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リノベーションマンション事例「海の近くのサードプレイス。たくさんの人が集うサロン的空間」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、神奈川県三浦郡葉山町の馬場さんの事例をご紹介します。予算をコントロールしながら、海のような清々しさを感じさせる明るくナチュラルな空間に。引き算のリノベーションで、妥協せずに147㎡をつくり上げる。(text_ Yasuko Murata photograph_ Kai Nakamura)

60歳になるまでに海の近くで暮らしたいという夢を叶えるために、葉山で物件を探していたという馬場さん。森戸海岸近くにある築30年、2~3階に展開する147m2のメゾネットの中古マンションを気に入り、友人だったno・555の土田拓也さんに相談してリノベーションを行うことにした。馬場さんは横浜市内にある中古マンションをリノベーションした経験がある。今回の家はセカンドハウスとして使うつもりだが、予定よりも面積が広くなってしまったこともあり、リノベーション工事の予算はコントロールする必要があった

白く染色したラーチ合板で造作したオープンなキッチン。置き家具のようなラフさを意識してデザインされている。20人ほどのゲストを手料理でもてなすことも。

「海の近くという環境に馴染む、白を基調とした明るく清潔感のある空間をイメージしていました。部分的なリノベでもいいかなと思っていたのですが、土田さんがコストを調整しながら全体に手を入れることを提案してくれたんです」(馬場さん)

土田さんが目指したのは、壊すけれど足さない思い切った引き算の空間づくり。既存の間取りを活かしつつ、間仕切り壁や水まわりの建具など、撤去できるところはオープンに。もともとの大らかな造りをより強調し、ゆったりとした空気が流れる空間をデザインした。

3階の寝室は施工を最小限に抑え、壁・天井のクロスのみ張り替え。床は既存のカーペットをそのまま使用。壁にはオープンなクローゼットを造り付けた。

2階のトイレ。場所は既存のまま設備と仕上げのみ一新。手前の洗面室との間にあった壁とドアを取り払い、インド綿をパッチワークしたカーテンで仕切っている。

[左]/3階のゲストルーム。廊下の床はコンクリート躯体にローラーで薄くペイント。
[右]/浴室は扉を撤去したオープンな造り。FRP仕上げと置き型バスタブでシンプルに。

大勢のゲストを呼んで食事を楽しむなど、居場所の中心となるLDKは仕上げにこだわり、壁に漆喰を塗った。床は既存のカーペットをはがし、コンクリートをむき出しに。接着剤の跡が残ったため、ペンキによるドロッピングを重ねてアートのような仕上げを施した。キッチンやテーブル、棚などは、白く染色したラーチ合板で造作。軽やかな雰囲気が海に近い環境にフィットしている。

天井は躯体現しにペンキ塗装、壁は漆喰で仕上げたLDK。リビングには馬場さんが愛用しているヴィンテージの家具が並ぶ。ソファは愛犬もお気に入りの場所。

仕事でテキスタイルを扱う馬場さん。こだわりのカーテンは光をやさしく通すインド綿と麻の組み合わせ。キッチンの壁側のオープン棚にはセンスの良い食器が並ぶ。

2階床は撤去した仕上げの糊跡を活かし、ペンキを垂らした。

和室は既存の砂壁の仕上げや襖、柱も残して、上から白いペンキで塗装。床の間に飾っているのは和紙作家、リチャード・フレイビンの作品。

「リノベでは少しの妥協が大きな後悔につながることがあるので、手を加えるべきところは、しっかりつくるようにしました。キッチンを新しく造作したことで、料理上手な馬場さんに似合う空間になったと思います」(土田さん)

夏の間は月の半分をこの家で過ごす馬場さん。愛犬たちとビーチを散歩し、漁師小屋で新鮮な魚介類を買って料理する。時には一人で静かに、時には友人たちと賑やかに楽しむ。不在時には友人に貸すこともあり、土田さんやスタッフもよく滞在しているという。たくさんの人たちが自由な空気と海辺の癒しを求めて集まる空間。馬場さんの人柄をそのまま表しているような家である。

ヴィンテージのコレクターでもある馬場さん。LDKの一角には経年して良い味わいが出ている古いストーブ、チェアなどが並ぶ。植物は手がかからないものが中心。

玄関を入ると右に和室がある。既存の建具もそのまま流用。

[左]/木枠に光と気配を通すポリカーボネートをはめた造作扉。[右]/照明は天井に吊るした角材にコードを巻き付けてアレンジ。

建物データ

〈物件名〉HAYAMA FLAT(BHG)〈居住者構成〉大人1人〈専有面積〉147.05㎡〈バルコニー面積〉11.09㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈設計〉no.555一級建築士事務所〈施工〉自主施工〈設計期間〉4ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈既存建物竣工〉1987年〈リノベーション竣工〉2016年

※この記事はLiVES Vol.95に掲載されたものを転載しています。
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