
リノベーションマンション事例「半分閉じた子ども専用スペース。家族のそばで安心して遊ぶ」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都渋谷区の半田さんご夫妻の事例をご紹介します。現在の暮らしを快適に過ごす、腰壁で仕切っただけの子ども空間。将来は再リフォームで、2部屋の子ども室をつくる可能性も想定。
(text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue)
3歳のらくたろうくんと暮らす半田さんご夫妻は、都心の便利なエリアに住むことを希望し、中古マンションをリノベーションすることにした。選んだのは、渋谷区内に建つ築40年、広さ77㎡の物件。将来的に子どもが増える可能性も考えているが、大切にしたのは現在の家族の暮らしを楽しむことだった。
「今は家族が一緒に過ごせる広めのLDKと、ミニマムな寝室というシンプルなプランがあればいいと考えました。でも、家族が4人になって、子どもが成長したときのことも想定し、再リフォームすることを視野に入れています。なんとか個室が2部屋つくれるように、いろいろシミュレーションしました」(浩和さん)
将来的に個室にもなる空間とは、LDKの一角をL字の壁で仕切った子ども空間と、玄関の脇にある納戸。どちらもシングルベッドがかろうじて置ける広さを基準にした。



玄関を入ると廊下がクランクする。まず目に入る正面の壁には、アーティストの岡美里さんが描いた、半田さんご家族の肖像を飾った。左のドアは納戸へつながる。
子ども空間の壁は、浩和さんの胸くらいまでの高さに設定。大人が立ってのぞけば中の様子がうかがえる。リノベーションのデザインを担当した、ランドスケーププロダクツの片山貴之さんは、
「子どもがいる家では、おもちゃや絵本などがリビングに置かれることが多く、雑然とした状態になってしまいがち。ものがしっかり隠れるように高めに壁を設けました。上部が抜けているので、広さも体感できます。個室が必要になったときは、壁やドアを付けることも可能です」


仕上げは、塗装の壁・天井とナラ無垢のフローリング。北欧のヴィンテージ家具や雑貨などを好む半田さんご夫妻が、自分たちでコーディネイトを楽しめるように、シンプルにまとめている。キッチンと子ども空間の壁にタイルを用いたり、一部の壁に色を使うなど、家具を引き立てるアクセントも盛り込んだ。



「以前はキッチンが仕切られていたから、いつも子どもが足元にいて大変でした。対面キッチンも考えましたが、壁付けにしたことでLDKが広く、開放的になってよかった。子ども空間にいても、離れた場所で遊んでいても、様子が分るので調理中でも安心できます」(真有さん)

廊下からLDKを見る。正面のタイル壁の向こうが子ども空間。置かれたおもちゃなどは視界に入らず、窓からの採光を遮らない、絶妙な壁の高さとなっている。
限られた面積の中で、将来への備えを考えながら、今の家族の暮らしを充実させる。今後もさまざまな可能性を残しながら、その時々で子どもとの暮らしに合わせていける、自由さと拡張性をもった空間だ。


建物データ
〈物件名〉参宮橋の住宅〈所在地〉東京都渋谷区〈居住者家族構成〉夫婦+子供1人〈建物規模〉地上10階建て(5階部分)〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1973年〈専有面積〉77.61㎡〈バルコニー面積〉6.06㎡〈デザイン〉ランドスケーププロダクツ〈施工〉バター〈設計期間〉5ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2013年

※この記事はLiVES Vol.74に掲載されたものを転載しています。
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