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リノベーションマンション事例「一人暮らしを満喫したい」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都目黒区のTさんの事例をご紹介します。一人暮らしでも、思い通りにならない賃貸住宅より自由な持ち家を。家づくりを通して見えてきた、自分が心の底で望んでいた生活のスタイル。家を買うという思い切った決断が、より楽しい未来への扉を開いた。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Takuya Furusue)

キャリアを磨き、好きな街で好きな間取りの家を選び、一人暮らしを楽しむ女性たちが多くなっている。そんな女性のひとりであるTさんが、目黒区に中古マンションを購入し、好みにこだわったフルリノベーションをしたのは、仕事やライフスタイルの変化により、価値観にも変化が起きたからだという。

「20代の頃は、不動産やインテリアにお金をかけるならいろんなところに出かけたいと思っていました。ところが30代に入ると家で過ごす時間が大切に思えてきて、その場しのぎの住まいに我慢する生活に飽き足らなくなりました」

そこで、クリエイティブな提案に魅力を感じたブルースタジオに物件探しから家づくりを依頼。候補に上がったこの物件は、立地や日当たりはいいが45㎡と広くはなく、構造上の理由から撤去できない壁で4つの小部屋に区切られていた。担当者は「蟻の巣」のように小部屋を活かす方法を提案。自分にはない発想をTさんは新鮮に受け止めた。

ダイニングから見るインナーバルコニー。門型の構造体を奥の部屋のテーマカラーで縁取りし、奥の部屋の世界観が手前にはみ出してくるワクワク感を生み出した。

リノベーションのテーマは「おしゃれな漫画喫茶」で、各部屋のテーマと機能がはっきり分かれている。友達と一緒に料理をしながらお酒が飲めるキッチン。プロジェクターとスクリーン、横になれる小上がりと漫画用の棚を設けた籠もり部屋。二面採光を生かしたインナーバルコニー。ひたすら寝るための洞窟のような寝室。大胆なカラーリングやパッチワークのような種々の床材で、小さな家の中の変化を敢えて強調。コンクリートむき出しの部分が甘さを引き締め、色同士の干渉を回避して全体の調和をもたらしている。

ローズピンクの映画&漫画部屋には、愛蔵本を並べられる書棚を造作。
左・もっとも小さな部屋は、壁・天井を海の底のような濃いブルーで着色して、ぐっすり眠れる寝室に。/右・映画&漫画部屋には120インチのスクリーンと天井付けのプロジェクター、サラウンドの音響機器を装備。
インナーバルコニーとダイニングにまたがる小上がりがソファ代わりに。

家中どこでも本を手に取れるようにあちこちに造作の書棚があり、置く本は部屋ごとにテーマ分けされている。インナーバルコニーは植物やインテリアの本を中心に。

複数のビビッドな色が同居していても破綻がないのは、間に無機質なコンクリートを挟んでいるから。いる場所を変えるだけで違った気分を味わえるから飽きない。

キッチンのテーブルは折りたたみ式で、部屋を広く使える。

「家づくりの過程で、心の底で望んでいた暮らし方を発掘していった感じ。一人だから誰に気兼ねすることなく隅々まで自分好みにつくるのが楽しくて、もっと早くやれば良かったと後悔しているほど。迷っている人には、すぐにやった方がいいよと言ってあげたい」

週末だけではなく、家での時間を毎日楽しむようになったTさんは、未来についても以前より前向きに考えるようになったそう。家を買うのはかなり勇気のいることだったが、得たものは大きいと感じている。

Tさんは家づくりという名のカウンセリングで自分と向き合い、今にフォーカスする生き方をつかんだ。女性一人暮らしのポジティブなサンプルを示してくれている。

存在感のある深いグリーンのタイルを貼ったキッチンの壁。見せる収納に合わせ家電類も「バルミューダ」など、デザインのいいものに買い換えた。

タイル貼りのインナーバルコニーは水や土がこぼれるのを気にせず鉢植えを置ける。
左・洗面室のタイルの目地をコーラルレッドに。/右・収納はWICに集中させた。

建物データ

〈専有面積〉45.20㎡〈バルコニー面積〉5.62㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1984年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉1ヶ月〈工事期間〉2.5ヶ月〈設計〉ブルースタジオ

※この記事はLiVES Vol.109に掲載されたものを転載しています。
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