
リノベーションマンション事例「116㎡の大空間をゆったり使い、憧れの広いLDKと趣味部屋を実現」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、神奈川県川崎市の稲田さんご一家の事例をご紹介します。モルタルの土間に設けたショップのような棚。ロッククライミング、登山、自転車、プラモデルなど、趣味の道具を詰め込んだ夢の空間。 (text_ Yasuko Murata photograph_ Takeshi Kimura)
「ロッククライミングや登山は携帯する道具が多いので、使う度に出したり仕舞ったりするより、オープンな棚に並べて置きたいと思っていました」
と話すのは、アウトドアブランド、カリマーのマーケティングを担当する稲田里樹さん。プライベートな趣味もアウトドアで、奥さまと6歳の娘さんとの3人暮らしだ。昔から広い家に住みたかったという里樹さんは、100㎡以上の面積を求めて、中古マンションをリノベーションすることに。設計や内装は、友人でHAY hutte designの安井秀行さん、Hajikamiの谷脇周平さんに依頼した。
購入した物件は、築25年、116㎡。玄関が真ん中にあるL字型の空間だ。既存の間取りでは北側に個室、南側にLDKがあったが、これを入れ替え、広いほうの北側の長方形のスペースを丸ごとLDKとすることにした。

キッチンを大きく移動させることが必要になったが、詳しく調べたところ配管の問題もクリアできることがわかり、既存の個室4室分をひとつの空間にした約38畳の圧巻の広さのLDKとなった。
「広さがあるので空間とのバランスを考えながら、家具の素材やサイズを決めていきました。壁の一面は石張りにして、自然を感じさせる雰囲気をつくっています」(安井さん)

石を張った壁とフラットになるように新たに枠をつくり、ウッドブラインドを設け、既存のサッシの存在感を薄めている。テレビは壁掛け、棚も壁につくり付けた。


南側には、寝室、水まわり、玄関から続く広めの土間を設けた。土間は里樹さんの念願だったアウトドアの道具、自転車やプラモデルなどのその他の趣味の道具を並べるための部屋だ。壁に棚やハンガーラックをつくり付け、アウトドアの道具を並べている。さらにデスクとチェアを置いて、プラモデルをつくったり、傍らで自転車のメンテナンスもできる場所としている。


「マットやシュラフなどの大きくてかさばるものは棚に並べ、ウェアはハンガーに、リュックサックや細かいものはカラビナに引っかけています。どこに何があるか一目瞭然で、山に行く時に忘れものをすることがなくなりました。帰宅後は道具に土や泥が付いていることも多いのですが、床が土間なので汚れても気にならず機能的です」(里樹さん)

100㎡以上の面積をLDKと寝室、趣味部屋で使い切ったこの家。設計中「子ども室がなくて大丈夫なの?」と安井さんと谷脇さんが何度も確認したが、里樹さんは「広いLDKをつくる」と決してブレなかったという。計画としては、娘さんが小さいうちはLDKに設けたワークスペースを家族で共有し、必要になったら趣味部屋を子ども室にする予定だ。

「子ども室が必要なのは数年間なので、その間は我慢します」
と里樹さん。今、本当に欲しい空間だけに集中した潔さが、この家に心地よい佇まいをつくり出している。


玄関からキッチンへと向かうドア。ガラスで抜け感をキープ。
建物データ
〈専有面積〉116㎡ 〈バルコニー面積〉約8㎡ 〈主要構造〉鉄筋コンクリート造 〈設計・施工〉HAY hutte design+Hajikami〈設計期間〉2ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月 〈既存建物竣工〉1992年 〈竣工〉2016年

※この記事はLiVES Vol.95に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ