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不動産投資でのキャッシュフローの重要性は?計算方法や利益を出す方法を徹底解説

不動産投資でのキャッシュフローの重要性を解説します
不動産投資を成功させるためには、キャッシュフローに関する知識を身につけることが重要です。キャッシュフローとは、「キャッシュ(現金)」+「フロー(流れ)」のことで、「お金の流れ」を意味する言葉です。キャッシュフローが安定しているか、悪化しているかが、不動産投資の成功に大きく影響してきます。本記事では、不動産投資でのキャッシュフローの重要性や計算方式などを詳しく解説していきます。

不動産投資のキャッシュフローとは?

不動産投資のキャッシュフローについて解説します
不動産投資のキャッシュフローについて解説します

不動産投資では、資金の流れを把握することは極めて重要です。キャッシュフローとは、投資から得られる収入と支出の差額を指し、投資の安定性を判断するものさしとなります。まずは、不動産投資でのキャッシュフローの概念と重要性を詳しく解説します。

キャッシュフローの意味と重要性

キャッシュフローとは、家賃収入から借入金の返済や各種経費を差し引いた、最終的に手元に残るお金のことを指します。多額の現金が手元に残れば良好なキャッシュフローであり、逆に残高が少ない場合はキャッシュフローが悪化しているといえます。安定したキャッシュフローがあれば、空室や滞納などのリスクにも対応しやすくなるでしょう。

キャッシュフローが安定しているかは、不動産投資を継続的におこなううえで重要な要素です。利回りなどの指標とは異なり、実際に利用可能な資金の流れを示すものであり、投資の実態を把握するうえで欠かせません。

不動産投資における3つの指標

不動産投資における3つの指標とその違いを解説します
不動産投資における3つの指標とその違いを解説します

不動産投資には大きく3つの指標があります。具体的にはキャッシュフロー、帳簿上の金額(不動産所得や損益計算書)、利回りです。いずれも重要な意味を持ちますが、性質や算出方法が異なるため、適切に理解する必要があります。以下で、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

帳簿上の金額とキャッシュフローの違い

帳簿上の金額は、確定申告する際の不動産所得の計算や、損益計算書の作成に使われます。一方のキャッシュフローは、実際の現金の動きを表します。両者の大きな違いは、以下の2点です。

減価償却費や青色申告特別控除額の扱い

帳簿上では減価償却費や青色申告特別控除額を経費として計上しますが、キャッシュフローでは実際に支払っているわけではないため、計上できません。キャッシュフローは実際の現金の出入りのみを対象とします。

不動産投資ローン返済の扱い

帳簿上では不動産投資ローンの利息のみが経費計上されますが、キャッシュフローでは元本と利息の合計額が不動産投資ローンの返済額として計上されます。

利回りとキャッシュフローの違い

利回りは、不動産投資の収益性を示す重要な指標です。代表的なものとして「表面利回り」と「実質利回り」があります。

表面利回りは、「年間総収入÷総投下資本×100」で簡単に算出できますが、経費が考慮されていない点が特徴です。一方の実質利回りは、「(年間総収入-諸経費)÷総投下資本×100」と経費を差し引いたうえで計算するため、より実態に近い数値が得られます。

利回りはあくまで投資の収益性を示す指標ですが、キャッシュフローは実際の手元資金の動きそのものを表します。収益性が高くてもキャッシュフローがマイナスでは、事業の継続が難しくなる可能性があります。

加えて、実質利回りに似たもので、「NOI(純営業収益)」も重要な指標として知っておきましょう。NOIは「年間総賃料収入-諸経費×100」で計算され、投資物件の資産価値評価に利用されます。不動産投資では、さまざまな指標を組み合わせて総合的に判断することが大切です。

不動産投資でキャッシュフローが重要である3つの理由

不動産投資においてキャッシュフローが重要な理由を解説します
不動産投資においてキャッシュフローが重要な理由を解説します

不動産投資でキャッシュフローが重要となる理由は以下の3つです。

手元の資金を把握することで必要な支出に充てられる

不動産投資では、不動産投資ローンの返済や修繕費、管理費用などさまざまな支出があります。しかし、確定申告の際には、実際に支払っていない減価償却費を経費として計上するため、帳簿上の数値だけでは実際の手元資金が把握しづらくなってしまいます。さらに、不動産投資ローンの元本返済は経費として計上されないため、正確なキャッシュフローを知ることができません。

キャッシュフローを算出することで、実際に手元に残った現金の正確な金額を把握でき、その資金を設備投資や事業の拡大、あるいは別の投資案件に振り向けられます。手元資金を正確に把握しておかなければ、機会損失を被るリスクが高まるかもしれません。

急な支払いにスムーズに対応できる

不動産投資では、災害による建物の損壊、設備の予期せぬ劣化、大規模な修繕などにより、突発的な出費が発生するケースがあります。このような事態に備えるためにも、キャッシュフローをプラスに保つことが重要です。

キャッシュフローがプラスの状態、つまり手元に十分な現金が残っていれば、不測の事態にも柔軟な対応が可能。反対に、キャッシュフローがマイナスで現金が不足していれば、資金の確保が難しくなり、適切な対処ができなくなってしまうかもしれません。安定的なキャッシュフローの確保は、リスク管理の観点からも重要です。

キャッシュフローが大きい場合は売却価格が高くなる可能性がある

投資用不動産の価値は、実質的な利回りやNOI(純営業収益)だけではなく、キャッシュフローも、重要な判断材料の一つです。

繰り返しになりますが、キャッシュフローが大きいと、手元に残る現金の金額も多いことを意味します。つまり、実質的な利回りが高いと評価される可能性が高まるのです。投資物件の価値が高く見積もられることで、売却時に高い価格で引き取り手を見つけやすくなるでしょう。

キャッシュフローを最大化するための運用ポイント

キャッシュフローを最大化するための運用ポイントを解説します
キャッシュフローを最大化するための運用ポイントを解説します

良好なキャッシュフローを確保するためには、自己資本利益率(キャッシュ・オン・キャッシュ)を高める必要があります。自己資本利益率とは、「投資額(自己資本)に対してどのくらいのキャッシュフローが生み出されているか」を示す指標です。この値が高ければ、効率的に自己資本を運用していると評価できます。自己資本利益率は以下の式で計算できます。

自己資本利益率 = 年間キャッシュフロー ÷ 投資額(自己資本)× 100

自己資本利益率を引き上げ、キャッシュフローを最大化するためのポイントは主に以下の5つです。

頭金を多めに用意する

頭金を多く払えば、不動産投資ローンの借入額が小さくなり、将来の返済額を抑えられます。結果的にキャッシュフローが増加する効果が期待できます。

物価が上昇するインフレ環境下では、頭金を多く用意する方法がいっそう効果的だといえるでしょう。手元の現金を多めに投じることで、インフレによる貨幣価値の目減りリスクを低減できます。

低金利の不動産投資ローンを組む

不動産投資ローンの金利が低ければ、利子の支払い額を抑えられます。総返済額が低くなるため、キャッシュフローの改善につながるでしょう。

不動産投資ローンは住宅ローンに比べて金利が高めですが、できる限り低金利の融資を受けられる金融機関を探すことが重要です。

繰上げ返済や家賃収入アップを図る

不動産投資が順調で余剰資金が出た場合は、不動産投資ローンの繰上げ返済をおこなうとよいでしょう。将来の利子負担を軽減できるため、キャッシュフローが増えることが期待できます。また、賃料の適正な値上げをおこない、家賃収入の増額を図ることも効果的です。

ただし、現在は低金利が続いているため、繰り上げ返済をするよりも資金を貯めて投資信託に回したり、買い増しをしたりしたほうがスムーズに運用できる可能性があります。金利状況や手元の資金などの要素を考慮したうえで検討してみてください。

家賃が下がらないための対策をする

家賃水準を維持することは、安定したキャッシュフローを確保するうえで欠かせないポイントです。支出を抑えても、家賃収入が減れば収支はすぐに悪化してしまいます。

そこで肝心なのが、入居者に選ばれるような魅力的な物件づくりです。定期的なリフォームや設備投資で質の高い居住環境を提供し続けることが重要です。

賃貸管理会社を慎重に選ぶ

空室期間を最小限に抑え、安定した家賃収入を得るためには、実績が豊富な賃貸管理会社を選ぶことも重要なポイントです。

豊富な実績を持つ賃貸管理会社ほど、スムーズな入居者募集や契約業務が期待できます。
賃貸管理会社の手腕次第で、空室期間の短縮や家賃収入の確保に大きな違いが生じる可能性も。
そのため、エリアの専門性や担当者との相性、報酬体系なども考慮に入れ、自身の物件運営に適した賃貸管理会社を選定することが大切です。なかには、入居率99%以上の管理会社もあります。1社だけではなく、複数の会社を比較検討し、相性のよい管理会社を選びましょう。

キャッシュフローの良好な不動産投資をおこないたい場合

キャッシュフローが良好な不動産投資をおこないたい場合は中古物件がおすすめです
キャッシュフローが良好な不動産投資をおこないたい場合は中古物件がおすすめです

キャッシュフローの良好な不動産投資を目指す場合、中古物件がおすすめです。理由は主に以下の2つです。

  • 新築物件よりも安く購入できる
  • 利回りが高い傾向にある

不動産は築年数の経過とともに建物部分の価値が減価していきますが、土地の価値はさほど下がりません。このため、中古物件は新築に比べて割安な価格で購入できる可能性が高くなります。

また、家賃相場も築年数が経過するごとに下落します。とはいえ、売買価格ほど下落しないため、中古物件のほうが、利回りが高い傾向にあるのです。

一方で、新築物件も突発的な修理が発生する可能性があります。中古物件の場合は、突発的な修理が発生する可能性が高いとあらかじめ理解していることが多いです。しかし、新築物件の突発的な修理はいつになるかわからないため、タイミングを図るのが難しいかもしれません。

とはいえ、中古物件を選ぶ際は、新築に比べて修繕リスクが高いことを認識しておく必要があります。大規模修繕の発生に備え、あらかじめ修繕費用の計画を立てるなど、リスク対策を怠らないことが重要です。

キャッシュフローがマイナスになった時の対処法

キャッシュフローがマイナスになった時の対処法を解説します。
キャッシュフローがマイナスになった時の対処法を解説します。

キャッシュフローがマイナスの状態は、不動産投資で得た収入で経費や税金を賄いきれていない状況に陥っていることを意味します。キャッシュフローがマイナスに陥った場合には、原因を分析し、適切な対処をおこなう必要があります。

キャッシュフローがマイナスになるよくある要因は、以下のとおりです。

  • 空室率が高止まりしている
  • 家賃収入が相場を下回っている
  • 大規模な修繕や設備投資をおこなった
  • 減価償却費の計上ができなくなり、税金負担が増加した

上記のなかでも、減価償却費の計上ができなくなると深刻な打撃を与えかねません。減価償却費は経費として確定申告で控除可能ですが、計上できなくなると節税効果が失われ、税金負担が一気に増大してしまうのです。この場合は、法人化を検討したり、ふるさと納税をおこなうなど、別の節税対策をおこなう必要があります。

一方で、空室率の高止まりや家賃水準の問題であれば、積極的な募集活動や家賃の値上げ交渉をおこなうことで解決できる可能性があります。また、大規模な設備投資に関しては、もう一度タイミングを検討してみるとよいでしょう。すぐに修繕が必要な場合は仕方ありませんが、投資物件にそぐわない高価な設備投資をおこなう際は、検討し直したほうがよいです。

キャッシュフローのシミュレーション方法

キャッシュフローのシミュレーション方法を解説します
キャッシュフローのシミュレーション方法を解説します

不動産投資を検討する際は、キャッシュフローをシミュレーションし、実際に手元に残る資金をイメージすることが重要です。適切なシミュレーションをおこなえば、投資判断の材料となり、不動産投資で失敗するリスクを低減できるでしょう。

自分でシミュレーションする方法

キャッシュフローのシミュレーションは、比較的単純な計算式なので自分でも簡単に計算できます。

キャッシュフロー = 家賃収入 -(不動産投資ローンの返済額 + 運営経費 + 税金)

具体例を挙げると、以下のようになります。

<条件>

  • 年間家賃収入: 130万円
  • 不動産投資ローンの返済額(元本 + 利息): 65万円
  • 運営経費(修繕費、管理費用など): 30万円
  • 税金: 15万円

130万円 -(65万円 + 30万円 + 15万円)= 20万円

上記の例では、年間で20万円のキャッシュフローが見込めることになります。

ただし、この簡易的な計算式では、不動産投資にともなうリスクを十分に反映しきれない課題があります。

不動産会社の広告などに記載される「表面利回り」は、「年間家賃収入 ÷ 物件価格」で算出されている指標です。一方、キャッシュフローは実際の運営経費や税金を差し引いたうえで計算する必要があり、表面利回りとは大きく異なることがほとんどです。

投資判断の際は、キャッシュフローを算出し、検討を重ねることが不可欠でしょう。

具体的なシミュレーションは不動産会社に相談する

より精度の高いキャッシュフローのシミュレーションをおこなうには、不動産会社に相談するのがおすすめです。専門家にアドバイスを求めることで、個人では見落としがちな要素も加味できるでしょう。

不動産投資では、建物の大規模修繕や家賃の値下がり、空室リスク、金利変動、税制改正など、さまざまなリスク要因が存在します。

不動産会社には豊富な知見とノウハウがあり、オーナーの投資計画に合わせた具体的な数値を算出してくれます。単にキャッシュフロー以外にも、適切な投資物件選定のアドバイスや売却を含めた中長期的な投資プランの立案など、総合的なサポートを受けられる点がメリットです。

効果的な不動産投資をおこなうためには、自分でも一通りのキャッシュフローシミュレーションをおこなったうえで、不動産会社のプロにも相談してみてください。

まとめ

本記事では、不動産投資のキャッシュフローを詳しく解説しました。不動産投資ではキャッシュフローが重要な要素です。リスクを理解したうえで、多角的なシミュレーションをおこない、最終的に利益が発生するかをしっかり把握する必要があります。

しかし、自分でシミュレーションするだけでは、把握できる要素に限界があります。より具体的で的確な判断をするためにも、不動産会社にシミュレーションを依頼してみましょう。

本記事ではキャッシュフローがマイナスの状況に陥った際の対処方法も詳しく解説したので、ぜひ参考に実践してみてください。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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