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リノベーションマンション事例「DIYもしやすい。袖壁で生み出す、収納と生活空間」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、東京都西東京市のシオミツさんの事例をご紹介します。「袖壁間の余白にラフにしまう。」「足りなければDIYで棚板を増やす。」「入らないものは捨てる。」の収納3か条を実現させるために、キッチンや浴室などの生活に必要な機能を袖壁で区切り、その間に収納をつくり出す。シナランバーの袖壁はビス打ちも自由自在。 (text_ Yasuko Murata photograph_ Kai Nakamura)

「棚や家具など身の回りのあらゆるものを自分でつくる」というDIY好きなシオミツさんは、奥さまと2人暮らし。新居でも暮らしながらDIYでアレンジしていくことを想定し、築38年の中古マンションをリノベーションした。

キッチンの奥にあるゆったりとしたリビングダイニング。ダイニングテーブル、ベンチ、キッチンのワゴンもご主人がDIYでつくった。床は無垢チークの浮づくり。

「多趣味なシオミツさんは、キャンプ道具や自転車、ハンモック、楽器など趣味の所持品が多い。それらをきちんと収納するのではなく、暮らしの中に見えてくるように、ラフな雰囲気でまとめる方法として、袖壁で空間を区切るというアイデアを提案しました」

と話すのは、スマサガ不動産と共同で設計を担当したCamp Design inc.の藤田雄介さん。

物件は面積が50㎡程度とコンパクトで、東西に細長く、長手の南側全面にバルコニーが開ける特徴的なタイプ。三方向への抜けを活かすため、間取りはワンルームとして、暮らしに必要な要素を挟み込むように、袖壁を設定していった。

50㎡のワンルーム空間に、さまざまな幅の袖壁が重なって層をつくり、奥行きを生み出している。
左から玄関、トイレ、浴室、洗濯機置場。絶妙な幅の袖壁でゆるやかに分節。

キッチン、浴室、ベッドなど必要な生活機能を配置していくと、自然に出現する余白が、収納スペースとなっている。ベッドと洗面の間がクローゼットになり、パイプスペースを挟む袖壁の間が本棚になった。また、余った空間に袖壁を1枚追加することで、ウォークインクローゼットのような、多様なものをしまえるスペースも生み出した。

キッチンの隣にあるパイプスペースを囲む壁を、袖壁で挟み込み、棚板を渡して食器棚に。わずかな空間も袖壁でガイドすることで、収納スペースとして活きてくる。

洗面のミラーを開けると収納が。ご主人のDIYによる力作。

パイプスペースの壁を利用し、袖壁を追加して創出したウォークインのような収納。必要に応じて棚や箱、フックなどを増設して、使いやすく工夫している。

袖壁の素材はシナランバーで、厚さは一般的な間仕切り壁よりも薄めの24㎜+。完全な壁ではなく、パーティションと壁の中間くらいの印象を狙っている。

「軽さと壁としての存在感の両立を目指しています。それぞれの袖壁の幅は、見え方と機能性のバランスを検討して決めました。適切な幅の袖壁の設定は、ワンルームに奥行きも生み出します」(藤田さん)

また、水まわりの前の余白部分には土間をつくり、自転車やキャンプ道具など、アウトドアのものを置ける場所としている。バルコニーに面した陽当たりのよい縁側のような空間で、居場所としても魅力的だ。

水まわりの前に設けた土間。袖壁の間にポールを渡し、洗濯物を干すスペースとしても活用。小上がりはベンチのように腰かける場所としても。開放的で眺めも良好。

土間の横にあるワークスペースも、袖壁で区切られている。

「シナランバーの袖壁は、自由にビスが打てるからDIYしやすいです。入居後は早速、頭上などの空いた場所に棚をつけたり、フックを追加したりしました。今後も暮らしていく中で収納が必要になったら増やしていくつもり。工夫のしがいがある家になりました」(ご主人)

ワインの木箱を取り付けて、帽子ケースに。

スチールの棚受けを利用した玄関の下足棚。

キッチンの壁にはイエローのモザイクタイルを取り入れてアクセントに。

玄関の土間も広め。一段上がると左右に細長く空間が広がる。

ご主人がプラスチックシートで自作した照明のシェード。

建物データ

〈物件名〉西東京S邸 〈所在地〉東京都西東京市 〈居住者構成〉夫婦 〈建物規模〉地上9階建て(8階部分) 〈主要構造〉鉄筋コンクリート造 〈建物竣工年〉1976年(築38年) 〈専有面積〉50.22㎡ 〈バルコニー面積〉20.52㎡〈設計〉Camp Design inc.+スマサガ不動産 〈施工〉河行工務店 〈設計期間〉3ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月 〈竣工〉2014年

※この記事はLiVES Vol.75に掲載されたものを転載しています。
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