
リノベーションマンション事例「クリエイティブな個性が夜な夜な集うビアカウンターのある家」
雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都渋谷区の内藤さんの事例をご紹介します。表参道から徒歩圏内。一人暮らしを満喫するための都心マンションリノベーション。人が集まるLDKを重視し、プライベート空間を最小限に。
(text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue)
「家というよりはパブのような空間にしたかったんです」
と話す内藤隆志さん。クラフトビールが好きで、ビアソムリエの資格を持つほど、その魅力にはまっている。一人暮らしの今しかできない生活を満喫したいと選んだ家は、表参道と渋谷のあいだに建つ築46年、36㎡強の中古マンション。フルリノベーションで、自分のこだわりを思う存分詰め込んだ空間をつくり上げた。
「ビール好きな仲間や趣味で活動している音楽仲間、仕事関係など、公私共にさまざまな職種の知人がいます。その人たちが集まって多彩な知識や価値観を共有できる場にしたいと思いました。その象徴が中央にあるビールカウンターです」(内藤さん)

L字に細長く連なる空間は、水まわり以外は間仕切りのないワンルーム。ビールカウンターを中心として、キッチンやソファがゆったりと配置されたLDKがすべてといってもいいほどだ。一番奥にベッドを設えた寝室があり、クローゼットはベッド上下のデッドスペースを活用。浴室はシャワーのみでバスタブは省略した。プライベートな空間を最小限までそぎ落とし、LDKの居心地の良さを追究している。


ビールカウンターからプライベートスペースを見る。左の木の箱に水まわりが収まり、その奥にコンパクトな寝室がある。右のコンクリートブロックの壁はDIYで塗装。
玄関を入ると目に飛び込んでくる大きな窓には、奥行き25㎝のカウンターが設けられている。キッチンの天板からL字につながり、椅子に腰かけると隣接するガーデンレストランの緑を見下ろす。パブのような空間を強調するこのカウンターは、リノベーションの設計を手掛けたスマサガ不動産とmoiーdesignのかまたひろしさんが提案した。

窓のカウンターとL字に連なるキッチン。コンクリートの壁につくり付けた棚に並べたビールグラスや、フックに吊るしたキッチンツールがパブの雰囲気を強調。

「L字の空間を際立たせるように、カウンターで水平のラインを出して、アクセントにしたいと考えました。窓に向かって座ってもいいし、ビールカウンターにいる人と向き合ってもいい距離感が生まれると思います」(かまたさん)
また内藤さんは壁の塗装、ブリックタイルの施工などを、かまたさんや友人の手を借りながらDIYで仕上げた。空間をつくることもイベント化して楽しんでしまったそうだ。

窓際のカウンター下に通る排水管は、合板で覆い足置きに。

リビングの壁の一面はDIYで張ったブリックタイル。
量り売りのクラフトビールをグラウラーという専用容器に準備し、夜な夜な集まる友人たちを迎える内藤さん。将来的にはこの空間を利用し、ビールに関連したワークショップやイベントなども企画していきたいと考えているという。

洗面、トイレ、シャワーを合板の箱の中にコンパクトに収めた。必要最小限の水まわりとしながらも、水栓や洗面など、一つひとつのセレクトにはこだわりが。

建物データ
〈物件名〉表参道N邸〈所在地〉東京都渋谷区〈居住者構成〉大人1人〈建物規模〉地上10階建て(6階部分)〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1968年〈専有面積〉36.46㎡〈プロデュース〉スマサガ不動産〈設計〉職人 かまたひろし/moi-design〈施工〉セットアップ〈設計期間〉4ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2015年

※この記事はLiVES Vol.84に掲載されたものを転載しています。
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