不動産クラウドファンディングにはどのような失敗がある?原因や回避法を徹底調査

本記事では、不動産クラウドファンディングで失敗するのはどのような時か、なぜ失敗してしまうのか、どのようにすれば失敗しないで済むかを解説します。不動産クラウドファンディングで、着実な資産運用をしたい方は必見です。
記事の目次
不動産クラウドファンディングの失敗例は?

不動産クラウドファンディングは魅力的で、やるならぜひ成功させたいと思うでしょう。しかし、必ずしも成功するとは限りません。本章では、不動産クラウドファンディングで失敗する時の例を紹介します。
元本割れした時
不動産クラウドファンディングで失敗するのは「元本割れ」が起きる時です。元本割れとは、運用期間終了時の償還金が投資額を下回ること。これは、投資家が避けたい事態の一つでしょう。不動産クラウドファンディングでは、一般的に運用期間終了後に投資物件を売却し、その売却金を投資家に対する償還金に充てます。しかし、市場の予測は難しく、さまざまな要因で売却金が期待を下回ることもあり、思いどおりにはなりません。
不動産相場の下落や市場の混乱が起きると、投資事業者の想定よりも低い金額でしか売却できず、元本割れとなります。すべての不動産クラウドファンディングの案件が、必ずしも元本割れするわけではありませんが、リスクは常にあります。不動産クラウドファンディングは魅力的な投資の手法である一方で、リスクがともなうことを忘れてはなりません。元本割れのリスクを理解し、適切なリスク管理をおこなって、最小限に抑えましょう。
分配金が得られない時
分配金が得られないケースも、不動産クラウドファンディングの失敗です。不動産クラウドファンディングは、投資物件の運用益に応じて分配金が投資家に支払われるため、多くの人が手軽に不動産投資を始められます。しかし、運用成績が悪化すると分配金は得らません。
具体的な失敗例として、賃貸物件を運用している場合を考えてみましょう。賃貸物件では入居者からの家賃収入が主な収益源です。しかし、空室があれば家賃収入は少なくなり、収益が得られません。入居者の確保が難しい場合や、地域の経済状況が悪化して賃貸需要が低下した場合、空室率が上がってしまいます。結果、投資家への分配金が支払われないことがあります。
特に、ホテルやリゾート施設に投資している場合は、観光客の動向が収益に与える影響は大きいもの。例えば、コロナ禍のような状況では、観光客が激減し、収入が大きく減少します。観光業の低迷や旅行制限が続けば、施設の稼働率が低下し、投資事業者は収益を上げることが難しいでしょう。このような状況では、運用成績が悪化し、分配金を得られないリスクが高まります。不動産クラウドファンディングは魅力的な投資手法ですが、運用成績次第で分配金が得られないリスクもあることを十分に理解し、慎重な投資をおこないましょう。
投資事業者が倒産した時
投資事業者の倒産も失敗につながります。もし投資した投資事業者が倒産してしまうと、投資家が出資したお金は戻ってきません。このため、投資事業者の信頼性は重要な指標になります。投資事業者が倒産すると、その資産や投資物件が売却されるかもしれませんが、まずは債権者への支払いが優先されるため、投資家が元本を取り戻せる可能性は極めて低くなります。
倒産リスクを回避するためには、信頼できる投資事業者を選ぶことが重要です。信頼できない事業者に投資すると、リスクが高まります。不透明な運営や情報開示の不足は危険です。特に、過去に問題を抱えていた投資事業者や、財務状況が不安定な事業者には注意が必要。信頼できるパートナーを選ぶことが成功への鍵です。投資家は事前に十分な調査をおこない、情報収集を怠らないようにしましょう。
投資先の競争率が高くて投資できない時
人気が過熱しすぎたために、希望する投資物件に投資できない失敗例も存在します。不動産クラウドファンディングの募集方法は、主に先着式と抽選式の2つです。先着式の場合、募集枠が埋まる前に応募できれば投資できますが、人気のある案件は募集開始直後から投資希望者が殺到し、数分で募集が終了してしまう場合があります。例えば、魅力的な利回りや立地条件のよい投資物件は、多くの投資家が狙っているため、瞬時に満員となることが珍しくありません。
一方、抽選式では、募集期間中に申し込みをおこない、抽選で投資者が決まります。先着式に比べて、申し込みのハードルは低いものの、人気物件では倍率が高いです。このように、人気が高すぎる投資物件に投資できないために、魅力的な投資物件を見つけても、投資機会を逃してしまうケースがあります。
不動産クラウドファンディングに失敗してしまう原因は?

不動産クラウドファンディングの失敗例はわかりましたが、失敗するのはなぜでしょうか。本章では、不動産クラウドファンディングで失敗する原因を紹介します。
不動産クラウドファンディング商品に対する理解不足
不動産クラウドファンディングで成功するためには、商品に対する十分な理解が不可欠です。
まず、不動産クラウドファンディングの商品にはさまざまな種類があります。各ファンドの仕組みやリスク、利回り、運用期間などを理解しなければなりません。例えば、短期間で収益を上げたい場合は、長期運用のファンドは適していないでしょう。基礎的な知識を理解できていなければ、元本割れなどのリスクに直面する可能性は高くなります。
また、不動産クラウドファンディングの仕組みを理解していないと、期待した収益が得られません。例えば、賃貸物件の空室リスクや運用物件のメンテナンス費用など、収益に影響を与える要素を把握していないと、予想外のコストが発生し、収益が減少する要因になります。以上のように、不動産クラウドファンディングで成功するためには、商品の特性や不動産市場の動向などの十分な知識が必要です。
中途解約ができない
不動産クラウドファンディングの失敗要因の一つは、中途解約ができない点です。多くの場合、運用期間は3カ月以上におよびます。基本的に運用期間中は、中途解約が認められていません。途中で資金を引き出せない流動性の低さはリスクとなるでしょう。
他にも、運用期間中に投資している物件の収益が悪化するリスクも存在します。賃貸物件であれば空室が増えたり、観光施設なら、観光客の減少や市場の変動があって収益が悪化する場合も。このような場合でも、運用期間終了までは運用を続けなければならないため、収益が悪化している間に分配金を期待できない状況が続く可能性があります。
このように、不動産クラウドファンディングは魅力的な投資機会を提供する一方で、中途解約ができないリスクがともないます。投資家は運用期間中の資金拘束や市場変動によるリスクを十分に理解し、慎重に投資判断をおこなわなければなりません。
不動産投資に対する知識不足
不動産クラウドファンディングの知識が必要なのはもちろん、不動産投資自体の知識も不可欠です。まず、不動産投資の基本的な知識として、不動産市場の動向を理解する点が重要になります。また、リスク管理の知識も不可欠。不動産投資には、空室リスク、修繕費用の発生、自然災害のリスクなど、さまざまなリスクがともないます。これらのリスクを適切に評価し、対策を講じなければなりません。
さらに、不動産クラウドファンディングで成功するためには、投資物件選定の知識も重要です。投資物件の立地条件や築年数、管理状況などをしっかりと評価し、収益性の高い投資物件を選ぶための知識が求められます。これができないと、価値の低い投資物件に投資してしまい、期待した収益を得られないことも。
他にも、税務や法律に関する知識も必要です。不動産クラウドファンディングで一定額以上の所得を得た場合は、確定申告をしなければなりません。以上のように、市場動向の理解、リスク管理、物件選定、税務や法律の知識を十分に持つことが、不動産クラウドファンディングで成功する基本になります。
投資事業者の選択ミス
不動産クラウドファンディングでは、投資事業者の選択が成功の鍵を握ります。投資事業者の選択を誤ると、成功は遠のいてしまうでしょう。選択する際に気を付けるべき事業者の特徴は、透明性が低い点です。財務状況や過去の運用実績、具体的な投資物件情報を明示していない事業者は注意しましょう。
次に、過去にトラブルや訴訟歴がある投資事業者も注意が必要です。こうした事業者は信頼性に欠け、再びトラブルを引き起こす可能性があります。最後に、運用管理がずさんな投資事業者には特に注意が必要です。投資物件の管理が行き届いていなかったり、メンテナンスが適切におこなわれていなかったりする投資事業者は、投資物件の価値を保てず、収益性を低下させる要因になります。収益性が低下してしまうと、予定していた分配金が得られないことも考えられます。さらに投資事業者が倒産した場合、投資額を回収できない可能性が高いです。
投資事業者の選択に失敗すると、投資家は長期間にわたり不安な状態を強いられ、最終的には投資が失敗してしまうでしょう。このため、投資事業者の選択は慎重におこなわなければなりません。
不動産クラウドファンディングで失敗しないためには?

不動産クラウドファンディングの失敗例や主な原因はわかりましたが、失敗を回避するにはどのような方法があるのでしょうか。本章では、不動産クラウドファンディングで失敗しないための方法を解説します。
投資先を分散させる
不動産クラウドファンディングで失敗しないためには、投資先を分散させることが大切です。それには、一つの案件や地域に集中して投資するのではなく、複数の物件や地域に分散して投資する方法をとりましょう。例えば、住宅だけでなく商業施設やオフィスビル、さらには物流施設など、多様なタイプの不動産に投資するようにします。地域的にも、一つの都市に集中するのではなく、複数の都市やエリアに分散した投資が効果的。そうすると、特定の市場や地域による影響を低減できます。
分散投資は長期的な投資戦略でも有効で、経済状況や市場の変動に対して柔軟に対応でき、長期的な成果が期待できます。分散投資を実践するためには、複数の不動産クラウドファンディングプラットフォームを利用する点も有効。さまざまなプラットフォームで異なる物件が提供されているため、幅広い投資先を選択できます。総じて、不動産クラウドファンディングで成功するためには、投資先を分散する方法が有効です。
優先劣後出資制度を導入している投資事業者や投資物件を選ぶ
「優先劣後出資制度」を導入している投資事業者や投資物件を選ぶ点も、不動産クラウドファンディングで成功するための方法です。優先劣後出資制度とは、出資者を優先し、損失が出た場合に投資事業者が損失を受け入れ、出資者の元本を守る仕組みを指します。これにより、投資物件からの収益が生じた際には、まず優先出資者に利益が分配され、残った部分が劣後出資者に分配されます。
優先劣後出資制度を導入している投資事業者を選ぶためには、投資事業者の情報を詳細に確認しましょう。実績や評判を調査する点も重要。投資事業者が過去にどのような成績を残し、投資家の利益をどれだけ守ってきたかを確かめることができます。また、業界での評判や信頼度を調べることで、リスク管理能力や運営の透明性の判断が可能です。
優先劣後出資制度を導入している投資事業者や投資物件を選ぶことで得られる主な効果は、投資家のリスクを軽減させることができる点。劣後出資者である投資事業者が先に損失を引き受けることで、投資家は安定した収益を期待できます。投資家がリスクを管理しやすく、安全性の高い投資ポートフォリオを構築するために、優先劣後出資制度を活用するといいでしょう。
利回りだけで判断しない
利回りだけで投資物件を判断しない点も、不動産クラウドファンディングで成功するためには欠かせません。利回りの高さは投資家にとって魅力的ですが、利回りだけを基準にして投資判断を下すことにはリスクがともないます。利回りが高い物件は、一見すると収益性が優れているように見えますが、潜在的な問題が存在する場合があります。例えば、物件の立地条件や維持管理の難しさ、将来の市場変動に対する脆弱性など。また、高い利回りは通常、高いリスクをともなうことが一般的です。投資家がそのリスクを正しく評価しないまま投資を決定すると、予想外の損失を被る可能性があります。投資物件を選ぶ際には利回りだけでなく、以下のような要素の考慮が重要です。
- 投資物件がどのような立地にあり、将来的な需要や市場動向にどのように影響するかを評価する。
- 投資事業者や投資物件の管理者に対し、過去の実績や評判、運営方針を調査し、信頼できるパートナーを選んでおく。
- 単一の物件や地域に依存せず、ポートフォリオを分散させておく。
総括すると、不動産クラウドファンディングでの投資成功には、利回りだけでなく、慎重な物件選定とリスク管理が欠かせません。
投資に関する知識を十分に付けておく
不動産クラウドファンディングで失敗しないための重要な方法は、投資に関する知識を十分に身に付けておくことです。投資にはさまざまなリスクやチャンスがあり、そのリスクを理解し、適切に対処するためには知識の蓄積が欠かせません。まず、不動産クラウドファンディングの基本的な仕組みや運用方法を理解しましょう。これには、どのように資金が集められ、どのように不動産が運用され、投資家に利益が還元されるのか、流れの理解が含まれます。
次に、不動産市場や投資物件の知識も重要です。地域ごとの市場動向や需要予測、不動産価値の変動要因などを理解すると、将来的な収益性を見極めることができます。また、不動産投資特有の税制や法律、規制も把握しておくことがリスク管理に役立ちます。自分の投資目的や資金の状況を明確にし、それに合わせて、リスクとリターンのバランスを適切に考慮する点も欠かせません。不動産クラウドファンディングでの投資成功には、投資に関する幅広い知識と理解が必要です。
投資事業者は慎重に選ぶ
投資事業者の選択で失敗しないためには、投資事業者の過去の実績と信頼性の確認が重要です。投資事業者の過去のプロジェクトや運用成績を調査し、投資家にどれだけのリターンを提供してきたかを確認しましょう。例えば、運営会社のWebサイトや公開されている財務諸表、第三者の評価などを確認しましょう。さらに、投資事業者の運営方針やリスク管理体制も理解しておくことが大切です。投資事業者の透明性とコミュニケーションの質も重要な要素になります。
投資家に対して的確かつ定期的に情報提供をおこない、投資プロセスやリスクの進捗状況を明確に伝えてくれるかを確認しましょう。コミュニケーションが円滑だと信頼感があり、安心して投資を続けられるでしょう。まとめると、不動産クラウドファンディングで成功するには、慎重な投資事業者の選定が不可欠です。実績や信頼性、専門性、透明性とコミュニケーションの質を基準にして、適切なパートナーを見極める点に注意しましょう。
不動産クラウドファンディング失敗に関するよくある質問
本章では、不動産クラウドファンディング失敗に関するよくある質問を紹介します。
不動産クラウドファンディングの失敗例は?
不動産クラウドファンディングで失敗する例は、投資家が元本割れを経験するケースです。これは、運用期間終了時に得られる償還金が投資額を下回る状況を指し、市場の変動や予測外の売却価格の低下から生じます。また、運用成績が悪化し、分配金が得られない場合も失敗例。これには賃貸物件の空室増加や観光施設の利用減少が影響し、投資家の収益に直結します。
さらに、中途解約ができない点も一因であり、流動性の低さが投資家に不利な状況を生む事例。投資事業者の選択ミスや、投資物件の人気が高すぎて投資できないケースも失敗を引き起こします。これらの要因を注意深く管理する点が、不動産クラウドファンディングの成功につながるポイントです。
不動産クラウドファンディングで失敗する原因は?
不動産クラウドファンディングで失敗する主な原因は、3つの点に集約されます。まず、投資家が商品や仕組みを理解できていない点。適切なリスク評価や予想外のコスト発生により、投資家は期待どおりの収益を得られない可能性があります。次に、不動産投資に関する基本的な知識の不足も問題。市場動向やリスク管理、物件選定の理解が欠けていると、投資先の価値を見誤る可能性があります。
さらに、投資事業者の選択ミスも重要な要因です。透明性の欠如や運営管理の不備など、投資事業者の信頼性を見極める力が不十分な場合、投資家は長期的な安全性を確保できないリスクにさらされます。これらの要素を慎重に考慮しないと、不動産クラウドファンディングは失敗する可能性が高いでしょう。
不動産クラウドファンディングで失敗しないためには?
不動産クラウドファンディングで失敗しないためには、いくつかの重要な方法があります。まず、投資先を分散させる点。単一の物件や地域に依存せず、複数の投資物件や地域への投資でリスクを分散し、長期的な安定性を確保します。
また、優先劣後出資制度を導入しているファンドを選ぶ点も重要。この制度により、投資家のリスク管理が容易になり、安定した収益を期待できます。さらに、利回りだけで投資物件を判断せず、投資に関する幅広い知識を持つ点も不可欠。最後に、慎重に投資事業者を選ぶ点が失敗しない秘訣になります。過去の実績や信頼性、透明性などを評価し、信頼できるパートナーを選ぶ点が重要です。
まとめ
本記事では、不動産クラウドファンディングで失敗するのはどのような時か、なぜ失敗してしまうのか、どのようにすれば失敗しないで済むかを解説しました。不動産クラウドファンディングで失敗しないためには、事前の情報収集とリスク回避が不可欠です。ぜひ本記事を活用してノウハウを集めて、着実な運用に役立ててください。

執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ