
リノベーションマンション事例「美しい造作収納を設えた家で、物は隠してすっきり暮らす」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都江戸川区の渡辺さんご家族の事例をご紹介します。施工のプロがつくる、見た目も使い勝手も心地いいキッチン収納。必要な物を必要な場所にしまえる収納は、効率的な動線も導く。
(text_ Yasuko Murata photograph_ Kai Nakamura)
リノベーションの施工を手掛ける工務店を営む渡辺力也さんと奥さまの久美子さん。必要最小限の物のほかは、できるだけ隠して暮らしたいと考えていたという。
「子どもが生まれてから節句の物やおもちゃが増え、収納の少なさには困っていました。新居では持っている物をしっかりしまえて、奥行きなどの使い勝手もいい収納を希望していました」
と久美子さん。日当たりと風抜けがよく、天井高もあり、間取りの変更もしやすい物件だったという築18年、68 ㎡の中古マンションを購入。フルリノベーションで、自分たちの暮らしに合った家をつくることにした。

設計は、力也さんが普段から施工を手掛けている芦沢啓治建築設計事務所に依頼。
「シンプルでさっぱりとした芦沢さんのデザインが好みだったので、大まかな間取りの希望だけお伝えして、あとはお任せ。細かいところは施工しながら相談して決めていきました」(力也さん)

キッチン背面の収納は、中央をカウンターとして使えるデザイン。キッチンの床は一段下げてタイルに。ダイニングテーブルとキッチンの高さがフラットに揃う。

子ども室には、リビングに面したワークデスクもつくり付けた。リビングから連続する飾り棚には、本やマンガが並ぶ。全巻揃っているタイトルを中心に見せる収納。
広めにとったLDKとガラスの間仕切りで隣接する子ども室を中心とした空間の中で、ひときわ目を引くのが、キッチンの壁一面の造作収納。丁寧なヒアリングにより、引き出しは、所有している食器の数やサイズに合わせてぴったり収まる高さで設計され、炊飯器などの家電やゴミ箱などの収納も備えている。ダイニングテーブルとフラットにつながるカウンターの収納も充実。リビング側にはAV機器も収まり、床下から壁掛けのテレビに配線しているため、テレビボードなども不要で、すっきりとリビングを使える。
「壁面の収納の奥には梁が隠れているんです。梁の分だけ下のカウンターは奥行きを深くし、面をフラットに揃えています。奥行きが深い分、引き出しは最後まで開けやすい仕様に。ダイニングテーブルと一体となったカウンターも奥行きは不揃いで、設備や配管をよけた複雑な造り。また、オークの木目が美しく見えるように配慮しています」(力也さん)



玄関のシューズクローゼットは、靴のサイズや高さに合わせて計画。大容量でまだまだ余裕あり。廊下の壁はコンクリートブロックでシャープに引き締めた。

キッチン以外も、寝室のクローゼットと廊下沿いにある納戸、洗面室の造作収納、玄関の土間とシューズクローゼットなど、各所に余裕のある容量で収納を備えている。
「必要な場所に収納できるから、遠くまで物を取りに行くことが少なくなりました」
と久美子さんが話すように、適量適所の収納は、生活動線も効率的に導いてくれるようだ。


さりげなく馴染むネコの寝床。
収納TIPS
見せたくない物は、使う場所の近くに隠す
A. キッチンのコンロ近くの引き出しに調味料類、オイルや大瓶。
B. リビング側には機器類。リモコン操作のために扉はルーバー。
C. ゴミ箱や炊飯器など、ほとんどの物を隠して収納できる。
D. 食洗機で乾燥が終わったら、すぐに食器をしまえる配置。

建物データ
〈専有面積〉68.32㎡〈バルコニー面積〉14.73㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉2000年〈リノベーション竣工〉2017年〈設計期間〉4ヶ月 〈工事期間〉3ヶ月〈設計〉芦沢啓治/芦沢啓治建築設計事務所〈施工〉ファインアーツ

※この記事はLiVES Vol.104に掲載されたものを転載しています。
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