
リノベーションマンション事例「変化に富んだ空間に多様な収納を造作し、しまいこなせる家に」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都品川区のKさん、Aさんの事例をご紹介します。空間美にこだわってリノベしたマンションのデッドスペースを使って家全体に収納を設置。造作物を細やかにつくり、生活用品を取り出しやすく。(text_ Makiko Hoshino photograph_ Osamu Kurihara)
共働きで、都会派の暮らしを”楽”しんでいたKさんとパートナーのAさんは、都心に近いエリアに分譲マンションを購入。自分たちらしくフルリノベーションすることにした。お互い、靴や洋服が大好き。これらを一括でしまうウォークインクローゼットの確保は欠かせなかったが、必要な物をすぐに取り出せる家にしたいとも考えていた。しかし、それ以上に重視したのは空間のデザイン。建築家、向坂穣さんの事例が目にとまった。
「無機質と有機質の素材のバランスが絶妙。シンプルなのに、物件ごとにどこか秀でた個性があって面白い、と胸が高鳴りました」(Kさん)

ロフトの寝室の下の収納は、玄関へとつながる。手前の小上がりスペースは客間として使うほか、腰かけてくつろぐことも。下部はすべて収納で、鞄や布団が収まる。
向坂さんが提案したのは、昔の日本家屋のような回遊性を持たせ、寝室をロフト状にするなど、ところどころで床の高さを変えたプランだ。寝室とリビングの間には、ユニークな回転扉を設置。限りある面積に必要な空間を生み出しつつ、構成の美しさを表現した。
要となる収納も、あくまでデザインの一部に組み込むことが優先されている。リビングから続くスペースの床を一段上げて小上がりをつくり、下部をすべて収納に。寝室下に生まれた小部屋には、パイプハンガーを取りつけた。空いた場所に着目し、住まいを縫うように収納を設けたことで、多様な収め方ができるように工夫。結果、利用頻度に合わせ、すべての所有品を的確に“しまいこなせる”ようになっている。




寝室下は玄関につながり、第二のWICとして活用。キャリーケースやアウター、玄関からあふれた靴など、季節で入れかえながら、比較的よく使う物を置いている。
「隠す収納ばかりだと重くなりがちなので、好みを聞きながらオープン棚も取り入れました。一方で使用頻度の高い場所の収納は、とくに細かく精査しました」(向坂さん)
生活のコアスペースである水まわりや玄関、ウォークインクローゼットでは、よく使うアイテムとその量を具体的に想定。洋服であれば、種類、サイズ、枚数までを綿密に計算して造作物を設計した。


[右]・2人分の靴を存分に収集できるオープン棚。奥にパイプハンガーも。

[右]・玄関の壁の小さな凹みを活用してオープン棚に。2人のお気に入りの雑貨を飾っている。
「収納場所に困ることなく、用途ごとに迷わずしまえるようになり、不用品の判別もすぐつけられるように。ドサッと箱に入れたまま、ということがなくなりました(笑)。適当な収まり場所があると、物を使おうという気持ちにも。居心地が良くて、すべてが気に入っています」(Kさん)

洗面室にも大小の棚を造作。

トイレにはミニカウンターも。
CLOSE UP!
収納TIPS 飾って楽しむことも一つの収納法
A.ゴミ袋は、海外の買い物バッグに。よく使うエプロンも一緒に掛けて。
B.普段使いのカップはキャビネットに置いたオープンなボックスの中に。
C.Aさんが集める海外のマグネット。レンジフードに飾ってコレクション。
D.床下収納は引き出しと大小のフタ板の3種を用意。物により使い分け。

建物データ
〈専有面積〉72.1㎡〈バルコニー面積〉26㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1997年〈リノベーション竣工〉2018年〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉2.5ヶ月〈設計〉向坂 穣/向坂建築設計事務所〈施工〉リトラス

※この記事はLiVES Vol.104に掲載されたものを転載しています。
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