに投資をスタートする

不動産投資は時間をかけて資産を増やすことが基本です。そのため、早く始めるほど目標額に早く到達します。若いうちに始めると、収入のアップや安定した返済能力が見込めることから、投資用ローンの審査も通りやすくなります。定職がある段階で不動産投資をスタートさせるのが得策でしょう。

徐々に投資規模を拡大する

最初から大規模な投資をおこなうのではなく、まずは自分の資産状況に合った小さな投資から始め、経験とともに規模を拡大していくのが安全な方法です。資産運用が安定してきたら、次の賃貸物件に投資し、キャッシュフローを増やすことで、より早くFIREに近づけるでしょう。

まとめ

FIREは、資産運用や投資を通して経済的自立を達成し、早期退職を目指すライフスタイルのことです。アメリカで発祥したこの概念は、現在日本でも注目されており、多くの方がその実現を目指しています。

日本でのFIREは、アメリカと比べて現実的かつ柔軟なアプローチが求められますが、適切な計画とリスク管理をおこなえば、十分に実現可能な目標です。不動産投資を通して、将来の安定した生活を手に入れるためには、早期からの準備が重要となります。

リスクを適切に管理し、物件選びから運用まで、段階的に事業を拡大していくことで、長期的な成功を収められるでしょう。また、早めに投資を開始し、専門家の力を借りながら進めることで、FIREへの道がより近づいてくるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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