不動産投資で自己破産に陥るケースとは?破産後のリスクや流れを徹底解説

本記事では、不動産投資にともなうリスクや自己破産の際に考えられる注意点を詳しく解説。不動産投資を検討中の方、すでに投資を始めている方は、ぜひご一読ください。
記事の目次
不動産投資で自己破産に至る主なケース

不動産投資は、比較的リスクが低い投資ではありますが失敗してしまうこともあります。その失敗が大きな損失を生み、最終的に自己破産に追い込まれる場合もあるでしょう。自己破産に至る要因として代表的なケースを詳しく解説します。
投資用ローンを利用して不動産を購入した場合
不動産投資を始める際、多くの方がローンを活用して収益物件を購入します。しかし、投資用ローンも借金の一種であるため、返済が困難になった場合には自己破産を避けられなくなる可能性も。これに対し、収益物件を現金一括で購入している場合、その物件自体が資産として残るため、たとえ投資が失敗しても破産に至るリスクを大幅に減らせる可能性があります。
近年では、古い物件を安く購入し、リフォームやDIYを施して運用する投資スタイルも注目を集めています。この方法であれば初期費用が安く済むため、リスクを低く抑えられるでしょう。ローンに頼らない投資を目指すことが失敗を減らすための重要なポイントです。
物件選びを間違えた場合
不動産投資を成功させるうえで重要なポイントは、安定して入居者が確保できる物件を選ぶことです。しかし、物件選びに失敗すると、思うように入居者が集まらず、家賃収入が途絶えるリスクが高まります。例えば、「都心までのアクセスが悪い」「需要が少ない」「築年数が経っている」などの要素を見落とすと、空室が続き、収益が出せない可能性があります。
また、予算を優先しすぎて安価な収益物件を選んだ場合、入居希望者が少なく、赤字経営に陥ることも珍しくありません。物件購入時には、エリアの人気度や交通の利便性、築年数、間取りなどを総合的に判断する必要があります。中長期的に安定した収益を見込める物件を選ぶことで、不動産投資の失敗リスクを抑えられるでしょう。
高値の物件を購入してしまった場合
「高額な物件なら高い利回りが期待できる」と考え、無理をして予算を超える収益物件を購入するケースも、破産のリスクを高める原因の一つです。実際に収益物件を運用してみると、家賃相場が予想以上に低く、「家賃を下げて入居者を確保しても赤字になる」「家賃を上げると空室が続く」などの悪循環に陥ることがあります。こうした状況が続けば、収支が悪化し破綻へとつながりかねません。
収益物件を購入する際には、エリアの家賃相場や需要を十分に調査し、無理のない範囲で購入することが大切です。また、利回りだけに注目するのではなく、長期的な運用の安定性を見据えて慎重に行動しましょう。
不動産投資で自己破産を防ぐための具体的な対策

不動産投資は収益性が高い一方で、リスクをともなう側面もあります。もし赤字が続いて自己破産の危機が迫っている場合でも、適切な対応を取ることで回避できる可能性があります。ここでは、不動産投資で自己破産に陥らないための対策を詳しくみていきましょう。
入居率を改善して収入を安定させる
不動産投資で収益の柱となるのは入居率です。入居者が安定して確保できれば、家賃収入が安定し、ローン返済もスムーズに進められます。反対に、空室が多い状態が続くと、収益が減少し赤字に転落するリスクが高まってしまいます。まず、現在の収益物件の入居率を向上させるために、以下のような施策を考えましょう。
- 共用部分の清掃と管理:エントランスや廊下を清潔に保つことで、物件の印象をよくする
- 住民トラブルへの迅速な対応:入居者が抱える問題を早急に解決することで、長期間住んでもらえる環境を整える
- 設備の改修:特に水回りや空調設備など、日常生活で重要な部分を改善することで、物件の魅力を高める
上記の対策を地道に実施することで、入居者の満足度が向上し、結果的に長期間住んでもらえる物件となるでしょう。
ローンの借り換えを検討する
投資用ローンの返済が厳しい状況になった際、最初に検討すべきことはローンの借り換えです。借り換えとは、現在のローンを低金利の新しいローンに切り替えることで、月々の返済額を軽減する手段です。以前よりも金利が低いローンに変更することで、返済負担を軽減できるケースがあります。借り換えることで月々の返済額が減少し、収支のバランスを整えられるでしょう。
ただし、借り換えの際には手続きにともなう諸費用が発生するため、全体のコストを慎重に計算したうえで実施しましょう。また、借り換え先の金利や条件が現在のローンより本当に有利かを確認し、金融機関の担当者や専門家に相談すると安心です。
物件を売却する
どうしても収支の改善が難しい場合や、ローン返済が滞り始めた場合には、収益物件を手放す選択肢も視野に入れましょう。収益物件を売却して得られた資金を返済に充てれば、破産の危機を回避できる可能性があります。収益物件を売却するタイミングは、築年数が浅く、資産価値が高いうちが望ましいです。売却価格が下がる前に動くことで、負債を早期に解消できるでしょう。
しかし、他の借金が原因で自己破産の可能性がある場合、収益物件を勝手に売却すると「直前処分」とみなされる恐れがある点には注意が必要です。このような事態を避けるためにも、売却を検討する際には専門家に相談しましょう。また、売却する際の選択肢として「任意売却」を検討することも有効です。
任意売却とは
任意売却とは、投資用ローンの滞納が発生している場合や、収益物件を売却してもローンの残債を全額返済できない場合に、債権者である金融機関と協議し、その同意を得て物件を売却する方法です。通常、ローンの滞納が3~6カ月ほど続くと、債権者は未回収の債務を少しでも回収するため、物件を差し押さえたあとに競売をおこないます。しかし、任意売却を選ぶことで競売の手続きを停止できる可能性も。任意売却に関して詳しく知りたい場合には、専門家のアドバイスを参考にすることをおすすめします。
自己破産で免責不許可事由に該当した場合

自己破産を申請する場合、返済責任を免除(免責)してもらうことが最終的な目的ですが、債権者にとってあまりに不公平な場合などは、「免責不許可事由」に該当する可能性があります。免責不許可事由に該当すると、免責が認められません。
免責不許可事由に該当する可能性がある場合には、管財事件として処理されることが一般的。この手続きには通常より手間と費用がかかるため、早めに弁護士などの専門家に相談し、最善の対応策を取ることが重要です。
不動産投資のリスクを抑え、長期的に安定した収益を得るためには、日々の管理や計画的な資金運用が欠かせません。投資がうまくいかないと感じた時には、早めに適切な対策を取ることで、最悪の事態を防げるでしょう。
不動産投資で自己破産に至るまでの過程

不動産投資で自己破産をする方は、どのような経緯で破産に追い込まれてしまうのでしょうか。その流れを順番にみていきましょう。
収入減少が引き金となり、赤字経営から自己資金で補填
最初の段階では、家賃収入の減少や支出の増加(修繕費や雑費など)が収益を圧迫し、赤字経営に陥るケースが多いです。収益物件から得られる家賃収入だけではローン返済が追いつかず、自己資金から補填を余儀なくされる状況に陥ります。その結果、個人の貯蓄が減少し、さらに厳しい状況に追い込まれてしまうのです。
返済の遅延により金融機関からの督促状が届く
自己資金も底を突き、ローン返済が滞るようになると、金融機関から返済を求める督促状が送られてきます。滞納が1カ月を超えると督促状が届き、2〜3カ月経過すると電話や訪問による督促が始まります。この段階で信用情報に記録が残り、クレジットカードの発行や新たなローンの審査が通りにくくなる場合があるため、注意が必要です。
不動産の売却や競売手続きが進行する
滞納が数カ月続くと、金融機関は債権を債権回収会社に売却します。この段階では、債権回収会社が収益物件を市場に売却するか、競売にかける形で処理を進めていきます。競売とは、不動産を担保にした借入金が返済できなくなった際に、債権者の申し立てに基づき、裁判所が物件を強制的に売却する手続きのこと。競売となると、通常の市場価格よりも低い金額で売却されるため、残ったローンとの差額が借金として残ることになります。
売却後も残債がある場合、自己破産を選択する
競売や売却で得た金額では投資用ローンを完済できず、残債がある場合には、自己破産の選択肢が現実的となります。弁護士に依頼し、破産手続きを開始すると、裁判所で破産の経緯や状況を説明し、資産の整理を進める流れになります。
不動産投資をしている人が自己破産をする際のリスク

不動産投資をおこなっている場合、自己破産に踏み切ることは大きな決断です。破産手続きにはメリットもありますが、同時に避けられないリスクも存在します。特に不動産投資を生計の基盤としている場合、そのリスクはいっそう深刻なものとなります。ここでは、不動産投資をしている方が自己破産をする際に、直面する可能性があるリスクを詳しくみていきましょう。
免除の対象外となる借金もある
自己破産の大きなメリットは、残っているすべての債務が免除される点です。ただし、免除の対象外となるものもあり、税金など一部の債務は免責にならないため注意が必要です。
借金を全額免除してもらうために自己破産をしても、免除の対象外となるものもあることを事前に頭に入れておきましょう。
所有している財産が処分される
破産手続きでは、99万円を超える現金や時価20万円以上の財産(不動産、車、貴金属など)は処分され、債権者に分配されます。そのため、手元に残る資産はごくわずかに。自己破産を申し立てると、所有している財産は基本的に処分の対象となり、その売却代金は債権者への返済に充てられます。
また、所有している物件が処分されると、家賃収入が途絶えるため、これまでの生活基盤を失う可能性があります。収益物件の収益で生活費を賄っていた場合、収入源を失うことになるため、新たな生活設計が必要です。
ただし、破産手続きが終了すると、残りの借金は原則的に免除されるため、財産を失っても経済的な再出発が可能になる側面もあります。
信用情報機関に事故情報が登録される
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。事故情報は金融機関で共有されるため、新たな借り入れやクレジットカードの発行が難しくなります。また、ローンの審査にも大きな影響を与えることも。自己破産後も、一定期間は金融取引に関して不便を強いられることは避けられません。
連帯保証人に借金が転嫁される可能性がある
自己破産をすると、自分の債務は免除される可能性がありますが、その影響は連帯保証人にもおよびます。特に、投資用ローンで連帯保証人が設定されている場合、債務者の自己破産後は連帯保証人に借金の返済義務が移ります。連帯保証人が負担を負う際、多くの場合、金融機関から一括返済を求められることが一般的です。そのため、連帯保証人が返済困難に陥り、結果的に連帯保証人も自己破産に追い込まれる可能性があるでしょう。
上記のようなリスクを避けるためには、事前に連帯保証人との話し合いをおこない、可能であれば弁護士などの専門家のアドバイスを受けることが重要です。連帯保証人に迷惑をかけないための対応策を事前に検討しておくことで、トラブルを最小限に抑えられるでしょう。
手続き中は一部の職業や資格が制限される
自己破産手続き中は、一定の職業や資格が制限されることがあります。これは破産法による規定で定められており、以下のような職業や資格は影響を受けるため、注意しておかなければなりません。
- 金融商品取引業者
- 警備員や宅地建物取引士
- 弁護士や税理士、公認会計士などの専門職
上記の職業に従事している場合、自己破産手続きが進行中の間は業務を継続できなくなります。ただし、手続きが終了すれば制限は解除されるため、再び資格や職業に就くことは可能です。
なお、手続き中であっても解雇されることは法律で禁止されているため、会社員としての立場が失われることはありません。しかし、業務内容に制限がかかることで、収入が一時的に減少する可能性がある点には注意が必要です。
官報に破産者情報が掲載される
自己破産をすると、その情報が官報に掲載されます。官報とは、国が発行する公的な機関紙で、破産者の氏名や住所などが記載されています。ただし、一般の人々が日常的に官報を確認することはほとんどないため、情報が広く知られる可能性は低いでしょう。
一方で、企業や金融機関が官報を定期的にチェックしている場合には、勤務先や取引先に知られてしまう可能性があるため、注意が必要です。官報への掲載は自己破産の手続きでは避けられないもので、官報を読んだ周りの人にバレる可能性は少なくありません。しかし、官報の情報は一定期間が過ぎると削除されるため、長期的な影響は少ないでしょう。
手続き中の移動が制限される
自己破産が「管財事件」として処理される場合、手続き中は引越しや旅行に制限がかかります。引越しや旅行などを希望する際には、裁判所の許可を得なければなりません。特に、転勤や家賃の節約を目的とした引越し、冠婚葬祭などのやむをえない理由での旅行は許可が下りやすい傾向にあります。しかし、娯楽目的の旅行や理由が不明確な引越しは認められない可能性があります。
なお、この制限は手続きが終了すれば解除されるため、恒久的なものではありません。しかし、手続き期間中は日常生活に制約がかかるため、事前にスケジュールを調整し、必要に応じて裁判所に相談してみるといいでしょう。
まとめ
不動産投資で自己破産に陥る流れは、収入減少から赤字経営、返済遅延、そして競売や債務整理と進みます。自己破産によって債務はなくなるものの、財産の処分や信用情報の損失など、精神的・経済的な負担が大きいことを理解し、事前の対策を取ることが重要です。
不動産投資をしている方が自己破産に直面すると、財産の処分や連帯保証人への影響、職業や資格の制限など、避けられないリスクがあります。一方で、自己破産で負債から解放されることで、新たなスタートを切るチャンスも得られることも事実です。上記のリスクを理解し、適切な対応を取ることで自己破産を最小限のダメージで乗り越えられるでしょう。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ