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リノベーションマンション事例「“週末山生活”の拠点となるルーフバルコニー付きマンション」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都調布市のTさんご夫妻の事例をご紹介します。1年の約4分の1を山で過ごす夫婦が見つけた、東京にいながら自然を感じられる場所。築39年のマンションを山小屋の機能をもつ家にリノベーション。(text_ Aya Fukuda photograph_ Osamu Kurihara)

Tさんご夫妻は毎週のように沢登りや山スキーなど、山へ出掛けている。所有する山道具も多く、以前の家では6畳ほどの部屋が道具で埋め尽くされていたという。収納方法やメンテナンスに悩みを抱えていたことから住み替えを考え始めた。

テントを設営しても、まだまだ余裕のあるルーフバルコニー。十分な広さがあるため、大型の山道具のメンテナンスも楽々。春はお花見、秋はお月見が楽しめるそう。

もともと調布市内の賃貸マンションで暮らしていたご夫妻。その理由は、高速道路のインターチェンジが近くて山へのアクセスが良く、都心にも出やすいこと。また、多摩川や大きな公園があり、緑が豊かなところに魅力を感じていたからだ。

左・きのこモチーフの雑貨やアイテムが部屋じゅうのいたるところに。/右・洗面器に採用した実験用シンクは、収穫した野菜を洗うのにも便利。

「山に出掛けないときも、近隣で野草やきのこ採りが楽しめる。春にはクレソンやセリなどの野草も採れるんですよ」

とうれしそうに話すご主人。京王線沿線のほかの街も候補に挙がっていたが、高尾山、陣馬山を望める広いルーフバルコニーのあるこの中古マンションが気に入り、調布に住み続けることを決意した。 物件の状態そのものはあまり良好ではなかったため、改修が必要に。知人からの紹介を通じてSNARK inc.に設計を依頼した。

「SNARKが設計した知人宅のシンプルなデザインが気に入って。知人も信頼していたので、安心して任せられると思いました」(奥さま)

3方向に窓があるため、風の通りが良い。山部屋の床は掃除がしやすいモルタル仕上げ。山から持ち帰った汚れた道具を玄関からバルコニーまで一気に運べる。
読書も夫婦の共通の趣味。造作の本棚には、二人が大切に集めてきた山関連の書籍や写真集などが数多く並ぶ。下部には登山用の洋服などが収まっている。

山道具の整理や準備、メンテナンスがスムーズにできる住まいを求めたご夫妻。設計を担当した山田優さんは、ワンルームの中に“山部屋”を広めにつくり、普段の生活をする場所をコンパクトにするプランを提案。“山部屋”は道具を収納するほか、ライブラリー機能も併せ持ったスペースだ。

吊り戸棚を設けずすっきりとした印象のキッチン。飾り棚には北欧などのキッチン用品が並ぶ。作業効率を考慮して、中央に収納を兼ねた作業台を設置。

キッチンと寝室の間のカウンターは、所有していた家具が組み込めるように造作。

「お二人は本当に山が好き。主に平日を過ごす自宅が、山と都市をつなぐベースキャンプのような場所になることを目指しました。たくさんの道具を入れる収納は、山小屋にあるようなラフで使い勝手の良いものになるよう設計しました」(山田さん)

山部屋の中央に設けた収納兼カウンター。引き出し収納はスキーやストック、ヘルメットなど、たくさんの道具を出し入れしやすい。広い天板はメンテナンスに便利。

登山用細引きロープで把手を製作。

自宅近くに畑を借りているというご夫妻は、デッキを張った広いルーフバルコニーでも野菜やハーブを育てている。

「山に出掛けない週末は、バルコニーでのんびり。山道具のメンテナンスがてら、お昼寝をすることも。今までも山を中心にした生活をしてきましたが、この家ができて準備などが快適になり、さらに山生活を楽しめています」(奥さま)

左・バルコニーではラディッシュが収穫できた。/右・洗面、トイレを一体にして省スペース化。
畳敷きのコンパクトな寝室。低いカウンターでキッチンとゆるく仕切っている。
左・有孔ボードを埋め込んだ壁に帽子やアートをディスプレイ。/右・ 家族の思い出を収めた古いカメラを大切に飾っている。

建物データ

〈専有面積〉75㎡〈バルコニー面積〉35㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈設計〉山田優 (SNARK Inc.)〈施工〉TANK〈設計期間〉2ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈既存建物竣工〉1979年〈リノベーション竣工〉2017年

※この記事はLiVES Vol.100に掲載されたものを転載しています。
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