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都市ガスとプロパンガスの違いは?料金や特徴を比較

都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違い

日々当たり前のように使っているガス。でも、その供給方法に都市ガスとプロパンガス(LPガス)の2種類があることはご存知でしょうか? 地方から都会へ、あるいは逆に都心部から地方へ引越したとき、初めて都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違いがあることを知った方は多いかもしれません。

都市ガスとプロパンガスの違い

  都市ガス プロパンガス(LPガス)
主な原料 メタン(CH4)を主成分とする天然ガス、または海外から輸入している液化天然ガス ロパン(C3H8)・ブタン(C4H10)を主成分とする液化石油ガス
重さ 空気より軽い 空気より重い
ガスの供給方法 地下のガス導管を通じて個々の家庭までガスを届ける ガスの入ったボンベを、事業者が個々の家庭に運ぶ
供給エリア 都市部 全国
発熱量
(1㎥あたり)
10,750Kcal 24,000Kcal

ガスの違い

まずは都市ガスとプロパンガス、それぞれの特徴について比較してみましょう。都市ガスの原料はメタン(CH4)を主成分とする天然ガス、または海外から輸入している液化天然ガスがその多くを占めます。

本来なら天然ガスは無臭ですが、ガス漏れをおこした際に気づきやすいよう、あえてニオイがつけてあります。天然ガスをマイナス162℃まで冷却し液化させたものを液化天然ガスといい、体積が約600分の1になることで輸送を可能に。そして、天然ガスは空気より軽く、空気中に拡散しやすいという特徴があります。

一方でプロパンガスの原料は、プロパン(C3H8)とブタン(C4H10)を主成分に持つ液化石油ガスです。供給量の約4分の3を海外から輸入しており、残りは国内に輸入された原油を精製する際に生産。都市ガスと同様、本来は無臭なものにニオイがつけてあります。また、マイナス42℃まで冷やすと液体になり、体積も250分の1になります。プロパンガスは空気よりも重く、ガス漏れを起こした場合は下に溜まるのも特徴です。

供給方法、器具の違い

生活者にとって、都市ガスとプロパンガスの一番大きな違いは供給方法です。都市ガスは、ガス会社が広範囲のガス供給をまかなう大きなガスタンクに液化天然ガスを貯留し、ガス導管を通じて個々の家庭までガスを届けます。地下から配管を通して給湯器等に繋げるため、外に大きな設備を置く必要はありません。

これに対してプロパンガスは、都市ガスとは供給方法が大きく異なります。ガスの入ったボンベを、事業者が個々の家庭に運ぶスタイルです。プロパンガスのボンベはいくつかのサイズが用意されており、契約時の世帯人数や部屋の広さなどを考慮して適当なサイズなボンベが導入されます。そうなると、「ボンベ内のガスがなくなってしまったらどうしよう?」と心配になるかもしれません。しかし通常、ボンベは2本または4本設置されており、1本がなくなった場合は2本目からガスをとることができます。万が一すべて空になった場合でも、事業者に電話をすればボンベを交換してもらえるので心配いりません。

供給エリアの違い

都市ガスはガス導管を通して供給しているため、地下にガス管が引ける都市部で主に普及しています。一方、プロパンガスは都市ガスが供給されないエリアや、ガス管工事を行っていないマンションなどで使われています。

火力・発熱量の違い

都市ガスの発熱量は、大手都市ガスの場合で1立方メートルあたり約45メガジュール(10,750Kcal)。これに対してLPガス(プロパン)は、全国どこでも約99メガジュール(24,000Kcal)です。プロパンガスの火力は強く、都市ガスの2.2倍以上の発熱量があります。

料金システムの違い

通常、一般家庭における都市ガスの料金は基本料金に加えて、ガスの使用量に応じて従量料金を支払う二部料金制になっています。まずは、それぞれの基本料金についてみていきましょう。

都市ガスは東京ガスや東邦ガス、大阪ガス、四国ガス、西部ガスなど、地域によってさまざまな事業者があります。そして基本料金や従量料金も、それぞれ利用者の数によって違っています。たとえば東京ガスの基本料金は、2022年11月現在で1,056円(東京地区、ガス使用料20立方メートルを超え80立方メートルまでのB表料金)。これに対して、四国ガスの基本料金は2,817円(月間使用量が20立方メートルを超え100立方メートルまでのC表料金)となっています。

参考:東京ガス「一般料金の料金表
   四国ガス「ガス料金のご案内

プロパンガスは自由料金制で、各販売店がコストや利益を考慮したうえで独自に料金を設定。しかし、資源エネルギー庁が料金の透明化および取引の適正化を図るため、「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」を策定しています。
都市ガスと同じ二部料金制になっていますが、貸付設備利用料金または設備管理料金が別になった三部料金制もあります。こちらもエリアによって基本料金が異なりますが、1,500円〜2,000円の範囲内におさまっており、そこまで大きな違いはありません。

従量料金に関しては都市ガスの場合、各地域内でのシェアが5割を超える都市ガス事業者には、自由化にはなったものの従前どおりの規制料金が義務付けられています。一方、プロパンガスは料金設定が自由なため、業者によって価格差が大きくなっていました。ただし、2017年2月に経済産業省資源エネルギー庁によって取引適正化ガイドラインが制定。これによって、各社の料金体系は透明化するように指導されているため、比較検討がしやすくなっています。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針

都市ガスかプロパンガスか確認する方法

都市ガスは、玄関横や、共用廊下などに設置されています
都市ガスは、玄関横や、共用廊下などに設置されています

現在使っているガスが都市ガスなのかプロパンガスなのかわからない場合は、ガスメーターを見ればすぐにどちらかを判別できます。「13A」や「12A」などと記載されていれば都市ガス、「LP」と記載されていればプロパンガスです。ガスメーターは外に設置されているので、屋外に出て確認しましょう。

家の中にいながら確認できる方法もあります。ガスコンロなどのガス機器に「13A」「12A」「LP」といった表示があり、これによっても使っているガスがわかるようになっています。また、部屋探しの際などは不動産会社からもらう物件資料の設備欄を見れば、その物件で使用しているガスの種類が記載されているはず。事前に確認しておきましょう。

都市ガスのメリット・デメリット

都市ガスのメリットは、特に都心部においてはプロパンガスに比べて料金が安いこと。また、天然ガスの主成分のメタンは燃焼後のCO₂の排出量がプロパンガスに比べて少なく、環境負荷が低いこともメリットです。

反対にデメリットは、地下の導管が敷設されていない地域では使えないこと。また、設備の規模が大きいため、災害時の復旧に時間がかかることもデメリットといえるでしょう。

都市ガスが向いているケース

都市ガスの導管が引いてあるエリア・物件であれば、都市ガスの利用が便利でしょう。従量料金も安く設定されている場合が多いので、ガスを多く使用するご家庭なら都市ガスの方が向いています。

プロパンガスのメリット・デメリット

集合住宅に設置されたLPガス。プロパンボンベが並びます
集合住宅に設置されたLPガス。プロパンボンベが並びます

プロパンガスのメリットは、災害時などの復旧が早いことです。万が一、事故があった場合にも替えのボンベや部品の交換などで、すぐに利用を再開できます。地下を通る導管が不要なため、全国どんなところでも利用可能。そのため、災害時のライフラインを支える役割も担っています。

もともとガス管が通っているエリアや建物であれば問題ありませんが、都市ガスで新たに導管をつなげる場合、初期費用が大きくなります。しかし、プロパンガスなら新しく導入する初期費用が安く、メリットに感じられるでしょう。
デメリットは、一部のエリアを除いて都市ガスよりも料金が高くなること。また、CO₂の排出量が都市ガスに比べて多くなることです。

プロパンガスが向いているケース

新築住宅やガス管の通っていない中古物件を購入してリノベーションするといった場合、初期費用が抑えられるプロパンガスは魅力的です。また、ガス管自体が整備されていないエリアでは都市ガスが選べないので、必然的にプロパンガスを使用することになります。

ガス料金を安くする方法は?

「ガスは公共料金だから料金は変わらない」と思っている方は、まだ多いかもしれません。しかし、ガスも電力と同じように自由化となり、どこからガスを買うかを各個人が選べるようになりました。そのため、ガス料金を根本から見直して、安く抑えることも可能です。

ガス会社を比較検討・変更する

以前は東京であれば東京ガス、関西であれば大阪ガスと一社独占でした。しかし、2017年の「都市ガス小売全面自由化」を受けて都市ガス事業に新たな事業者が参入できるようになり、今では全国に1,000を超える登録ガス小売事業者があります。価格競争が起こり、さまざまな料金プランが登場するとともに、各事業者独自の特典などを利用できる場合もあるでしょう。自分の住んでいるエリアの事業者の料金プランとご家庭のライフスタイルを見比べて、より暮らしにあったプランを選択すれば、ガス料金を安くできるかもしれません。プロパンガスに関しては、全国に1万7,000ほどの販売事業者があります。しっかり比較検討することで、料金を賢く節約することができそうです。

ガスの使用量を抑える

家庭でガスを使う場所は、主にお風呂やキッチン。あるいは、床暖房やガスストーブなどでもガスを利用している家庭があるかもしれません。

お風呂でガスの使用量を抑えるには、まずシャワーを減らして湯船に入ること。なるべく、かけ湯などは浴槽のお湯を使うことで、ガス料金の節約になります。浴槽のお湯は、水から沸かすよりも給湯システムでお湯をためるほうが節約に。追い焚き機能は便利ですが、沸かすためにはエネルギーを多く使ってしまうので、家族で利用する際はなるべく間をあけずに入るほうが望ましいでしょう。

また、ガスコンロで湯を沸かしたり調理したりする場合は「強火」にして、炎が鍋底などからはみ出していることがないでしょうか。すぐ熱が伝わるような気がするかもしれませんが、実のところ熱伝導はほとんど変わりません。たとえレシピに強火と書かれていても、炎が鍋底からはみ出さないよう火力を調整することで、資源もお金も節約できます。

プロパンガスから都市ガスに乗り換えられる?

ガスをよく使う方なら、プロパンガスから都市ガスに乗り換えたいと考えるかもしれません。しかし、現実的にはなかなか大変です。まず、住んでいるエリアに都市ガスのガス管が通っていない場合、「市町村をあげて大きな都市計画がおこなわれ、ガス管が導入される」といったようなことがない限り、都市ガスへの変更は難しいでしょう。

また、住んでいるエリアにガス管が通っていても、建物自体にガス管が繋がっていなければ工務店等にガス管を引き込む工事を依頼し、ガスメーターを取り付ける必要があります。基本工事費、ガス栓ライン工事費、埋設管工事費、その他の諸経費を含めると、15万円ほどの初期費用が必要です。これは新築の場合の料金例ですので、中古住宅をリノベーションする場合は、さらに費用がかさむ可能性があります。

そして、マンションの場合は共用部分に手を加えないと工事ができないので、勝手に変更することはNGです。都市ガスの工事は、家を新築する際におこなうのがもっとも多いケースといえるでしょう。

まとめ

都市ガスとプロパンガスは、そもそもの原料が違います。そのため、料金やシステムが異なるのは当然といえるでしょう。

災害時にはプロパンガスが役立つなど、それぞれにメリット・デメリットがあります。また、電気は東日本なら50ヘルツ、西日本では60ヘルツとエリアによって電源周波数が違うため同じ家電が使えないように、ガスコンロやガスファンヒーターなどのガス機器にも都市ガス用とプロパンガス用があります。都市ガスで当たり前に使っていたコンロも、プロパンガスでは使えなくなるのです。新しいコンロに買い替えなければいけないなど費用も発生しますので、引越しの際には気をつけましょう。

どちらのガスを使用しているのかは、「不動産情報サイト アットホーム」に掲載されている各物件の設備欄などに記載されているので確認しておくと安心です。

執筆者

小西尋子

京都ライター事務所

京都市内を拠点にフリーランスの編集ライターとして活動。大学卒業後、出版・広告業界に20年以上携わる。間取りを見ながら引越しを妄想するのが趣味。レトロ物件好きで、取り壊しのために2度の立ち退き経験あり。宅建士の資格取得に向けて勉強中。

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