不動産投資ローンの金利相場はどれくらい?シミュレーションや低金利で融資を受ける方法を解説!

本記事では、不動産投資ローンの金利が変動する要因や相場を解説します。また、金利によって返済額がどう変わるのかもシミュレーションします。金利の上昇を見越して、安定した賃貸経営がおこなえるよう、ポイントを押さえておきましょう。
記事の目次
不動産投資ローンの金利に関する基礎知識

まずは金利について、基本的な知識を押さえておきましょう。本章では、金利の種類と変動する要因を解説します。
不動産投資ローンの金利の種類
不動産投資ローンの金利には、大きく「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
固定金利
固定金利はその名のとおり、金利が固定されているものです。固定金利は、さらに「全期間固定金利」と「選択型固定金利」の2種類があります。「全期間固定金利」とは、返済開始から完済まで金利が一定のもの。「選択型固定金利」とは、3年や5年など、返済開始から指定した期間の金利が一定のものです。
「全期間固定金利」であれば、金利が一定で不動産投資ローンの返済額が変わらないため、返済計画を立てやすいというメリットがあります。しかし、金利が高めに設定されているので、不動産投資ローンの総返済額が増えるというデメリットも。
一方、「選択型固定金利」のメリットは、自分で選んだ期間の返済額は変わらない点です。例えば、教育費や住宅ローンで出費が多い期間は、不動産投資ローンの返済額を固定するなどの使い方が考えられます。しかし、固定期間が終了したあとに適用される金利によっては、不動産投資ローンの返済額が急激に増えることも。それぞれメリット・デメリットがあるため、よく検討したうえで判断しましょう。
変動金利
変動金利とは、市場の金利動向に合わせて金利が変動するものです。そのため、市場の金利が低金利の時には、不動産投資ローンの返済額を抑えられるというメリットがあります。一方、金利が上昇すれば、返済額の負担が増えるというデメリットも。
しかし、変動金利には「5年ルール」や「125%ルール」が適用される金融機関もあります。「5年ルール」とは、金利が上昇しても、5年間は返済額が変わらないというものです。また、「125%ルール」とは、仮に金利が上昇しても、返済額の上げ幅の上限は、元の返済額の125%までというもの。例えば、元の返済額が月15万円であれば、金利が上昇しても、月18万7,500円が最大の返済額になります。ただし、すべての金融機関で適用されるわけではないため、事前によく確認しましょう。
金利の変動要因
不動産投資ローンの金利が影響を受ける要因は、市場の金利動向だけではありません。例えば、購入する投資物件の種類や借り手の属性などによっても変動します。ここでは金利が変動する要因を4つ解説します。
日本銀行の政策金利
冒頭でお伝えしたように、短期プライムレートや長期プライムレートによって、預金や住宅ローンの金利が変動します。不動産投資ローンも同様で、固定金利は長期プライムレート、変動金利は短期プライムレートの影響を受けます。なお、長期プライムレートとは、金融機関が業績のいい企業に対して、1年以上で貸し出す際の最優遇貸出金利のこと。8月9日に発表された最新のプライムレートは、短期で1.475%(最頻値)、長期は1.65%です。
借り手の属性
借り手の属性も、不動産投資ローンの金利に影響を与えます。不動産投資ローンの審査では、借り手の信用度が判断されます。例えば、公務員や士業など安定した職業であれば信用度が高いとみなされ、金利が優遇されます。他にも、年収や資産状況、賃貸経営の経験なども金利に影響を与えるでしょう。
投資物件の収益性
投資物件の収益性も、不動産投資ローンの金利に影響を与える要因です。高い収益性のある投資物件であれば、不動産投資ローンも安定して返済できると判断されます。例えば、駅から近い、再開発が進んでいる地域にあるなど、立地がいい投資物件であれば、金利が優遇されるでしょう。
投資物件の資産価値
不動産投資ローンの金利に影響を与えるものとして、投資物件の資産価値も挙げられます。不動産投資ローンを借り入れる際には、金融機関によって抵当権が設定されます。抵当権とは、借り手が万一不動産投資ローンを返済できなくなった場合、金融機関が投資物件を売却し、売却代金で不動産投資ローンの債権を回収するもの。投資物件の資産価値が高ければ、債権を確実に回収できる可能性が高まるため、金利の優遇が受けられるでしょう。
不動産投資ローンの金利相場

では実際に、不動産投資ローンの金利相場はどれくらいなのでしょうか。金融機関別に、現在の相場を見ていきましょう。
メガバンクの金利相場
まずは、メガバンクの金利相場から見ていきましょう。メガバンクとは、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行など、全国を営業エリアとしている金融機関のことです。
メガバンクの金利目安としては、1%〜2%前後とされています。みずほ銀行の場合、グループ会社であるみずほ信託銀行が、賃貸マンション・アパートローン「プロデュースII」を提供。金利は、団体信用生命保険に加入する場合で、2.875%となっています。メガバンクは低金利の傾向にありますが、その分審査が厳しくなります。
地方銀行の金利相場
次に、地方銀行の金利相場を見ていきましょう。地方銀行では、2%〜10%と幅広くなっています。下表は公開されている各行の金利をまとめたものです。
地方銀行の場合、投資物件の所在地が営業エリアでなければならないなどの利用条件があることもあります。また、借入金が投資物件の購入以外でも利用できることも。各金融機関によって、条件や資金使途は異なるため、事前に確認しておきましょう。
信用金庫・信用組合の金利相場
信用金庫や信用組合は、地域経済の活性化を目的として設立された金融機関です。そのため、地域の個人事業主や中小企業などへの融資に力を入れています。下表は、信用金庫や信用組合の金利をまとめたものです。
金融機関名 | 金利 |
---|---|
世田谷信用金庫 | 3.2%~5% |
京都中央信用金庫 | 2.4%~5.9% |
さわやか信用金庫 | 1.95%~ |
大阪協栄信用組合 | 3.5%~6% |
あすか信用組合 | 1.9%~2.9% |
イオ信用組合 | 2.5%~3% |
信用金庫や信用組合の金利相場は、2%〜6%前後となっています。地方銀行と同様、地域に根付いているため、営業エリアに投資物件が所在している、借り手が居住しているなど、利用条件が設けられている傾向にあります。ただし、メガバンクや地方銀行で融資を受けられなくても、融資を受けられる可能性があるため調べてみましょう。
日本政策金融公庫の金利相場
日本金融政策金融公庫とは、産業振興や地方経済の活性化を図るための金融支援をおこなう、日本政府が設立した法人です。地域経済の活性化を目的としているため、ご自身の資産形成のためではなく、「不動産賃貸業」として手続きを進める必要があります。しかし、金利は固定金利かつ比較的低金利で利用が可能。金利は貸付期間によって異なりますが、19年超20年以内で2.4%(2024年8月1日現在)となっています。
ノンバンクの金利相場
ノンバンクとは、預金業務をおこなわず、融資のみをおこなう金融機関です。不動産投資ローンにおけるノンバンクの金利相場をまとめたものです。
金融機関名 | 金利 |
---|---|
SBIエステートファイナンス | 3%~6.5% |
オリックス銀行 | 2.675%~3.675% |
セゾンファンデックス | 3.75%~5.15% |
表を見ると、3%〜6%前後であることがわかります。銀行法ではなく、貸金業法に基づいているため、メガバンクや地方銀行で融資が難しいと判断されるようなケースでも、融資を受けられる可能性があります。また、審査のスピードが早いことも特徴。例えば、オリックス銀行の場合、審査結果の回答は事前審査で約1週間、本審査は約2週間となっています。
不動産投資ローンの金利シミュレーション

これまで、メガバンクや地方銀行などの金利相場を見てきました。低い場合は1%台もありますが、高い場合は10%になるところも。しかし、金利がどのように返済額に影響を与えるのか、実感が湧かない方もいるのではないでしょうか。本章では、金利のシミュレーションをおこないます。ご自身の場合はどうなるのか、置き換えて考えてみましょう。
金利1.9%の場合
まずは金利1.9%の場合を見てみましょう。なお、借入金額が5,000万円と8,000万円、返済期間が20年と30年の場合でシミュレーションをおこないました。
借入金額 | 5,000万円 | 8,000万円 | ||
---|---|---|---|---|
返済年数 | 20年 | 30年 | 20年 | 30年 |
月々の返済額 | 25万 581円 |
18万 2,319円 |
40万 929円 |
29万 1,711円 |
総返済額 | 6,013万 9,324円 |
6,563万 4,995円 |
9,622万 2,919円 |
1億 501万 5,992円 |
不動産情報サイト アットホーム「不動産 資金計算シミュレーション」
返済期間が長くなるほど、月々の返済額が低くなることがわかります。しかし、その分元本の減りが遅くなるため、利息が増え、結果として総返済額が増えています。また、借入金額が多いほど、月々の返済額が増えることもわかるでしょう。
今回は、返済している間、金利が固定されていると仮定してシミュレーションをおこなっています。変動金利を選択し金利が上昇すれば、当然シミュレーション以上に返済額が増えるでしょう。
金利3%の場合
次に金利が3%の場合を見てみましょう。なお、借入金額と返済期間は変更していません。
借入金額 | 5,000万円 | 8,000万円 | ||
---|---|---|---|---|
返済年数 | 20年 | 30年 | 20年 | 30年 |
月々の返済額 | 27万 7,299円 |
21万 802円 |
44万 3,678円 |
33万 7,283円 |
総返済額 | 6,655万 1,712円 |
7,588万 8,726円 |
1億 648万 2,739円 |
1億 2142万 1,962円 |
不動産情報サイト アットホーム「不動産 資金計算シミュレーション」
これを見ると、金利が上がると月々の返済額や総返済額が増えることがよくわかります。例えば、借入金額が5,000万円、返済期間が20年の時。金利が1.9%の場合と比較すると、月々の返済額は約2万6,000円、総返済額は約640万円増えました。
また、借入金額が8,000万円、返済期間が30年の時を比較すると、月々の返済額は約4万5,000円、総返済額は1,640万円増えています。これから、借入金額が多く、返済期間が長くなるほど、金利の負担が大きく増えることがわかります。
低金利で不動産投資ローンの融資を受けるポイント

借り手の属性や借り入れる金融機関などによって、金利は異なります。本章では、低金利で不動産投資ローンを借り入れるためのポイントを解説します。借り入れる前に、できるところは改善しましょう。
事業計画書を作成する
不動産投資ローンを借り入れる際には、金融機関から事業計画書の提出を求められることがあります。事業計画書を作成することで、購入する投資物件の収益性を証明し、より低金利で融資を受けられる可能性が高まります。事業計画書に記載するべき項目は、以下のとおり。
- 物件概要:購入する投資物件の所在地、種類、想定賃料など
- 資金計画:自己資金、借入金額など
- 収支計画:家賃収入や管理費、修繕費など、収支に関する計画
具体的に数値化し、根拠となる資料を添えることで、より説得力のある事業計画書を作成できるでしょう。
物件を購入した不動産会社から紹介してもらう
投資物件を購入した不動産会社から紹介してもらうことも、低金利で融資を受けるための方法の一つです。不動産会社は多くの金融機関と取引実績があり、それぞれの特徴や強みを熟知しています。そのため、ご自身に合った最適な金融機関を紹介してくれる可能性が高いです。
また、なかには金融機関と提携ローンを組んでいる不動産会社もあります。提携ローンであれば、借り手の代わりに手続きを代行してくれることもあるため、手続きの負担も軽減できるでしょう。
審査を受ける前に属性をよくする
先述したように、不動産投資ローンの金利は、借り手の属性も影響します。そのため、属性をよくすることで、より低金利で融資を受けることが期待できます。具体的な方法としては、すでにある借り入れを繰り上げ返済する、もしくは完済することが挙げられます。また、使っていないクレジットカードを解約することも一つの方法。不動産投資ローンを返済できる能力があることを示すために、できることは取り組みましょう。
複数の金融機関を比較検討する
低金利で不動産投資ローンの融資を受けるために、複数の金融機関を比較検討しましょう。先述したように、金融機関によって金利は異なります。また、金融機関によって審査基準が違うため、同じ属性の融資でも提示される金利が異なる可能性も。書類を準備したり相談したりなどの手間はかかりますが、より有利な条件で借り入れるためにも、複数の金融機関を比較するようにしましょう。
不動産投資ローンの融資を受ける際の注意点

不動産投資ローンの融資を受ける際には、気を付けなければならない点があります。本章では、4つの注意点を解説します。
無理のない返済計画を立てる
不動産投資ローンの融資を受ける際には、無理のない返済計画を立てましょう。不動産投資ローンは、長期にわたって返済しなければなりません。また、常に満室であるとは限らず、家賃収入が減ることも十分考えられます。他にも、築年数が経てば修繕費がかかることも。すべてを予測することは不可能ですが、これらのリスクも踏まえたうえで、返済計画を立てる必要があります。ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。
頭金を用意する
不動産投資ローンの融資を受ける際には、頭金を用意しましょう。一般的に、購入する投資物件価格の10%〜20%が必要とされています。頭金を入れると、不動産投資ローンの借入金額が少なくなるため、キャッシュフローも安定します。しかし、中古物件の場合は修繕費がかかることもあるため、ある程度の資金を残しておかなければなりません。
また、不動産投資ローンを受ける際には、必要な事務手数料や不動産取得税など、諸費用もかかります。全体的な費用がいくらかかるかを踏まえたうえで、頭金としていくら用意するかを判断しましょう。
自分に合った金利を選ぶ
自分に合った金利を選ぶことも、不動産投資ローンの融資を受ける際の注意点です。先述したように、金利には固定金利と変動金利の2種類があります。どちらを選ぶかによって、総返済額は大きく変化します。そのため、ご自身の返済計画やリスク許容度に合わせて、適切な金利を選びましょう。
適切な借入金額を決める
不動産投資ローンの借入金額は、慎重に決めましょう。なぜなら、金利や借入期間は変更できますが、借入金額は変更できないからです。不動産投資ローンの借り換えは可能ですが、その時点での残債を新しく借り入れたローンで返済します。つまり、元の借入金額は確実に返済しなければなりません。収益を重視して高額な融資を受けた場合、返済できなくなる可能性もあります。家賃収入を得ることも大切ですが、堅実な投資計画を立てるようにしましょう。
まとめ
本記事では、不動産投資ローンの金利相場を解説しました。金利は、どこの金融機関から融資を受けるかによっても異なります。しかし、借り手の属性や投資物件の収益性などによっても変化します。ご自身に合った不動産投資ローンを組むためにも、複数の金融機関を比較検討しましょう。また、他の借り入れを返済するなどして、属性で改善できるところを改善し、信用度を高めることも大切です。借入金額は変更できないため、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、慎重に判断しましょう。

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ