
リノベーションマンション事例「良質なヴィンテージアイテムと暮らす古着屋オーナーの家」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、大阪府箕面市の遠藤さんご一家の事例をご紹介します。大切な古着や靴を収納するストレージルームを完備。手間ひまかけてつくられた、古き良き時代のアメリカヴィンテージに囲まれる暮らし。 (text_ Shiho Ikeda photograph_ Takashi Daibo)
大阪市北区中崎町で古着屋「BOW & ARROW」を営む遠藤昭彦さんが、奥さまの文さんと幼い娘さんの3人で暮らすのは、1967年に竣工したヴィンテージマンションの一室。昭和の集合住宅建築を牽引してきた遠藤剛生氏による設計だ。
「昭和建築の特徴が表れた独特な外観やデザインが好きで、彼が設計したマンションを探していたんです。実際に中に入ってみて、眺望のいいテラスのつくりや光の入り方、細部にまでこだわった内装がとても気に入りました」
と遠藤さん。

新居では、古着をはじめとした大量の洋服や靴を収納できるスペースと、仕事の商談を行うスペースをつくることを前提としていたため、92㎡という広い面積も購入の決め手となり、リノベーションを敢行。設計はアートアンドクラフトに依頼した。
リノベーションでは、和室と洋室が2部屋ずつあった4LDKの空間をスケルトンにして、玄関土間兼商談スペース、洋服専用のストレージルーム、LDK、寝室1部屋のプランに変更。南側にあったLDKは見晴らしのいいルーフテラスのある北側に移動し、玄関土間とは造作したガラスのパーティションでゆるやかに分節。狭かったバスルームも拡張して、家全体をゆとりある使い方ができるようにした。


「BOW & ARROW」で扱うのは、アメリカのヴィンテージクロージングや雑貨。遠藤さんが買い付け先のアメリカ西海岸で入手してきた家具やアート、店舗で使っていた愛用の什器を家の随所に導入した。特にストレージルームの鉄の扉は店舗の入口に使っていたお気に入りで、国内の工場でオリジナルで製作したもの。ダイニングのパイプチェアやテラスのパラソル、商談スペースのハイテーブルセットなどは、アメリカから運んできたものだ。



玄関の下足棚にはレザーブーツのコレクション。レザーはしまい込むとカビが発生する恐れがあるため、オープン棚にした。棚受けには古いフォークリフトのパーツを利用。
「古いものが好きで、ヨーロッパのアンティークも美しいと感じるのですが、普段使うものは丈夫かつ、汚れても傷が付いても、それが味になるものがいいと考えています。僕が扱う古着に関しても同じことが言えて、古き良き時代のアメリカの製品は、良い材料を使って、今では再現できないくらいの立派な技術でつくられている。ルックスももちろん大事ですが、そういうものにこそ魅力を感じます」(遠藤さん)

壁は既存の吹き付け塗装の白壁を活かし、天井やダイニングの床は躯体コンクリートを剥き出しにしたまま。リビングと寝室の床にはオークフローリングを張って全体的にラフに仕上げた空間には、経年美化したアイテムたちが自然と馴染む。
「永く使えてこそ愛着がわく」
遠藤さんの言葉には、大切にしたいものや家との向き合い方が示されていた。



建物データ
〈物件名〉遠藤邸〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈建物規模〉地上5階建て(2階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1976年〈専有面積〉92.67㎡〈バルコニー面積〉4.92㎡〈設計・施工〉アートアンドクラフト〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2015年

※この記事はLiVES Vol.89に掲載されたものを転載しています。
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