リノベーションマンション事例「大好きな漫画本に囲まれて過ごす至福空間のある家」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、大阪府大阪市の田端さんご夫妻の事例をご紹介します。大切な漫画コレクションを守るための書斎を完備。掃除や片付けがしやすい動線や収納にも工夫して、趣味も日々の暮らしも快適に。（text_ Manami Eto photograph_ Takashi Daibo）
北欧の名建築と謳われる「ストックホルム市立図書館」に着想を得た、円形の書斎。本に意識を集中できるという狙いのもとデザイナーの新森雄大さんが“B案”として提案した空間だ。
漫画本が並ぶ書斎。湾曲する壁に沿って本棚とデスクをつくり、中に入れば美しく並んだ背表紙がぐるりと取り囲む。独特のこもり感を活かして在宅ワークにも利用。
「いつもお客さまに喜んでもらえるA案と、設計者として挑戦したいことを盛り込んだB案を提案します。採用されて驚きましたが、気に入ってもらえてよかったです」（新森さん）
施主の田端さん夫妻は、便利な都心の古いマンションを自分たちらしくリノベーションしたいと、物件探しから「リノベる。」に依頼。設計段階から新森さんが加わり打ち合わせを重ねた。夫妻はどんなことも前向きに捉えるタイプで、
「暮らしていくうちに好きになると思ったので、面白そうな方のプランに惹かれました」
と奥さま。大切な漫画を日焼けや埃から守り、コレクションしていきたい。そんな希望から生まれた書斎は、壁を大胆にカーブさせた円筒形の空間。内側には隙間なく書棚が設置され、中心に立てば背表紙を一覧できる。音の響きも独特で、他の部屋とは隔たりを感じる特別な空間だ。
カーテンワイヤーの支柱は足場用の鉄管。直線と曲線、木の床とコンクリートの壁や天井、緻密な職人技とラフなDIY仕上げなど、相反するものが溶け合う。
「新しい本を購入すると、読むだけでなく、並び替えるのも楽しくて。ずっとこもっています」（奥さま）
天井や壁はコンクリート躯体、造作壁はプラスターボードに生成り色のパテ跡を残した。パテ処理は夫妻がDIYで施工。壁紙で覆わず、人の手の跡が見える住まいに。
室内はほとんど扉を設けず、玄関ホールからリビングまでヘリンボーン張りの床がフラットに連続。共働きの夫妻の家事負担を減らせるように、片付けやすく、ロボット掃除機が動きやすいように配慮した。寝室はベッドが入る最小限の2.8畳に留め、元和室を取り込んで拡大したLDKの一角には小上がりを。ベンチにもなり、中には客用の布団や季節違いのものを収めている。
「2人とも実家が遠方なので、招いた家族が泊まれる場所が欲しかったのですが、ひと部屋を費やすのはもったいないし、広いリビングも活かしたい。収納を兼ねた小上がりは素敵なアイデアでした」（ご主人）
玄関土間とつながるウォークインクローゼット。濡れたウェットスーツも干しておける。
身長に合わせて床を上げた横並びでも対面でも2人で使えるキッチン。腰壁には膝押しスイッチ。
クローゼットや水まわりは玄関付近にまとめて、LDKはくつろぎの場に。コンセントやスイッチの配置も絶妙だ。玄関の照明は帰宅してすぐ点灯できるよう、足元の土間の段差に。寝室は寝ながら届き、キッチンは両手がふさがることを想定して膝で押せる高さに設けている。
予算内に収めることもゲーム感覚で楽しめたという夫妻。2人にしか実現できない楽しい住まいになった。
躯体の凹みはニッチとして活用。
建物データ
〈専有面積〉73.31㎡〈バルコニー面積〉4.25㎡〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1972年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉1.5ヶ月 〈工事期間〉2.5ヶ月〈コーディネート・設計・施工〉リノベる。
●Madori Memo「玄関先に機能を集約させて忙しい日々の暮らしをラクに」
WIC、書斎、小上がりを設け、生活スタイルに合わせて再構成。玄関近くにWICと洗面があり、身支度や帰宅後の動線がスムーズ。床の高さや素材を統一し、各室の扉代わりにカーテンを用いて家全体に連続性をもたせた。
※この記事はLiVES Vol.110に掲載されたものを転載しています。
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