マンション一棟の経営に必要な費用や維持費を徹底解説|リスク対策も紹介

この記事では、一棟マンション経営に必要な費用とその内訳を詳しく解説します。さらに、経営時に想定されるリスクと対策もご紹介するので、一棟マンションの運用を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
一棟マンション経営とは?3つの主なメリット

マンション経営には、個別の住戸を購入して賃貸する「区分経営」と、マンション全体を建設または購入して賃貸する「一棟経営」があります。
一棟経営のメリットには、以下のポイントが挙げられます。
- 収益性が高い
- 空室リスクを抑えられる
- 資産価値が高い
複数の住戸を一括で賃貸するため、区分経営よりも家賃収入が安定しやすく、収益性が高まります。また、空室が出ても収入が完全になくなることがないため、経営に安定性が期待できる点も魅力の一つ。さらに、土地と建物を一括して所有するため、資産価値を高く期待できることがメリットです。
区分経営と一棟経営の違い
区分経営は初期費用が比較的少額で、手軽に始められる一方、収益は控えめです。また、マンション全体の管理は指定された管理会社に委託するため、オーナーの自由度が低くなります。
一方、一棟経営は初期費用こそ高額ですが、収益性が高く、オーナーの経営方針によって利益を大きくできる点が特徴です。長期的な投資効率も区分経営より優れているとされています。
マンション一棟を経営するために必要な費用

マンション経営を始める際には、物件購入費用に加え、登記関連費用や融資手続きの手数料など、さまざまな初期費用が発生します。一般的な目安として、不動産価格の5%〜10%程度に加えて頭金を用意する必要があります。では、どのような費用がかかるのか具体的に見ていきましょう。
マンション取得に必要な費用
マンション経営を始める際の大きな費用は取得費です。取得費用には、新築する場合と既存マンションを購入する場合で内容に違いがあります。
既存物件を購入する場合は「物件購入費用」、新築する場合は「建築費」が必要です。さらに、駐車場やフェンスなどの外構工事にかかる「別途工事費」や、水道・電気・ガスなどの設備工事費用として「付帯工事費」が発生することも。
また、新築マンションを建設する際に、土地を所有していない場合は「土地取得費用」も必要です。土地をすでに所有している場合はこの費用を抑えられますが、そうでない場合は新たに土地を購入する資金も見込まなければなりません。
マンションの価格帯は数百万円から数億円まで幅広く、いずれにせよ高額です。そのため、取得費用は金融機関のローンを活用し、頭金として一部を支払うケースが一般的です。相場として、頭金はマンション価格の10〜30%程度が目安となっています。
建築確認申請などの手数料
マンションを建設する際には、建築確認申請の手続きをおこなう必要があります。建築確認申請とは、建築基準法に適合しているかを自治体や指定確認検査機関に審査してもらうことを指します。
建築主であるオーナーは、工事の各段階で手数料を支払わなければなりません。主なタイミングとしては、着工前の「建築確認」、2階部分の床や梁の鉄筋工事完了後の「中間検査」、そして工事完了時の「完了検査」の3回です。
手数料の金額は延床面積によって変動し、500平方メートルを超え1,000平方メートル以内のマンションの場合、1回の申請につきおよそ15万円前後が目安となります。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を購入した際に課せられる地方税です。原則として税率は4%ですが、2027年3月31日までは3%に軽減されています。

- 不動産取得税=固定資産評価額×4%
- ※2027年3月31日まで税率は3%
マンション取得後、半年から1年以内に自治体から納税通知書が届くため、期限内に支払わなければなりません。自治体によっては事前に税額を確認できるツールを提供している場合もあります。
測量・地盤調査・解体費用
新たにマンションを建築する場合、その土地の条件を確認するために必要な作業があります。土地の面積や形状を確認する「測量」と、地盤の強度や安全性を調べる「地盤調査」です。

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- 土地を所有していると、測量が必要となることがあります。測量とは、土地の面積を測り、形状や隣地との境界を明確にさせることです
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さらに、既存の建物がある場合には解体作業もおこなわなければなりません。上記の作業費用に関しては、建築プランに組み込まれている場合もありますが、別途費用として計上されることもあります。予算を立てる際には、このような費用項目に対しても事前にしっかり確認しておくことが重要です。
登記費用
マンション経営では、所有権を公的に示すための「登記」をおこなう必要があります。登記手続きには「登録免許税」がかかり、期限内に支払わなければなりません。
主な登記には、購入した物件の所有権を記録する「所有権保存登記」と、金融機関から融資を受ける際におこなう「抵当権設定登記」の2種類があります。2027年3月31日まで適用される軽減税率は以下のとおりで
- 所有権保存登記:税率0.15%(本則0.4%)
- 抵当権設定登記:税率0.1%(本則0.4%)
登記は自身でおこなうことも可能ですが、司法書士に依頼するケースが一般的です。依頼する場合は、司法書士報酬として10〜15万円程度も別途用意する必要があります。
固定資産税・都市計画税
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している方に課される税金です。固定資産税の標準の税率は1.4%で、基本的に年4回に分けて納税します。ただし税額は市町村によって決定されるため、事前に確認しましょう。マンションが年の途中で完成した場合、税額は日割り計算されます。
また、市街化区域内に不動産を所有している場合、固定資産税に加えて都市計画税も支払わなければなりません。都市計画税は税率0.3%を上限に、各自治体が決めています。
以下は、小規模住宅用地と一般住宅用地で、軽減措置が適用された場合に固定資産税と都市計画税を表にまとめたものです。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅一戸につき 200平方メートルまでの部分 |
価格× 1/6 |
価格× 1/3 |
一般住宅 用地 |
小規模住宅用地以外の 住宅用地 |
価格× 1/3 |
価格× 2/3 |
印紙税
物件購入時には契約書に収入印紙を貼る必要があり、印紙税は契約金額に応じて異なります。1〜5億円の契約の場合、印紙税は10万円です。
また、2027(令和9)年3月31日までに作成される不動産売買契約書や建設工事請負契約書に関しては、軽減措置が適用されます。軽減措置が適用されると実際の税負担が軽くなるケースがあるため、詳しくは以下の表を参考にしてください。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 (2027年 3月31日まで) |
---|---|---|
100万円超~ 500万円以下 |
2,000円 | 1,000円 |
500万円超~ 1,000万円以下 |
1万円 | 5,000円 |
1,000万円超~ 5,000万円以下 |
2万円 | 1万円 |
5,000万円超~ 1億円以下 |
6万円 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
ローン手数料
マンション購入や建築には多額の資金が必要なため、金融機関からのローンを活用することが一般的です。ローンを組む際には、金融機関に対して「事務手数料」を支払います。手数料には、一定額で済む「定額型」と借入金額に応じて変動する「定率型」の2種類があります。
定額型は手数料が数万円程度で済み、初期費用を抑えられる点がメリット。ただし、金利が高めに設定されるため、総返済額が膨らむ可能性があるでしょう。
一方、定率型は借入金額の1%〜3%程度の手数料がかかるため、初期費用は高くなります。しかし、総返済額を定額型より抑えられる場合もあります。自分の資金計画に合わせて選択しましょう。
保証会社手数料
ローンの借入時には、保証会社と契約し、保証料を支払う場合もあります。保証料は借入金額の2%程度が一般的です。また、金利に上乗せする形で支払う場合は、0.2%〜0.3%程度が目安とされています。
団体信用生命保険(団信)
団体信用生命保険、通称「団信」は、ローンの契約者が死亡または高度障害となった場合に、保険でローン残債が返済される仕組みです。加入は任意ですが、家族に返済の負担を残さないためにも、多くのオーナーが加入しています。
保険料や保障内容はプランによって異なり、より手厚い保障を提供している商品もあります。また、ローンによっては団信への加入を必須条件としている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
損害保険料
災害や事故に備えるため、マンション経営では「損害保険」への加入が欠かせません。損害保険には、火災保険、地震保険、施設賠償責任保険などがあります。補償内容や保険料はマンションの構造や規模によって異なるため、複数の保険会社を比較し、自分に適したプランを選ぶことが重要です。
入居者募集費用
マンション経営では、物件取得後に入居者を確保するための募集活動が必要です。原則、不動産会社は仲介手数料以外に報酬を受け取ることはできません。しかし、入居募集時にかかる費用をオーナーが不動産会社に対して支払うことは可能です。
広告費をかけて募集することよって、集客力を高め、効率的に物件をアピールすることができるでしょう。そのため比較的早く入居者が決まる可能性があります。
仲介手数料
新しい入居者が決まった際には、契約を仲介した不動産会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。
賃貸物件の媒介契約で不動産会社が受け取れる報酬の上限は、国土交通省の基準により以下のように定められています。
- 貸主・借主の双方から受け取る報酬の合計は、賃料1月分の1.08倍まで
- いずれか一方から受け取れる報酬は、賃料1カ月分の0.54倍まで
参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(PDF)
実際には、仲介手数料は家賃の0.5カ月分程度に設定されるケースが多いのが現状です。
マンション経営で押さえておきたい経営中に発生する費用

マンション経営を成功させるためには、初期費用だけでなく、経営中に発生する費用もしっかり理解しておく必要があります。ここでは、特に重要な「維持費」を詳しく解説します。
修繕・リフォーム費用
入居者が退去した際は、部屋をもとの状態に戻す「原状回復」が必要です。加えて、設備に不具合が発生すれば「補修」対応も避けられません。さらに老朽化を防ぐためには「予防修繕」や「大規模修繕」も定期的に実施する必要があります。また、設備の更新や間取りの変更などのリフォームが必要になるケースも考えられます。
原状回復の費用は一般的に20万円程度とされていますが、部屋の使用状況によってはさらに高額になる場合も。補修費用は故障内容によって異なり、数万円から数十万円かかるケースもあります。
さらに予防修繕は数十万円から、大規模修繕では数百万円以上のコストが発生することもあるため、計画的な準備が必要です。
管理委託費
マンションの管理業務は多岐にわたるため、オーナーだけでおこなうことは現実的ではありません。そのため、多くの場合は不動産管理会社に管理業務を委託しています。
管理業務は「建物管理」と「賃貸管理」に分けられますが、双方をまとめて委託するケースもあれば、建物管理のみを任せるケースもあります。さらに、清掃業務のみを委託する形で管理委託費を節約する方法も。
ただし、マンション管理は複雑で専門的な知識が求められるため、特に初心者の場合、最初はすべて会社に任せる方法も一つの手です。実際に経営してみてから「コストが高い」「この業務は自分で対応できる」と気付いた場合は、管理内容の見直しを会社と相談してみましょう。
共用部の光熱費
マンションは、エントランスや廊下、駐輪場、駐車場、ゴミ置き場など、共用部分が多岐にわたります。上記の場所では外灯や防犯カメラに電気を使用したり、清掃に水を利用したりするため、それなりの光熱費がかかります。
上記の費用は共益費として入居者から徴収する場合が多いですが、家賃に含める形で回収する方法もあります。
各種税金
マンション取得時にかかる「不動産取得税」は一度きりの負担で済みますが、それ以外の税金は毎年支払う必要があります。代表的なものには「固定資産税」「都市計画税」があり、これに加えて所得税や住民税も発生します。税金は経営に大きな影響を与えるため、事前に計算して収支計画に組み込んでおくことが大切です。
所得税に関しては、以下の表を参考にしてください。
課税所得の金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から 194万9,000円まで |
5% | かからない |
195万円から 329万9,000円まで |
10% | 9万7,500円 |
330万円から 694万9,000円まで |
20% | 42万7,500円 |
695万円から 899万9,000円まで |
23% | 63万6,000円 |
900万円から 1,799万9,000円まで |
33% | 153万6,000円 |
1,800万円から 3,999万9,000円まで |
40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
借入金返済費
マンション経営をする際に借り入れした場合、毎月の返済が発生します。無理な返済スケジュールを立てると、毎月の返済負担が増えるため、注意しなければなりません。
また、借入金には利息も発生します。利息も考慮したうえで、返済スケジュールを立てましょう。ただし、利息は確定申告の際に経費計上できるため、税金の負担を軽減できる点がメリットです。
さらに、サブリース契約を結ぶ場合、借入金の返済にかかる費用はオーナー負担となるため、注意しましょう。サブリース契約とは、不動産会社がオーナーから借りた物件を入居者に貸し出す仕組みのことです。
マンション経営にかかる費用を抑える方法

マンション経営は大規模な投資が必要となるため、コストを効率的に削減することが重要です。ここからは、マンション経営にかかる費用を安く抑えるためのポイントをご紹介します。
複数社から見積もりを取る
マンションを新築する際には、ハウスメーカーや建設会社から建築プランを提案してもらう必要があります。しかし、各社で提案内容や見積もり金額には大きな差があることも少なくありません。
適切なプランを見つけるためにも、最低でも3社以上から見積もりを取得するとよいでしょう。複数の見積もりを比較することで、費用を削減できる可能性が高まります。
また、多くのメーカーは最初に最新設備を盛り込んだ高額なプランを提示する傾向があります。たしかに設備が充実していることは入居者にとってメリットですが、すべてが必要なわけではありません。
自分の予算や物件を建築するエリアのニーズに合わせて、機能面や設備を精査し、現実的なプランを選ぶことがコスト削減のポイントです。
登記手続きを自力でおこなう
司法書士に任せることで安心して登記手続きを進められますが、依頼すると報酬が発生します。登記手続きを自力でおこなえば、司法書士への依頼料を削減できるでしょう。
必要な書類を揃えて法務局に出向けば手続き自体は可能ですが、法律の専門知識が求められるため、注意が必要。自力で手続きをおこなうのに不安な場合は、なるべく低価格で依頼を引き受けてくれる司法書士を探すのも一つの方法です。
各種手数料にカットできる部分がないか確かめる
手数料のなかでカットできる費用がないかを確かめてみましょう。カットできる可能性が高い費用は以下のとおりです。
物件購入時の仲介手数料
物件を購入する際に発生する仲介手数料は、交渉次第で割引が可能です。ただし、今後の取引や関係性を考えると、強引な値下げ交渉は避け、バランスの取れた対応を心がけましょう。
ローン手数料
ローンを利用する際は、金融機関ごとの金利や手数料を比較しましょう。金利が低いだけでなく、事務手数料や保証料などを含めた総費用を考慮し、できるだけ負担の少ない商品を選ぶことをおすすめします。
初期費用の支払いを延期する
初期費用のなかには、支払いを延期できるものもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。支払いを延期すると、マンション経営初期にかかる負担を軽減できます。具体的に支払いを延期できる初期費用は以下のとおりです。
不動産取得税
原則として一括納付が求められる不動産取得税ですが、事情によっては分割払いが認められることもあります。各都道府県の税務署に確認してみるとよいでしょう。
各種保険料
火災保険や地震保険などの保険料は、長期一括払いにすると割引が適用されることがありますが、一度の支払い負担が大きくなります。初期費用を抑えたい場合は、月払いまたは年払いを検討することも有効な手段です。
マンション経営にかかる費用を抑える際の注意点

上記でマンション経営にかかる費用を抑えるポイントをご紹介しましたが、注意点もあります。どのような注意点があるのか、以下で詳しく解説します。
ローンの返済額が増加するリスクがある
ローン手数料を定額型にしたり、頭金を減らして借入金額を増やしたりすると、ローン残高が大きくなります。入居者が想定どおりに集まらない場合、月々の返済負担が重くなり、経営が厳しくなる可能性があります。初期費用を抑えることだけに注力するのではなく、将来の返済計画も考慮した判断が必要です。
経営リスクが大きくなることがある
マンション経営では「入居者不足」や「修繕費の増加」などのリスクがつきものです。初期費用を抑えることで、上記のリスクが拡大する恐れがあります。
特にローン返済額が高い場合、地域の家賃相場が下がり、それに合わせて家賃を下げた際に経営が行き詰まる可能性もあります。頭金を多めに支払っておくことで、リスクを軽減できる場合もあるため、慎重に検討しましょう。
安価な物件に潜むリスクを把握する
築年数が古いマンションや、土地価格が低い物件は購入コストを抑えやすい反面、リスクもあります。古い建物は耐久性が低く、修繕費用がかさむ可能性があります。また、入居者が集まらない、もしくは家賃を滞納する入居者が増えるなどの問題も起こりえるでしょう。
上記のようなリスクを避けるためには、事前に物件の状態をしっかり調査し、将来的な修繕費や経営計画を見据えた判断をおこなうことが重要です。安価な物件に飛びつくのではなく、長期的な視点でリスク対策を考えることが成功への鍵となります。
一棟マンション経営を始めるまでの流れ

不動産投資の経験がある方でも、一棟マンションの購入経験は少ないかもしれません。スムーズな購入手続きには、事前に流れを把握することが大切です。ここでは賃貸物件として一棟マンション経営を始める際の基本的な流れと、押さえておきたい注意点を解説します。
住居用不動産の購入手順と似ていますが、扱う金額が大きいため気を抜いてはいけません。購入から引き渡しまで、確認作業と情報共有を徹底しましょう。
- STEP 1問い合わせ前に下調べをする
- STEP 2複数物件の比較をおこなう
- STEP 3融資先は複数の金融機関を比較する
- STEP 4契約内容を細かく確認する
- STEP 5購入後は管理会社と保険を確認する
それぞれ詳しく解説します。
ステップ1.問い合わせ前に下調べをする
一棟マンション経営を考え始めたら、まずは物件売却を仲介している不動産会社に問い合わせをします。この時、事前の情報収集なしに相談することは避けましょう。
「会社に勧められたから」「価格が安いから」などの理由だけで物件を購入してしまうと、大きな損失につながることもあります。
スムーズに下調べを進めるためには、まず購入エリアを絞り込むことがポイント。立地条件や周辺環境から収益を見込めそうな地域を選定し、そのエリアの価格相場や築年数なども詳しくリサーチしましょう。事前にリサーチすることで、自分が希望する物件の具体的な条件が見えてきます。
ステップ2.複数物件の比較をおこなう
一棟マンション経営を検討する際は、複数の物件を比較してから選ぶことが重要です。以下のポイントを基準に物件を比較してみましょう。
物件価格
まず、物件価格を確認しましょう。特に注目すべきポイントは、自分の年収の10倍以内で収まるかです。どれだけ立地がよく利回りが高くても、ローンが通らなければ意味がありません。年収の範囲内で購入可能な物件かを見極めることが大切です。
利回り
不動産投資で一棟物件を購入する場合、新築なら利回り5%、中古なら8%が目安です。区分所有物件では新築で3〜4%、中古で6%程度が理想とされています。利回りが低すぎる物件は、空室リスクが高く、十分な利益を得られない可能性があるため注意が必要です。
築年数
融資を受けられる期間は物件の築年数によっても制限されます。例えば、耐用年数が47年とされる鉄筋コンクリート造のマンションでは、築年数を引いた残り期間が返済期間となるケースがあります。築20年の中古マンションなら、「47年―20年=27年」が返済期間と設定される場合が一般的です。
エリア・立地
物件の価格はエリアによっても変動します。都心部のほうが需要は見込めますが、価格が高く利回りは低くなりがちです。一方、地方では購入価格を抑えられるものの、需要リサーチが必要になるでしょう。また、駅や交通機関のアクセスの有無、周辺環境や治安なども重要なチェックポイントです。
専有面積
面積が狭すぎる物件は、価格が安くても生活の利便性が低いため空室リスクが高まります。極端に狭いワンルームや、生活に必要な設備が不十分な物件は避けたほうがよいでしょう。
物件の状況
中古マンションでは間取り、使い勝手、防音性能など物件の状態を把握することが重要です。また、将来的な資産価値や継続的な入居需要なども検討しましょう。
ステップ3.複数の金融機関を比較する
次に、融資を受ける際は複数の金融機関を比較してから選びましょう。信託銀行やノンバンクなどは比較的簡単に融資を受けられますが、その分金利が高い傾向にあります。
金利が高いと返済が困難になるリスクもあるため、金利の低い金融機関を優先して検討し、複数社で条件を比較することをおすすめします。
ステップ4.契約内容を細かく確認する
契約を結ぶ際は、契約書の内容を細かく確認することが重要です。多くの場合、書面内容と事前の打ち合わせの内容は一致していても、場合によっては契約内容が変わっていることもあります。特に規約や条件などの細かい部分に注意し、納得できるまで確認しましょう。
契約書にサインすると、内容を覆すことは難しくなります。信頼できる不動産会社でも契約書は自分でしっかり確認してからサインすることが大切です。
ステップ5.購入後は管理会社と保険を確認する
マンションの管理はオーナー一人では難しいため、管理会社に任せることをおすすめします。また、火災保険などへの加入も重要です。月々のランニングコストは発生しますが、災害時に資産を守るためにも必要な備えです。
まとめ
一棟マンションを経営する際は、多額の費用が必要になります。あらかじめどのような項目の費用が必要なのか、それぞれどの程度の金額がかかるのかを理解しておかなければ、あとからトラブルが起きる可能性があります。
今回の記事では一棟マンションを経営する際に必要な費用を詳しくまとめたので、ぜひ参考にしてください。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ