不動産投資ローンと住宅ローンの違いとは?違いや併用する際の注意点を解説

本記事では、不動産投資ローンと住宅ローンの違いを徹底解説します。これから不動産投資のためにローンを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
不動産投資ローンと住宅ローンの違い

不動産投資ローンと住宅ローンは、目的や条件、審査基準など、さまざまな点で違いがあります。ここでは6つの違いを解説します。
借入目的
不動産投資ローンと住宅ローンのもっとも大きな違いは、借り入れの目的です。住宅ローンは、借り入れをおこなう個人が自ら居住するための住宅を、購入または増改築する際に利用するローン。
一方の不動産投資ローンは、賃貸用の収益物件を購入し、不動産投資による収益を得ることが目的。自分は物件に居住せず、第三者に物件を賃貸して家賃収入を得る事業用ローンのことを指します。
上記のように、住宅ローンと不動産投資ローンでは、ローンを利用する目的が根本的に異なるのが特徴です。
返済原資
不動産投資ローンと住宅ローンでは、ローン返済の原資を何にするのかも異なります。
住宅ローンの返済原資には、借り入れをおこなった個人の給与収入を充てるのが一般的。個人が働いて得られる収入から、ローンの返済分をまかないます。
一方で、不動産投資ローンの返済原資は、購入した収益物件から得られる家賃収入。投資用の物件を取得し、入居者から受け取る家賃収入を原資として、ローンの返済をおこないます。個人でも法人でも、賃貸経営をおこなうことが前提です。
金利の水準
ローン金利の水準も、住宅ローンと不動産投資ローンでは大きく異なります。住宅ローンは比較的金利が低く設定されており、年利0.5〜2.0%程度が一般的な金利水準。
一方で不動産投資ローンの金利は、年利1.5〜4.5%程度と、住宅ローンよりもかなり高めに設定されている傾向にあります。
2つの金利水準の違いは、ローンの返済リスクの高さにあります。
住宅ローンの場合は、安定した給与収入から返済が可能。そのため、金融機関からは貸し倒れのリスクが少ないと判断されやすいです。
しかし、不動産投資による家賃収入は、経済状況などの影響を受けやすく、場合によっては赤字になることも。住宅ローンよりも不動産投資ローンのほうが、貸し倒れのリスクが高いため、より高い金利が設定されています。
融資金額の上限
物件購入に必要な融資金額の上限にも、大きな違いがあります。一般的な住宅ローンでは、年収の5〜8倍程度が融資の限度額とされています。基本的には5〜6倍が目安ですが、個人の属性によっては8倍程度の融資が受けられることも。
しかし、不動産投資ローンの融資限度額は、個人年収の10〜20倍程度と、かなり高い水準に設定されている場合があります。年収500万円の方でも、5,000万円〜1億円程度の融資を受けられる可能性があるのです。
不動産投資ローンの場合は、投資による収益が見込めることに加えて、物件の収益性なども加味されるため、融資限度額は大きく設定されているのでしょう。
審査内容
金融機関がおこなうローン審査の内容も、大きく異なります。
住宅ローンの審査では、主に借り入れをおこなう個人の属性や収入、返済能力などがチェックされます。具体的には、年収や勤続年数、他社の借入状況、貯蓄状況、過去の金融事故の有無などが重要な審査ポイントです。
一方、不動産投資ローンでは、個人の属性だけでなく、購入を検討している物件の収益性や将来性なども入念に審査されます。物件の立地やエリア状況、築年数、過去の売買履歴、適正な家賃水準など、その物件がどれだけ安定した収益を見込めるかが、ローン審査でとても重視されるのです。
融資審査の難易度は、物件の収益性がよくなければ、家賃収入からの返済が難しくなるため、住宅ローンよりも不動産投資ローンのほうが高い傾向にあります。
また、金融機関によって審査水準が異なるため、例えばA社で融資を断られても、B社では融資を受けられるケースもあります。これは、不動産投資ローンだけではなく、住宅ローンも同様です。
制限
ローン契約の名義や年齢制限なども、不動産投資ローンと住宅ローンでは違いがあります。
住宅ローンは、借り入れをおこなう個人が居住するための住宅購入が目的のため、原則として法人名義での契約はできません。そのため、個人名義での契約が必須。また、ローン返済期間は勤労可能な年齢までと考えられるため、一般的には65〜70歳未満が年齢上限と設定されています。
それに対して、不動産投資ローンの場合、事業として不動産投資をおこなうことが目的であれば、法人名義での契約も可能。
また、返済原資が収益物件からの家賃収入であり、個人の給与収入には依存しないため、70歳以上の高齢者でもローン契約ができる場合があります。ただし、資産状況や物件の収益性など、慎重な審査がおこなわれます。
住宅ローンを投資用物件に利用するリスク

住宅ローンは低金利で長期間の借入が可能なため、安く資金を調達できるメリットがあります。そのため「投資用物件を購入する際に住宅ローンを利用したら有利ではないか」と考えがちですが、住宅ローンを不動産投資に使うことは違法であり、リスクもあります。
住宅ローンの目的外の利用は重大な違反行為
住宅ローンは先述したとおり、借り入れする人または家族が居住する住宅の購入を目的とした商品です。投資用の収益物件の購入に使うことは住宅ローンの本来の目的外利用にあたるため、許可されていません。
代表的な住宅ローン「フラット35」の利用案内にも、「投資用物件の取得資金にはご利用いただけません」と明記されています。ほかにも、「投資用住宅としての利用が判明した場合は、お借入れの全額を一括して返済していただきます」と厳しく注意喚起されています。
参考:【フラット35】ご利用条件:長期固定金利住宅ローン【フラット35】
一括返済を請求された事例
2019年には、フラット35の不正利用が社会問題化し、利用者に対して住宅金融支援機構から一括返済が請求される事態が発生しました。日本経済新聞をはじめ、主要メディアでも大きく報じられた問題です。
参考:日本経済新聞社 住宅機構、一括返済を要求「フラット35」不正で
例外的な利用が認められる場合
一方で、以下の2つの場合は例外的に住宅ローンの利用が認められています。
賃貸併用住宅の取得
賃貸併用住宅とは、自己居住部分と賃貸部分が1つの建物にある住宅を指します。賃貸併用住宅であれば、自己居住部分の床面積が50%以上などの条件を満たすことで、住宅ローンを利用できるケースがあります。
転勤などのやむを得ない一時的な事情がある場合
フラット35では、転勤や出張などの理由で、一時的に居住できなくなった場合に限り、住宅に戻ることを前提に賃貸が認められることもあります。
ただし利用する際は、金融機関の窓口で住所変更に関する手続きをする必要があります。
繰り返しになりますが、投資用物件の取得資金に利用したり、第三者に賃貸ししたりなど、目的外利用が判明した場合は、借入額の全額を一括で返済しなければならないため、注意が必要です。
不動産投資ローンと住宅ローンの両立は可能?

不動産投資に加えて、自分の住む家も欲しいと考えている方は多いでしょう。そのような場合、「不動産投資ローンと住宅ローンを併用できるのか」と疑問に思う方も少なくありません。
結論、不動産投資ローンと住宅ローンを併用することは可能です。ただし、注意しなければならない点もあるため、以下で詳しく解説します。
不動産投資ローンと住宅ローンの関係
一般的に、個人がローンを組む際は、年収や勤務歴などの個人の収入状況に加え、既存の借入額や返済履歴などもローン審査で確認されます。そのため、新たなローンを組む際には、すでに契約しているローンの影響を受けることになります。
住宅ローンを組んでから不動産投資ローンに申し込むと、すでに高額の借入がある状態とみなされます。そのため、不動産投資ローンの審査に通りにくくなったり、希望額を借りられなかったりする可能性もあります。
次に、不動産投資ローンを先に組み、住宅ローンをあとで申し込むケースを見ていきましょう。
不動産投資ローンを先に組む場合は、不動産投資による収入も含めた金額を年収として判断してくれる金融機関もあります。結果的に年収が増えたと見なされ、住宅ローンの審査を通りやすくなる可能性があるのです。
投資の成果次第では、より有利に住宅ローンを組めるケースもあるでしょう。
すでに住宅ローンを組んでいる場合
すでに住宅ローンを組んでいる方でも、両ローンはそれぞれ別物として審査がおこなわれるため、不動産投資ローンを新たに組むことは可能です。
ただし、両ローンを併用する場合は、不動産投資ローンの融資額が、住宅ローンの残高に応じて減額されることがあります。
基本的に不動産投資ローンは住宅ローンより審査が厳しい傾向があるため、金融機関から収益性が高いと判断される物件を選ぶことが重要です。収益性の高い物件であれば、住宅ローン残高の影響を受けにくくなるでしょう。
不動産投資ローンと住宅ローンを併用する際の注意点

不動産投資ローンと住宅ローンを併用する際の注意点を見ていきましょう。
先に投資物件を購入する
不動産投資ローンと住宅ローンの併用を検討している場合は、投資物件の購入を先におこなうほうがおすすめです。
前章でも、不動産投資ローンを先に組んだほうが、住宅ローンと併用できる可能性が高いとお伝えしました。
その際、住宅ローンで有力な選択肢となるのが、住宅金融支援機構が提携金融機関と共同で提供する「フラット35」です。フラット35は最長35年の長期固定金利の住宅ローンで、金利が比較的低く設定されている点が特徴。自分が住む住宅の購入のみを目的としたものなので、審査も比較的緩やかな傾向にあります。
さらに金利だけではなく返済額も固定されているため、住宅ローンの返済計画が立てやすく、保証料や繰上返済手数料もかからないメリットがあります。
ライフスタイルを考慮したうえで慎重に検討する
投資物件を先に購入し、その収益を活かして住宅ローンを組む方法をおすすめしましたが、この戦略が必ずうまくいくとは限りません。
不動産投資を始めれば、管理会社に任せきりにすることもできますが、ビジネスチャンスを逃してしまうこともあります。管理会社に任せきりにするのではなく、自分自身でも適切な判断ができるように、不動産投資に関する知識を身に付けることが大切です。
投資が順調であれば、住宅ローン審査でも有利になりますが、うまくいかなければ、住宅を購入するための融資が受けられない可能性もあります。
自分のライフスタイルをよく考えたうえで、慎重にローンを検討しましょう。
不動産投資ローンと住宅ローンの借り換えは可能?

状況の変化に合わせて、不動産投資ローンと住宅ローンを柔軟に借り換えられれば便利だと考える方もいるかもしれません。しかし実際には、借り換えには多くの注意点があるため、あらかじめ理解しておく必要があります。
不動産投資ローンから住宅ローンに借り換える場合
はじめは不動産投資の目的で物件を購入していたものの、のちに購入した物件に自分で住みたい場合、金利が比較的安い住宅ローンに借り換えたいと考える方もいるでしょう。
しかし、不動産投資ローンから住宅ローンへの借り換えに対応している金融機関はほとんどありません。
資金計画の立てやすさや自分に合った物件の選びやすさなどからみても、投資用物件と自身の住居は目的が異なるため、それぞれ別のローンで購入することが重要です。
住宅ローンから不動産投資ローンに借り換える場合
一方で、住宅ローンで購入した物件を賃貸として貸し出す場合は、不動産投資ローンへの借り換えが必要になることがあります。ただし、金融機関によって対応が異なるため、注意が必要です。
なかには、「転勤」や「介護」などの一時的でやむをえない事情であれば、住宅ローンのまま賃貸に出すことを例外的に許可する金融機関もあります。また、賃貸に出す場合は、例外なく一括返済を求める金融機関もあるため、事前に確認しましょう。
例外的に認められるためには、購入した物件に長く住む予定だったのか、本当にやむをえない事情があったのかなど、さまざまな基準をクリアする必要があります。正直なところ、簡単に認められるものではありません。
住宅ローンのまま無断で賃貸に出してしまうと、重大な契約違反となり、一括返済を求められるリスクもあります。事前に金融機関に相談することが大切です。
住宅ローンから不動産投資ローンへ借り換える際の注意点
住宅ローンから不動産投資ローンへの借り換えを認められた場合でも、手数料や金利変動リスクなどに注意しなければなりません。
借り換えをする際は、手数料の負担が重くのしかかります。金融機関や融資額によって異なりますが、数十万円から100万円を超える高額な手数料がかかることも少なくありません。
さらに、借り換え時には、あらためて厳しい審査を受ける必要があります。借り入れ時から年数が経過していれば、収入や資産状況、物件の評価額も変化している可能性があります。状況によっては、借り換えができない場合もあるでしょう。
このように、ローンの借り換えにはさまざまなリスクがつきまとうのが実情です。そのため、物件の利用目的をあらかじめ明確にしたうえで、不動産投資ローンまたは住宅ローンのいずれかを利用するとよいでしょう。状況の変化による臨機応変な借り換えは現実的には大変難しく、リスクが高すぎるため、おすすめできません。
まとめ
本記事では、不動産投資ローンと住宅ローンの違いを詳しく解説しました。これら2つのローンはそもそもの目的が異なるため、審査の内容や金利なども異なります。
不動産投資ローンは住宅ローンに比べると審査の難易度が高く、住宅と投資物件の両方ともを購入したいと検討している方は、不動産投資ローンから先に組むといいでしょう。
住宅ローンを投資物件に利用するのは違反行為にあたり、一括返済を求められる可能性があります。金利が低いからといって違反行為をすると、重大なリスクを背負わなければならない可能性もあるため、注意が必要です。
不動産投資ローンと住宅ローンを正しく理解したうえで、ローンを活用しましょう。

執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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